★PS2ゲームレビュー★

ノリノリのキャラクタ・世界観を楽しもう
「ポイニーポイン」


 「ポイニーポイン」は、ジェリービーンズに代表されるアメリカのお菓子のような極彩色に塗られた世界を舞台に、イカしたキャラクタが活躍するアクションゲーム。アメリカンセンスに統一された世界観と、練られたアクションが楽しめる。
 主人公は世間知らずで甘えん坊、しかも超ボケキャラの“ポイニー”。彼は謎の少女“ロロ”がまき散らした“毒ポイン”により混乱したジェリータウンを救うため、冒険を開始する。



■“ポイン”を使いこなせばすべて解決!

 このゲームの中心となるのは“ポイン”という物体。ゼリーのようにさわるとぷるぷると震えるこの物体は赤・青・黄の3色の種類があり、ポイニーはこのポインを使いこなして冒険を進めていく。上に乗ることで足場に使ったり、ぶら下がることで空中を滑空しステージを進んでいくことができる。

 また、ポインには色によってキャラクタの“感情”を変えるという性質がある。青ポインをぶつければキャラクタは泣き、赤ポインをぶつければ怒る。毒ポインに冒されたキャラクタを直すには、対応した色のポインをぶつければOK。さらにキャラクタの感情をポインで操作することで、ステージの仕掛けを作動させ、冒険を進めていく。
 ステージが進むごとにこの「キャラクタの感情を使う」というアイデアは凝ったモノになっていき、感心させられる。ポインをぶつけるごとにコロコロ表情を変えるのも、ちょっぴり意地悪な快感があって、こういうところもアメリカンなセンスといえるかもしれない。

【ポインの使い方】
ゼリーやグミのようにぷるぷるふるえるポイン。3色あり、感情を変化させるのだ。 足場として乗ることも可能。つかんで持ち運ぶ、という手順が必要となる場面も。 ポインを持ってジャンプすると滑空が可能に。谷間などを飛び越えることができる。
紫がかっているのは、毒ポインに冒されている証拠。ポインをぶつけて、直してあげよう。 ポインをぶつけることで、キャラクタの感情は変化する。ステージ攻略の重要要素だ。 ヒントは非常にわかりやすく提示される。赤ポインをキャラクタにぶつけて先に進もう!



■イカしたセンスのキャラクタ

 主人公のポイニーのボケっぷりをはじめ、アメリカンなセンスで統一されたキャラクタたちはどれもユニークだ。
 実はポイニーは「街を救うため」に冒険をしているのではない、彼は実は迷子で、ロロから街を救おうとする女の子・リリンによって、おしりに生きているめずらしいポインをくっつけられ、“家を探すことに協力してもらう”ために冒険をしているのだ。

 街の住人も非常にいい加減で、「きっとストロベリーママがポイニーの家を知ってるよ!」、「とにかくこの困った状況を何とかしたら、教えてやる」といってポイニーを利用してから、「別の奴なら知ってると思うよ」と、他人に責任転嫁する。プレーヤーはもうポイニーがただ利用されているのはわかっているけど、ゲームを進めるために次の場所へ彼を向かわせる。そういった事情に気がつかず、無邪気に事件解決に奔走するポイニーはちょっとかわいそうだが、それが独特のおかしさを生む。
 住人は個性的すぎるほど個性的。“かわいい”と“グロテスク”のさじ加減を調整したようなデザインもさることながら、口だけのトムや、ボケちゃってる機関車じいさん・エドガー、無免許で車を乗り回す金持ち息子のピエールなど、性格も強烈で、楽しい。

 彼らの「会話」にも注目したい。このゲームでは音声・メッセージが英語、日本語と選択できる。筆者は両方日本語でプレイしたのだが、声優さんはもうノリノリ、独特の「翻訳されたアメリカンセンス」での会話を楽しめた。逆にオリジナルである英語の方が演技が抑えめで、違和感を感じたほどだ。和訳されたメッセージはそれほどきつくないが、本作のウリのひとつはバリバリのスラングとのこと。英語に詳しい人は、メッセージ・音声ともに英語にして、翻訳がどれだけマイルドにしているかを確認するのも面白いかもしれない。

【スクリーンショット】
主人公・ポイニーと、お尻に刺さったポイン。ボケとツッコミの良いコンビだ。 リリンちゃん。本作のヒロインだが、冒険で役に立ってくれるわけではない。 サングラスをかけたロロと、その手下・ヘルニャン。毒ポインをまき散らす。
左から、トム、ベス、ラッドの3人組。「プチギャング」を名乗り、街でいたずらをしている。 老いぼれ機関車・エドガー。見事なまでのボケっぷりを披露した後、暴走する。 自称天才のピロー。知識は貧弱だが、ポイニーを利用する賢さはある。


■冒険するワールド

 ポイニーが冒険する「ジェリータウン」は実に多彩な顔を持ち、しかも美しい。「ダウンタウン」を中心に、最初の冒険をすることとなる「パノラマガーデン」、乱暴者のジョンくんが仕切る「ジョンくんの湖」鬱蒼と木が生い茂る「グルグルジャングル」、灼熱のキッチン「ボンバーカフェ」、氷の世界「スノーランド」……。

 これらのステージはそれぞれテーマに沿った仕掛けや、住人がいてポイニーを待ち受けている。感心させられるのはこういったさまざまなステージがちゃんと「ジェリータウン」としてセンスの統一感を持って描かれていることだ。ジャングルの木、キッチンの仕掛け、スノーランドの住人……。すべてが美しくて派手なカラーで塗り分けられ、世界観にマッチしたデザインになっている。しかし、目がちかちかすることも確かで、3Dということもあり、人によってはちょっと長時間のプレイはきついかもしれない。
 ステージが進むごとにポインと住人が関係するアイデアは多彩に、凝ったモノになっていき、アクション性よりも謎解き要素が強くなっていく。その謎もヒントが豊富なため、あまり悩むこともない。また、見ているだけで楽しいゲームということもあり、友人何人かと、コントローラを奪い合い、わいわい勝手な推論をぶつけながらゲームを進めていくのも楽しいかもしれない。

 アクションゲームとしての難易度はそれほど高くなく、ゲームが好きという人ならば簡単にクリアできるレベルであると思う。3Dアクションにつきものの、足場の確保や、座標の不正確さ、といった問題は多少感じるが、「グルグルジャングル」以外のステージでは、それほど難を感じず、ゲームを進めることができた。
 L1ボタンを押すことで、いつでもポインの真後ろにカメラを移動でき、ポインと物体の座標を確認できるのもうれしい配慮だ。初期の3Dゲームではこういった機能を使うとカメラがポリゴンにめり込んでしまうようなことが多かったが、このゲームではかなり努力している感があり、不具合を感じたことは比較的少なかった。
 アメリカンなゲームだなぁ、と感じた部分は多用するジャンプボタンが×ボタンだということ、□ボタンでポインをつかんだり投げたりするので同時押ししやすく、操作の配慮はされているのだが、○ボタンがメッセージの送りにしか使われない、というのははじめの頃に少し違和感を感じた。米国のゲームでは×ボタンを多用する傾向があり、妙に納得させられた部分だった。

 またポインは体力を回復させるのに、エクレアを食べるのだが、このエクレアが生きていて、食べるために近づくと“逃げる”というのにも、ちょっと日本人とは違うセンスだと思う。まあどんな生き物だって食べられるのはイヤなわけだが、プレーヤーがエクレアを必要としているときというのは例外なく困っているわけで、そういうときに体力を回復させるために危険な足場の上でエクレアを追い回したりするのは、イライラ……というほどではないが、ちょっぴり辛かった。
 エクレアには他にも何種類か亜種がいて、食べると体力の減るスポイルエクレアは逃げないし、ポイニーの体力の最大値を増やすゴールデンエクレアは隠れたところにいて、発見されると猛スピードで逃げ回る。また、ポイニーよりはるかに巨大なヒュージエクレアというのもいる。このエクレアは近づくだけで無条件で回復してくれる。その慈悲深さは食べられることから逃れえた者の余裕だろうか、何かを悟ったのだろうか?


【スクリーンショット】
マップ画面。次に行くべき場所を指示してくれるので、迷う心配はない。 カラフルなダウンタウン。建物は細かく造りこまれていて、探索するだけでも楽しい。 グルグルジャングル。足場の確保がちょっと難しいステージ。落ちても一発死はしない。
ジョンくんの湖。水不足で困っているのだが、夏場のビーチのようで、どこか楽しげ。 カラフルだけど、実は臭くて汚い下水道。汚いものが大好きな住人がいる。 ゴーストたちの世界。この場所は有名なエッシャーの絵がモチーフになっている。
氷の世界・スノーランド。なんと出入り口は冷蔵庫の形になっている。 逃げるエクレア、追うポイニー。コレが回復アイテムというのも、独特のセンスだ。 非常に頼りになるヒュージエクレア。体力を全開してくれる。ちなみに、食べられない。



■ボスとの対決!

 ステージの最後にはボスが待ち受けている。アイデア勝負という感が非常に強いのが、このボスとの対決だ。毒ポインを受けたステージボスは巨大化、すごい形相でポイニーに襲いかかってくるのだが、単純にポインをぶつけるだけでは倒せない。そこでまわりにいるキャラクタが重要な役割を果たすこととなる。まわりのキャラクタにポインをぶつけて感情を変え、敵ボスの足止めや攻撃の援護に使うのだ。

 ボスごとにこのポインとキャラクタの役割が違い、アイデアにうならされる。キャラクタが単純に邪魔をする存在という場合もあって、面白い。一見複雑な条件とも思えるが、ボスと戦うときにはヒントがきちんと表示されるので安心だ。こういった3Dゲームではボスの姿が確認できなくなってしまう場合があるが、このゲームでは常にキャラクタとボスを中心にカメラを固定する機能がある。

 多彩なアイデアも、ユニークなキャラクタと、それを上回るリアクションがあってこそ。ボスはキャラクタが大きい分、その動きも派手で、楽しい。毒ポインで変貌したキャラクタのイカレっぷりは本気で怖く、普段のキャラクタとのギャップが楽しい。

 中でもぶっ飛んでいると感じたのは、ボンバーカフェのブルコック。彼は全く毒ポインに冒されてなく、ポイニーも料理を手伝うだけなのだが、コレがなんとボス戦。
 ポイニーは要求されたポインをブルにぶつけるのだが、ブルは包丁で足場を切るわ、マシンガンぶっ放すわとやりたい放題。 助手のちびコックたちは足場と共にキッチンの下にある溶岩に落下したりととんでもない調理シーンが展開する。それでちゃんと料理ができちゃってるのがまたすごい。毒ポインが引き起こすのではなく、たぶんこれが彼らの“日常”なのだろう。隠し味で爆弾を使っているというのもまんざら嘘じゃないし、しょっちゅう爆発しているレストランとしても有名らしい。料理はおいしいらしいが……命の危険が伴いそうである。

【スクリーンショット】
最初のボスは毒ポインに冒されたリリンちゃん。ポインをぶつけて直してあげよう。 気弱なトムも毒ポインでこんなにパワーアップ。プチギャングの助けが必要だ。 水不足に悩むジョンくん。青ポインをぶつけて涙で水を足すのだ。
ピローの口車に乗せられて、家造りを手伝うハメに。物凄い勢いで完成する家が楽しい。 豚鼻マシンガンをぶっ放すブルコック。コレがボンバーキッチン流調理法! ハロウィンへの攻撃方法は、石柱を止めているポインを消して、押しつぶすのだ。



■ジェリータウンを楽しもう

 このゲームは難易度も抑えめで、ステージも広大ではない。私はこのゲームの真の目的は、「ジェリータウン」を“楽しむ”ことだと思う。ステージのオブジェクトのデザインや、街の住人の会話など、チェックしてみれば細かく作りこまれているのがわかって、ニヤリとさせられる。

 またクリアした後に見ることができるムービーシアターにも注目してみたい。これが…実に意味がないのだ。面白いかと言われると、返答に窮する。こういう少しずれたセンスも本作の大事な要素なのである。

 なお、エンディングで明らかになる衝撃の事実は必見、さらにエンディングの歌は必聴、日本語訳は必読である。ゲームを買った人はともかく一度はエンディングを見ていただきたい。すごいよ。


【スクリーンショット】
街の住人の会話センスも変だ。「人の心をもてあそんで楽しい?」と言われることも。 エクレアを食べるタイムアタック。他にもスライダーといったミニゲームがある。 クリア後に見ることができるムービー。クリアの実感は……正直わいてこない。

(C)2002 Sony Computer Entertainment Inc.

□株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
http://www.scej.jp/
□「ポイニーポイン」公式ページ
http://www.scej.jp/soft/poinie/

(2002年10月23日)

[Reported by 勝田哲也]

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