★ PCゲームレビュー★
戦争の頻発した中世において、城は戦略上の守りの要であり、また地域住民を支配するための象徴であった。ゆえに城は決して落とされてはならない。そうした事情は日本も世界も変わらない。壁で何重にも囲い、堀や落とし穴などさまざまな仕掛けで武装した。住民たちも城の恩恵を受けて安心に暮らし、経済を発展させてきたのだ。「ストロングホールド」はそんな、城をめぐる軍事、経済などの人々の活動を巧みに取り込んだリアルタイムストラテジーゲームの傑作だ。
■ 「SimCity」と「Age of Empires」のおもしろさをミックスしたRTS
いかに強固な城といえども領主が倒されれば負けとなってしまう。領主ユニットは自分で操作することはできず、絶えず街をぶらぶらと視察してまわり、戦時には領主の館の屋上に上がり、戦いの行く末を見守る。ユニットとしての能力も高いため、大量の兵に城の奥深く侵入されない限り簡単に倒されることはないだろう。 ゲームモードはシングルとマルチプレイ、マップエディタに分かれている。シングルプレイは、戦いが主な目標である「戦略ゲームモード」と、主に物資の調達がクリア目標になっている「経済ゲームモード」に分かれている。「ストロングホールド」では「Age of Empire(以降AoE)」のようにランダムマップで敵と戦うモードはシングルプレイに存在しない。むしろ過酷なミッションをクリアしていくことがゲームを通しての主な目的となっている。 シングルプレイの中でも特に「ミリタリーキャンペーン」は、「ストロングホールド」の要素を、数々のミッションを通して順番に叩き込まれるような作りになっている。そしてユニークなのは「攻城ミッション」。これは実際に存在する城を使っての攻城戦を再現する1マップモードだ。ウィンザー城やエディンバラ城、ヴァルトブルク城など数々の戦争を潜りぬけた城を攻撃、防衛できる血沸き肉踊るモードだ。 マップエディタではミッション自体を生成することができる「独立ミッション」のビルダーのほか、決められた分量の資材を使ってプレーヤーが城を作り、後で自分や他のプレーヤーに攻略してもらうことで、城の出来具合が得点で表される「攻城ミッション」ビルダーが印象的だ。
このゲームでは主に、城の内側では「Simcity」のような街作りを、城の外側では「Age of Empires」のような大部隊が入り乱れ戦うダイナミックな戦いを楽しめる。中にはローマ都市建設シミュレーション「Caesar」シリーズを思い浮かべた人もいるかもしれないが、「Caesar」シリーズよりストラテジー色を強調したゲームといえる。それではまず、ゲーム初期に必要な基本である町作りの部分にスポットを当てていこう。
■ 強い城作りの前には強力な町作りが欠かせない
すなわち、労働力や軍事力となる町の住民は家を建てることで勝手に集まってくるのだ。食料は人口に応じて常に消費されていくため、食料の供給に余裕がないときに無理に家を建てると、彼らはあっというまに食料を食いつぶしてしまう。その結果食料がなくなると、領主に愛想を尽かして町を離れる結果となる。つまり、人を増やすのは簡単ながら、維持するのが難しいゲームなのだ。常に新たな人口を養うだけの食料生産を念頭に人を集める必要があるわけである。 第2は労働力の使い方。新しい家を建てた直後には、領主の館の前に人が続々と増えてくる。が、彼らは無職の状態だ。そこで畑、酪農場、石切場や武器製作所、教会など人材を必要とする施設をプレーヤーが建てて、彼らに使役してもらうというのが「ストロングホールド」のやり方だ。 つまり集まった町の人は資材を集める労働力にもなり、神父になりもすれば、敵と戦う兵士にもなるのだ。そのため、一旦仕事につかせた労働力を別の仕事につかせるには建物自体を閉鎖する必要がある。戦時中には猟など、城の外にでていかざるをえない仕事などを休止させて、彼らを兵士にしてしまうなど、人材のやりくりもプレーヤーの主な仕事になるだろう。 第3は食料や武器などの生産物。ゲームに登場するあらゆる生産物は、大原則としてより高度で効率のよい方法ほど多くのプロセスが必要になる。食料を例にすれば、狩りをして食料を集める場合には狩猟小屋1つを建てればそれで済むのだが、パンを作る場合にはそうはいかない。まず小麦畑を作り、次に収穫した小麦を小麦粉にするための風車小屋を建て、さらに挽いた小麦をパンにするためにパン屋を作らなければならない。 そして作られたパンが食料庫に納まることによって初めて町の人に食料を供給することができるのだ。高度な手法は初期投資も莫大な上にトラブルも多く、原料が食料になるために時間がかかるのも問題だが、長期にわたって安定供給を目指すには欠かせないのだ。 第3に人望というシステムを導入していることだ。先に家を作れば勝手に人が集まってくるといったが、それには少し誤りがある。「もし人望があれば」という言葉を頭につけなければならない。人望はプレーヤーの評判で、税金を課税したり、食料供給を少なくすると下がっていき、その状態が長引くと城から人が離れていく大きな原因となってしまうのだ。食料供給を増やしたり、供給する食糧の種類を増やしたりすればある程度は改善できる。 が、それでもだめな場合には人望にとっての好材料を住民に提供しなければならない。それは城の周りを彫像で飾ったり、酒場でエール(酒)を供給するなどの方法があるが、これには多少問題がある。というのは住民の仕事の効率が落ちるのだ。プレイしていても、彫像の周りを散歩したりする住民の姿がみてとれる。こうした状況がプレーヤーとして目に余るときには、人望をある程度犠牲にして、ギロチンや生首のさらし台などの悪条件を設置して、恐怖で住民の引き締めを図らなければならない。
人望を獲得するには他にも、教会を建て城に宗教を導入する方法がある。食料、税金、好条件、悪条件をバランスよく組み合わせ、人望を水準以上に保たなければ城自体が立ち行かなくなるため、画面右下にある報告書でまめにチェックする必要があるだろう。 ■ 国家育成に必要な5つの資源
基本的にすべての資材は、取った労働者自身が領主の館の隣にある資材置き場まで運ばなければ、武器や建物を作るのに利用できない。つまり運んでいる間は採取がストップしてしまうのだ。だから資材を増産するために同じ施設が山盛りに建つことになる。リアルタイムストラテジーに慣れた人ならひとつの建物に人を複数配置できるようにすればいいのにと思ってしまうのはやまやまだが、それでは城自体がこじんまりしてしまって面白みがなくなってしまうだろう。 Goldを集めるには市場を作り資材や武器などを売るか、税金を集めるかのいずれかだ。少しでも税金を集めようとすると人望が下がることには、支配者としてちょっと理不尽な感じもするが、徴兵や高度な製品の作成にはGoldが欠かせない。食料供給を調節するなどして対応しよう。
ほかに入手可能な資材としてはピッチがある。ピッチは沸騰させて敵にぶちまけると火がつくという、有効な武器にもなる。また酒を造るためのホップも余裕があれば作りたい。街作りは、多彩な資材をいかに効率良く調達し、資材運搬の時間を最小にしたシステム作りが鍵を握るのだ。 ■ 強い城を作る条件は塔と城の囲いかた
壁には門と塔の設備をつけることができる。門は外側との出入りができるようにするほか、塔と同じく弓兵を配置して防御を強化することができる。最初のうちは資材も少ないため、ポイントとなる地点に塔を作り、配備した弓兵で守備すればまず敵を防げる。資材が集まるにしたがって塔と塔を壁でつなぐようにすれば良いだろう。 間接攻撃をする兵士には弓兵と石弓兵の2種類があるが、両者には大きな差がある。弓兵は射程が長く、射撃間隔が短い。そのかわりに、命中率と攻撃力、防御力が弱い。鉄鎧を着ている剣兵にはまったく通じない。一方で石弓兵は威力と命中率が良いかわりに、矢をつがえるために道具を使うため、射撃間隔が長くなってしまうのだ。威力が強いからといって石弓だけにしてしまうのは問題だ。倒すのが簡単な梯子兵など雑兵相手には弓兵で十分だからだ。 なお、間接攻撃は高いところから射撃すればするほど射程を長くできる。そのため塔や門を高い土地に設置すれば、敵が射撃位置にくる前に矢の雨を降らせることができるのだ。塔のグレードを高くすれば、より高く頑丈になる上、屋上にバリスタや投石器も設置できるようになる。 また城は兵士を使って掘を堀り、水で囲むこともできる。堀の一番有利な点は、地中を掘り進み壁に被害を与える掘削兵に対抗できることだ。また堀があれば直接壁に梯子をかけられることもなくなる。敵は大部隊の兵士を使って堀を埋める作業をしなければならないため、時間がたっぷりと稼げるというわけだ。ここぞとばかりに塔の上から弓でガンガン狙い撃ちをしたい。
またユニットが落ちると即死する落とし穴の設置をしたり、壁を登ってくる兵士に煮えたピッチをぶちまけたりと、城を守備する方法は多彩だ。が、方法をひとつ間違うと致命傷になりかねない。どこに塔を配置し、壁で敵をどう導き、どう撃退するか、これが城作りの思案のしどころだ。黒澤映画「七人の侍」には「いい城には必ずひとつ隙がある」というセリフもあるが、くれぐれも隙はひとつにするように。このゲームでも敵は隙と見ればガンガン攻めてくる。壁の作り忘れで隙間が開いているなどのヘマをやらないように。 ■ 敵の攻撃を防ぎきったら、いよいよ敵の城を攻め落とす
その中で直接攻撃をするのは槍兵、矛兵、槌鉾兵、剣兵、騎兵の5種類。槍兵は木の槍を持った民兵のようなもので、攻撃も防御も頼りない存在だ。槌鉾兵は鉄の槌鉾で武装しているため攻撃に向いている。矛兵は鉄の鎧で身を固めているため防御が強い。剣兵は移動スピードが異常に遅いものの、剣を交えれば無敵の強さだ。騎兵はスピードにも攻撃にも長けているが徴兵するまでの資材の調達が大変、といった具合だ。 技術兵はゲームにおいてもっとも重要な攻城兵器を一手に引き受ける。攻城戦の主役ともいえる特殊な兵士だ。彼らだけが戦場でカタパルトや破城槌などを作成し、それを動かすことができる。城の守りにおいても、塔の上に設置されたバリスタを動かしたり、城壁の上から煮えたぎるピッチを敵にぶちまけられるのだ。また掘削兵は地中を掘って進み、ダメージを受けることなく敵の壁に大きなダメージを与えられるが、1回の使いきりなので技術兵の補助という形での参戦になるだろう。 がっちりとガードされた城を攻め落とすことが容易ではないのは、ここまで城を作ってきてわかることだろう。塔から放たれる弓兵の大軍、立ちふさがる壁や堀、落とし穴などクリアしなければならないポイントは多い。孫子の兵法でも城攻めは下の下策と言われているとおり、城攻めをする場合、兵はいくらいても足りないくらいだ。 城を屈服させる方法はいくつかある。まず第1に、攻城兵器を使い城壁を壊して中になだれ込む。第2は、はしごや攻城塔を使い城内になだれ込む。第3はカタパルトを使って病気の牛を放り込み、疫病を城内に蔓延させる。この中でも基本は第1の方法だ。 攻城戦はまず、技術兵が攻城兵器を作るところから始まる。戦いは塔や壁を壊そうとするこの攻城兵器をめぐる攻防に集約される。力が五分の場合、城から出てくる迎撃部隊と攻城兵器を壊させまいとする攻撃側の防衛部隊が戦うのが基本だ。城の防衛で説明したとおり、塔は城の防衛の最大拠点だ。敵もここに多くの弓兵を配置していることだろう。そう、まず第一は塔を破壊することだ。 攻城兵器が城に接近するにしたがって城内の部隊が続々と接近してくる。城内の人は自動的に集まるため、武器の在庫がある限り敵は続々と兵士を繰り出してくる。矛兵でしっかりと攻城兵器をガードし、さらに後方から弓兵で防衛部隊を援護する必要がある。この防衛戦であまり兵力を減らすと、城内での戦いは圧倒的に不利だ。また攻城戦は段取りが大事なので、Ctrl+数字で部隊を設定し、ショートカットで呼び出しながら操作するといいだろう。同時攻撃ができるようならしたほうがいい。というのも城の攻撃が分散され兵が生き残りやすくなるからだ。 塔を壊すには時間がかかる。その間にも壁に隙間をあけることを考えておこう。もし堀がある場合は大変だ。なによりもまず、城からの集中攻撃を受けるのを覚悟で兵士に堀を埋める作業を命じなければならない。堀がなく、塔の上にバリスタなどの強力な防御兵器がない場合、地中を掘削、攻城兵器で攻撃、梯子を壁に掛けるという3つの手法で城壁に迫れる。タイミングを合わせて全ての手法で一気に攻撃するのが得策だ。 こうして書くと簡単なように見えるが、技術兵が攻城兵器を作り、さらにそれに搭乗するというような段取りからして難しく、最初のうちは華麗な城攻めとはいかない。修練次第で改善されそうな気もするが、さらに困ったことに、このゲームの詰めの甘さが立ちふさがる。カタパルトで遠くから攻撃目標を指定しても、射程範囲ギリギリまで移動して攻撃するということをしてくれない。あらかじめ射程内に入っておかなければカタパルトはうんともすんともいってくれないのだ。 また、防御壁や攻城塔の有効な効果範囲がわかりづらい上に操作しにくい。部隊が大人数になっても隊列変更ができないせいで、罠と知りつつも罠に掛かってしまったりもする。などなどの理由により、守りとは一転して攻城側は地獄の難しさだ。攻城戦のつらさがリアルに体験できるという点ではこれ以上の作品はしばらく存在しないだろう。 「ストロングホールド」は自分で作った城のシステムを守るという基本部分が非常に良くできており、かなり遊べる。シングルプレイのミッション内容も多様で飽きさせない。マルチプレイでは最大8人で城を作りあい、互いに攻め合うというガチンコ勝負ができるが、できればシングルプレイでも同じモードも作ってほしかったところだ。
一方、マルチプレイでは友達同士で城を作りあい、攻略し合うというようなこれまでと違った遊び方もできる。攻城兵器のシステム等に納得のいかない部分はあるが、なかなか奥が深い佳作といえるだろう。
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□メディアクエストのホームページ http://www.mediaquest.co.jp/ □「ストロングホールド 完全日本語版」公式ホームページ http://www.mediaquest.co.jp/game_r_stronghold_w.html (2002年9月4日)
[Reported by 嶋村智行] |
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