★ PS2ゲームレビュー ★

コンシューマ版とアーケード版の見事なシンクロ
「バーチャファイター4」

  • ジャンル:3D-CG 格闘
  • 発売元:株式会社セガ
  • 開発元:株式会社SEGA-AM2
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:1月31日

【ゲームの内容】
 3D格闘ゲームの元祖にして金字塔である「バーチャファイター(VF)」シリーズ最新作。SEGA-AM2の初めてのプレイステーション 2用作品となる本作は、アーケード版を完全移植したという「ARCADE」モード、次々現れる対戦相手と戦う「KUMITE」モード、教育することでキャラクタを育てる遊びを楽しめる「A.I.SYSTEM」モード、単なる技練習に留まらない充実ぶりの「TRAINING」モードを搭載した、家庭でアーケードの先取りも可能な内容となっている。



 「VF4」は昨年のアーケードシーンを席捲したタイトルのひとつであることは誰もが認めるところ。PS2版はそのアーケード版の「対戦ツール」としての特性をより明確にした作りで、プレーヤーのフォローを行ないつつ、このゲームのおもしろさを引き出す要素の充実ぶりがめざましい。今回は各モードの充実ぶりを中心に、PS2版の魅力を解説していきたい。


 よりハイスピードなバトルが楽しめる「VF4」

「VF4になって登場した新キャラクタ、レイ・フェイ(上)とベネッサ・ルイス(下)
 「VF4」は、アーケード版をプレイしたことのある人にはわかると思うが、「3」の避けのシステムをよりアグレッシブに取り入れたり(エスケープボタンは廃止され、方向ボタン入力での避けシステムになっている)、シリーズの定番であるしゃがみパンチや肘などの技と他の技や行動との関係や、起き上がりをはじめとした全体のシステムを組みなおすことで、攻防を奥深いものにしている。

 他にも、投げのシステムの変更(つかみ動作が入った)など、時代に合わせて「VF」も確実に進化していることは、ちょっとプレイしてみればわかると思う。特に避けを積極的に取り入れるように戦っていくと、「とりあえず肘」や「困ったときのしゃがパン」が通じなくなってきたり、「回転攻撃の意味」など、いろいろ考えさせられることになる。

 また、空中コンボだけでなく、バウンドコンボ(地面に叩きつけてから攻撃をヒットさせて連続技を成立させる)も採用されており、壁と相まってコンボのアドリブ性が上がった。これはお決まりのコンボを入れるだけでなく、状況に合わせたコンボの組み立てという「3」の方向性をよりわかりやすくしたものといえよう。

 それから、新キャラクタとして「レイ・フェイ」、「ベネッサ・ルイス」の2キャラが追加され、従来のキャラにない特性で戦いのロジックの幅を広げている。従来のキャラクタもより多彩な技を身につけており、攻防の選択肢の幅は間違いなく広がっている。新たに構えが追加された「サラ・ブライアント」、「影丸」、「パイ・チェン」などはもちろん、キャラの動きの多彩さは大きなチャームポイントになっている。

 避けと打撃、打撃と投げ、投げと避けという関係が成り立つ「VF4」では、ガードと避けを使い分けることで状況を一変させることも可能なハイスピードバトルに進化しており、これが中毒性を持ったこのゲームの魅力となっている。

 なお、シリーズ体験者は、このほかシステム面の違いはオフィシャルサイトで解説されているので、ぜひ一読することを勧める。


 まずは「DATA FILES」でキャラクタを作るところから始めよう

このゲームをプレイするなら必ずキャラクタデータを作って遊びたい。楽しみが広がる
 PS2版をプレイするにあたってまずオススメしたいのは、「DATA FILES」モードで、オリジナルのキャラクタデータを作成すること。ここでは、キャラクタデータとA.I.データを作成し、データのエディットや閲覧が可能となっている。ちなみに、コントロール設定もこのキャラクタデータのほうが優先されるので、設定を変更するならこちらのデータを参照しよう。

 キャラクタデータの方は、アーケード版の「VFキャラクタカード」を使用したプレイと同じく、個人の戦歴や取得したアイテムの装着、キャラクタのカラー変更などが可能。ここで作成したデータを用いて、「ARCADE」や「VS」、「KUMITE」など他のモードをプレイすることこそ、PS2版を楽しむ第1歩となる。また、10級から始まる段位も、このゲームを楽しむいい指標となる。

 「STATUS」欄を覗いてもらえればわかるが、前述のデータだけではない、多岐にわたる詳細なデータも記録されており、戦いのアドバイスなども受けられる。アーケード版をプレイしていてイマイチ勝率が伸び悩んでいるという人には、アドバイスそのものだけでなく、移動の傾向やカウンターヒットの傾向など、各パートのデータを客観的に分析することで、自分の欠点が見えてくるはずだ。

 当然、真剣にプレイしないとデータの正確性は薄れてしまうが、ただなにげなくプレイを繰り返しているだけでも、自分の思わぬ傾向を発見してしまうのは興味深い。筆者の場合、しゃがみダッシュを多用していることがハッキリわかり、間合い取りを考えながらプレイしないといらぬところでリーチのある中段攻撃を食らっているのではないかという推測がなりたち、ちょっとプレイスタイルに関して考えさせられた。


 充実のゲームモード

 今作は設定を行なう「OPTIONS」モードを含めて、8つのモードで構成されている。

  • 「ARCADE」/「VS」

     アーケード版を移植したCPUキャラと14ステージに渡って戦う「ARCADE」。乱入対戦も可能だが、対戦を重視するなら専用の「VS」モードを選択すると楽だ。対戦の組み合わせを変えない場合はロード時間がかからない。その移植度は、SEGA-AM2にして「完全」といわしめるだけのものがある。数日間プレイしてみたがプレイ感覚の違いはわからなかった。

  • 「KUMITE」

     次々登場するCPUキャラクタと対戦する勝ち抜きモード。ここまでだと、「他の格闘ゲームにもあるじゃん!」と言われそうだが、「VF4」の「KUMITE」モードはちょっと違う。CPUによって様々な性格づけがなされており、「これは楽勝だ」という相手もいれば、段位が「覇王」なんていう相手も出てくる。

  • 「TRAINING」

     コマンド練習の「COMMAND TRAINING」、シチュエーションを任意に設定して練習する「FREE TRAINING」、課題をこなすことでゲームシステムなどを学べる「TRIAL」の3つの項目からなる。

     アーケード版でこのゲームに触れていない人にもってこいなのが「TRIAL」で、ゲームシステムで特に重要なポイントをすべて網羅してある。課題をこなして実際に体感することで、体で覚えて楽しめるものに仕上がっているのがポイント。また、各種表示のセッティングも細かくなっており、コマンド情報、アドバイス、練習技の固定が自由に設定可能。

     「FREE」もこれまた非常に細かなセッティングが行なえる。起き上がり時の態勢、起き上がり攻撃の有無、受け身の有無、背後を取られた場合の振り向き方、投げ抜けなどをはじめ、立ち位置の設定やリングの設定、操作の記録、再生など、これ以上ないほどの充実ぶり。当然コマンドはすべて参照できるし、出せない技を再生してくれる機能もある。これ以上充実した練習モードはあまりみたことがない。

  • 「A.I.SYSTEM」

     A.I.キャラクタの育成、訓練を行なうモード。A.I.に技を叩き込んで直接教える「A.I.SPARING」と、「ARCADE」、「VS」、「KUMITE」で記録したリプレイをA.I.に見せ、行動に対して良い(○)、悪い(×)をリアルタイムに押すことで教えこむ「A.I.REPLAY」がある。

     A.I.を鍛えるには、順序としては「A.I.SPARING」で技を教えこんで、「A.I.REPLAY」でチューニングする、というのが基本パターンになる。育てたA.I.キャラクタは、「ARCADE」、「VS」、「KUMITE」の3つのモードに参戦させることができ、その際はセコンドとなって良し悪しを指導できるので、プレーヤー自身がプレイしていなくても楽しめる。実戦投入することでガードなどを覚えるため、実戦と「A.I.SPARING」を繰り返してキャラクタを育てていこう。

  • その他

     プレーヤー、A.I.データを作成し、各種コスチュームやアイテムなどのセレクトを行なう「DATA FILES」、セーブしたリプレイデータを再生する「REPLAY」、ゲーム設定を変更する「OPTIONS」がある。「DATA FILES」では、作成したデータごとに詳細な記録が保存されており、戦いの参考になるのは前述の通り。それから、「OPTIONS」の「SETTINGS」の中の「GAME」にある「HIT EFFECT」は「ON」にしておくと、ヒット状態によって軽くフラッシュして教えてくれる便利なものなのでオススメだ。


 対戦もおもしろいが、A.I.をライバルにしてみよう

対戦はやはりアツくなる。でもひとりでも十分遊べる
 この作品は、基本的に対戦が重視されている作りになっている。対人対戦は非常に奥が深く、正解も1つではない。より大きいダメージを狙っていくもよし、手堅く行くのもよし、ゲーム展開はその場の反応でどうにでも転がっていく。セオリーがないわけではないが、人と人との戦いはやはりおもしろい。

 だが、いつも対戦相手がいるわけではない。そこで登場するのがA.I.だ。最初はこころもとないだろうが、自分の技を教えこむことで、自分自身の分身(に近いところまで)キャラクタを育てることが可能だ。そうなればしめたもの。通常ありえない自分との戦いが楽しめる。A.I.は単純に覚えた技を出しまくるということではなく、独自の思考に基づいて動く。初段ぐらいまでは攻撃を喰らいまくっていても、そこからは育て方次第で小憎らしいまでに成長してくれるだろう。

 A.I.と「KUMITE」で昇段を競うというのもおもしろい。特にセコンドとして介入しなくても、A.I.はどんどん組み手をこなしていく。自身が「KUMITE」をプレイして疲れたらA.I.にバトンタッチ、という風に競い合えば目標もできるし、長く遊べることは間違いなし。メモリカードを持ちよって、A.I.同士の対戦も実現可能だ。

 A.I.を育てるにはある程度メモリーカードの余裕が必要なので、このゲーム用にメモリーカードを用意するのがいいかもしれない。1P側はスロット1、2P側はスロット2のみデータを読み込むことができるので覚えておくといいだろう。また、CD-ROMにも対戦リプレイが収録されているので、初心者には参考になる。


デモシーンでのキャラアップ。よくできていると思う
 さて、最後になるが、プレイ感覚についてもうひとつ。シーンが変わるごと(VSモードで再戦を選ぶ以外)にほとんどディスクアクセスが入るのだが、通常の対戦時は、ステージが表示され、片側のキャラクタが名乗りを上げる直後ぐらいまではキャンセルできない。アーケード版のカッ飛びレスポンスでないのが残念だが、個人的にイライラするほどではなかった。HDDに対応しているので、取りつけている人はインストールしてみよう。データキャッシュに対応しており、ロード時間は短縮される。

 それにしても、よく移植できていると思う。「3tb」までは、「本質は移植しているが枝葉で違いが見られる」移植だったことは事実だ。性能的に劣るハードに移植していたのだからむしろ当たり前で、個人的には「ここまでよくやってるよな~」という気がしていたぐらいである。だが、アーケードでバリバリプレイしている人には不満があったことは間違いない。アーケード版「Ver.C」をやりこんでみないとわからないが、感覚としては「そのまんま」の移植度だ。特にコンボの入りやダメージ量などにうるさい人にも納得のいく出来栄えだろう。

 家庭用で練習して、ゲーセンに逆デビューというのはナムコの「鉄拳」シリーズの御家芸だったが、それをさらに一歩先行く形の「VF4」PS2版。コマンド難度の高い「結城 晶」なんかも十分練習できるし、ジョイスティックを使えば家庭で覚えた技をスムーズにゲーセンで披露できる。「VF4」と同時発売された株式会社HORIの「バーチャファイター4スティック」は、パネルが樹脂製になっており、長時間プレイしても手が冷たくならないし、レバーもボタンも操作しやすかった。

 今まで漠然と3D格闘ゲームをプレイしていて、どうもツボがわからなかった人も、「TRAINING」モードの「TRAIAL」をさらっと遊んでコツを掴んでほしい。あとは、実戦を重ねつつ「FREE」でシチュエーションごとの対処法を学んでいくなどしていけば、十分戦えるようになるはずだ。A.I.を育てるのも、戦術や技の研究になる。

 「ここまで親切にするのって“ネタバレ”じゃないの?」と思う人もいるだろう。だが、そんなことであっさりゲーム寿命が終わってしまうほど、「VF4」は単純ではない。また、遊びこめば新たな発見もあるだろう。SEGA-AM2開発陣の「いつかはアーケードへ来てほしい」というメッセージが強烈にこもった1作であるこのPS2版。当然家庭でも盛り上がって欲しいが、強者たちとの戦いはやはり楽しい。最近攻略本でフレームデータを公開する3D格闘ゲームは少なくなってきているようだが、今回のPS2版で研究し、データを知識として仕入れても、このゲームはまた新たなおもしろさを生み出すはずだ。



Original Game(C)SEGA (C)SEGA-AM2/SEGA, 2001

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□SEGA-AM2のホームページ
http://www.sega-am2.co.jp/
□PS2「バーチャファイター4」公式ホームページ
http://www.sega-am2.co.jp/VF4PS2/
□関連情報
【2001年12月17日】セガとSEGA-AM2、PS2「バーチャファイター4」を2002年1月31日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011217/vf4.htm

(2002年2月6日)

[Reported by 佐伯憲司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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