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★ PCゲームレビュー ★
現在我々が使っているコンピュータについて考えれば、それは独自でいきなり歴史に登場したわけではないことはすぐにわかるであろう。コンピュータ自体の開発はもちろん電気の発見や大量生産、近世での物理学の確立、アラビアでの数学の登場、もっと根源的にはピラミッドの時代に遡る天文学の発見が必要不可欠であったはずだ。メディアクエストから発売される「Call to PowerII」は、そうした人類の営みに思いを馳せる機会を与えてくれる数少ないゲーム「Civilization(以下Civ)」の流れをくむターン制のストラテジーゲームだ。
もともとボードゲームであった「Civilization」は天才ゲームデザイナーSid MeiyerによりPCゲーム化され、一躍その知名度を上げた。前作の「コール トゥ パワー」は、Sid Meiyerのオリジナルシリーズをベースにしながらも、現代よりも数世紀先の未来技術まで模索した部分と、独特のアイディアが多数盛り込まれていたことでファンにも評価が高かった。が、今回ご紹介する「II」ではSid Meiyerのシリーズと一線を画すような変更も行なわれている野心作となっているのだ。 ■ 「Civilization」というゲームの魔力
プレーヤーは3種の資源の収集バランスを変えることで、違った成長をさせることができる。食糧を多く集めればより早く人口が増え巨大な都市になり、資材を集めれば戦闘ユニットや都市の環境を改善する施設を素早く作ることができる。金があれば、より多くの科学研究に費用を当てることができるのだ。科学研究は一見無駄なようだが、ゲーム初期は法律や貿易、宗教でさえ発明されていない状態でスタートするので、いかに他文明よりも早く科学の進歩を遂げるかが重要となっているのだ。また都市には民衆の暮らしがあり、労働条件や食糧供給、賃金などもプレーヤーが設定でき、彼らが幸福かどうかにも気を配らなければならない。
こうして都市を成長させ、新しい開拓民ユニットを作成し周囲に都市を広げていく過程で、暗黒の世界からいきなり現れる未知の他文明との接触がこのゲームの次の段階といえる。文化交流、交易、戦争など自分の帝国を拡張しつつも、全世界を敵に回すようなことは避けねばならない。乱暴なようだが、基本的なゲームの流れはリアルタイムでない「Age of Empire」、というとわかりやすいのかもしれない。が、ユニット同士の決戦が主な面白さであるリアルタイムゲームとは異なり、密度の濃さは圧倒的だ。
文明が成長する過程で選択することになる「政治体制」には、君主制や神権政治、ファシズムほか多種多様に用意され、政治体制の特徴が科学や経済の発展を左右する。外交では条件を細かく設定しつつ交渉時の態度まで選択できる駆け引きの醍醐味が味わえる。“七不思議”の建設の競争のために、過酷な労働条件で民衆を働かせてしまう自分に歴史の一ページを垣間見たりしてしまうのである。自分の主義に則って、じっくりそしてみっちりと戦略を練っていけるのがこのゲームの醍醐味といえる。戦闘ユニットでガンガン押しまくるもよし、他国と同盟しひたすら自国の科学発展につくすもよしで、マルチプレイではプレーヤーの性格がむき出しとなるのも楽しみの一つだ。
■ 「コール トゥ パワー」シリーズの特徴
まず公共労働力という概念。これは要するに公共事業の労働力で、これを生産力から差し引いて貯めることにより、道路や鉱山などのタイル改善を簡単に行なえるようにしている。そして今作から追加された「市長」システム。これにより都市の委任ができるようになった。生産、人口増加、幸福度などの重点目標を設定することもでき、しかも暴動や飢饉に陥るような心配もなく、着実に職務を遂行してくれるというのもありがたい。
その一方で現代にいたるまでの技術やユニットがかなり間引かれているので、オリジナルシリーズのファンにはがっかりかもしれない。また、先進技術の発見により時代遅れになる七不思議が極めて少ないため、他文明の独走を一度許すと逆転が難しくなっている。 ■ サクサクと進むプレイは「II」になってさらに進化
戦闘部分にも違いが見られる。前作は、頭数と戦闘力の単純計算に加えて、遠距離攻撃の要素を加味することで、Civilizationシリーズより多少戦略性が増した程度だったが、「II」では同じユニットでも動員レベルが違うことで体力に変化が生じるようになっている。低い動員レベルでは維持費が低いかわりに極端に体力が低くなるという具合だ。さらに、1対1で戦われる近接戦闘において、戦う相手のいない「騎兵」や「戦車」などは、移動力の高いユニットが挟撃ユニットとして横から同時攻撃ができるようになった。
これによりほとんどすべての戦闘ユニットに必然性が生まれ、戦闘での戦略にさらなる深みが増している。また前作では、時代の経過と登場するユニットの変遷のバランスが悪く、各時代(特に古代)を楽しんでいる余裕があまりなかった。「II」ではバランス調整が行なわれているのか、古代やルネッサンス時代のユニットである「装甲歩兵」や「弓騎兵」、「侍」、「投石器」などのユニットでも存分に戦争が楽しめる。また「奴隷商人」や「聖職者」などのステルスユニットの出番も少し遅くなり、スタートしてまもない頃にいきなり「開拓民」を拉致されて、プレーヤーのやる気をそぐようなこともなくなっている。
■ 勝利の目標もプレーヤーのお好み次第 「コール トゥ パワー II」では勝利目標が4つ用意されている。まず世界征服。他のすべての文明の都市をマップ上から消し去るのだ。2つ目は平和共存。外交交渉によって他のすべての文明と恒久的な同盟を結ばなければならない。3つ目は科学的勝利。科学進歩の最果てにある「ガイアコントローラー」の製造をすることで達成できる。4つ目はハイスコアでの勝利。2300年までの6300年間を粘りに粘って、その時点で獲得しているスコアが一番高ければ勝ちとなる。つまりプレーヤーがどの分野に力を注いでも勝利の可能性があるというわけで、この果てしない懐の深さも「Civilization」の特徴ともいえるだろう。 「コール トゥ パワーII」のローカライズにおいてはメディアクエストの「CivilizationII」に携わったチームが担当しており、翻訳やマニュアルの作りもかなりしっかりしている。初心者はもちろん、マルチプレイにも向くように作られており、オリジナルシリーズ以外はちょっと……という人にもお勧めのタイトルとなっている。Call to Power II is a trademark and Activision is aregistered trademark of Activision, Inc (c)2000 Activision,Inc,All rights reserved. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.
□マイピックのホームページ http://www.mediaquest.co.jp/ □「コール トゥ パワー II 完全日本語版」の公式ページ http://www.mediaquest.co.jp/hot/hot_0.html/ (2001年7月24日)
[Reported by 嶋村智行] I |
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