ECTS 2002現地レポート

あの「ハンニバル」がアクションシューティングで登場!
フランスArxel Tribeブースレポート

会期:8月29日~31日(現地時間)

会場:Earls Court Conference Centre

 ヨーロッパでもアクションシューティングが花盛りだ。ハードウェアのグラフィック処理能力の劇的な進化と、ゲームの土台となるグラフィックエンジンのライセンス契約が一般的に行なわれている事情もあって、各国のデベロッパーともさまざまなアイデアを詰め込んだアクションシューティングを出展していた。本稿では中でも素材、アイデアの両方で「おおっ」と思ったArxel Tribeの「Hannibal」をご紹介しよう。


■ クラリス特別捜査官のガンアクションが冴え渡る!
Lithtech Jupiterエンジン採用の本格FPS「Hannibal」

映画「ハンニバル」のキーアイテム拘束具を大きくあしらったポスター
 フランスのゲームデベロッパーArxel Tribeは、狭いブースながら今回紹介する「Hannibal」をはじめ、アドベンチャーゲーム「Ring2」、3Dリアルタイムストラテジー「The Gladiators」、ファンタジーRPG「Mistmore」といった4タイトルのPCゲームを出展していた。中でも各国のプレスの注目を集めていたのが、世界的なネームバリューを誇るベストセラー小説のゲーム化作品「Hannibal」だ。

 米国の小説のゲーム化権を他国が取得するというのも珍しい話だが、それがアドベンチャー好きという以上に大スリラー好きであるフランスのメーカーということであればうなずける話ではある。同社はこれまでにもヒッチコックの映画「The Final Cut」やヴェニスの舞台にしたイタリア映画「Cassanova」などをモチーフにしたゲームを手がけているが、いずれもアドベンチャーゲームで、映画を題材にしたアクションシューティングは「Hannibal」が初めてだ。

 「Hannibal」は、トマス・ハリスの原作をベースにフランス風の独自解釈を加えたホラーアクションシューティング。プレーヤーはクラリス・スターリング特別捜査官となり、目下逃走中の凶悪連続殺人犯ハンニバル・レクター博士を逮捕するために捜査活動を行なっていく。活動範囲は米国のみならず、イタリアにも渡ることになるようだ。

 今回ブースで見ることができたのは、かつてレクター博士が収容され、いまは廃屋となっている刑務所のシーンで、1人称視点で銃を片手に自由に動きまわることができた。グラフィックエンジンは独自開発ではなく、Monolithが現在売り出し中のLithtech Jupiterエンジンを採用しており、非常にクオリティの高いビジュアルを実現していた。

 特にスポット光源処理が見事で、真っ暗な廃屋で懐中電灯を付けることで、正面が明るく照らされ、主人公が向きを変えることで、照明の位置が動いていく。正面のオブジェクトの形により、照明具合も変化し、実にリアル。すべてリアルタイムで処理されているため、GPUへの負担は重そうだが、ホラー効果を盛り上げるうまい演出だ。

 また、クラリスの行動に対してキャラクタの反応がころころ変わるのもおもしろかった。廃屋には銃で武装したダミーが配置されていて、クラリスが銃を片手に近づいていくと、敵と勘違いしたダミーが物陰に隠れて銃撃してきた。そこで銃を構えたまま左手でFBI特別捜査官のバッジを見せると、銃を投げ捨て両手に上げて降参するといった具合。要するにクラリスが提示するアイテムにより、相手の反応が変わってくるというわけで、こうしたアドベンチャー要素が同作の魅力といえそうだ。

 さらに同作ではクラリスの内的変化をビジュアルで表現するという。デモで見られたのは彼女の感情が一時的に高ぶり、視界の周囲が充血したように赤く染まり、その結果、視界内のキャラクタがすべてガイコツに見えてしまうというもの。バリエーションとしてはほかにモンスターに見える場合もあるということで、これもまたホラー効果を促進させるうまい演出だ。

 今回出展していたのは、プロトタイプのバージョンで、会話シーンなども含まれておらず、キャラクタの動きもまだおぼつかなかった。発売時期は2003年の第2四半期頃を予定しているということで、開発はこれから本格化するようだ。ちなみに、同社が獲得したのは原作小説のゲーム化権だけで、肖像権の関係からクラリス・スターリング役のジュリアン・ムーアやハンニバル・レクター役のアンソニー・ホプキンスの顔をゲーム内にそのまま使用することはできないということだ(ただし、似せるとはいっていた)。最終的にどういう作品に仕上がるのか楽しみなところだ。

【Hannibal】
ホラー感たっぷりのスクリーンショット。登場キャラクタはすべてダミーで、モデルデータも開発中のもの。いまのところは背景の美しさに注目していただきたい


■ 修道士が神秘的な中世ヨーロッパを辿る旅に出る……
「Neverwinter Nights」を越える大作ファンタジーRPG「Mistmare」

 Arxel Tribeが現在もっとも力を入れてプロモーション展開しているのがファンタジーRPG「Mistmare」だ。一見、中世ヨーロッパをモチーフにした剣と魔法のRPGに見えるが、びっくりさせることにこのゲーム時代設定が'96年という設定なのだ。

 この世界では産業革命が発生せず、文化技術レベルが中世のまま現代を向かえており、その間、ヨーロッパの地図を大きく塗り替える戦争が各地で行なわれ、いつしかヨーロッパは魔法特性を備えた厚いもやで覆われてしまったという設定になっている。

 プレーヤーは修道士Join Isadorとなり、教会から殺人と反キリスト教と思われているひとりの男を捜し出す壮大な旅に出る。旅の途中では、戦争を忌避した人々が静かな生活を送る大都市(アテネ、パリ、ロンドン、アントワープ、アビニョン、ローマ、クラクフ、ストックホルムなど)を通過し、ヨーロッパ全土に出没するモンスターと戦いつつ、さまざまな体験をしていくことになるという。どことなくホラー感を漂わせるところはいかにもフランス産らしいが、プレイしたくてたまらなくなるシナリオ設定といえよう。

 驚かせるのはストーリーだけでなく、ビジュアルやシステムもかなり気合いが入っている。グラフィックは、Lithtech3.2エンジン採用によるフル3Dを実現しており、中世の町並みが綺麗に再現されている。戦闘シーンは修道士らしく魔法による派手な感じで、丁寧なパーティクル処理による魔法エフェクトが実に見事だった。

 一方、ゲームシステムも変わっていて、プレーヤーの性能はInfluences(影響)の値によって決まり、Influencesの数値によって、使用できる武器や魔法、スキルが決定される仕組み。InfluencesにはAgility、Health、Strength、Intelligence、Willpowerがあり、魔法やスキルによっては複数のInfluencesを要求することもあるという。武器や魔法、スキルのバリエーションがそれぞれ数十から数百規模で用意されているため、主人公は固定でもプレーヤーにとってまったくプレイスタイルの異なる冒険が楽しめそう。とにかく風呂敷の大きなRPGだ。発売時期は11月を予定。

【Mistmare】
最新のグラフィックエンジンを使用しているわけではないのだが、丁寧なディテールの積み上げで存在感のある世界を創り出している。戦闘時の派手なパーティクル処理も見事な出来映えだ

□ECTSのホームページ
http://www.ects.com/
□Arxel Tribeのホームページ
http://www.arxeltribe.com/

(2002年8月31日)

[Reported by 中村聖司]

I
【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.