「大乱闘スマッシュブラザーズDX オーケストラコンサート」開催
会場:東京文化会館 大ホール
会場は親子連れをメインとした幅広い客層でほぼ満席状態。ゲームミュージックをベースにした本格的オーケストラのコンサートということで、楽曲もサウンドスタッフが直接オーケストラバージョンにアレンジ。開場直後はごったがえしていたものの、演奏が始まる前には会場は静寂に包まれ、非常に静かに音色に聞き入っていたのが印象的だった。 司会を務めたのは、「スマブラDX」ディレクターの桜井政博氏、そして「星のカービィ」でカービィ役を担当している大本眞基子さん。桜井氏の軽妙な語り口と、「スマブラ」および任天堂ゲームに対する愛情こもったトーク、時折カービィの声で会場を沸かせた大本さんのコンビもコンサートをより興味深いものにしていた。 今回の目玉は、やはり任天堂の歴代の名曲がどうオーケストラアレンジされているか、という点に注目が集まっていたが、いざ始まってみると、「スマブラDX」のBGM中のオーケストラパート演奏を担当した竹本氏、新日本フィルハーモニー交響楽団(別名を大乱闘オーケストラ(仮名)というそうだ)の奏でる緻密、かつ大胆な演奏に会場はぐいぐいと引き込まれていた。竹本氏は、途中のMCでGB版「スーパーマリオランド」に熱中した話を披露。任天堂のゲームとの縁の深さを語ってくれた。ちなみに「スマブラDX」では息子さんに負ける日々という。 また、「スマブラDX」を担当したコンポーザー、酒井省吾氏、池上 正氏、安藤浩和氏らが自らオーケストラアレンジに参加。そしてタクトを振るという趣向も披露された。さらに、ゲストとして「スーパーマリオブラザーズ』シリーズ、「ゼルダの伝説」シリーズの音楽を担当した、任天堂の近藤浩治氏が登場。氏は、「ずーっと楽しいイメージを持ってもらう曲を作るのが一番苦労する」とコメント。25作品に関わった氏の重みのある言葉に、オーディエンスも思わずうなづいていたようだ。
また、桜井氏は、10月ごろに発売予定という「星のカービィ」のゲームボーイアドバンス版の新作「星のカービィ 夢の泉DX」について言及があった。ケーブルを使用した4人同時対戦が可能になっているという。
【演奏曲目】 ●第1部 1.惑星コーネリア SFC版「スターフォックス」より。思わず「懐かしい~」と感慨に浸ってしまった。スリリングでスピード感あふれ、なおかつ壮大な印象、という複合したイメージがうまく生かされたアレンジになっていた。
2.ジャングルガーデン 2曲続けての演奏。それぞれ「ドンキーコング」、「ゼルダの伝説」より。「ジャングルガーデン」では、コミカルなイメージがうまく厚みを増していたと感じられた。「神殿」は安藤氏が非常に苦労し、6バージョン目でOKが出たといういわくつきの楽曲のアレンジ版。「グレートベイ」は震えが来た。リアルタイムに「ゼルダの伝説」を体験した人なら、「これがまさにファンが求めていた『ゼルダ』のBGMだ!」と叫びたくなるような、重厚かつ強烈なアレンジが絶妙。 4.ドクターマリオ 「あの曲をどう料理してくるのか?」と興味しんしん。メインメロディーを木琴が担当。その後バイオリンにチェンジという趣向で、コミカルなイメージは原曲と変わらず前面に押し出されている。だが、後半はゆったりしたフレーズで壮大なイメージを感じさせるものに仕上がっていた。桜井氏は、この曲が「スマブラ」に入った理由として「自分が『ドクターマリオ』の音楽を入れたかったことが理由だ」とMCで語っていた。そして、「後から聞いた話だが」と前置きした上で、この曲を作曲した田中宏和氏(現在は株式会社クリーチャーズに籍を置き、「ちっちゃいエイリアン」を制作したことで知られる)が、「『ドクターマリオ』というのは、戦局が豊かである、つまり、自分がピンチのときがあり、楽なときがあり、攻めているときがあり、守りに徹しているときがある。そんないろんな感じ方があるという点が強みだ。だからいろいろな感じ方ができるような曲作りにした」と語っていたことを挙げ、「『スマブラ』も展開的にそうじゃないかと思っていた。そんなところをなんとなく感じて、偶然ではなかったんだろうなと思った」とMCの最後を締めくくっていた。 5.オリジナルメドレー(オールスター休憩所~フィギュア~How To Play~メニュー~エンディング) 「スマブラDX」におけるオリジナル曲のメドレー。「休憩所」のBGMの原曲は「星のカービィ」のステージ3のBGM。静かな立ち上がりから、徐々にトランペットなどでインパクトを増していく曲構成には圧倒された。 6.夢の泉 「星のカービィ」より。 7.ポケットモンスターメドレー(ポケモンスタジアム~ポケモン亜空間~ポケモンスタジアム金銀) 弦楽器のみ、そこからテンポが上がるとタイミングを同じくしてホーンセクションが参加。そして後半はフルパワー! といった心憎い構成。休憩前を歯切れよく締めくくった曲。 ●第2部 1.オープニング 2.惑星ベノム 「メトロイド」より。「スマブラDX」でアレンジを手がけた酒井省吾氏自らがオーケストラアレンジを手がけ、さらにタクトを振るった。バイオリンの弦を細かく振るわせる独特の効果音的な使い方が印象に残った。 3.ヨッシーストーリー 「スマブラDX」でアレンジを手がけた池上 正氏がオーケストラアレンジ&指揮を担当。池上氏は、MCで「指揮をとって気持ちよかった」と感想を語っていた。 4.ブリンスタ深部~ブリンスタ 同じく「スマブラDX」でアレンジを手がけた安藤浩和氏がオーケストラアレンジし、自らタクトをとった。氏は、「多くの人たちが知っている局をどうアレンジしていけばいいか、考える部分が多かった」と後のMCで開発エピソードを披露してくれた。 5.スマッシュブラザーズ大メドレー(いにしえの王国~いにしえの王国Ⅱ~フラットゾーン~バルーンファイト~ビッグブルー~マッハライダー~ヨースター島~サリアの歌~~スーパーマリオ3~アイシクルマウンテン~ピーチ城) ビッグネームが名を連ねる後半のヤマ場。間にマニアックなセレクトもあり、ファンもよろこんでいたようだ。「いにしえの王国」は「スーパーマリオ」のメインテーマで、ホーンセクションとパーカッションをメインとしたアレンジ。 6.ファイアーエムブレム ディスクメディアで「ファイアーエムブレム」が発売されたら、こんなイメージになるのだろうな、と思わせる重厚なアレンジが堪能できた。 7.グリーングリーンズ 「星のカービィ」より。「カービィ」のメインテーマが見事なアレンジを施され、ホーンセクションをメインとしたマーチとして完成度を高めていた。 8.レインボークルーズ(アンコール曲) 「マリオ64」より。この曲がコールされて、会場内がどよめいていたのが印象に残った。
なお、コンサートの終了後、このコンサートの模様を収録したCDが今秋、株式会社エンターブレインから発売されることが発表となった。
(2002年8月27日) [Reported by 佐伯憲司] |
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