★ PCゲームレビュー ★
昨年のE3での発表以来、スターウォーズファンやRTSファンの注目を集めてきた「スターウォーズ ギャラクティック・バトルグラウンド」がついに日本でも発売された。本作最大のウリは、映画「スターウォーズ」4作に登場した6勢力が、ユニットもろとも完全再現され、しかもそれらをRTS市場ではもっとも知名度の高い「Age of Empires II」ゲームエンジン上で、自由自在に動かせるというところにある。こういった絶対的な強みに加え、さらにスターウォーズならではの新機軸もたっぷりと盛り込み、「エンジンが同じならAge of Empires IIでいいかな」とは言わせない、圧倒的な説得力を備えた作品に仕上がっている。いまRTSを始めるなら間違いなく「スターウォーズ ギャラクティック・バトルグラウンド」がお勧めだ。 ■ 「Age of Empires II」を完全吸収し、独自要素を加えた重厚なゲームシステム
インターフェイスはもちろんのこと、4段階の技術進化、ユニットのアップグレード、テクノロジーツリー、ユニット同士の相性関係なども同じシステムになっている。ゲームの進め方もまったく同じだ。司令センターで生産できる「労働者」にカーボン、食料、鉱石、ノヴァ・クリスタルを収集させて国家を富ませ、技術レベルを上げていく。最終的に軍事ユニットで敵国家を滅ぼせば勝ちとなる。 ゲームモードは、キャンペーン、スタンダードゲーム、マルチプレイ、シナリオエディター、データ・バンクの5つ。キャンペーンでは各映画の内容を模したステージクリア型のシナリオを各勢力ごとに用意している。キャンペーンではダース・ベイダーやチューバッカ、レイア姫、アミダラ女王といった主要キャラクタも登場するなど、スターウォーズファンにはたまらない内容だ。 また、スタンダードゲーム、マルチプレイでは、「Age of Empires II」同様ランダムマップシステムによるゲームプレイを楽しめる。さらにシナリオエディタを利用して、スターウォーズキャラを使ったカスタムキャンペーンも作成することも可能だ。まさしく「Age of Empires II」の充実したシステムを十全に活かした内容といえる。 ゲームに登場する勢力は映画「エピソードI ファントム・メナス」に登場したグンガン、ロイヤル・ナブー、通商連合、そして前3作で登場した銀河帝国、反乱同盟軍、ウーキーの計6勢力。各勢力はそれぞれ違った特性や技術を備え、生産可能なユニット、利用可能なテクノロジーが細かく設定されている。たとえばグンガンは水中にプレハブ住宅(AoEでいう家)を建設できたり、ロイヤル・ナブーの戦闘機は最速を誇るなどだ。
言うまでもなく、この勢力ごとの差別化はすべて映画の設定に従った形だが、これらに関しても「Age of Empires II」では文明特性という形で同様の差別化を図っていたため、仮に万が一「スターウォーズ」を知らないAoEファンでも、すんなりとゲームを楽しむことができるというわけである。
■ パワー・コアとシールドジェネレータ AoEを研ぎ澄ませたオリジナル要素の数々
一方、建物に目を移すと、第1技術レベルから建設可能な「兵士センター」でトルーパー(対地/対空)と騎乗兵を生産できる。第2技術レベルでは「メック工場」でアンチトルーパーユニットのメック(機械化兵)が生産できるようになり、またジェダイ/シスの寺院でジェダイ・パダワン/シス・アプレンティスも生産可能となる。第3技術では残る「航空基地」「要塞」「重兵器工場」の3つが建設可能になり、戦いが多様化、本格化してくるといった具合だ。 システム的な面での違いは「パワー・コア」と「シールド・ジェネレータ」の存在が挙げられる。「パワー・コア」は建物を最高率で稼働させるための電力を一定の範囲内に供給し続ける存在で、SWGBでは電力供給のない建物はすべての作業効率が25%に低下してしまう。これに似た例としては「Starcraft」に登場する種族Protossで、サイオニックエネルギーをゲートウェイから前線に転送するための装置「Pylon」がある。これに対しパワー・コアは単独でも効果を発揮し、最悪なくても効率が下がるだけという違いがある。このためSWGBでは、建物群とワンセットでパワー・コアを建て、さらに空爆に備えて対空砲塔を建てるというのがセオリーのひとつになっている。 一方の「シールド・ジェネレータ」は、いかにもスターウォーズらしい要素で、これを建てることにより、その範囲内のすべての建物とユニットにシールド効果をもたらしてくれる。具体的にはHPが倍になる。しかも、範囲内でHPが減ってもリアルタイムでシールドの最充填が行なわれるため、ほぼ無敵状態になる。もっとも、シールド・ジェネレータはパワー・コアがなければ稼働しないという無視できない弱点をかかえているが、拠点のまわりに数カ所張っておけば、ほとんどの攻撃を跳ね返せる強力な抑止力になること請け合いだ。 また、中には「シールド・ジェネレータ」と同等の機能を有するユニットや、シールドを自前で備えるユニットが存在する。グンガンのユニークユニット「ファンバ・シールド・ジェネレータ」は自走式のシールド・ジェネレータ。映画「エピソードI ファントム・メナス」終盤でグンガンと通商連合の大軍同士が激突するシーンがあるが、その際にグンガン側にシールドを張った大型キャラである。もうひとつ、ロイヤル・ナブーのユニークユニット「ロイヤル・クルセイダー」は、要塞で「シールド化」を施すことにより、自前でシールドを張ることができるようになる。ちなみに実際にシールドを装備させ、各種テクノロジーを最高まで強化するとHPは500にもなる。彼らは映画では、終幕を飾るだけの存在だったが、ゲームでは攻守に渡って大活躍をしてくれる。
こうしたSWBGの独自要素は、「Age of Empires II」の印象を完全に払拭し、スターウォーズ世界への昇華の役割を綺麗に果たしているといっていい。特に航空機の存在と、シールドの要素はゲームをさらにスリリングで奥深いものにしている。
■ ややとがったバランス調整 意表をつく戦術で敵の裏をかけ!
前半に関しては、ベースユニットのトルーパーがいきなり間接攻撃可能なところが最大の理由で、油断していると労働者はあっという間にやられてしまう。これに対処するには第2技術レベルで生産可能になるメックかジェダイ/シスを出すしかないが、数でこられるとそれも間に合わない可能性がある。前半に関してはあらかじめ壁できっちり守っておく必要がありそうだ。 後半に関してはこれはやはりシールド・ジェネレータの存在が大で、第2技術レベルまでに一気に勝負をつけることができれば話は別だが、双方が第3技術レベルに入ってしまうと、なかなか敵本拠に決定的な打撃を与えるのが難しくなる。第3技術レベル以降でのセオリーとしては、防御の要であるシールド・ジェネレータを無効化させるために、建物に対して攻撃ボーナスのあるボマー(爆撃機)でパワーコアを破壊、その後に地上軍をなだれ込ませるというものだが、仮にシールド・ジェネレータを沈静化させても、砲塔や司令センター、要塞は何事もなかったかのように反撃してくるので、これでさらに守備側にある程度のユニットの用意があれば、その時点でアウトの可能性が高い。 ファイターとボマーの大編隊で拠点を一気に灰燼に追い込む、なんてのは誰しも夢見る戦術だが、これなどはもってのほかで、実際に試してみるとよくわかるが、航空機は安いコストで生産できる対空トルーパーに驚くほど弱い。これはAoEの弓騎兵と散兵の関係によく似ている。加えて、対空砲塔や要塞も強力な攻撃を放ってくるため、確実にこちらの被害の方が大きくなる。といった点では航空機はあくまで威力偵察や後方攪乱など補助的役割にとどめた方が無難だ。結局のところ、第4技術レベルから生産可能になる最大射程/攻撃力を誇るキャノン(AoEの遠投投石機)を軸に少しずつ前線を引き上げていくしかない感じだ。
このようにSWGBのバランス調整は、全般的に攻撃側優勢のAoEと違って、技術レベルによってまったく違った戦術を求められるものに仕上がっている。これをよしとするかどうかはユーザー次第だが、いずれにしても航空機、ジェダイ/シスの登場により、採れる戦術の幅は圧倒的に広がっている。真後ろの森林地帯から突如として航空機の大軍に攻めさせたり、トルーパーのビーム攻撃を無効化しながらぐんぐん進むジェダイの大軍など、見た目の爽快感が高いのもその特徴のひとつ。新しい楽しみを求めるなら間違いなくお勧めのRTSだ。
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□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ (2002年1月21日)
[Reported by 中村聖司] |
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