レッド・エンタテインメントがセガグループの一員に |
セガグループの一員となったが、これからも他社とのコラボレーションは継続。良い意味でレッド・エンタテインメントの暴れん坊ぶりを発揮していきたいと語る広井王子氏 |
レッド・エンタテインメント(以下、レッド)の会長職を務める広井王子氏は「これは、前向きな考え方で決めたこと」と前置きして、セガ傘下となる理由を説明。同氏によれば「レッド自体、会社をやることが目的ではなく、キャラクタが大好きなヤツが集まっていた集団。そろそろ会社経営というものに飽きてきたと言ってもいい」と、広井節を披露。また、「若い頃の日記には21世紀になったら引退と書いていた。現実はそう簡単に引退できないので会長職をしているが、(今後は)できる限り若い才能に任せたいという気持ちがある。これからのオリジナルキャラクタは、世界に通じるものを作っていくことが重要。そのためにセガの持つブランド力、資金力は必要になる。これまでも、そうした環境を生かせる若手を育ててきたつもりだ」と続けた。
さらにセガ傘下となった今後も、他社とのコラボレーションによる作品づくりは継続していくことを表明。「例えて言うならいままでは傭兵部隊としてやってきたわけだが、これからは正規軍そして遊軍として活動する」と締めくくった。
レッド・エンタテインメントが、セガがまだ弱い部分、(オリジナルキャラクタを使った)企画力、プロデュース、(外部のアーチストや才能との)コラボレーションを強化していくカギになると説明する香山代表取締役兼COO |
香山氏は発表をこのタイミングとした理由として、セガにとってドリームキャストに対する最後の大きな投資である「サクラ大戦4」の発売が3月21日なので、それ以降という考えがあったことをあげた。また、セガのプライベートイベントである「GameJam2」という場は、ハードウェア事業の撤退宣言から一年が経過し、この場からセガの新しいステージが始まるということを意味するため、この機会がベストと判断したということだ。あわせて、レッド・エンタテインメントのグループ化で、現在セガが弱いと感じている部分、いわゆる(オリジナルキャラクタを中心とした)企画、プロデュース、そして(外部のアーチストや才能との)コラボレーションを、強化していく意向を示している。
香山氏はまた、フィアット傘下にいながら個性的な活動を継続しているフェラーリを例に挙げ、セガグループのなかのレッドにも同様のスタイルで臨んで欲しいと希望を述べている。ちなみに、株式の取得にともない、レッドはセガから三人の役員を受け入れることになったが、開発にかかわる立場で入っているのは香山氏だけで、他の役員は経理、財務、法務などの部分を担当するという。こうした面でもレッドの独立性を維持し、作品づくりに全力を注げる態勢をサポートしていくということだ。
同時に、セガとレッド・エンタテインメントの新プロジェクトの一端が明かされた。真っ先に思い浮かぶのはPS2での展開が決まっている「サクラ大戦」シリーズだが、これについてはドリームキャストでの完結編にあたる「サクラ大戦4」が発売されたばかりとあって、「然るべき時期に(開発スタジオである)オーバーワークスをまじえて大きな発表を行なう」とコメントするにとどまった。
具体的なタイトルとしてあげられたのは2本。ひとつは、内藤泰弘氏によるトライガンの世界観をマルチプレーヤーゲームとする「THE PLANET GUN SMOKE TRIGUN」。これはスマイルビットによる制作が決まっている。もうひとつは、3D武器格闘ゲームと明かされた。こちらの開発スタジオはまだ決まっていないというコメントだったが、敢えて「(格闘における)世界水準の高い開発力を持つところを……」という表現を使うあたり、SEGA-AM2を示唆していると推測される。
ちなみに、会見の冒頭で発表された「ガングレイヴ」(詳細は別記事参照)の国内におけるパブリシャーはレッド・エンタテインメントとなるが、海外ではセガのブランドで展開していくことになる模様だ。
■ 他社とのコラボレーションは、既存タイトルに加えて新プロジェクトも始動
セガグループとなった新生レッド・エンタテインメントの各プロジェクトについては、名越康晃社長から説明があった。まず「ガングレイヴ」については、はじめてレッドがパブリシャーとしてブランド展開していくこともあり、今まで以上に積極的なメディアミックス戦略を進めていく方針を示した。
またスライドを使って、親会社にあたるセガそして開発スタジオとの関係を説明。今回の資本参加を契機に、セガグループのキャラクタビジネスに積極的に関与していく方針を明らかにした。そのいっぽうで「これまで20年近くさまざまなメディアに対してキャラクタを発信してきた。こうした方向性は継続していき、セガからは独立した形でいままで以上に(他社との)コラボレーションを行なっていく」と意欲も見せている。
具体的には、すでに発表されている高橋留美子氏のキャラクタによる「萌えよ剣」(エンターブレインより発売予定)は、若干遅れてはいるものの順調に作業が進んでいるとコメント。他に、詳細はまったく明らかにしなかったがXboxに向けたタイトルをひとつ、そして「サクラ大戦」をはじめ「ガングレイヴ」にも参加している藤島康介氏のまったく新しいキャラクタを使った、新しいゲームソフトのプロジェクトも始まっていることを明らかにした。このタイトルについては、すでに映像メディアをはじめ関連グッズなど幅広い展開が決まっているという。
香山氏の紹介にもあった、セガとの新プロジェクトは、まず3D武器格闘ゲーム「魔群血風録」のタイトルロゴのみが公開された。やはり開発スタジオは未定ということだったが、名越氏も「世界最高の技術」という表現を使うあたり、SEGA-AM2を強く意識したコメントと受け取ることができる。もう一点,まだ明らかにできない部分としては「ここにいる皆が、あっとおどろくような作家に参加してもらっており、魅力的なキャラクタが登場する」ということだ。
もう一作「THE PLANET GUN SMOKE TRIGUN」は、内藤泰弘氏による「トライガン」の世界観をテーマに、現状ではイメージ映像と断片的なコメントからしか類推できないが、西部劇風のマルチプレーヤーゲームといった内容になる模様である。
「THE PLANET GUN SMOKE TRIGUN」に対して、開発スタジオとなるスマイルビットの川越隆幸氏は「PCとドリームキャストで培ってきたネットワークのノウハウ、そしてJSRFのマンガディメンジョン技術に、内藤先生のキャラクターと世界観が加わる。これは、良い意味での戦いになる」とコメント。それに対して内藤氏は、「(レッドから)作りたいものを作らせてやる、と言われた。トライガンはもう7年もやっているが、自分自身がその世界に没頭するために描き続けているようなもの。ゲームでは、自分の描いているものをさらに超えるような作品を期待している」と応じた。
なお「魔群血風録」と「THE PLANET GUN SMOKE TRIGUN」のプラットフォームや、ゲーム内容の詳細については、現時点で明かされていない。内藤氏とレッドのコラボレーションで制作されるもうひとつのタイトル「ガングレイヴ」については、別記事で詳細をお届けする。
新生レッド・エンタテインメントの今後の展開と、新プロジェクトを紹介する名越康晃取締役社長 | セガと新生レッド・エンタテインメント、そして開発スタジオとの関係を表すスライド。キャラクタビジネスを各開発スタジオと一緒に展開していくという | こちらは、漫画家やアーチストなどとレッドが、多彩にメディアミックスを展開していく方向性を紹介したスライド |
(2002年3月30日)
[Reported by 矢作晃]
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