★ PCゲームレビュー ★

雲霞のごとき大軍が
ヨーロッパの覇権を求めて疾駆する!!

コサックス ~ 攻城の世紀 ~

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 発売元:ズー
  • 価格:8,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • 発売日:9月14日


 第二次世界大戦を扱ったRTS「サドンストライク」で鮮烈な印象を我々に残したドイツのCDV Softwareが、次にゲームの題材としたのは16世紀~18世紀のヨーロッパ。膨大な種類のユニットが登場し、モニタを埋めつくすほど大軍勢の激突を「三銃士」や「ベルサイユの薔薇」の時代で再現したのが今回ご紹介する「コサックス~攻城の世紀~」だ。


■ RTSでは初となるコサックスの時代

大軍勢同士の激突。一発の榴弾砲によって一度に10人20人があっという間になぎ倒される
 17世紀から18世紀といえば、日本では徳川幕府が天下を治めて、ひとまず戦争がなくなった頃だ。一揆やお家騒動があったとはいえ、日本は天下泰平の世を謳歌していた。が、ヨーロッパでは戦争、戦争また戦争であった。どこかの王位が空けば各地から継承権が主張され、ひょんなことから宗教がらみで因縁をつけられる。さらにこの時代に大きな問題となってきた植民地の権益も絡みあい、あっちで同盟、こっちで裏切りと、何かにつけて多くの兵隊がヨーロッパ各地を動き回っていたのだ。

 このゲームでは近世を扱った唯一のRTSらしく、登場するユニットたちも実に華々しい。サーベルや槍などの近接武器を持つものから、鉄砲(マスケット銃)を持った兵士までが登場するのは中世と変わらない。が、鉄砲の弾から肉体を保護する胸甲や鉄砲を持ちながら近距離でも攻撃できる銃剣などの開発により、歩兵は洗練され多種多様に分かれている。騎兵の分野でもスピード重視のものから小型の拳銃を持った重騎兵、マスケット銃を持ち、歩兵としても戦える竜騎兵などが登場し、戦術面でも大きな変化が生まれた。

 さらにこの時代、攻城兵器としてカノン砲がどんどん改良され、発射間隔の短縮化、高角度発射に超長距離射撃など、中世の城をもてあそぶがごとくに改良されていく。もちろんゲームでもそのあたりが取り入れられており、この時代を満喫できるようになっている。

【オープニング】
騎兵の突撃が早いかカノン砲の破壊力が勝るか!! 圧巻のオープニング

 ゲームに登場するのはイギリス、フランス、ロシア、トルコなど異なる文化の16カ国だ。それぞれの国でアップグレードや施設を建てるのに必要な資材、養成できる兵員構成などが違っている。そのなかでおおまかには、西ヨーロッパ、スラブ、トルコの3種類に分けられる。

 トルコの国々の主戦力は費用の安い弓兵や軽歩兵のほか、養成が短時間ですむ重騎兵も特徴だ。攻撃力は高くないが、ほかの文明より簡単に組織立った軍隊を形成することができる。スラブの国では歩兵の養成に時間がかかるかわりに、スピードの速い軽騎兵による奇襲攻撃、陽動作戦などが有効だ。西ヨーロッパの国は盾、鎧で防備し、剣やマスケット銃で武装した歩兵が非常に高い戦力となる一方で、騎兵の養成には長い時間を要するため、速効性には欠けるかもしれない。

炎や煙といったエフェクトの素晴らしさは特筆もの
 またそれらを表現するグラフィックも非常に美しく仕上がっている。全16カ国を彩る建物はそれぞれデザインや大きさが異なりながらも、非常に精緻な描き込みがなされており、壊すのがもったいないくらいだ。戦場を駆け回るユニット達も同様。動作パターンは非常に豊富で、大部隊を構成したときの行進の足並みや一斉射撃をするときの美しさは格別だ。一人一人の兵士をよく見れば刀を振り回したり、弾を装てんするところまで再現しているのだ。

 さらに飛び交う砲弾やその破片、爆発の煙や炎などの効果はほかのRTSに大きく勝っている点だろう。カノン砲の弾が次々と炸裂する様や、大砲を連射する軍艦の勇姿は戦いを忘れ去る美しさだ。

 またマップは完全に物理計算され、高度差によって生じるユニットの動作や砲撃ユニットの射程、視界などの変化が、作戦上大きな要素になっている。しかも驚くべきことに、低スペックのマシン上でも、同時に8,000ユニットもフィールド上に存在させることが可能だ(つまり4人対戦では2,000人までの軍隊を動かせることになる)。この大軍勢を自在に操ることこそが「コサックス」の一番大きな醍醐味といえるだろう。

【異なる文化とユニットの数々】
豪奢なヨーロッパ、質素なスラブ、オリエンタルなトルコと一目でその国の特徴がわかるようになっている。


■ 大軍勢は一日にしてならず

最初はまず自分の本拠地を蹂躙されないよう施設周りに歩哨を立てるのが吉
 ゲームの基本システムはほとんど「Age of Empires」(以下AoE)と同じだ。資源を集めて建物を建てながら軍隊の整備、技術の研究をして次の時代(18世紀)への進化を図る。が、大部隊を編成しようにもそう簡単にはいかない。このゲームでは、民間人と施設の周りに自軍の兵士がいないと敵に接収されてしまうため、本拠地の施設周りに必ず歩哨のための兵士を置かなければならないのだ。

 うっかり歩哨を忘れようものなら、塔から町の中心でもある公会堂から、あらゆるものが接収されて大混乱となってしまう。そのため本拠地から少し遠めの資源を採取する際には少しまとまった軍隊でカバーしないと結局無駄骨になってしまう。まずプレーヤーがすることは自分の施設を固める程度の軍隊を作ることになる。

養成所は多くてもせいぜい2つまで。兵士を集める場所を確保しつつ余裕を持って建設
 そしてさらに、ユニットを生産できる施設は同じものを建てれば建てるほど建設費用がかかっていくことが挙げられる(歩兵育成所では10倍ペースで増)。これでは「AoE」のように敵地の真ん前に5個、10個と養成所を蜂の巣のごとく建て、そこを前線基地にするようなことはとてもできない。

 だから一度1,000人単位の軍隊が壊滅すると素早いリカバーはまず不可能だ。また18世紀に進化した時に登場する新しい歩兵ユニットを生産するには「18世紀歩兵養成所」を建てなければならない。国によっては騎兵や大砲の生産スピードは異常なほど遅く、生産スピードをあげるアップグレードをし続けなければ到底役に立たないほどだ。そのため「AoE」とまったく同じ感覚でプレイをしていると、その異様なまでの冗長さに途中で投げ出したくなってしまうかもしれない。



コサック騎兵が敵の本拠を奇襲攻撃。歩兵をひきつけて別部隊で施設を奪取するのだ
 それを解消しているのが傭兵の存在だ。傭兵は「外交館」でわずかな金で大量に雇い入れることができる。もちろん優秀な兵ほど高価だ。18世紀に進化しないと生産できないユニットである「てき弾兵」も簡単に雇うことができる。エリート兵である「てき弾兵」は銃剣で武装しており、近距離、遠距離攻撃のほか手榴弾を発射でき、施設の破壊にも役に立つ万能ユニットだ。このゲームでは一般の歩兵や騎兵は施設を破壊できないため、傭兵として雇える「てき弾兵」は重宝する存在だ。

 またコサック騎兵はどのユニットも敵わない圧倒的なスピードを持つ。序盤に敵の本拠を風のように疾走し、敵防御網をかきまわす様は爽快そのものだ。そのほか歩兵や弓兵(火矢で建物の破壊が可能)など種類も豊富だ。これを雇わない手はないが、彼らには雇用費のほかに維持費として金がかかることに注意しよう。また研究によるグレードアップに縁がないため、時代の経過につれ、改良に改良を重ねて着実に強くなっていく正規軍の力には到底及ばなくなっていく。


■ AoEとの大きな違い

石や木は比較的多くみつけられるため、この鉱山の奪い合いが勝負の分かれ目
 このゲームでは「AoE」と同じ4種類(食料、木、石、金)のほかに鉄と石炭が加えられているが、「AoE」とは資源の使われ方もちょっと違っている。研究やユニットの育成にも使われるほか、常に消費されることに気をつけなければならない。ユニットには食料が必要で、人口が多くなればなるほど消費量も増えるため、常に増産し続ける必要がある。金は傭兵の維持に、木や石は壁、塔の維持に必要だ。鉄や石炭は銃、大砲の発射に必須で、どちらか一つでも底をつくと銃を持つ兵士は逃げ回るだけの存在になってしまう。特に海戦をするときには膨大な量が消費されるため、ゲーム開始から必死に貯めた資源が一気に半分以下ということもままある。

 金、石炭、鉄を採掘する鉱山の仕組みも特殊だ。採掘が行なえる民間人の数は限られており(最初は5人から最大95人まで)、上限の人数を増やすのにもアップグレードが必要だ。そのためゲーム進行につれて、アップグレードは必須となってくるのだが、これが滅茶滅茶に高い。最初のアップグレードはやりくりしてなんとか研究できるも、2段階目ですでに(木5,000、金7,750、食料25,000)と、とんでもないことになっている。

 さらにユニットパワーアップ系のアップグレードも「AoE」的な感覚での金2,000や3,000を必要とするものはざらで、中には木24,580、金9,800、石炭65,400を必要とする「数学の研究」(大砲の砲撃精度を35%上げる)など途方もないものまである。また研究施設でのアップグレードはいいとしても、数多く立てることができない養成所でのアップグレードは、「日々是生産」の合間に行なわなければならないため、とてつもなく時間がかかる。

本拠地の最前線にどんどんユニットを溜め込んでいこう。
 しかし、「まずは傭兵を使っての小競り合いで時間を稼いでいく」というこのゲームの流れを考えれば、それも当然といっていいかもしれない。ここはどっしりと構えて着実にグレードアップし、生産力の向上とともに正規軍を増やし、領土を拡張していこう。次第次第に膨れ上がっていく正規軍を見るにつけ、自らの野望も膨れ上がっていくのが手にとるようにわかるはずだ。


■ 最初はスピーディーに、そしてクライマックスは重厚に

完成しつつある軍団。これでもユニット数は少ないほうだ。傭兵を雇って盾となる部隊や陽動部隊なども用意しておけば作戦の幅が大きく広がる
 さて傭兵中心の軍隊で敵との小競り合いを演じているうちに正規軍は大きく膨らんでいるはずだ。歩兵の場合には士官と鼓兵をつけてやることで攻撃力や防御力の違う隊列を組むことができる。というより、士官がいるといないでは戦闘力に大きな違いが生じるので、ある程度集まったら隊にまとめよう。

 プレーヤーの命令一下、ドラッグした方向に隊の向きを変えられる。(ctrl+数字)を押すことでもグループ分けはできるが、このゲームではあまりにもユニットが多いため隊列を組んだほうが妥当だ。一方で傭兵や騎兵は隊列を組めないのでグループ分けをしたほうがいいだろう。また砲撃兵器は敵による奪取が可能なため、単独でうろうろさせるようなことが決してあってはいけない。

 いよいよ満を持して彼らを動かすときには、思わず画面の一つもキャプチャーしたくなってしまうだろう。その昂ぶりはちょっと抑えて、周りをよく偵察しておこう。奇襲に備えてある程度の兵士を本拠地に置いておくのも忘れずに。

ドラッグして部隊の方向を決められる。隊列を組んで防御の体勢を取れば高い防御ボーナスも得られる
 先に書いたようにこのゲームでは敵本拠地の鼻面に養成所の固め打ちができないため、自軍の本拠地からの出撃が基本となっている。そのためもあってか、敵本拠にたどり着くまでに数々の野戦を経ることになる。という意味では、このゲームは「AoE」以上に、地形に即した戦略を立てる必要がある。遠距離射撃で敵をびびらせて敵の騎兵を引き出し、それをマスケット銃兵の大部隊で狙い撃ち、雪崩を打って突撃してくる騎兵にはマスケット銃兵を引かせて歩兵で当たる、なんていう芸当もできる。近づかれることを予想して戦う前に木の柵をこしらえておくなんてのもありかもしれない。

両サイドが丘になっている地点で、こんな進軍をするのは0点だ
 映画「203高地」よろしくカノン砲や榴弾砲などの大砲を配置するための高地を奪取する攻防があったり、逆にそれを防御する楽しみもある。また渓谷を長い隊列で進軍する軍隊に、両サイドからの一斉射撃であたるのは「孫子」の兵法書そのままだ。艦隊戦においては船の旋回方向や砲撃するときの船体の向きにまで気をつかっていかないとなす術もなくやられてしまうのだ。

 地形や部隊の状況に応じて限りなく戦術を組めるのがこのゲームの特徴のひとつだが、ここでひとつ言わせてもらうと、そのために必要な偵察活動がほとんどできないという状況には納得がいかない。17世紀の段階ではプレイヤーの視界は施設があるところか、ユニットがいるところに限られている。そのほかはすべて闇だ。つまりユニットがいなくなればそこは地形さえもわからなくなってしまう。これはあまりにも不自然だろう。

 またコンピュータ相手の場合、戦おうとしても相手は逃げるばかりでまったく戦闘がかみ合わないこともあり、折角の大会戦気分に水を注されることもしばしばだ。そして一転、18世紀に進化し偵察気球の研究をすると、たちどころにマップ全域が明らかになり、地形はもちろんすべての敵の動きまで丸見えになってしまう。この極端さはどうなんだろう、という気がする。

【戦闘シーン】
歩兵軍団を一刀両断にする騎馬軍団の図は「戦争と平和」の一ページを髣髴とさせるものがある

【海戦】
砲弾の炸裂した破片が乱れ飛ぶ海戦は特に圧巻。できれば挟み撃ちなどの策を練って敵に当たりたい。


 最後にもう一つ苦言を呈せば、ユニットのAIに頭をかしげる部分が非常に多かった。敵に背を向けた兵士が後ろから槍で攻撃されても無反応だったり、カノン砲によりダメージを与えられた自軍の兵士が、そのカノン砲が自軍のものであっても向かっていったり(当然攻撃できるわけもない)、集団で敵に立ち向かえば押すな押すなという声が聞こえてきそうな大渋滞だ。自ら戦いやすい位置へと動くようなこともなく、ひどく効率が悪い。敵にも同じような症状が見られ、それに助けられることもあるがなんとも爽快味が薄い。これらは「AoE」のシステムに慣れている人には、どうしようもなく気にかかる大きなマイナス点だろう。

 結論としては、このゲームは「AoE」を基礎に置きながら、それを完全に消化し、近世へと昇華できているとは到底言いがたい。18世紀に進化する意味も、新しい技術やより強いユニットの生産というだけで、戦術が劇的に変わるようなことはなく、無理やり追加されている感が否めない。多くの新しい要素やグラフィックの演出も盛り込まれているだけに残念でならないが、近世を俯瞰から丸ごと再現したゲーム、という視点から見れば今後本作を上回るゲームはしばらく現れそうにない。ストラテジーというより、シミュレータとして評価したい作品である。

(c)2000-2001 CDV Software Entertainment AG, and GSC Game World. All Rights Reserved.


【動作環境】
  • CPU:Pentium II 200MHz以上(Pentium II 350MHz以上)
  • メモリ:32MB以上(64MB以上を推奨)
  • HDD:400MB以上
  • CD-ROMドライブ:2倍速以上 (起動時必須)
  • 解像度:1,024×768ドット


□ズーのホームページ
http://www.zoo.co.jp/
□「コサックス ~ 攻城の世紀 ~」のホームページ
http://cossacks.zoo.co.jp/

(2001年8月18日)

[Reported by 嶋村智行]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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