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★ GBAゲームレビュー ★
PS、WS、PS2と徐々にその世界を広げている「風のクロノア」シリーズ最新作。携帯ゲームとしては2作目で、GBAのハードウェア特性に合わせ、各ワールドの4つめ以降は、パズルビジョンとアクションビジョンのどちらかを選択してもプレイする事が可能。最初は片方のルートを通ってクリアを目指し、慣れてきたら残りのルートも攻略していくなど長く遊べるように、そしてシリーズの特徴でもあるドラマチックなストーリーを多くのユーザーに味わってもらいたいという配慮が感じられる作品。
■ シンプルな基本操作と多彩な仕掛けで楽しめるパズルビジョン まず触って最初に感じたのは、ボタンに対するキャラクタの反応。実に自然でレスポンスがいい。クロノアの操作は、十字ボタン+A、Bの2つのボタンですべてをまかなうシリーズ共通のものになっており、シリーズをプレイしたことのない人でもすんなり入っていける。 敵を風だまで捕まえ、投げつけたり(捕まえた状態でもう一度Bボタンを押せばよい)、ジャンプ中にもう一度Aボタンで2段ジャンプするという基本操作は今までのシリーズ通り。単純だが、このシンプル操作に仕掛けが加わることで、パズルビジョンは多彩なバリエーションを構築している。 今回の「~夢見る帝国~」では新たな仕掛けとして、入ると同じ番号の別の扉に移動する「ワープ扉」、風だまを当てると部屋全体が90度回転する「回転スイッチ」、同じ模様の壁に近づけると大きな手が出現してくっつく「磁石ブロック」、ハコなどで水を防ぎつつ渡る「滝」、シーソーのようにクロノアやハコを置くと高さが変わる「天秤」、水圧で高さが変わる「噴水足場」そして、矢印の指す方向へハコや敵を飛ばすことのできる「矢印パネル」などが初登場。 いずれのアイテムも、近くにある看板を見れば使い方のヒントなどが明記されており、とまどうことはない。むしろ複数の仕掛けが込み入ってくる後半において、仕掛けを解き明かしたときの嬉しさはPS2版「~世界が望んだ忘れもの~」に通ずる「これはクロノアなんだなあ」という感覚だ。いやらしくない、正々堂々としたとでもいうのだろうか、とにかくとっかかりさえ見付ければ、すっとクリアできる仕掛けが多い。ビジョンを見渡せば、必ずヒントは転がっているからだ。
この仕掛けを自分で解き明かす楽しみを、外に持ち出して気軽に遊べるというのは本当に楽しい。電車の中でプレイしていたら、つい乗り過ごしてしまいそう。それも強制的に次の仕掛けを解かせるというわけでなく、自発的に次に移動すればいいので、やめたいときはいつでもやめられるのだが、つい先を見たくてプレイしてしまう、という感じだ。
■ 落ち着いてプレイしたいアクションビジョン 各ビジョン(エリア)の前半3つはパズルビジョンになっており、後半2つは、パズルビジョンと、アクションビジョンの選択式になっている。どちらを突破しても先に進むことができるようになっているのだが、このアクションビジョンは強制スクロール方式が採用されている。 時間が立つとどんどん上にスクロールし、スクロールと地形に挟まれるか、ステージ下に落下するとミスになってしまう縦スクロールと、縦と同じルールでミスになるタイプとPS2版にもあったフロートボードでカッ飛ぶタイプの2つがある横スクロールビジョンがあるが、プレイした感想は「腰を落ち着けてプレイしないと難しいかな」という印象。風だまで捕まえるとぶらさがることができる「グミ」に次から次へと飛び移ったり、ジャンプを多用して触れるとミスになる「ササルン」を避けるシチュエーションなどは、確実に操作しないとつらい。 どちらも強制スクロールのため、タイミングをミスするとあっという間に奈落の底。縦スクロール面において、足場の移動などに失敗したとき、目的以外の足場に着地するなどのフォローができてやり直すとしても、スクロールに挟まれるか落下するまでに与えられたチャンスは多くて3回といったところだろう。前半ビジョンでクロノアの残り人数を増やしてチャレンジするのが得策。
仕掛けの登場順を覚えて、何度かプレイしつつパターンを構築する、という意味ではパズルビジョンとあまり変わらない感覚だが、そこにタイミングの要素が絡んでくるのがアクションビジョンたるゆえん。体で覚えればクリアは十分可能だ。
■ ドット絵になっても魅力を失わないキャラクタ このゲーム、とにかくキャラクタが認識しやすいうえ、とてもかわいらしい。スクリーンショットは偽りなくGBAの上で再現されており、やや暗めの液晶画面でもしっかりと認識できる。背景も華美にならず、かつビジョンごとの違いはちゃんとわかるという具合で、とても目にやさしい印象。実際、長時間プレイしても「眼が疲れた」というより「頭を使ったなあ」と思ったぐらい、とても見やすかった。
筆者がとくに気に入ったのは巨大な「ササルン」。初めてアクションビジョンに登場したときは「うわっデカッ」と思ったが、なぜか憎めないヤツである。
■ 弱点の発見がカギのボスビジョン 最後のビジョンはボスとの戦いになる。各ボスには弱点が設定され、そこを攻撃することでダメージを与えられる仕組みになっている。数回攻撃していると、そのうち弱点は見えてくる。敵の攻撃をかわしつつ、画面中にいるザコを利用してボスにぶつけるという作業は共通なので、純粋に行動パターンと弱点の洗い出しに専念できるのはとてもわかりやすく、かつ失敗してもモチベーションを失わず何度もプレイする気にさせられる。
■ 気軽にいつでも遊べる良作アクション この作品、パズルビジョンの難易度のコントロールがとてもうまくいっているな、という印象を受けた。序盤は看板を見れば使わねばならない仕掛けがちゃんとわかるようになっているし、ちょっと頭をひねることで仕掛けを突破することは可能だ。 逆にアクションビジョンは、縦スクロールの進行スピードや落下時点の処理、そしてフロートボードを使った横スクロールの分岐時など、視点の置きどころに注意する必要がある点は画面の特性なのか、多少苦しさを感じたが。 上手い言葉が見当たらないが、このシリーズに共通する特徴として、プレーヤーがゲームの中でクロノアと一緒に“成長”するのをうまく手助けするように制作側が仕組んでいる、という感じで、先に進んでいけばいくほど、自分がゲームに慣れていくのが実感できるのはこの作品も同じだ。 たしかに、PS2の「~世界が望んだ忘れもの~」に比べれば、ゲームボーイアドバンスというハードの違いがあるため、スリルとサスペンス、という部分で言えば多少こじんまりした印象を受けなくはない。が、携帯ゲーム機の特性である「いつでも気軽に遊べる」という利点に合った形でゲームが構築されており、内容もまさにそれ。気負うことなくゲームを始めて、好きなときに電源を落として終わる。この一見あたりまえのことがきちんと実現されているというまとまりの良さはやはり手堅い。風だまの発射音など、サウンド面もシリーズ特有の音をきちんと再現してあり、とても心地よく響いてくる。
シリーズのファンが注目しているであろうストーリーに関しては、やはりプレイしたみなさんに感想を聞いてみたい。筆者も最後まではプレイできていないので、発売日が楽しみだ。
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□ナムコのホームページ (2001年7月12日)
[Reported by 佐伯憲司] |
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