★ PCゲームパーツレビュー ★
これまでにもさまざまなゲームプラットフォームに、立体視ゲームシステムが発売されてきたが、コンソールゲーム機のそれは大抵対応ソフトが必要で、結局は投資に見合わない、マニア向けのグッズでしかなかった。今回、イーレッツより発売された「Beautiful 3D」は、NVIDIA製ビデオチップ搭載のビデオカードと組み合わせることで、既存のあらゆるPCベースの3Dゲームを立体視で楽しめるような設計になっている。 「立体視専用ソフトでなくとも立体視でプレイできる」というのは、将来発売されるソフトはもちろんのこと、過去に発売された名作ゲーム等も立体視で楽しめるということだ。「わずか7,800円の投資で手持ちのPC-3Dゲームの全てが立体視対応ソフトに変身してしまう」と考えればかなり魅力的な製品だろう。Beautiful 3Dが一体どんなシステムなのか、まずはこのあたりから見ていくことにしよう。 ■ 「Beautiful 3D」立体視システムの仕組み 一般的な3Dゲームは、ゲーム世界に設置されたカメラ(視点)から見た映像をディスプレイに映しだしている。プレーヤーキャラクタがゲーム世界で移動すれば当然この視点も移動する。このゲーム世界を捉えるカメラはまさにプレーヤーの視点に相当するのだが、表示するディスプレイ装置が1個なので、ゲーム世界に設置されるカメラも一個、すなわち単眼ということになる。 しかし、実際にもしも自分がゲーム世界に飛び込んだら、ゲーム世界を単眼ではなく2つの目で見ることになるだろう。この発想を具現化した製品がBeautiful 3Dなのである。つまり、NVIDIA製ビデオチップ(以下、GPUと表現する)が、視点から捉えた映像をレンダリングする際、左目から見た映像、右目から見た映像をそれぞれレンダリングする。それぞれの映像には「視差」があるので、それぞれの映像を対応する目に実際に見せてやれば、「立体映像になる」……とこういうわけだ。 「どんな3Dゲームも立体視!!」というキャッチコピーから「NASA開発のアダルトビデオ・モザイク除去機」みたいなインチキくさいイメージを抱いてしまった人もいるかもしれないが、Beautiful 3Dは、いうなればごく一般的な立体視基本理論に基づいて制作されたものなのである。
■ ある程度のCPU/GPU性能が要求される点に注意
さて、1画面しかないディスプレイ装置で右目用と左目用の映像をどうやって目に見せるかだが、これにこの立体視眼鏡を活用することになる。このタイプの眼鏡は液晶シャッター方式と呼ばれており、その名の通り、液晶駆動のシャッター動作をする。 すなわち、画面に左目の映像が出ているときは、眼鏡の右目サイドのシャッターが閉じ、左目サイドが開き、目には左目の映像が届く。逆に画面に左目の映像が出いるときは、眼鏡の左目サイドのシャツターが閉じ、右目サイドが開き、目には右目の映像が届く。この一連の動作を1秒間に60回程度高速に行なう。こうした立体視映像の画面を眼鏡無しで見ると、ぶれて見えるのは左目用、右目用の映像が高速に切り替わっているためだ。 ここで、1つ注意点がある。通常時は単位時間あたり、1枚の3D映像をレンダリングすればよかったのに、立体視システムでは、ここまで解説してきたように、左目用、右目用の映像をレンダリングしなければならなくなる。しかもリアルタイムにだ。すなわち、いってみればCPU、GPUに対する負荷が二倍となるのである。 たとえば、これまで、1,024×768ドットの解像度で快適にゲームがプレイできた環境で、Beautiful 3Dを用いて立体視ゲームプレイを楽しもうとすると、1,024×768ドットでは動きが重くなる可能性がある。あくまで漠然としたアドバイスだが、立体視プレイを楽しむときには、表示解像度は1、2ランク落とした方が無難だ。上の例でいけば立体視プレイ時は640×480ドット、800×600ドット等の解像度を選択した方がいいだろう。 なお、Beautiful 3Dが対応しているGPUは
・RIVA TNT/TNT2(M64/Pro)/Vanta となっている。 CPU等についてはBeautiful 3D側の動作条件では「Pentium 90MHz以上」となっているが、これでは最近の3Dゲームがまともに動くはずもなく、実際に最近の3Dゲームを立体視で快適にプレイするには、筆者のこれまで使用してきた手応えでいえば最低でも700MHz、できれば1GHz級以上のCPUはほしいといった感じだ。 また、ディスプレイにもある程度の表示性能が求められる点も気に留めておく必要があるだろう。高速に右目用、左目用の映像を表示するわけだが、たとえば1秒間に左目右目のペア映像を60回交互に表示するとなれば60Hz×2=120Hzのリフレッシュレートに対応していなければならない。
640×480程度の解像度では120Hzのリフレッシュレートに対応しているディスプレイ製品は多いが、1,024×768以上の解像度で120Hzに対応している製品は限られてくる。まぁ、CPU、GPU、ディスプレイのいずれについても、よく自分のシステムの素性がわからなければ、立体視プレイ時は画面解像度640×480ドット表示を選択した方が無難だ。 ■ セットアップ時のアドバイス
その後、何よりも先にやるべきことはNVIDIA製純正GPUドライバ「DetinatorXP」のインストール。 「え? すでに、ビデオカードベンダーの最新ドライバを入れてるけど?」というユーザーでも、Beautiful 3Dの正常な動作が確認されるまではNVIDIA純正のDetonatorXPドライバをインストールして試すことからお勧めする。 また、ドライバの類は何でもかんでも「新しいものにしたがり」のユーザーも多いと思うが、Beautiful 3Dを正しく動作させるためにはちょっとその考えを改める必要がある。Beautiful 3Dの立体視ドライバはNVIDIA制作のものだが、これはGPUドライバ側とバージョンを合わせる必要があるのだ。よってGPU側のDetonatorXPドライバを最新バージョンにして、立体視ドライバを付属のCD-ROMからインストールしたりすると正しく動作しない(動作しないことは筆者も確認済み)。このことはBeautiful 3Dの購入を考えている人はぜひとも留意してほしい。 結局、最も安全策といえるのは、マニュアルの手順通り、Beautiful 3D付属のDetonatorXPドライバと立体視ドライバをインストールすることだろう。 なお、それぞれのドライバの最新バージョンは
・DtonatorXPドライバ……http://www.nvidia.com/view.asp?PAGE=drivers にアップロードされているが、ドライバ類のアップデートは上記の理由から、基本的にBeautiful 3Dの発売元イーレッツの公式サイトから入手した方がトラブルが少ないはずだ。
■ 実際にどんな感じに見えるのか
非立体視時、すなわち通常プレイ時、FPSで重要となる照準(レーザーサイト)は、画面中央付近にポツンと表示されており、北極星のごとく静止したままのはず。ところが、立体視でプレイすると、本当のレーザーサイトのように「奥行きのある表示」となる。これも感動的だ。 たとえば目の前に壁があれば、レーザーサイトは壁に定位し、目の前が開けていれば、遙か先にある壁に定位する。敵と照準がクロスすると、実際に3次元的にレーザーサイトが敵の腕や頭部等に照射されるのである。 このようにFPSでは、ゲーム性の部分をBeautiful 3Dがグレードアップしてくれるイメージなので、利用価値は高い。また、ゲーム世界を極めて直観的に動き回ることができるので、プレーヤーによっては通常プレイ時よりも上手にプレイできるようになるかもしれない。いずれにせよ、「飛び出る絵本」程度の立体視を想像していた人は、この臨場感を体験したら考えを改めることになるだろう。 さて、ブラック&ホワイト、SACRIFICEなどの3Dエンジンを使ったストラテジーに関しては、どうだろうか。こうしたタイプのゲームはあまりゲーム性を拡張してくれるような手応えはないが、コンピュータ画面の中に広がる「箱庭世界」が「ただのCG」という印象から「生きている世界」……のような実感を得ることができるようになる。普段からプレイしなれたお馴染みのタイトルでも、初めてプレイしたときの感覚に近い、実に新鮮な感覚でプレイできると思う。 「MAXPAYNE」、「トゥームレイダー」シリーズなどの3人称視点のアクションゲームの場合は、障害物との距離感や、跳び越す溝の長さなどのリアリティが強化される。また、トゥームレイダーのように、ピラミッドやら遺跡やらの狭く閉ざされた空間を通り抜けて行かねばならないようなシーンの多いゲームでは、広がりの逆、閉塞感にリアリティが感じられる。FPSとは違って、立体視プレイでプレーヤースキルが増加するかはちょっと分からないが、少なくともゲーム側で演出したがっていた雰囲気は立体視プレイであますことなく体感できるようになる。 ドライブゲーム、レースゲームに関しては、立体プレイ時、通常プレイ時よりも、カーブまでの距離感、道幅、敵車との距離感などがわかりやすいと感じるはず。この種のゲームの場合、通常プレイでは3Dものであるのにもかかわらず「看板が画面のこのあたりに来たらブレーキング」のような、2D的な目安を立ててプレイしてしまうことがよくある。しかし、立体視プレイを極めれば、カーブへの突入角度、ブレーキングポイントなどを、実車を取り扱っているときと同じように、周りの情景との三次元的な位置感覚で捕らえることができるようになるかもしれない。 フライトシミュレータ、スペースコンバット系は、確かに立体視は出来ているものの、意外にもあっさりした印象だ。これは、飛行中や戦闘中は対象物が少ないせいがあるだろう。しかし、フライトシミュレーターならば着陸時には陸地や各種ランドマークが画面に数多く出てくるので、このときばかりは立体視プレイの方が臨場感はある。
そして、スペースコンバット系でもアステロイドベルトや巨大戦艦への突入時などは、対象物がプレーヤーに近づいてくるため、迫ってくるような強い立体感が得られる。
■ Beautiful 3DにまつわるQ&A 最後に、一般ゲーマーがBeautiful 3Dを購入する際や導入した際に、疑問に思うだろう情報を筆者の経験を元にQ&A型式にまとめてみたので参考にして欲しい。
【Q】どんな3Dゲームでも立体化されるというけど、本当?
【Q】ちゃんとセットアップしたのにまともに見えない、なぜ?
【Q】液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクターでも立体視は使える?
【Q】なんか左目には右目の映像が、右目には左目の映像が漏れているようでちょっと見にくい気がする……。
【Q】「画面のプロパティ」から「詳細ボタン」を押すとこのようなエラーメッセージが出てしまうんだけど?
【Q】Windows XP/2000で動作する? □イーレッツのホームページ http://www.e-lets.co.jp/ □「Beautiful 3D」の公式ページ http://www.e-lets.co.jp/product/Beautiful 3D.htm □関連情報 【8月23日】イーレッツ、3Dゲームを立体視でプレイできるPC向け立体グラスシステム「Beautiful 3D」 http://www.e-lets.co.jp/product/Beautiful 3D.htm (2001年11月26日)
[Reported by トライゼット西川善司] |
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