★DCゲームレビュー★

ネオジオ格闘の集大成、ここに極まれり
『餓狼~MARK OF THE WOLVES~』

  • ジャンル:対戦格闘
  • 発売元:SNK
  • 価格:5,800円
  • 対応プラットフォーム:ドリームキャスト
  • 発売日:発売中



 「餓狼」シリーズの最終進化形、登場

 SNKが誇る有名格闘ゲームタイトルといえば、まず「餓狼伝説シリーズ」の名前が浮かぶのではないだろうか。'91年に登場した『餓狼伝説』は大ヒットを記録し、SNKの業務用ハード“ネオジオ”の隆盛に大きく貢献した。以後も、シリーズの続編タイトルはネオジオを舞台に展開し、回数を重ねるごとにさまざまな要素を加えつつ、時代を象徴するシリーズへと成長を遂げていくことになる。

 そして、'99年冬にアーケードで発表された『餓狼~MARK OF THE WOLVES~』は、新時代の餓狼伝説として鳴り物入りで登場し、多くのユーザーから好評を博すことになる。時は流れて2001年秋――ドリームキャストにて、完全移植を遂げた『餓狼~MARK OF THE WOLVES~』(以下餓狼MOW)が、ついに姿を現すこととなる。

 洗練と世代交代の先に

 ゲームの世界は、初代餓狼伝説から悪のカリスマとして君臨していたギース・ハワードの死後10年が経過した時代を舞台に展開する。本作の主人公となるのは、ギースの血を引き継ぐ少年、ロック・ハワード。彼はギースの宿敵でもあり、これまでのシリーズの主人公を努めて来たテリー・ボガードに育てられたという設定になっている。このあたりのドラマチックなキャラクタ描写も、SNK格闘ゲームの魅力のひとつとなっている。

 ゲームシステムに関しては、これまでの餓狼シリーズを支えてきた“2ライン”システムが廃止されたというポイントが、最も目を引くところ。“2ライン”システムとは、手前と奥に2つのラインを設け、プレーヤーが任意に2つのラインを行き来することで、擬似的な3次元的奥行きを実感しながら戦えるというものであった。しかし、餓狼MOWは“2ライン”を廃し、「1ラインででき得ること」を徹底的に突き詰めた作品となっているのである。

新時代の“餓狼”として生を受けた『餓狼MOW』。主人公はギース・ハワードの落胤、ロック・ハワード。最近では『CAPCONvs.SNK2』(カプコン)にも登場している 個性豊かなキャラクタが揃う本作。「ハズレがいない」豪華な布陣だ。アーケード版では隠しキャラ扱いだったカインとグラントもDC版では最初から使用可能

 この作品で最も目を引く独特のシステムと言えば、キャラクタがパワーアップするタイミングを任意に設定できる「T.O.P.システム」である。T.O.P.システムとは、自分のキャラクタのライフゲージ上に設定した「T.O.P.ゲージ」にライフの残り値が差し掛かると、T.O.P.INと呼ばれるパワーアップ状態に突入するというものである。
 T.O.P.IN状態になると、キャラクタの攻撃力が増加し、体力が徐々に回復していくという美味しいメリットが追加される。また、この状態でのみ使うことができる「T.O.P.アタック」は、キャラクタごとに効果が異なる特殊技で、どれも使い勝手が良く強力なものが揃っている。T.O.P.IN状態でどれだけ相手を追い込めるかが、このゲームの鍵を握っているといっても過言ではないのである。

 「T.O.P.ゲージ」の場所は、ライフゲージの3カ所からひとつを選んで設定することができ、(体力が満タン時~2/3、2/3~1/3、1/3~~体力ゼロの3つ)自分のキャラクタが最もパワーアップして欲しい時期を決めることができるのである。ライフゲージが多い状態の時にT.O.P.ゲージを設定しておくと、ゲーム開始直後から容赦なく攻め立てることが可能となり、試合の主導権を握りやすい。ライフゲージの真ん中に設定すると、序盤で相手の動きを読み取り、中盤から押し返す戦法も考えられる。ライフゲージが少ない状態で設定すると、最後の最後まで粘ることができる、という寸法である。

キャラクタ選択後、ライフゲージの上にT.O.P.ゲージの位置を設定する。どのタイミングでキャラクタをパワーアップさせるかが思案のしどころ ライフゲージがT.O.P.ゲージに差し掛かった瞬間、キャラクタは「T.O.P.IN」状態となり、パワーアップして攻撃力が増加しT.O.P.アタックが使えるようになる

 T.O.P.システムの他にも、『餓狼MOW』には、敵の攻撃をガードするタイミングをギリギリまで引きつけることによって、成功すれば体力が若干回復し、ガード硬直が短くなる「ジャストディフェンス」や、必殺技を途中で止めることができ、連続技の組み立てに活用できる「ブレーキング」など、意欲的なシステムが数多く盛り込まれている。それぞれのシステムを理解し相互に連携させることで、より奥の深いプレイが楽しめるのだ。


 DC版ならではの要素も満載!

 業務用から家庭用へと移植される格闘ゲームには、何かしらの追加要素が加わるのが常であるが、『餓狼MOW』ではアーケードと同じ形式で物語が展開する「ストーリーモード」のほか、連続技の練習ができる「プラクティスモード」、1人のキャラで何人勝ち抜けるかを競う「サバイバルモード」などが用意されており、多彩なプレイスタイルに応える仕上がりとなっている。

 「サバイバルモード」は、プレイ中に様々なアイテムが出現することにより、試合をこなしていくうえでメリハリを与えている。ゲーム中はやれることが多いだけに、初心者はコツを掴むのに多少時間がかかるかもしれないが、プラクティスモードやコンティニューサービスを使用することにより、徐々にスキルを上げていくことが可能だ。

ゲームオーバー後に表示されるコンティニューサービス。'99年以降のSNK格闘ゲームでは、このような形で初心者への配慮が示されることになった。もちろん、サービスを拒否するのも自由だ 何人勝ち抜けるかを競う「サバイバルモード」も搭載されている。試合中に出てくるアイテムは、攻撃力アップや体力回復などがある。中にはマイナス要素を持つアイテムも……

 また、このゲームに収録されている「ギャラリーモード」は、『餓狼MOW』で使用された数々のビジュアル素材を閲覧することができる。ギャラリーモードでは、各キャラクタのエンディングや、このモードのために描き下ろされたCGなどを見ることができる。ただし、それぞれのビジュアルを閲覧するにはゲームをプレイして様々な条件を満たさなければならない。最初はギャラリーモードを埋めていくだけでも十分楽しめるだろう。

 『餓狼MOW』のキャラクタデザインは、同社の『月華の剣士』でも知られるTONKO氏が手がけており、ギャラリーモードでは氏の描き出す魅力的なビジュアルが存分に堪能できる。これまでの餓狼シリーズとは違った空気をかもし出しつつ、新時代の“餓狼伝説”に相応しい世界観を装飾する美麗なビジュアルの数々は、ファンならずとも見応えのあるものとなっている。

様々なビジュアルが用意されたギャラリーモード。ここでしか見られないオリジナルCGも多数収録されており、資料的価値が高いものとなっている 各々のビジュアルは拡大縮小操作などが可能で、ユーザーが望む形式で閲覧できる

 '91年から進化をし続けてきたSNK格闘の総決算とも言える本作は、幅広いユーザーのプレイアビリティに応えられるだけの内容とともに、見応えのあるビジュアルに彩られた意欲作として高い完成度を誇っている。事実上、SNK最後の対戦格闘ゲームという位置付けにある『餓狼MOW』だが、これまで同社が培ってきた格闘ゲームのノウハウは、この1本に凝縮されていると言ってもいい。

 プレイを重ねていくごとに、新たな発見がある――まさに、アクションゲーム、格闘ゲームの見本とも言える作品だ。「プレイし甲斐のある」2D格闘ゲームを探している方は、是非とも『餓狼MOW』を選択肢のひとつに加えて頂きたい。

(C)SNK 1999 2001

□SNKのホームページ
http://www.neogeo.co.jp/
□製品情報
http://www.neogeo.co.jp/cons/soft/for-dc/garou_dc/

(2001年10月18日)

[Reported by 田渕健康]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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