★ PCゲームパーツレビュー ★
キーボードやマウスを始めとしたパソコンを操作するための入力機器。これらは人がパソコンに触れるときに必ず触らなければならない機器ということで、文章を書くことが多い方はキーボードに、イラストなどを描く方はマウスやタブレットなどのポインティングデバイスに並々ならぬこだわりがあることと思う。それと同じようにPCゲーム、特にFPSを中心としたゲームを楽しむ、というより極めようとしている人間のこだわりというのは、とてつもないものだ。 「弘法筆を選ばす」とも言うが、連日放送されるオリンピック特番を見てもわかるように、世界のトップアスリートたちは記録を出すためにシューズや会場ステータスに非常にこだわっている。それと同じように、世界レベルのステージで腕を競い合うプレーヤーたちは常に自分の力を最大限に引き出してくれる周辺機器を求めているのだ。今回はそんな周辺機器を2つ紹介しよう。 ■ ゲームのためという異端のコンセプトで作られたキーボード「Nostromo n50 SpeedPad」
ゲーム、特にアクションシューティングの分野で相手に勝つためには、“必要とされる瞬間に必要なスイッチを必要な量だけ入力する”技能を高めることが要求される。特にマウスは、FPSの肝である射撃精度を向上させるためのAiming(狙い)を担当することもあり、プレーヤーの間でも「どこのマウスがよかった」という話をしばしば耳にする。しかし、マウスは各人のこだわりなど判断材料も多く、唯一絶対というマウスは無いのが現状だ。そのいっぽうで移動を担当するキーボードに対するこだわりを示す人はあまりいないのもまた事実。通常のキーボードと同じようにキーの押し心地がどうだとか、キー配置がどうだとかがせいぜいで、ゲームのためのキーボードというのはあまり無かったように思う。 そんな中登場した米BELKINの「Nostromo n50 SpeedPad」は、FPSゲーマーのために作られたキーボード……というかコントローラーだ。キーボードの代わりとして左手で扱うことになる。全体的な構成は写真を見ていただくとして、ざっと説明すると親指で扱う十字キー(8方向入力)、人差し指~小指で扱える位置に自由に設定可能な10個のプログラマブルキーがある。そして、両者の中間辺りにスロットルなどの入力に使えるホイールが用意されているといった具合だ。 さて、入力感覚を大事にするプレーヤーがもっとも気にする各ボタンのさわり心地だが、十字キーの入力感覚は非常に軽い。とっさのときに誤入力してしまうような軽さなので、とくに下と斜め下のような隣り合ったキーに別々のキー割り当てをしている場合は注意が必要だ。正直十字キーの8方向すべてに別々のキーを割り当てて使うのは難しいだろう。いっぽうでキーボード部分の入力感覚はかなり良い。 キーの深さは通常のキーボードの半分くらいで、必要な力も押し始めに若干必要なだけで、あとはスンナリと押下される。IBMのThinkPad系キーボードの入力感覚に一番近いといえばわかりやすいだろうか。とっさのときにキー入力が重くて入力されなかったとか、いらないところでキーが入力されて誤動作したとか、そういうことが少ないので、プレーヤーとしては非常にありがたいキーボード部分と言える。
また、特異な形状ではあるが実際に手を置いてみると、キーボードを使っているときと感覚的に大きな差は感じられないのは予想外だった。2週間ほど連続で使ってみたが、3時間ほどで違和感無く使えるレベルまで馴染んでくるのだ。こういうタイプのパッドは使ってみると違和感が非常に大きく使いにくいのが常だが、思っていた以上に順応性もよく従来のキーボードに比べて入力ミスも少ないのは驚きだ。自分の入力ミスで負けたのにキーボードにやつ当たりすることも少なくなったのは、キーボードの耐久度という点から見ても文句無しの完成度といえる。 ■ 4つのキーマップを切り替えるアイディアは面白いが……
FPSをプレイする上で使われるキーボード配置は、前後左右への平行移動をW、S、A、Dで、ジャンプをSpaceで、しゃがみをCtrlかShiftで行なうというのが基本だ。これに加えて、ゲームごとの特殊行動を移動キー周辺のキーに割り当てる(これを一般にbindと呼ぶ)ことになる。しかし、ここ最近のFPSゲームの傾向として、ゲーム内でプレーヤーがしゃべる複数のVoice-メッセージや、サブ兵装や砲台、レーダーの使用に多数のキーが必要な「Tribes2」などのように、移動以外の行動に使うためのbindキーが段々と増えているという事情がある。 加えて、ゲームを極めれば極めるほど武器の切り替えなどをスムーズに行なうようになるため、多くのキーに一つの行動を割り振ってすばやく次の行動に移れるようにするケースが増えてくる。その結果、要求されるキーの数が、物理的に存在するキーの数を上回るという事態が発生する。要求されるキーの量が増えるなら、あまっているキーボードの右半分にその他の行動をbindすればいいという考えもあると思うが、現実はそう簡単ではない。ゲーム中に移動キーから手を離してほかのキーを押すという隙を見せれば、対戦相手にあっという間にフラグを取られてしまうということもあり、bindするために使えるキーというのは移動キー周辺のものに限定せざると得ないのだ。 n50はそういった状況に対してひとつの回答を示した。用意されている10(キーボード)+8(方向キー)=18のキーマップを、切り替えて使うという方法だ。n50ではノーマル、レッド、グリーン、ブルーという4つのキーマップを切り替えて使うことができる。切り替えずに使った場合、キーボード部分の10キーを主に使うことになるが、これでは通常キーボードを使った場合より利用可能キーが少ないのでイマイチ使いづらい。しかし、切り替えることができれば40(キーボード)+32(方向キー)=72のキーを使えるわけで自由度は一気に広がる。 実際の使用方法は、あらかじめ設定画面で切り替え用のスイッチとして指定したキーを押すだけ。自分で設定したキー配置を覚えきるまでは大変だが、覚えてしまえば快調に使えるだろう(だろうと書いたのは、2週間経った今も自分のキー配置を覚えきれなかったため)。加えて、細かい点ではあるが、割り当てたキーを1度押したら継続的に切り替わるのか、瞬間的に切り替わるか選択できるのはうれしいところ。
いっぽう、難点として切り替え用のキーとして使えるのがキーボード部分の10キーのみという点があげられる。10キー部分は通常のキーボードと同じ感覚で使えるだけに、切り替え用として該当キーを占有されると、いつもと感覚が狂ってしまうという落とし穴となってしまう。別途左手小指でいじれるような位置に切り替え専用のスイッチを用意するか、別途好みのキー(通常キーボードのもの)を切り替えスイッチとして割り当てることができればよかった。マイクロソフトのInteliMouseのような、右クリック左クリック以外のプログラマブルキーがあるマウスと組み合わせれば、右手でキーマップ切り替え→左手で使用というのができるので、使い勝手はさらにあがっただろう。 ■ 0.1msecまで調整できるマクロ機能など、マニアな機能に飢えている方にオススメ
さて、一応FPS用のキーボードとして紹介した「Nostromo n50 SpeedPad」だが、絶対買い! と言い切ることは難しい。利用者個人のフィーリング問題に加えて、4つのキーマップを切り替えて使う入力体系は複雑かつ慣れるまで時間が掛かる。その点で多くの方が挫折してしまう可能性が高いのだ。しかし、キーボード部分の入力フィーリングはすばらしく良好なので「時間をかけてでもベストのキーマップを作成するぞ!」という意気込みのある方はぜひ挑戦していただきたい。現在のところ秋葉原のOVERTOPなど一部のパーツショップで販売をしているので、興味がある方は問い合わせてみるといいだろう。 ■ お気に入りのマウスをさらに1段階上のレベルへ引き上げるマウスパッド
さすがに最後の微細な調整は目と手でやるとしても、大まかな照準は手だけでつけてしまう。キーボードを打つ際、手元を見て打つよりブラインドタッチのほうが高速に文章を入力できるのと同じように、マウスの移動距離を感覚で掴んでいれば高速に照準を合わせることが可能だ。しかし、このレベルにまでなってくると、マウスを置く環境によってマウスの動きと照準の動きが変わってくるのがどうしようもなく気になってきてしまう。
結局そのプレイ環境による違いを吸収するのがマウスパッドになるわけだ。FPSゲーマーが求める理想のマウスパッドの条件として「動かしているかどうかわからないくらいの摩擦の少なさ」「思ったところでマウスがぴたっと止まるホールド感のよさ」というものがある。パワーサポート社のマウスパッド「エアーパッドプロ」はそんな矛盾する要求を見事に両立させたマウスパッドだ。もともとはDTPなど、マウスの過敏な動きが気になるユーザーに向けての製品だったが、同じようなレベルの環境を求めるFPSゲーマーの中にも次第に浸透してきた製品だ。 ■ エアホッケーのパックのような移動感覚
実際の使い心地だが、通常のマウスパッドとは桁違いの滑りやすさ。言葉では表しにくいので、一番近い感覚の物で説明するならば、大き目のゲームセンターに設置されているエアホッケーが一番近い。それもパッドではなくパックが滑る感覚が一番エアパッドの感覚に近いだろう。樹脂パーツを取り付けたマウスをエアパッドの上において、指でマウスを突付けばツツツッと滑り出しそうな錯覚に捕らわれるほどだ。しかし、すごいのはそれだけではない。これだけ滑るのにも関わらず、ここでカーソルを止めたい、と思ったところでピタピタッとカーソルが止まってくれる。今までの環境では、思ったところに照準を敵に合わせるのに時間が掛かったりしたが、エアパッドを使うと、照準を合わせる時間が大幅に減少する。これには非常に驚かされた。
正直なところ、ゲーマーにとってこれを買わない理由がどこにも見当たらないくらいよくできた一品であるエアパッドプロ&エアパッドソールのセット。4,000円~5,000円と少々高い買い物ではあるが、この環境を手に入れるためなら払っても惜しくない金額ではないだろうか。今回ご紹介したものは、ゲームプレーヤーたちの間で騒がれている周辺機器ほんの一部だ。これらを使えば、マンネリ化したゲームライフを一変させるような大きな変化を得られることだろう。本稿を読んで、興味をもたれた方はぜひお試しいただきたい。
2000-2002 Belkin Components. All Rights Reserved.
□BELKINのホームページ http://www.belkin.com/ □「Nostromo n50 SpeedPad」の公式ページ http://catalog.belkin.com/
□パワーサポートのホームページ (2002年2月19日)
[Reported by tyokuta] |
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