★GBAゲームレビュー★

黄金の太陽 開かれし封印

  • ジャンル:ロールプレイング
  • 発売元:任天堂
  • 価格:4,800円
  • 対応プラットフォーム:GBA
  • 発売日:発売中




 メガドライブ、セガサターンの「シャイニングシリーズ」や、ニンテンドウ64、ゲームボーイ版「マリオゴルフ」、「マリオテニス」等を手がけたCAMELOT制作によるゲームボーイアドバンス用本格RPG。本作オリジナルの二大新要素“ジン”と“エナジー”を中心に、その魅力を探ってみよう。


 王道ならではの安心感と、失われていない新鮮さ

 「極めし者は『すべて』を手にする」とまで言われた古代科学である錬金術。その源となる地・水・火・風、4つのエレメンタルはアルファ山のソル神殿に厳重に封印されていた。ある日、山へ赴いた主人公・ロビンと幼なじみのジェラルド、ジャスミン、学者のスクレータの4人は、エレメンタルの解放を目論む謎の一団と出会う。彼らを追って入ったソル神殿で、スクレータとジャスミンは囚われてしまう。そこには事故で死んだと思われていたジャスミンの兄、ガルシアの姿もあった。

 このような導入で始まる「黄金の太陽」は、フィールドマップを移動して町やダンジョンへ向かい、戦闘やイベントをこなしながら冒険を進めていくという、いわば“正統派RPG”である。しかしこれはあくまで骨子であり、オリジナリティ溢れるシステムも多数搭載されている。もちろんただ新奇であればいいというわけではない。ゲーム全体の安定感があってこそ初めてプレイの安心感、ゲーム世界への没入観も生まれてくるものだ。例えばエンカウント率、戦闘システム、マップの構造、難易度曲線といった要素……こうした部分の作り込みに関してだが、RPGを作り慣れたメーカーだけあってさすがというべきか、「黄金の太陽」はこれを高い水準でクリアしていると感じた。個人的には最初の村で与えられる情報量が多すぎる気もするが、欠点というほどのレベルではない。紛れもない正統派、それでいて新鮮さを感じさせてくれる作品に仕上がっている。さて、少し話題がそれたが、ここで本作の持つオリジナリティに迫ってみよう。

 多彩な用途を持たせたエナジー

 「黄金の太陽」は、謎解きに重きが置かれたRPGだ。スイッチを押す、箱を動かすといったスタンダードなものから、岩を持ち上げて下を通る、水たまりを凍らせて氷柱を立てる、植物を育てて梯子代わりに使うなど、さまざまな仕掛けが登場する。これらの仕掛けに一役買っているのが「エナジー」の存在。エナジーとは、わかりやすく言えば魔法のことである。通常は魔法といえば戦闘で使う攻撃魔法、回復魔法、補助魔法と相場は決まっており、戦闘以外で使えるのは回復魔法と、ワープ系の魔法くらいのものだろう。
 これが本作のエナジーになると戦闘では使えないものや戦闘以外でも使える攻撃魔法、というものが多数あったりする。後者では例えば「スピン」がある。戦闘で使うと竜巻でダメージを与えるが、街やダンジョンでは目の前のものを吹き飛ばすことができる。同様に「アクア」は水の攻撃だが、火を消すことができる。

 序盤でエナジストの一人であるイワンが使える「リード」は、人の心を読むことができる。実際に存在したらなんとも空恐ろしい能力ではあるが、ゲーム中ではこれが非常に役立ってくれる。村人の思わぬ本音が聞けたり、アイテムやジン(後述)を見つけ出すヒントが含まれていたりする。積極的に街の人にはリードをかけるようにしよう。  また、同じくイワンが中盤で使える「イマジン」は、通常発見できない隠し扉や宝箱が見えるようになる。この2つは頻繁に使うことになると思うので、ショートカット(LR)に登録しておくといいだろう。

 謎解き要素が強いといっても、謎がわからず進めなくなるほど意地悪な仕掛けはなく、頭を捻りながら探索を進める過程は小気味よい楽しさがある。ゲームの進行に必要不可欠となるエナジーは必ず手に入るようになっているし、そのときに詳しい解説があるので(敵が見本を見せてくれることもある)、迷うこともあまりないだろう。どうしても解けない仕掛けもあるかもしれないが、それはほとんどの場合、ゲームを進めるために必要ではないか、その時点では絶対に解けないもの。いったん放置して先に進み、改めて出直してみるといいだろう。

ダンジョンだけでなく、街のマップ上にも隠し部屋や隠しアイテムが存在していることもある。試せるだけのことは試してみよう。新たなエナジーを入手したら戻ってみるのもいいかもしれない


 セットかスタンバイか、ジンの戦略

 冒険中に捕まえることのできる「ジン」は、地・水・火・風のいずれかに属する召喚獣。戦闘中に呼び出して敵にダメージを与えるのが基本的な使い方になる。こう聞くと単純だが、ジンには2つの状態(正確には3つ)があり、これによってキャラクタに与える影響や効果もまったく異なるものになる。

 まず、通常の「セット」と呼ばれる状態。戦闘で使用すると解放し、そのジンが持つ効果を得られる。ジンは1体1体に名前がつけられていて、能力も個別に決まっている。ダメージを与えるだけでなく、パーティーの攻撃力アップやHP回復などの補助的な能力もある。また、セット状態にしておくと、キャラクタのパラメータがアップする効果もある。解放すると「スタンバイ」状態になる。

 スタンバイ状態では、ジンを使うと敵すべてにダメージを与える全体攻撃になる。これは装備キャラクタだけでなく、誰でも呼び出すことができる。同属性のスタンバイ・ジンが多いほど召喚獣も派手で強力なものに変化していく。これを使うと最低1ターンの間「リカバリー」状態となり、ジンを使用できなくなる。リカバリーがすむとセット状態に戻る。

 ジンの仕様はこれだけではない。ジンに大きく関係してくるのがキャラクタのクラスだ。4人のキャラクタにも属性があり、これと異なるジンを装備すると、クラスが変化して使用できるエナジーも大幅に変化するのだ。ただしこれは「セット」状態であることが前提となる。ジンの状態切り替えはフィールド上でも自由にできるので、常に召喚獣の使えるスタンバイ状態にして進むのが基本的には楽だが、クラスによって強力なエナジーが使えたり、解放時の効果には全体回復や蘇生などもあるので、セットとスタンバイの状態は、状況やジンの能力によって変わってくる。

 長期戦になるボス戦などはセット状態のほうが楽だが、クラスが変化することで体力回復のエナジーが使えなくなったりする場合もある。状況に応じてジンを切り替え、使い分けていくことが必要になってくる。こうしたジンの戦略もさることながら、やはり何よりもうれしいのは新しいジンを手に入れたときだ。より高位の召喚獣を見る楽しみはもちろん、新たなクラスチェンジ&エナジー修得を模索して、あっちこっちのキャラに付け替えしてみるのもまた、たまらなく楽しいのだ。

セット状態のジンを解放することで、そのジンが持つ能力が行使される。そしてスタンバイ状態へシフト スタンバイ状態のジンの数が多いほど召喚魔法も強力になる。これは火属性×3のヴェスタ


 擬似3D処理による迫力の戦闘システム

 戦闘はコマンド入力で行なう標準的なスタイルだが、視点をパーティーの背後に置き立体的に見せる工夫と、派手なエフェクト、効果音の相乗効果で、非常に迫力あるものになっている。とはいえRPGでは何百回と戦闘を繰り返すことになるので、ストレスのないレスポンスとテンポのほうが重要だったりする。この点も安心していい。爽快かつスピーディにターンが進行していくので、飽きのこない戦闘が楽しめる。召喚獣の画面効果をキャンセルできるのもひそかにポイントだ。

ひたすら派手で爽快な戦闘シーン。爆音を基調とた効果音も耳に残る。サウンドもじっくり聞いてみてほしい


 店の下取り価格が良心的(元値の75%)だったり、戦闘時に敵の逃亡が失敗したり、歩くだけでEP(エナジーポイント)が徐々に回復したりと、そんな細やかな気配りにも好感が持てた。とにかく丁寧に作り込まれているので、RPGが好きな人なら迷わず買って損のない作品だ。

(C)2001 Nintendo/CAMELOT

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□製品情報
http://www.nintendo.co.jp/n08/agsj/

(2001年8月9日)

[Reported by 氏家雅紀]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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