★ PCゲームレビュー★
「Civilization III」は、斧を振りかざして戦う古代からICBMが飛び交う現代までの歴史を、都市管理をベースにしてシミュレートしたターン制ストラテジーだ。プレーヤーはたった一人の開拓者から出発して都市を建設し、国家を起こす。都市を管理、育成しながら次第に遠くの土地へと支配地域を広げていく。最終目的は、軍事、文化、外交、科学といった要素のどれかひとつで頂点を極めること。多様なプレイスタイルとそれを許容する奥深いゲームシステムこそが「Civilization III」の醍醐味だ。
■ ターンベースストラテジーゲーム「Civilization」とは? いきなり踏み込んだ説明に入る前に、まずは簡単にゲーム内容を紹介しておこう。基本的なゲームの進め方は、プレーヤーが最初に建てた都市を拠点に資源を効率よく回収し、集めた資源で軍事、文化、外交、科学といった要素を育成させていくというものだ。 「Civilization」における都市は食料、資材、お金が周囲の土地から集まる集積ターミナルとしての役目を備えている。具体的には食料を集めれば都市の人口が増えて数多くの労働力を投入することができ、それによってより多くの資材やお金が集められる。資材をより多く集めれば都市を改善する施設や戦闘ユニットを早く生産できる。お金を多く集めれば、科学開発に投資してより先進の技術で勝負することができるというわけだ。 「Civilization」では、食料、資材、お金、この3種類をバランスよく収集しながら、他文明と戦争や外交で渡り合わなければならない。加えて忘れてならないのが都市の住民達への対処だ。彼らは実にわがままで、人口が増えすぎたり、自分達を慰めてくれる娯楽や宗教がないとすぐに不平を言い出す。そのための都市内での施設建設が、戦争と同じくらい重要な仕事になっている。 彼ら住民達の幸福を保ちながら、最終的には、「世界征服」による軍事的勝利、科学をより進歩させて地球に一番近いとされている恒星「アルファ・ケンタウリ」への到達を目標にした科学的勝利、国際連合を立ち上げて投票により事務総長に就任することで達成する平和的勝利のどれかひとつに到達するのが目標だ。
平和主義、軍国主義、などなどプレーヤーの性格がプレイスタイルに直結し、プレイするたびにまったく違ったゲームが楽しめる。どんなプレイをしていても、時には愕然となるような文明の格差に、貢物などをして耐え忍ばなければならない時もあるだろう。が、どんなに厳しい時でもピラミッドや万里の長城を初めとした数々の「七不思議」と呼ばれる巨大プロジェクトの成功で、一気に巻き返しが図れる。そんな歴史の必然と偶然を見事にシミュレートし、プレイスタイルの差をも飲み込む包容力を備えたストラテジーゲームが「Civilization」なのだ。
■ 「Civilization III」の新たなゲーム世界の魅力
「Civ3」では前作3つだった勝利条件にさらにもう1つ加えられている。それが文化による勝利だ。今回から新しい要素として登場する「文化」という概念は、図書館、コロシアム、七不思議などの純粋に文化的な建造物(兵舎や市場などは除かれる)の有無、より先進的な政治体制などがそれぞれポイントとして評価される。文化ポイントが高くなると、労働者が働ける都市の中心部を越えて都市圏が広がっていき、これが事実上の国境となる。 また文化は、他国の都市を占領した場合に、時間の経過で自国文明に同化していく度合いや、対外交渉などにも影響を与えるようになっている。文明の差があまりに大きい場合には、周囲にある他文明の都市をも寝返らせてしまうのだ。文化的勝利とは、ある規定のレベルまで文化ポイントを獲得することで勝利することができる今回の最重要要素だ。 今回プレーヤーが選択できる文明は16種類。名前ばかりで中身はほとんど変わらなかった従来作と異なり、それぞれが決まった特徴を持つように設定されている。まず文明の特性。軍事志向、勤勉、商業志向などといったもので、それぞれの特性に合わせたボーナスが与えられている。
またこれまでランダム設定だった初期技術は文明によりあらかじめ決まっている。さらに文明はそれぞれ独自の特殊ユニットを1つ持っており、同レベルのユニットよりもアドバンテージが与えられている。特殊ユニットがある時代こそが領土を拡張するチャンスと心得てガンガン生産していくのが有利にゲームを進めるコツだ。
ユニット全般の変更としては、異なる文明のユニット同士が移動を制限し合う概念だったZOCがなくなったことが大きい。また新しく視界の概念が生まれた。視界が1のユニットでも高いところ(山や丘陵)に登ることで2タイル四方を見渡せるようになった。このためゲーム初期における偵察がしやすくなった。 またユニットの所属都市システムは廃止になり、このためユニットが都市外に出ることで都市の民が不幸になるというシステムは、「厭戦感情」という、戦争時に民が不幸になる別のシステムに集約された。市民が戦争を嫌がるのは当然のことで、ゲームではこれが市民の不満という形で現れる。厭戦感情は特に共和制と民主主義で顕著だが、古代から因縁のある相手には民衆が協力的になるという、現実の国際関係を思わせるような部分もある。 またゲームを有利に進めるための大きな要素である「七不思議」には、「小七不思議」と呼ばれる概念が加わった。世界に一つしか存在できない七不思議と違い、小七不思議は一文明に1つ存在できるようになっている。七不思議は文化的価値も極めて高いので、敵を文化的に威圧するためにも、建造はできれば国境に近いほうがいいだろう。余談だが、昔からのプレーヤーは七不思議建造直後のCGムービーがなくなってしまったのでちょっと寂しく感じるかもしれない。 時代遅れになったユニットは消滅するシステムも見直され、お金を支払うことでユニットのアップグレードができるようになっている。ちなみに前作ではアップグレードが無料になる七不思議「ダヴィンチの工房」が大人気だったが、「Civ3」では通常の半額でアップグレードできるという効果になっている。
■ 武者震いのゲーム開始からいきなり変化
ゲーム初期からどんどん都市を拡張し、労働者ユニットでガンガン開拓、道路建設をすることで軍事、経済活動がゲーム初期から活発に行なわれる。そのため戦車兵や鉄剣士、槍兵などが縦横無尽に駆け抜ける。これまでイマイチ動かなかったゲーム初期から敵との駆け引きを存分に味わえるようになっているわけだ。 開拓者のコストが安くなった一方で、開拓者のユニット作成時には都市の人口からふたつ分(労働者ユニットはひとつ)減るようになっている。逆にいらなくなった開拓者と労働者のユニットは、都市で「定住」コマンドを選択すると都市の人口が増えるようになっているのも知っておきたい。極端な人口の差があるときに移住を進めることもできるので便利だ。だが、移動の時には気をつけたい。なお、Civ3では開拓者と労働者は攻撃されると「捕獲」されてしまい、敵の物になってしまうのだ。 逆に領内をうろついている敵の開拓者や労働者を捕らえたときにはどうするか。都市に定住させるといった方法も考えられるが、そううまくはいかない。「Civ3」にはユニットや都市の住人に「国籍」というものが導入され、自国の都市に異民族を定住させても同化せず、離散してしまうことがあるのだ。
国籍の例として、敵国の都市を自分のものとした場合に関しても書いておこう。敵都市の占領時には住民が反感を持ち、都市内部にレジスタンスが形成される。レジスタンスは軍事ユニットを駐屯させることで次第に沈静化していくが、住民が多い場合にはレジスタンスも多くなり、場合によっては都市自体が敵の文明に寝返ったりする可能性も秘めている。 ■ 天然資源のシステムはゲーム中一番の変化
「Civ3」になって、マップ上に散らばっている天然資源はボーナス資源、贅沢資源、戦略資源の3種類に分類されるようになった。ボーナス資源は鹿や牛といったもので「Civ2」での扱いと同じ。資源のあるタイルで市民を働かせることで効力を発揮する。重要なのは残りのふたつだ。贅沢資源には、宝石や毛皮といったものが含まれ、タイルの生産増加とともに市民の幸福度を増加させるほか、貿易品として輸出することも可能だ。贅沢資源はなぜ必要かというと、これのおかげで市民を幸福にするための施設を建てなくても、市民が幸福なままでいられるからだ。だから贅沢資源が少ないと市民の幸福アップに手間取り進化が遅くなってしまうのだ。 そして戦略資源には、馬や鉄、石油など、軍事ユニットの生産に関わってくる資源だ。例えば、馬がなければ騎馬ユニットは作れないし、鉄がなければカノン砲や甲鉄艦ユニットも生産できない。もし戦略資源がなく、時代に乗り遅れると最新の技術があっても、ユニットを製造することさえできない。
戦略資源がないとわかったときの焦りは尋常ではない。意気揚揚と戦争に出かけた大エジプトが、ヒッタイトに惨敗したのはエジプトになかった鉄器のためと言われている。この例をあげるまでもなく、いきなり青銅器しか持っていない自文明に鉄を使った他文明のユニットが現れたとき、それはまさに帝国存亡の危機なのだ。 ■ 外交は天然資源のシステムと切り離せない関係に
ただ、貿易をするには他文明の首都と通じる交通網がなければならない。その上で外交交渉を行ない、20ターンという限定つきで貿易が成立することになる。どんなに相手が小国であっても、自分にない資源を持っている国とは仲良くしておいたほうが特だ。 外交に比重が傾いてきたことにより、どんなに軍事志向の人でも否応無しに外交に触れていかなければならなくなった。それとともに、これまで影の薄かった大使館の役割も大きく変化している。「Civ3」では大使館を設立するために古代の進歩である「筆記」を発見し、他文明と交流がありさえすれば、設立できるようになっている。そうして設立した大使館は、平和条約以上の関係である軍事同盟、相互通行条約、第三国に対する貿易からの締め出しなどもできる。将来に渡って見込みのある国とは積極的に交流をして強固なパートナーシップを築いておこう。
またこれまでユニットの役目だった都市の調査や技術を盗むといったスパイ行為も大使館を通して行なわれることになった。また大使館より強力な諜報機関を設立すればスパイを送り込み、都市の破壊工作や世界地図を盗むといったさらなるスパイ活動が展開できる。ここまで書けばおわかりになると思うが、一部で大人気だったスパイユニットは今作ではカットされている。とはいえ、交渉の笑顔の下にナイフを隠しつつ、冷徹に戦略を決めていく楽しさはそのままなので問題なしである。 ■ 一触即発の大航海時代!! 新システムの導入で現実味の増した戦闘
戦闘では、ユニットが重なっていても(スタック)基本的には1対1の戦い。ユニットに設定された攻撃力、防御力、兵の質、地形防御、川の有無などからなる計算でダメージを与えたかどうかが判定される。交互に攻撃をしあいHPがなくなったら負け。これは前作と同じだ。だが負けてもスタックしていた自軍が全て消滅することはなくなった。 通常ユニットは防御、攻撃の役割が一層明確になった。うまく組み合わせて攻防をしないと戦闘で全く勝てずイライラが募るばかりだろう。古代では主な攻撃ユニットとして戦車兵があったが、これはエジプトの特殊ユニットになった。そのため攻撃ユニットは主に弓兵にシフトしている。攻撃の弓兵、防御の槍兵と覚えておけばまず問題はない。 騎馬兵もヒットアンドアウェイができるユニットとして生まれ変わった。どういうことかというと、Civilizationシリーズでは一旦戦闘が始まると、どちらかが死ぬまではやめることができない。が、騎馬ユニットは移動力が残っていると、自分のHPが残り1になると戦いをやめて離脱ができるのだ。騎馬ユニットで敵のHPを極限まで減らし、その後で敵と同クラスの攻撃ユニットが攻撃を仕掛ければ、最小限のダメージで敵を倒す可能性が上がるというわけである。 カタパルトやカノン砲などの砲撃ユニットには射程があり、砲撃という攻撃方法で、反撃を受けずに攻撃ができる(倒してしまうことはできない)。が、攻撃したタイルにいるユニットや施設などをことごとく攻撃目標にするので、都市を攻撃した場合、何が壊れるかわからない。また砲撃ユニットは攻撃されると開拓者や労働者などと同じく「捕獲」され、敵のものになってしまうので、その取り扱いには十分注意しよう。 戦闘ユニット自体のシステムも変化した。戦闘ユニットは徴募兵、一般兵、古参兵、精鋭兵にわけられ、どんな戦闘ユニットでも戦って勝つと、より強い兵へと成長する可能性を持っている。もちろん同じユニット同士が戦う場合、一般兵と精鋭兵では精鋭兵の方が断然に強い。さらに「Civ3」が変わっているのはここからだ。精鋭兵が戦いに勝利すると、稀に「リーダー」と呼ばれる極めて特殊な状態のユニットが登場することがある。この「リーダー」こそが「Civ3」最大の肝だ。
■ 驚異のパワーを秘めたリーダーの降臨 「Civilization III」は文句なしのシリーズ最高傑作!
このリーダーが登場すればしめたものだ。リーダーは古代、中世において唯一、ユニットの集合体である「軍隊」を編成したり、七不思議の建設などの大国家プロジェクトを一瞬で成し遂げることができる力を持つ、まさに驚異的なパワーを持ったユニット。とはいってもリーダーの用途は1回に限られるのがこのゲームのシビアなところだ。軍隊編成か、生産の手助けかどちらか一種類を選択すると、リーダーは消えてしまう。 そして新しく登場した「軍隊」システムが戦闘を大きく左右することになる。ユニットは「軍隊」を組むことで、複数のユニットがチームになり複数対1の戦いを展開できるようになった。軍隊のHPは集合したユニット(最大3つまで)の合計となるため、攻城戦でもない限りはっきり言って無敵。アレキサンダー大王のごとく世界を荒らし回ることができる。ところが「軍隊」を組むにはリーダーがいるか、近世に登場する小七不思議の一つ「士官学校」がある都市でしか組むことができない。「Civ3」の戦闘ではこの「軍隊」をいかに運用するかが鍵となるだろう。 最後に今回「Civ3」をプレイして、前作ほどの完成されたシステムをよくぞここまで再編成したものだと感心することしきりだった。唯一残念だったのはマルチプレイが一切排除されてしまったことだ。時間が許されるなら人との対戦をやってみたいと思うのは私だけではあるまい。とはいえ、リニューアルといってもいいような変化をしながら、しかもより忠実に歴史をシミュレートしているのだから、Sid Meiyerの手腕の凄さを改めて思い知った。 またシステム以上にプレイしやすさにも十分以上に配慮がなされているのが嬉しかった。初心者を導くガイドラインとなるチュートリアルはCivilization特有の概念が山盛りだが、わからない言葉をクリックするだけで百科事典「シヴィロペディア」を簡単に参照できる。その「シヴィロペディア」もユニットや改善施設などの分野別に整理がなされ、五十音の索引もついて気軽にアクセスできるようになっている。こうした質の良いローカライズにも非常に好感が持てた。「Civ3」をやったらもう「Civ2」には戻れない!! そんな大秀作といっていいだろう。
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□サイバーフロントのホームページ
[Reported by 嶋村智行] |
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