★ PS2ゲームレビュー★
謎めいた三日月島―別名《監獄島》―を舞台に、夏のリゾートに招待された矢島透となって、三日月館での残虐な殺人事件に遭遇するサウンドノベル。プレイ途中に登場する会話の分岐によって物語が様々な展開を見せる他、当初の本格推理ものが終わった後は、超能力もの、陰陽道を題材にしたものなど、舞台は同じでも内容が全く異なるパラレルストーリーが出現するのがポイントだ。一回物語を終えても、フローチャートシステムでストーリーの過去にさかのぼり、「あの時こういう選択をしたらどうなったんだろう?」と探る楽しみもある。物語を数多く味わう楽しさと、凝った映像と素晴らしい音楽とがぎゅっと詰まった、完成度の高いサウンドノベルである。
■ 次々と物語が展開していくアドベンチャーゲーム 「かまいたちの夜2」は、テキストでストーリーを読み進み、時々現れる選択肢によって物語の展開が変化していくタイプのアドベンチャーゲームだ。目で読んでいくテキスト文章と、状況を把握させてイマジネーションを刺激するグラフィック、そして場を盛り上げてプレーヤーを揺さぶる音楽や効果音などが相まって、遊ぶ者を物語の中に引き込んでいく。
ゲーム中、プレーヤーは主人公の矢島透となり、謎の人物に招待された《三日月島》で殺人事件に遭遇する。この殺人事件を軸に、様々な登場人物が入り乱れ、選択肢によって分岐していくストーリーを楽しみながら事件の真相や意外な物語展開の中に飛び込んでいくこととなる。
このゲームが突出しているのが、ひとつのストーリーを最後まで終えると、新たなストーリー分岐が登場し、それまでの物語設定や展開とは全く異なったアナザーストーリーを楽しむことができる点だ。それはエンディングが違うとかいった些末なことではなくて、たとえば本格推理ものだったストーリーが、超能力で事件を探ったり、陰陽五行説を題材にしたホラー物など、ガラリと内容の違うストーリーへと分岐していくのである。 たくさんのエンディングを抱えたひとつの物語が終わると、さらにパラレルワールド的な物語が次々と発生していくのが魅力的なのだ。また、ゲームを進めていくと、すでに終了した物語にも新たなエンディングが登場するなど意外性に満ちており、飽きることなくたっぷり遊び尽くせる内容となっている。 ゲーム制作に各界のクリエーターが参加しているのにも注目したい。過去の記事でお伝えしたように、脚本担当は作家の我孫子武丸氏、田中啓文氏、牧野修氏であるし、CG制作には「ガジェット」の庄野晴彦氏が参加しており、オープニングやエンディング、そしてゲーム中のここぞという時に東儀秀樹氏による篳篥(ひちりき)の音が流れ、ゲーム内の音楽にパッパラー河合氏が参加するなど非常に豪華なメンバーが集められている。
■ 監獄島の三日月館で起こった殺人
物語の舞台となるのは洋上に浮かぶ《三日月島》。三日月の形をした孤島だが、明治時代に地元の有力者が私設監獄を作り、そのため監獄島と呼ばれている。バケーションを楽しんでほしいという招待を受けてやってきた主人公・透や他の人々が泊まるのは《三日月館》。ちょうど視力検査のCのように丸い形をした不思議な屋敷なのだ。 ここは元々私設監獄だった建物のため、監視塔や窓のない部屋などが残されている。謎の多い陰鬱な島と館、それにいつまでも姿を現さない招待主に、招かれた人々は不安を覚える。
そんな中で、客のひとりが殺されるという事件が起こってしまうのだ。事件が起こった部屋は鍵がかかっており、窓の下には鋭利な刃物が突き立つ堀で落ちたらひとたまりもない。しかも、事件当日は50年に一度起こる暴風の日“かまいたちの夜”であることから館自体が閉め切られていた。そして、人々が右往左往するうちに第2の殺人が。地元に伝わるわらべ唄になぞらえた殺人が起こる中で、いつ、なぜ、どんな風に殺人が行なわれたのかに迫っていくことになる。
■ 続々と展開していく物語世界
アナザー世界では、最初の推理篇には名前だけしか出てこなかった場所に行けるようになったり、これまで登場したのとは異なった名前や内容に変化したものがあったりと、「ええっ、こんなことになっちゃうの!?」といった驚きも味わえる。 例えば、明治時代に建てられた館やわらべ唄になぞらえた殺人などで、何か横溝正史でも思い出させるような三日月島だったのが、他のストーリーの舞台となった時、陽光きらめく楽しげなリゾートになったり、探検しがいのある謎めいた島になったりと様々な顔を持つようになる。最初に推理もので登場した三日月島を知っているだけに、まるで違った雰囲気のものになった時のギャップと意外性が爽快だ。 プレイ中は特殊な部分を除けばいつでもフローチャートで過去にさかのぼり、別の選択肢を選べるようになっているので、ストーリーを戻って違う展開を探る楽しさと、全く異なる物語世界を遊ぶ意外性との両方が味わえる。また、エンディングリストでゲーム中に見たエンディングを確認できるため、すべてのエンディングを埋めるべく繰り返しプレイしてしまうだろう。 サウンドノベルというと、テキストに添えもの的なグラフィックをつけただけというものを思い浮かべるかもしれないが、「かまいたちの夜2」はそういったものよりはるかにゲームとしてのクオリティが高い。分岐していく内容豊かなマルチシナリオはもちろん、3D化されたキャラクタや息づいているようなリアリティあるグラフィック、場面を想像させてくれるような音楽とが一体となり、物語に入り込む楽しさを盛り上げてくれる。
ある時は殺人の謎解きを、ある時はコメディタッチのショートストーリーを、ある時はパズルアドベンチャー的冒険を。一度プレイし始めたら、「かまいたちの夜2」に内包された物語の数々から抜け出せなくなるだろう。
□チュンソフトのホームページ (2002年8月2日)
[Reported by 西尾ゆき] |
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