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★ PCゲームレビュー ★
第二次世界大戦を扱ったRTS「サドンストライク」で鮮烈な印象を我々に残したドイツのCDV Softwareが、次にゲームの題材としたのは16世紀~18世紀のヨーロッパ。膨大な種類のユニットが登場し、モニタを埋めつくすほど大軍勢の激突を「三銃士」や「ベルサイユの薔薇」の時代で再現したのが今回ご紹介する「コサックス~攻城の世紀~」だ。 ■ RTSでは初となるコサックスの時代
このゲームでは近世を扱った唯一のRTSらしく、登場するユニットたちも実に華々しい。サーベルや槍などの近接武器を持つものから、鉄砲(マスケット銃)を持った兵士までが登場するのは中世と変わらない。が、鉄砲の弾から肉体を保護する胸甲や鉄砲を持ちながら近距離でも攻撃できる銃剣などの開発により、歩兵は洗練され多種多様に分かれている。騎兵の分野でもスピード重視のものから小型の拳銃を持った重騎兵、マスケット銃を持ち、歩兵としても戦える竜騎兵などが登場し、戦術面でも大きな変化が生まれた。
さらにこの時代、攻城兵器としてカノン砲がどんどん改良され、発射間隔の短縮化、高角度発射に超長距離射撃など、中世の城をもてあそぶがごとくに改良されていく。もちろんゲームでもそのあたりが取り入れられており、この時代を満喫できるようになっている。
ゲームに登場するのはイギリス、フランス、ロシア、トルコなど異なる文化の16カ国だ。それぞれの国でアップグレードや施設を建てるのに必要な資材、養成できる兵員構成などが違っている。そのなかでおおまかには、西ヨーロッパ、スラブ、トルコの3種類に分けられる。
トルコの国々の主戦力は費用の安い弓兵や軽歩兵のほか、養成が短時間ですむ重騎兵も特徴だ。攻撃力は高くないが、ほかの文明より簡単に組織立った軍隊を形成することができる。スラブの国では歩兵の養成に時間がかかるかわりに、スピードの速い軽騎兵による奇襲攻撃、陽動作戦などが有効だ。西ヨーロッパの国は盾、鎧で防備し、剣やマスケット銃で武装した歩兵が非常に高い戦力となる一方で、騎兵の養成には長い時間を要するため、速効性には欠けるかもしれない。
さらに飛び交う砲弾やその破片、爆発の煙や炎などの効果はほかのRTSに大きく勝っている点だろう。カノン砲の弾が次々と炸裂する様や、大砲を連射する軍艦の勇姿は戦いを忘れ去る美しさだ。
またマップは完全に物理計算され、高度差によって生じるユニットの動作や砲撃ユニットの射程、視界などの変化が、作戦上大きな要素になっている。しかも驚くべきことに、低スペックのマシン上でも、同時に8,000ユニットもフィールド上に存在させることが可能だ(つまり4人対戦では2,000人までの軍隊を動かせることになる)。この大軍勢を自在に操ることこそが「コサックス」の一番大きな醍醐味といえるだろう。
■ 大軍勢は一日にしてならず
うっかり歩哨を忘れようものなら、塔から町の中心でもある公会堂から、あらゆるものが接収されて大混乱となってしまう。そのため本拠地から少し遠めの資源を採取する際には少しまとまった軍隊でカバーしないと結局無駄骨になってしまう。まずプレーヤーがすることは自分の施設を固める程度の軍隊を作ることになる。
だから一度1,000人単位の軍隊が壊滅すると素早いリカバーはまず不可能だ。また18世紀に進化した時に登場する新しい歩兵ユニットを生産するには「18世紀歩兵養成所」を建てなければならない。国によっては騎兵や大砲の生産スピードは異常なほど遅く、生産スピードをあげるアップグレードをし続けなければ到底役に立たないほどだ。そのため「AoE」とまったく同じ感覚でプレイをしていると、その異様なまでの冗長さに途中で投げ出したくなってしまうかもしれない。
またコサック騎兵はどのユニットも敵わない圧倒的なスピードを持つ。序盤に敵の本拠を風のように疾走し、敵防御網をかきまわす様は爽快そのものだ。そのほか歩兵や弓兵(火矢で建物の破壊が可能)など種類も豊富だ。これを雇わない手はないが、彼らには雇用費のほかに維持費として金がかかることに注意しよう。また研究によるグレードアップに縁がないため、時代の経過につれ、改良に改良を重ねて着実に強くなっていく正規軍の力には到底及ばなくなっていく。 ■ AoEとの大きな違い
金、石炭、鉄を採掘する鉱山の仕組みも特殊だ。採掘が行なえる民間人の数は限られており(最初は5人から最大95人まで)、上限の人数を増やすのにもアップグレードが必要だ。そのためゲーム進行につれて、アップグレードは必須となってくるのだが、これが滅茶滅茶に高い。最初のアップグレードはやりくりしてなんとか研究できるも、2段階目ですでに(木5,000、金7,750、食料25,000)と、とんでもないことになっている。 さらにユニットパワーアップ系のアップグレードも「AoE」的な感覚での金2,000や3,000を必要とするものはざらで、中には木24,580、金9,800、石炭65,400を必要とする「数学の研究」(大砲の砲撃精度を35%上げる)など途方もないものまである。また研究施設でのアップグレードはいいとしても、数多く立てることができない養成所でのアップグレードは、「日々是生産」の合間に行なわなければならないため、とてつもなく時間がかかる。
■ 最初はスピーディーに、そしてクライマックスは重厚に
プレーヤーの命令一下、ドラッグした方向に隊の向きを変えられる。(ctrl+数字)を押すことでもグループ分けはできるが、このゲームではあまりにもユニットが多いため隊列を組んだほうが妥当だ。一方で傭兵や騎兵は隊列を組めないのでグループ分けをしたほうがいいだろう。また砲撃兵器は敵による奪取が可能なため、単独でうろうろさせるようなことが決してあってはいけない。
いよいよ満を持して彼らを動かすときには、思わず画面の一つもキャプチャーしたくなってしまうだろう。その昂ぶりはちょっと抑えて、周りをよく偵察しておこう。奇襲に備えてある程度の兵士を本拠地に置いておくのも忘れずに。
地形や部隊の状況に応じて限りなく戦術を組めるのがこのゲームの特徴のひとつだが、ここでひとつ言わせてもらうと、そのために必要な偵察活動がほとんどできないという状況には納得がいかない。17世紀の段階ではプレイヤーの視界は施設があるところか、ユニットがいるところに限られている。そのほかはすべて闇だ。つまりユニットがいなくなればそこは地形さえもわからなくなってしまう。これはあまりにも不自然だろう。
またコンピュータ相手の場合、戦おうとしても相手は逃げるばかりでまったく戦闘がかみ合わないこともあり、折角の大会戦気分に水を注されることもしばしばだ。そして一転、18世紀に進化し偵察気球の研究をすると、たちどころにマップ全域が明らかになり、地形はもちろんすべての敵の動きまで丸見えになってしまう。この極端さはどうなんだろう、という気がする。
最後にもう一つ苦言を呈せば、ユニットのAIに頭をかしげる部分が非常に多かった。敵に背を向けた兵士が後ろから槍で攻撃されても無反応だったり、カノン砲によりダメージを与えられた自軍の兵士が、そのカノン砲が自軍のものであっても向かっていったり(当然攻撃できるわけもない)、集団で敵に立ち向かえば押すな押すなという声が聞こえてきそうな大渋滞だ。自ら戦いやすい位置へと動くようなこともなく、ひどく効率が悪い。敵にも同じような症状が見られ、それに助けられることもあるがなんとも爽快味が薄い。これらは「AoE」のシステムに慣れている人には、どうしようもなく気にかかる大きなマイナス点だろう。 結論としては、このゲームは「AoE」を基礎に置きながら、それを完全に消化し、近世へと昇華できているとは到底言いがたい。18世紀に進化する意味も、新しい技術やより強いユニットの生産というだけで、戦術が劇的に変わるようなことはなく、無理やり追加されている感が否めない。多くの新しい要素やグラフィックの演出も盛り込まれているだけに残念でならないが、近世を俯瞰から丸ごと再現したゲーム、という視点から見れば今後本作を上回るゲームはしばらく現れそうにない。ストラテジーというより、シミュレータとして評価したい作品である。 (c)2000-2001 CDV Software Entertainment AG, and GSC Game World. All Rights Reserved.
□ズーのホームページ http://www.zoo.co.jp/ □「コサックス ~ 攻城の世紀 ~」のホームページ http://cossacks.zoo.co.jp/ (2001年8月18日)
[Reported by 嶋村智行] I |
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