★ PS2ゲームレビュー ★
「VF4」は昨年のアーケードシーンを席捲したタイトルのひとつであることは誰もが認めるところ。PS2版はそのアーケード版の「対戦ツール」としての特性をより明確にした作りで、プレーヤーのフォローを行ないつつ、このゲームのおもしろさを引き出す要素の充実ぶりがめざましい。今回は各モードの充実ぶりを中心に、PS2版の魅力を解説していきたい。
■ よりハイスピードなバトルが楽しめる「VF4」
他にも、投げのシステムの変更(つかみ動作が入った)など、時代に合わせて「VF」も確実に進化していることは、ちょっとプレイしてみればわかると思う。特に避けを積極的に取り入れるように戦っていくと、「とりあえず肘」や「困ったときのしゃがパン」が通じなくなってきたり、「回転攻撃の意味」など、いろいろ考えさせられることになる。 また、空中コンボだけでなく、バウンドコンボ(地面に叩きつけてから攻撃をヒットさせて連続技を成立させる)も採用されており、壁と相まってコンボのアドリブ性が上がった。これはお決まりのコンボを入れるだけでなく、状況に合わせたコンボの組み立てという「3」の方向性をよりわかりやすくしたものといえよう。 それから、新キャラクタとして「レイ・フェイ」、「ベネッサ・ルイス」の2キャラが追加され、従来のキャラにない特性で戦いのロジックの幅を広げている。従来のキャラクタもより多彩な技を身につけており、攻防の選択肢の幅は間違いなく広がっている。新たに構えが追加された「サラ・ブライアント」、「影丸」、「パイ・チェン」などはもちろん、キャラの動きの多彩さは大きなチャームポイントになっている。 避けと打撃、打撃と投げ、投げと避けという関係が成り立つ「VF4」では、ガードと避けを使い分けることで状況を一変させることも可能なハイスピードバトルに進化しており、これが中毒性を持ったこのゲームの魅力となっている。 なお、シリーズ体験者は、このほかシステム面の違いはオフィシャルサイトで解説されているので、ぜひ一読することを勧める。
■ まずは「DATA FILES」でキャラクタを作るところから始めよう
キャラクタデータの方は、アーケード版の「VFキャラクタカード」を使用したプレイと同じく、個人の戦歴や取得したアイテムの装着、キャラクタのカラー変更などが可能。ここで作成したデータを用いて、「ARCADE」や「VS」、「KUMITE」など他のモードをプレイすることこそ、PS2版を楽しむ第1歩となる。また、10級から始まる段位も、このゲームを楽しむいい指標となる。 「STATUS」欄を覗いてもらえればわかるが、前述のデータだけではない、多岐にわたる詳細なデータも記録されており、戦いのアドバイスなども受けられる。アーケード版をプレイしていてイマイチ勝率が伸び悩んでいるという人には、アドバイスそのものだけでなく、移動の傾向やカウンターヒットの傾向など、各パートのデータを客観的に分析することで、自分の欠点が見えてくるはずだ。 当然、真剣にプレイしないとデータの正確性は薄れてしまうが、ただなにげなくプレイを繰り返しているだけでも、自分の思わぬ傾向を発見してしまうのは興味深い。筆者の場合、しゃがみダッシュを多用していることがハッキリわかり、間合い取りを考えながらプレイしないといらぬところでリーチのある中段攻撃を食らっているのではないかという推測がなりたち、ちょっとプレイスタイルに関して考えさせられた。
■ 充実のゲームモード 今作は設定を行なう「OPTIONS」モードを含めて、8つのモードで構成されている。
■ 対戦もおもしろいが、A.I.をライバルにしてみよう
だが、いつも対戦相手がいるわけではない。そこで登場するのがA.I.だ。最初はこころもとないだろうが、自分の技を教えこむことで、自分自身の分身(に近いところまで)キャラクタを育てることが可能だ。そうなればしめたもの。通常ありえない自分との戦いが楽しめる。A.I.は単純に覚えた技を出しまくるということではなく、独自の思考に基づいて動く。初段ぐらいまでは攻撃を喰らいまくっていても、そこからは育て方次第で小憎らしいまでに成長してくれるだろう。 A.I.と「KUMITE」で昇段を競うというのもおもしろい。特にセコンドとして介入しなくても、A.I.はどんどん組み手をこなしていく。自身が「KUMITE」をプレイして疲れたらA.I.にバトンタッチ、という風に競い合えば目標もできるし、長く遊べることは間違いなし。メモリカードを持ちよって、A.I.同士の対戦も実現可能だ。 A.I.を育てるにはある程度メモリーカードの余裕が必要なので、このゲーム用にメモリーカードを用意するのがいいかもしれない。1P側はスロット1、2P側はスロット2のみデータを読み込むことができるので覚えておくといいだろう。また、CD-ROMにも対戦リプレイが収録されているので、初心者には参考になる。
それにしても、よく移植できていると思う。「3tb」までは、「本質は移植しているが枝葉で違いが見られる」移植だったことは事実だ。性能的に劣るハードに移植していたのだからむしろ当たり前で、個人的には「ここまでよくやってるよな~」という気がしていたぐらいである。だが、アーケードでバリバリプレイしている人には不満があったことは間違いない。アーケード版「Ver.C」をやりこんでみないとわからないが、感覚としては「そのまんま」の移植度だ。特にコンボの入りやダメージ量などにうるさい人にも納得のいく出来栄えだろう。 家庭用で練習して、ゲーセンに逆デビューというのはナムコの「鉄拳」シリーズの御家芸だったが、それをさらに一歩先行く形の「VF4」PS2版。コマンド難度の高い「結城 晶」なんかも十分練習できるし、ジョイスティックを使えば家庭で覚えた技をスムーズにゲーセンで披露できる。「VF4」と同時発売された株式会社HORIの「バーチャファイター4スティック」は、パネルが樹脂製になっており、長時間プレイしても手が冷たくならないし、レバーもボタンも操作しやすかった。 今まで漠然と3D格闘ゲームをプレイしていて、どうもツボがわからなかった人も、「TRAINING」モードの「TRAIAL」をさらっと遊んでコツを掴んでほしい。あとは、実戦を重ねつつ「FREE」でシチュエーションごとの対処法を学んでいくなどしていけば、十分戦えるようになるはずだ。A.I.を育てるのも、戦術や技の研究になる。 「ここまで親切にするのって“ネタバレ”じゃないの?」と思う人もいるだろう。だが、そんなことであっさりゲーム寿命が終わってしまうほど、「VF4」は単純ではない。また、遊びこめば新たな発見もあるだろう。SEGA-AM2開発陣の「いつかはアーケードへ来てほしい」というメッセージが強烈にこもった1作であるこのPS2版。当然家庭でも盛り上がって欲しいが、強者たちとの戦いはやはり楽しい。最近攻略本でフレームデータを公開する3D格闘ゲームは少なくなってきているようだが、今回のPS2版で研究し、データを知識として仕入れても、このゲームはまた新たなおもしろさを生み出すはずだ。
Original Game(C)SEGA (C)SEGA-AM2/SEGA, 2001
□セガのホームページ (2002年2月6日) [Reported by 佐伯憲司] |
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