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★ PCゲームレビュー ★
トゥームレイダーに代表される三人称アドベンチャーゲームの期待の新作として2年ほど前から密かに注目されてきたのがこの「Oni」だ。PCゲームとしてはかなり長い開発期間を経て登場し、しかも完全日本語化までされての発売ともなればPCゲームファンならば注目せずにはいられないだろう。 「どんなゲームなのか」ということはもちろん、長らく期待して待っていたファンならばまず知りたいと思われる「どんな感じに仕上がっているのか」という部分についてレポートしていきたい。 ■ 「Oni」は欧米製ジャパニメーション
見せかけだけの平和は長く続くはずもなく、そうした体制に反発するレジスタンスが現れるのは当然の帰結であり、そうしたレジスタンス組織と密接に関わって巨万の富を得ている犯罪シンジケートまでもが現れることになる。そうした犯罪組織に対抗して設立されたのが「技術犯罪特殊部隊」(Technology Crime Task Force)、略称TCTFとよばれる警察組織だ。
プレーヤーが扮する、主人公コノコはこのTCTFの特殊訓練を終了したばかりの新人エージェント。しかしその素性は明らかにされておらず、なにか尋常ではない秘密を持っている。その秘密についてはコノコ自身自覚していない。プレーヤーはTCTFのグリフィン指令の指示とアシスタント・アンドロイドのシナタマのアドバイスを受けつつ与えられた15のミッションを遂行していくことになる。
ドラクエなどに代表される和製・西欧中世ファンタジーというのはよくあるし、我々日本人には違和感はそれほどないが、欧米圏の人間からみたら、かなりカルチャーショックを受けるのではないかと思われるが、「Oni」はその逆で、「欧米人の作ったジャパニメーション的ゲーム」なのである。 主人公コノコのコスチュームやキャラクタ像などを見た感じでは、欧米でも人気の高いジャパニメーション「攻殻機動隊」などの影響を受けていると思われる。どことなく「それっぽい」ものの、「どこかが違う……」という、異界情緒ただようジャパニメーションの雰囲気に、戸惑うプレーヤーも多いのではないだろうか。 さて、ローカライズを担当したマイピックは、この作品のコンセプトを正しく理解しているようで、完全日本語化にあたり、有名声優人を起用しての吹き替えを行ない、ジャパニメーション度のブーストアップを試みている。「その筋」のファンのために主要キャラクタのキャストを挙げておこう。
●コノコ…三石琴乃(新世紀エヴァンゲリオン)
なかなか豪華な顔ぶれといった感じではないだろうか。そういう意味では「Oni」はアクションゲームファン以外のアニメファンや声優ファンにもかなり訴求力のあるタイトルだと言える。
■ 「Oni」ってどんなゲーム?
ゲームは基本的には与えられたミッションをクリアしつつストーリーを進めていくスタイル。敵を何人倒すといったことだけではなく、ゲームフィールド内を探索し、見つけた鍵やスイッチを駆使して仕掛けられたトラップを回避、現れる敵をうち倒しつつゴールを目指すという、まさしくトゥームレイダータイプのゲーム進行だ。
シビアなのが、武器システムで、アニメ調ながらリアリティを追求した「Oni」では、主人公が携行できる武器はたった「1つ」で、しかも弾数制限があるのだ。照準はトゥームレイダー系とは違い、フルマニュアル方式で、プレーヤー自身が合わせるタイプ。弾数制限があるため、無駄撃ちは同種のいかなるゲームよりも自分の首を絞めることとなる。照準がマニュアルといっても、大体のところに合わせると照準の色が変わり、ある程度の誤差補正を行なうような挙動をするのでその意味ではセミオート照準といった感じもするが、一発撃つたびに射撃反動で照準がずれる武器もあるので、この特性に頼り切ることはできない。
コノコは武器をしまった状態(あるいは弾切れの状態)で攻撃ボタンを押すとパンチやキックを繰り出すのである。単純なパンチ、キックの単体技ではなく、連打すればコンボ(連続技)が飛び出すし、移動コマンド、ジャンプコマンドを組み合わせることによって対戦格闘ゲームさながらの必殺技や投げ技を繰り出すことができる。
コノコは常人よりも数段速く動けるうえ、身軽でジャンプ力もあるため、例え武器が使用不能になったとしても、瞬く間に敵との距離を詰めることができ、敵の懐に飛び込んで格闘技で倒すことができる。飛び交う銃弾をダッシュや側転で避け、敵に接近したら電光石火のような必殺技を繰り出してぶっ飛ばすというのはやはりジャパニメーションではよく見られるアクションシーンの演出だ。「Oni」では、このアニメチックなアクションをプレーヤーにやらせたいがために、武器への依存度を下げるようなゲームデザインにしたのだろう。
■ Z軸ロック無しの操作系はまさに上級者向き! 初心者は覚悟せよ!
武器使用状態はこれで違和感がないのだが、接近格闘戦になったときには途端にやりにくくなる。端的に言えば「FPS操作系で格闘ゲーム系の必殺技コマンドを入れるのは結構難しい」ということだ。適当にプレイしていると技が暴発し、これが相手にヒットすることが多いのだが、自分が思い描いた操作/プレイができないというのは結果がどうあれ結構ストレスがたまるもの。また、乱戦状態になると、技操作をやっているうちにコノコの向きがとんちんかんな方向になってしまい、技が空を切ったり、敵に背を向けてしまい一方的にやられてしまうことも多い。 おそらく、この操作のやりにくさの根元はニンテンドウ64「ゼルダの伝説 時のオカリナ」などに採用されていたような「Z軸ロック」システムがないせいだと思う。これは、自由度が高い3Dゲームの中で意図的に自由度を制限することでプレーヤーが敵との戦闘に集中できるようにしてくれるシステムだ。この「Z軸ロック」操作をすると、その間は、いかなる操作を行なっても自動的に相手と対峙するようになる。たとえば、敵が攻撃を仕掛けてきても、敵に正面を向いたまま避けることができるし、敵への間合い調整も位置関係を崩さず行なえるのだ。 「Oni」にはこうしたシステムがないため、通常移動時、銃撃戦、接近戦、とプレーヤーを取り巻く状況が変化するにもかかわらず、プレーヤーはゲームシステム側のサポート無しにその都度頭を切り換えて操作しなければならない。よほどプレーヤーが3Dゲームになれていないと、思い通りのプレイスタイルは確立できないと思う。その意味では「Oni」は上級ゲーマー向きの作品だと言えなくもない。
また、さらに「ガードはキャラクタを素立ち(ニュートラル状態)で成立する」というこれまでの格闘ゲームの常識から逸脱したガード操作系も、プレイ操作を難しくしている要因の1つだと思う。全ての操作キーから手を離さなければならない素立ち状態を乱戦の状況下でできるはずもない。これはバーチャファイター系のガードボタン方式を採用すべきだったと思う。まぁ、いずれにせよ、「Oni」には、この特徴的な操作系に覚悟をもって、挑戦して欲しい。
■ 快適にプレイするために必要なスペックは?
クオリティはおおむね1、2年前のゲーム相当、あえて言えばDirectX 6時代のゲーム相当という感じだろうか。シャドウは丸影でごまかしているし、キャラクタの関節の付け根は見えているのでスキニングはやっていない。派手な特殊エフェクトはあまりなく、DirectX 8の新機能であるプログラマブル・シェーダーなども活用してないようだ。テクスチャのパターン数も最近のPCゲームヒット作「MAX PAYNE」等と比べるとだいぶ少ない。「アニメ調だから」という反論も聞こえてきそうだが、「Oni」のグラフィックスは最近流行のトゥーンシェイダーとも明らかに違う。 最新ビデオカードをゲームのために用意した本格PCゲームユーザーにとっては見返りの少ない「Oni」のグラフィックスだが、これは裏を返せば「ロースペックのマシンでも『Oni』が楽しめる」ということになる。 そこで今回、あえて
●CPU:Celeron 300A MHz
という、ちょっと古めのマシンでプレイしてみたが、驚いたことに640×480ドット/32ビットカラーの画面モードであれば描画クオリティを最高に設定してもほとんどストレスなくプレイできてしまった。このことからも「Oni」は多くのユーザーがマイマシンへの追加投資なしで快適にプレイできる作品……と見ていいと思う。
「Oni」では、ゲーム進行中、敵役や脇役キャラ達との会話シーンの挿入がしばしばあるのだが、その際に台詞をしゃべったキャラクタの顔グラフィックがゲーム画面に表示される。ところが、これが、ただの一枚絵で、口パクアニメすらしないのである。 アニメ調のキャラクタを立てたこうしたゲームでは、プレーヤーはキャラクタの表情の演技に期待をしているものだし、逆にカットシーンでキャラクタを立てなければ、世界観が浮き彫りにされてこない。次回作があるならば、ファンが何を望んでいるのか、という部分をもう一度考えて欲しいと思う。
「地味」といえば、「Oni」はサウンド面もかなり地味である。開発サイドが一番やりたかったと思われる格闘シーンも、技を繰り出したときの効果音が「無音」で、技がなにかに当たらないと音がしない。主人公コノコも敵もなぜか「口数が少ない」ので、全体的に「静か~な、乱闘戦」というシュールな光景が画面内で展開されるのである。もうちょっと、日本の格闘ゲーム、それこそジャパニメーションをお手本にサウンドデザインをして欲しかったと思う。 ■ 「Oni」は自覚を持って挑戦せよ やや厳しい評価をせざる部分もあったが、全体としては開発期間が長かっただけあって、プレイしたときの手応えはしっかりしたものがある。ただ、あらゆる面で個性が強いゲームなので、あまり、他のゲームと比較してしまうと粗が目立って仕方がないかもしれない。気持ちよくプレイするためには「自分は『Oni』をプレイするんだ……プレイしているんだ」という自覚が必要だろう。 最後に既に「Oni」を購入したユーザーへの豆情報を1つ。「Oni」はゲームオプションでキーコントロールの変更ができないが、実際にはインストール先のフォルダにある「key_config.txt」を書き換えることでカスタマイズが可能である。カーソルキー、テンキー等の特殊キーの割り当て方法などは、「Oni」関連の情報サイト(http://oni.bungie.org/information/binding.html)を参照して欲しい。
Oni and the Oni logo are trademarks of Take 2 Interactive Software, Inc. Bungie and the Bungie logo are trademarks of Microsoft, Inc. Gatharing of Developers and godgames are trademarks of Gathering of Developers, Inc. All other trademarks and trade names are property of their respective owners. (C)2001 Gathering of Developers. All Rights Reserved.
□メディアクエストのホームページ http://www.mediaquest.co.jp/ □「Oni」の公式ページ http://www.mediaquest.co.jp/hot2/oni_wm_c.html (2001年9月29日)
[Reported by トライゼット西川善司] |
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