村上龍の原作をノベルゲーム化
メディアファクトリー、PS2「五分後の世界」

8月2日 発売

価格:5,800円



制限時間内に画面上をクリックして次の行動を決める「ビュー・クリック・システム」を採用
 株式会社メディアファクトリーは、プレイステーション2用ソフト「五分後の世界」を8月2日に発売する。価格は5,800円。

 「五分後の世界」は、村上龍原作の同名小説をゲーム化したもので、監修も氏自身が手がけている。今現在、我々が生活している世界とは全く異なる「五分間」ずれた別世界「違う日本」に突然迷い込んでしまった人々の、不安や葛藤、生きざまを描いたストーリーとなっている。

 本作は、原作の世界をさらに広げるという意味で「チェーンノベル」と名づけられている。ひとつの世界観に対しプレイ可能なキャラクタを複数用意することで、それぞれが連動する複数のストーリーが発生。いちキャラクタの行動が、自身の先行きだけではなく他キャラクタの未来にも影響を与え、その結果がさまざまな分岐やエンディングへとつながっていく。全てを解き明かすには、100時間以上のプレイを要するという。

 システム面では、グラフィカルな分岐選択肢「ビュー・クリック・システム」を採用。シナリオ中の重要な局面で発動し、制限時間内に動画内の目的部分をクリックすることで、キャラクタの次なる行動が決定する。感覚的にゲームを進められるシステムにより、取っ付きやすく飽きのこないプレイ感を実現したとしている。


■ 村上龍自身が語る「五分後の世界」

 小説『五分後の世界』では、オダギリが『五分後の世界』に迷い込んで彼が変化していく過程を通して、一つのパラレル・ワールドを書こうとしました。事象を映し出す鏡のような役割です。今僕らが生きているこのリアルな世界が、不可避なものだとか、普遍的なものではなくて「たまたまこうなってるんじゃないか?」っていうことが言いたかったんですよ。現実的に今の社会システムを賛美するとか、攻撃する、批判するとかじゃなくて、考え方のフレームになるようなものを書いたつもりです。非常に仮想的なものなので……。人間は環境や経済活動によって変化していくし、内面も形作られていくわけですよね。だから国と個人をあまり比較してはいけないんですが、日本だってモンゴル辺りにあれば、どうなっているかわからないんですよ。『五分後の世界』で一番やりたかったのは「違う可能性」を考えてみる、ということですね。

 テーマは『危機感』なんです。危機感をもって生きているかどうか、しかも危機感を持ちながら普段はリラックスできているかどうか、というのが一番大きなテーマです。だからどんな人物を持ってきても、その人物が危機感を持っているかどうかで『五分後の世界』でサバイバルできるかどうか決まってきます。いろいろな人物を創造しても、『五分後の世界』の中には一種の、人間を規制していく力があるので、どんな人物を創造しても、その人物が危機感を持っているかどうかで『五分後の世界』でサバイバルできるかどうかが必然的に決まってくるんですよ。タフな人間だけが生き残る『北斗の拳』みたいな世界ではないので、非常に身体が弱いとしても、危機感があって、物事をマネージメント、リスク管理ができる人が生き延びることが出来る世界なんです。

 小説や映画ですとインタラクティビティというのは、あんまり重要視しないようにしています。ゲームでユーザーが選ぶというのは面白いとは思いますが、僕の作品では有無を言わせずにそのストーリーを見せたいと。読者が考えつくような結末というのは小説家は可能性としていっぱい考えてるんです。最終的に「これしかない」と思って出すわけです。それによってあるモチーフ、テーマ性が浮き彫りにされるんです。ただゲームに関しては、ツリー状の樹形図といっても、人間の行動や思考を決定する様々な要因を一人の主人公の行動について全て考えるわけですよね。だから、結果的には同じことをしているんだと思うんですよ。意志を持ってそのひとつをみせるのか、ユーザーの思考によってみせていくのかの違いで。

 今回のゲーム化では、僕の原作をいろいろな形に変化させたり、原作にはいない登場人物を新規に登場させても、物語の構造が壊れなかったというか破綻しなかったというか……。つまり『五分後の世界』というひとつの世界が、そういうアレンジに耐える構造と力を持っていたというのは原作者としては嬉しいことです。映画化にしろゲーム化にしろ僕はディレクターがそれを変化させるのは当たり前のことだと思います。僕も映画を作るからわかるんですが、自分の原作も映画にするときには脚本の段階で変えますし、或いは日々の撮影の中で変えていくわけです。だから変わったということや、ゲーム化の段階で方法論が変わるということも最初から納得していて、そういうアレンジに原作のストラクチャーが耐えたということが喜ばしいと思います。

【スクリーンショット】

(C)2001 MEDIA FACTORY

□「5分後の世界」のホームページ
http://www.5min.net/

(2001年7月31日)

[Reported by 北村孝和]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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