★ Xboxゲームレビュー ★
■ 圧倒的グラフィッククオリティ 「DOA3」はとにかく、絵がすごい。なによりパッと見て、背景の緻密さ、その空間の広さには感心してしまう。ハードウェアの凄さは当然のことながら、Xboxで登場しているソフトは数多くあれど、このクオリティでD2(480P)対応、ワイド画面にもフル対応しており、「FOREST」の木々の葉の表現、木漏れ日、そして「SNOW」の雪の煙や水、「DOATEC HK」のガラスの破片や「ICE CAVE」の氷柱の砕け方の表現など、細かなものが集まった“空気感”や、「2」で見せつけられた広大なステージが、さらに押し出しを強めている。壁の側で敵を吹き飛ばして壊してみれば、そのすごさが体感できるだろう。ハードパワーの恩恵があるとはいえ、プラットフォームの出だしにこれだけのクオリティのものを用意できるテクモの技術力はさすが。コロシアム然としたところあり、城あり、海岸ありと前作を超えるバリエーションのステージだが、よく見ると、格闘ゲームの先達である「バーチャファイター4」、「鉄拳4」に対する対抗心も見える。「AQUA PALACE」、「BEACH」、「X OCTAGON」などに顕著だろう。プラットフォームの違いがあるため杓子定規で語ることはできないが、「今、コンシューママシンで最高の映像を!」 という意気込みは評価できるポイントといえるだろう。
だが、前作から取り入れられたスリップ、壁の爆発などのデンジャーシステムは、「DOATEC HK」ステージのネオンへの激突や、ガラスの破壊などの表現の細かさは「ここまでやるか」と思うが、「これは新しい」と思うような斬新さを感じなかった。ここまでの映像を造りだした開発陣の技術力には頭が下がるのだが……。「DOA2」でやりたかったことが「3」で完成度を増した、という見方が正しいのか、それとも、受け手である自分が贅沢になっただけなのだろうか? ちなみに、落下したときに受けるダメージによって「2」ではどんなにライフが残り少なくても敗北することはなかったが、「3」では落下時にライフが0になると1本先取されることになるのは個人的には納得できた。ビルの高みから落ちてなんで負けないの? という疑問はこれで解消されたし、リングアウトの危険性をはらみながらの緊張感あるプレイはこれこそ本来の姿といえよう。
■ “クリティカル”をめぐる駆け引きが「DOA」らしさ
打撃技の新要素としては、“ガード崩し”技が追加されたこと。攻撃ボタンを押しっぱなしにすることでタイミングをずらすことができるようになった技や、いくつかの打撃技はガードさせることで相手の体勢を崩すことができる。だが、圧倒的有利な状況にまではもちこめないので、起き上がりなど相手がガードで固まりそうなところに使う、というのが主な使い方になるだろう。 ホールド技においては、「3」では通常のホールドが「2」の家庭用版と同じく、1方向ボタン+F(「DOA」の場合、Freeの略でFボタン)で可能となったこと。また、ホールドする技の分類も、上、中、下段の3種類でよく、中段のパンチ、キックの区別はなくなった。レイファンやバイマンなど、幾人かのキャラクタには、2方向入力+Fという“エキスパートホールド”があり、ダメージや技後の有利度が高いものが備わっている。 投げ技に関しては、レオンやティナ、バースなど空中にいる相手をキャッチする“空中投げ”が追加されたキャラクタがいる。ダウン状態の相手をつかむダウン投げも使い手が増えている。 「DOA」が他の格闘ゲームと違う点は、“クリティカル”、いわゆる“よろけ”状態をめぐる駆け引きにほかならない。このゲームでは、ノーマルヒット、カウンターヒットそれぞれの条件によって、また、水や氷の上などのスリップ地帯で打撃技を食らうと、“クリティカル”状態が頻繁に起こる。クリティカル状態の回復は基本的にホールドでしか行なえない。今作で追加された“ガード崩し技”も、クリティカル技に属している。一度クリティカル状態になってしまうと、大概の場合、その後来る打撃と投げをどう凌ぐか、どのタイミングでホールドするかがポイントになってくる。クリティカル持続時間は技にもよるが、この駆け引きこそがこのゲームのキモになる。 クリティカル中はカウンター扱いとなり、同じ技を2回続けて当てたり(PPからPPなどは3発目のPは2発めのPと違うので条件にはあてはまらない)、一定量のダメージの攻撃を当てるとダウンするので、ここから、
といった感じの攻めと受けのロジックをリアルタイムでこなせるようになるには、ある程度の訓練が必要となる。ハイスピードで行なわれるので、最初はワケがわからないと思われるが、ホールドを恐れず技を繰り出していく、投げを怖がらずホールドを出すなどして感触を掴んでいくまでが、「DOA」らしさを体感するまでの多少高い壁になっていることは否めない。中段攻撃対投げという構図からいかに抜け出すか、がこのゲームを楽しめる分岐点になっているだろう。忘れてはならないのは、攻め側は下段攻撃でもダウンしない技も多く、見きられるとツライがあえて下段攻撃を置く選択もあるし、投げを効果的に使えるチャンスも多いということ。ここまでは「DOA」の伝統でもある。 さらに、壁に垂直に近い角度で相手を吹き飛ばした場合、「3」からはさらに追撃できるようになっている。この状態もクリティカルになっており、やられた側はホールドで回復でき、攻撃側は次のダウンまで追撃できる駆け引きの頻度が上がっているのはおもしろい。
■ 日本版はさらにパワーアップし、駆け引きの選択肢が増えている 北米で先行発売されたこの作品だが、日本版ではさらに新技、コスチューム、オープニングムービーが追加されている。個人的に気になったのは新技と、各技の調整具合だ。日本版は基本的に攻撃を「避ける」シチュエーションが追加されている。フリーステップの横移動で回避できる攻撃が増え、横移動技(横移動中に攻撃ボタン)でかわしながらの攻撃などに実用度が上がっているものが多い。ジャン・リーのスピニングドラゴン(↑↑or↓↓P)などは、相手の攻撃をかわして反撃が可能となっている。どうやら、横移動技を発動した時点で、相手の技のホーミングが切れるようになっているようだ。 前作ではジャン・リーのドラゴンキックなど、空中判定になる技の空中部分においてホーミング(追尾)性能がなかったものをフリーステップで回避して背後を取るぐらいしか「かわす」ということは難しかったが、今作のそれは起き上がりなどに回り込みながら攻撃することもできるなど、十分実用レベルに達していると思える。ガード後のスキ次第では、次に出の遅い技が来た場合など、軸移動技で背後を取れるシチュエーションは確実に増えている。ただ、壁などの位置関係によっては回り込んでも攻撃を食らってしまうこともあるので、状況を鑑みて使わないと効果的とはいえないが。 また、中段攻撃で判定の大きな技をうまく重ねると、たとえ中段起き蹴りであっても起き上がり蹴りを潰せることが増えたような気がする。壁ダウン時の追い打ちの追加も含めて、このゲームにおいての「ダウンすることによる危険度」は確実に上がっている。受け身をきちんと取らないと、厳しい戦いになる。 逆にダウンさせた側にもちょっと気をつけなければならないポイントがあると感じさせられたのは、壁に激突してダウンした後、相手が横移動を選択した場合、その起き上がりに投げを重ねたり打撃を重ねるのが速いと、あさっての方向に(相手が元いた位置に向かって)技を仕掛けてしまうことがあるということだ。
■ 遊べるモードは多いが……
「SURVIVAL」モードは、おそらく「DOA3」の中では1人でプレイするモードの中で最も長く遊べると思えるモードで、こちらのライフが0になるまで、次から次と対戦相手が登場するというもの。こちらのライフ回復は、敵を1人倒すことで一定量が回復するほか、アイテムによって賄われる(アイテムには得点アイテムもある)。このモードで「TAG BATTLE」を選択すると、やられそうになると相手もタッグチェンジしてくるので非常に手強くなっている。 「TAG BATTLE」は、2人のキャラクタを交代で操り、待機している側のキャラは徐々に体力を回復できる。P+K+Fというボタン操作で交代できるが、攻撃がヒットしている間に交代すると、通常と異なりスキなく交代が可能。これを利用すると、コンボヒット数が飛躍的に伸びたり、通常はヒットしてもあまりうまみのない技をキャンセルして交代させてクリティカル持続を狙えたりする点がおもしろい。通常の連携ではあり得ない技のつなぎも可能なので、慣れないうちは頭が混乱するだろうが、ぜひプレイしてみてもらいたい。 「SURVIVAL」では、敵を壁に激突させて爆発を起こすと、“DANGER REACH”というボーナスタイムになる。一定の時間内にヒットしたコンボや投げ技にはボーナス得点が付くほか、アイテムの点数が倍になる。また、“DANGER REACH”中に再び相手を壁に激突させて爆発を起こすと“DOUBLE REACH”となり、より得点効率がアップする。これらの特典を狙ってコンボを叩き込みたいところだが、「DOA」の伝統ともいえるCPUの学習能力のおかげで、同じ連携を入れているとあっさりとホールドされてしまう。別の連携だと思っていても、攻撃属性が同じ順番だとほとんど返されてしまうので、技を振り分けて使いこなす訓練にはなるが、多少難易度は高いのではないかと感じさせる。 CPUで練習したい人は、「STORY」モードの序盤などはこちらのホールドに反応して技をわざと出してくれるし、「SPARRING」モードで相手にコンボを出させてホールドの練習をしてから「SURVIVAL」モードに取り組むといいだろう。「SPARRING」モードは、CPUの行動を2パターン選択でき、技表やダメージ量表示、コンボ表示など充実しているのだが、一点、攻撃判定が表示されないという点のみが非常にもったいないと感じた。実地に試してみればいいと言われればそれまでだが、技属性が見切りにくい技も多いため、これはぜひ技表やヒット時のダメージ表示などに付加して表示してほしかった。属性がわかったからといって即ネタバレ的要素になるとは考えにくいし……。
■ コスチュームの追加は……
ただ、オマケの要素がこれ+αであるというのは、個人的にはちょっと不満。短期間での開発で、実際のところ新しい要素を入れにくかったのであろうことは推測できるが、初代「DOA」から続いてきたコスチュームの要素は、正直そろそろお腹がいっぱいになってきた感じがなきにしもあらず、なのだ。集める要素といえば、「HARD・CORE」にあった「SURVIVAL」でゲットしたアイテムを表示してくれるアイテム一覧がなくなっていたり、多少物寂しさを感じてしまった。 対戦格闘というジャンルは、キャラクタやシステムにいろんな仕掛けがあり、十分遊びつくすにはかなりのボリュームのデータが仕込まれていることはわかっていても、そろそろ「脱コスチューム」とまではいわないが、「DOA3」のエンジンを活用した「これはおもしろい」という新たな遊びを提案してほしかった、というのはやはり贅沢な考えなのだろうか?
しばらく遊んでいたが、北米版より日本版はまちがいなくパワーアップしていて、見た目も中身も充実している。480P対応モニタで見た「DOA3」は間違いなく家庭用対戦格闘の中でナンバー1の画質だと思う。「3」はシリーズの持つ要素の枝葉をグーッと引き伸ばしてみた、という感じがする。新しさを期待した人には多少肩すかしかと思うが、「DOA」のひとつの完成形、といえばいいのだろうか。 あと、ジョイスティックがソフト発売に間に合わなかったのは残念。「TAG BATTLE」ではコマンド入力の難易度がグッと上がるので、ぜひジョイスティックでプレイしたかった。
(c)TECMO,LTD.Team NINJA 2001,2002
□テクモのホームページ (2002年3月11日) [Reported by 佐伯憲司] |
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