★ PCゲームレビュー ★

史上最高の箱庭系育成SLGが登場!
南国の孤島を比類ない楽園に変えよう

トロピコ 完全日本語版

  • ジャンル:育成シミュレーションゲーム
  • 発売元:マイピック
  • 価格:9,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • 発売日:12月6日(発売中)


 DEMO版をプレイしたときに、「もしや……」と思った。何から始めていいのかさっぱりわからない途方もなく奥深いゲームシステム、'50年代から数十年かけて南国の孤島を統治していくという唯一無二のシナリオ展開、そしてラテン系の調べに乗って突然歌声が聞こえてくるユニーク過ぎるBGM。「これはひょっとするととてつもない傑作ではないか」。
 というわけでさっそく製品版を遊んでみたところ、予想どおりずぶずぶとハマり込み、これが傑作であることを確信した。箱庭型の育成SLGは、国家、都市、動物園、遊園地、家族、ゴルフ場などさまざまな対象が用意され、佳作もあれば手の施しようのない駄作もあるまさしく百鬼夜行のゲームジャンルだが、「トロピコ」は見まごうことなく底なしの大作に仕上がっている。さっそく「トロピコ」の魅力を余さずお伝えしていこう。


■ 清濁併せ持つ一国の統治者として島を反映に導く国家育成SLG「トロピコ」

これがプレーヤーが統治する島の全景。ゲーム中はホイールをくるくる回して視点を変えて最適な高さでプレイできる
 ゲームの舞台はカリブ海に浮かぶ孤島。プレーヤーは小島のプレジデンテ(大統領)に就任し、自由と平和を求めて次々に移住してくる人々に職を与え、インフラを整え、公共施設を建てるなどして、独立国家としての体裁を整えていく。これがゲームの第1の目的。第2の目的は、国民と化した移住民たちの数々の不満を解消すると同時に、農業依存の体制から脱却すべく、工業や産業、観光業などを起こし、島を繁栄に導いていく。これが第2の目的である。

 「トロピコ」が傑作なのはこれだけに留まらないことで、さらに第3の目的がある。それはどういう手段を使ってもかまわないから堅牢な政治体制を作り上げ、あらゆる不安要素を排除し、大統領の座を維持し続けることだ。この要素があるがために、箱庭ゲームにありがちな中だるみや終盤の倦怠感が来ることがなく、常に首筋に匕首を突きつけられているような緊張感のもとにゲームを続けることができる。何せ、どういった政治的配慮も払わずにゲームを続けていると、島がどういう繁栄下にあろうとも一瞬でゲームオーバーになるのだから驚く。この急転直下感がもの凄いのである。

 しかも、この政治要素には「こうすればいい」という明快なルールが一切ない。つまりは実世界と同様にバランスを保つことが最重要で、このバランス取りが極めて難しく、つかみ所がない。もっともやっかいなのは派閥要素で、派閥には資本主義者、共産主義者、知識人、宗教的派閥、軍国主義者、環境保護論者、反逆者の7つがあり、要するにどういう施策を行なってもやかましく言われる仕組みになっている。これらの不満が訴えという形で表面化した場合は、島の繁栄とは逆の施策もやらなければならないし、時には賄賂を渡す必要も出てくる。

選挙はだいたい5年に1度行なわれる。ピンチの時は減税だ
 次に危ないのが選挙。これに敗れれば平民に落とされ、これもやはりゲームオーバーとなる。トロピコの世界はすべて作用反作用で堅牢に構築されており、島が繁栄し住民が多くなるほど対立候補も強力な人物が出てくる。この間、労働賃金の引き上げや減税措置、賄賂などを行うことで、選挙前に掲示される指示予測グラフを、有利な結果に導くことができる。仮にそれがマズい結果だった場合でも、最終手段として票数をごまかす「不正選挙」を行なうことができる。しかし、これによって住民からの敬意が下がり、暴動、クーデター、抗議行動といった物理的破壊活動が起こる可能性が高まってしまうのだ。

 このゲームははっきり言って難しい。必ず数度はゲームオーバーになる。しかし、トロピコのゲームオーバーは、勝ち負け、腕前がどうこうという性質のものではなく、突然床の羽目板を外され尻餅を付いたような、なんともあっけない終わり方をする。だから、不思議と悔しくなく、素早く気分を切り替えて「さぁて、次の島に行くか」という気分になる。詳しくは後述するが、トロピコの島はランダムマップで生成されるため、毎回違うマップで永遠に遊び続けることができる。思わぬ結果になっても「島が悪かった」と思えばいい。トロピコはホントに頭から尻尾の先までよく考えて作られているゲームだ。

スタート直後の様子。島にあるまともな建物はプレジデントが住む宮殿のみがあり、あとはいくつかの農場とみすぼらしい小屋があるばかりだ


■ 箱庭部分も最先端の出来映え、電力を引く前に大学を建てろ

輸出こそ繁栄の道。船にガンガン輸出品を積み込ませるのだ
 さて、肝心の箱庭造りの部分。Demoをプレイしたときは「ちょっとワンパターンかな」とも思ったりしたが、実はまったくそんなことはなく、どういう風にでも自由に島をいじくり回せる。トロピコはマップの広さの割には30年、40年といったとてつもないスパンで開発を行なっていくため、10年先、20年先を見通した次の1手が必要になる。これがまた箱庭魂に火を付けるわけである。

 トロピコにおける箱庭の要素は、「経済」というひとつのカテゴリになっている。プレーヤーは大統領なので、他の箱庭ゲーム同様、何を建ててもいいが、国家が底をつけば何も建てられなくなる。お金の稼ぎ方はいくつかあって、ひとつは島で物を作ってそれを輸出する事業、もうひとつは観光客が落としていく現金を獲得する観光業だ。といっても観光業は、島が国の体をなしてからの話で、当分は農業製品、工業製品を島で作って、ピストン輸出することで現金を獲得していく。

 トロピコが傑作なのは輸出といういまひとつピンと来ない要素を、精密にゲーム内に盛り込んでいるところだ。一見、適当に置かれているふうに見える島のあらゆる建物は、実はすべてに確かな存在理由があり、互いに連携しあい、島の繁栄というひとつの目的に向かって邁進しているのである。この効率化を考える過程がたまらなくおもしろい。

年始めに提出される昨年の年鑑を厳しくチェック
 もう少し具体的に説明すると、島で得られる資源は、農産物、食肉、鉱物、材木の4つがある。プレーヤーはまず最初に、農場や伐採所を建てて資源を収集する。続いて運送会社をつくり、それら資源を運ばせる。運び先はドッグ、工場、市場など。ドッグに運べば、そのまま製品として輸出されるが、資源を加工して商品にすればさらに高く売れる仕組みだ。

 ただ、こういったアップグレード的な役割を果たす建物は、稼働そのものに電力が必要となる。電力を生み出す発電所は大卒の従業員が必要で、これを雇うには高校、大学を建てて住民に学ばせるか、高い金を払って外国から招聘しなければならないといった具合で、あらゆる要素が複雑に絡み合っていて、プレイ中、頭を抱え込んでしまうことがたびたびある。ただし、広い島をたっぷり使って、あそこは官庁街に、あそこは高級住宅街、あそこは歓楽街といったふうに頭の中で考えた理想図をひとつずつ実行していく試みは、どうしようもないぐらいに楽しい。ゲームのスタートは常に'50年だが、あのジャングルに空港を建てて、ホテルやカジノも作ってあのあたりを一大歓楽街にしようとか思って、コツコツ手を打ってると、いつのまにか2000年を突破していたりする。時の流れを忘れるぐらい夢中にさせるゲームである。

情報モードで資源のありかを調べる。農作物は地形によって取れる作物がわかるが、鉱物資源と魚はこのモードで調べないとわからない。特に莫大な資産を生み出す金の位置は重要だ


■ プレーヤーの素性によってゲームの進め方が変わる! ユニークなランダムマッププレイ

宮殿のまわりを中心にだんだん栄えてきた街の様子
 ところで、トロピコのゲームモードは、「チュートリアル」「ランダムマップ」「既製のシナリオ」の3種類。既製のシナリオは、明らかに上級者向けで、初心者が当面の間、プレイすることになるのは「ランダムマップ」だ。ランダムマップでは、島のおおまかな姿を事前に設定し、さらに自らの分身であるプレジデントの素性なども細かく決めていくことになる。

 地形の設定では、島の大きさ、山岳地帯や海が占める割合、資源の量などを設定できる。設定の変更に応じて難易度も変化する。最初のうちは、平地を広くとり、資源も多めにしておいたほうがいいだろう。続いて政策の設定、キャラクタの設定を決めていく。ユニークなのがキャラクタの設定で、背景、権力基盤、素質、欠点などをリスト表示された項目の中からひとつないしふたつずつ決めていくのだが、長所ばかりではなく、必ず重大な欠点を抱えたキャラクタになってしまう。欠点の項目には、アル中、病的なギャンブラー、尊大などがあり、それぞれ派閥や敬意をガクンとさげてしまうものばかりが揃っている。このように何から何まで攻略法のないゲーム性がトロピコの最大の魅力といえるだろう。

 なお、「既製のシナリオ」モードでは、上級者のためのクリア条件付きのシナリオがプレイできる。正直言うと、私には難しすぎてひとつもクリアできなかったが(というより国庫が空になってすぐ行き詰まる)、50年で200万ドルをタバコ産業だけで稼ぐなど、実にチャレンジしがいのあるシナリオがたっぷり用意されている。「ランダムマップ」の難易度50%がらくらくクリアできるようになったら試してみるのもいいだろう。

 最後になったが、フル3Dで描かれたグラフィック、声楽曲ありのサンバミュージックともに素晴らしい出来映えだ。重箱の隅をつつくようなことを言えば、同一の産業の給料を2ドル上げる、といった一括処理ボタンが欲しかったなぁと思う程度で、致命的な弱点はどこにも見あたらない。箱庭ファンのみならず、傑作PCゲームの代表としてPCゲーム初心者にもお勧めできる万人向けの育成シミュレーションゲームである。

美しいグラフィック。サウンドを聴かせられないのが残念だが、雰囲気にマッチしたセンス抜群の内容に仕上がっている

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□マイピックのホームページ
http://www.mediaquest.co.jp/
□「トロピコ 完全日本語版」のホームページ
http://www.mediaquest.co.jp/game_r_toropico_w.htm
□関連情報
【11月2日】本日到着! DEMO & PATCH「Tropico」Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010523/demo0523.htm

(2001年12月7日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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