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★ DCゲームレビュー ★ソニックチームの代表作であり、またハイスピードアクションゲームのマイルストーンとして世界的に知られているソニックシリーズ。読者の間でもすでにプレイしている方、そうでなくても興味を持たれている方は多いだろう。そこで今回は、ソニック生誕10周年記念として発表された最新作の「魅力とは何か?」をレビューで検証してみる。今作は、ユルめのアクションが多い昨今のゲーム界のなかで「じっくり遊び込める楽しさ」が味わえる硬派(実直さ、とも言える)な造りに、ソニックチームの気合いがうかがえる一作となっている。
■ “シリーズ”を通じてのソニックの魅力 ソニックシリーズの醍醐味、と言えばやはり思い浮かぶのが“ハイスピードで駆ける疾走感”だろう。1ボタンでほぼすべてのアクションが行なえるというシンプルな操作感を踏襲しつつ、ソニックシリーズは世界最速の地位を10年に渡って守ってきた。ソニックというキャラクタも、リニューアルを繰り返し、ややクラシカルではあるが色あせない魅力を持っている。 ただ僕は、本シリーズで見逃せない真の魅力として忘れてはならない部分に“巧妙なマップデザイン”があると思っている。「ソニックアドベンチャー2」では、たとえばソニックステージではハイスピードを維持しながら一気にスタートからゴールまでたどり着けるように造られたゲームデザインポリシーが終始守られている。最初のプレイではリングやアイテム探しに精一杯だろうし、一瞬の油断がもとで谷底に落ちてワンミス、なんてことも多い。が、やり込む(=上達する)たびに新たなルートが開拓されていき、最終的には間断ない流れるようなプレイルートが「見えて」くる。
かと思えば、同じマップをテイルスでプレイすると、ソニックで遊んでいるとわからなかったような場所にリングが隠されているなどの「発見」がある。逆に言えば、ソニックの世界を味わいつくすにはマップに巧妙に隠された意図を“見抜き”、それを楽しめるだけの“ウデ”も必要だったりするのである。このへんが「ソニックはちょっと難しい」と言われる部分でもあり、ファンとしては悩ましいところなのだが……(もちろん、アッサリとハイスピードアクションとして楽しむのもいい)。
■ 3Dアクションゲームとしての“スピード感”はやはり頭ひとつ抜きん出ている ソニックシリーズのターニングポイントは、やはりDCになって3Dマップを手にした前作からだろう。ソニックチームはセガサターンの「ナイツ」で3D空間を自在に気持ち良く動き回る演出をうまくつかんでいたが、ソニックに必要なのはケタ違いの体感スピード。これを3Dでどう表現していくかは前作「ソニックアドベンチャー」の見せどころでもあったと思う。前作では“エリアによってカメラアングルを強制的に切り替える」手法を取ったが、現実的には“自由に動けるエリア”と“ハイスピードアクションを楽しむエリア”の切り替えにちょっと強引な部分があった。また、タイトルの「ソニックアドベンチャー」にあった“アドベンチャー”部分にこだわるあまりか、人と話をしてシナリオを進めていく部分が、他のステージと切り離されてしまった印象も受けた。 そこで今作は、ヒーローSIDEとダークSIDEという両面からシナリオ(とキャラクタ、ステージ)を同時に楽しめるようにし、より明解なストーリー展開になっている。前作でも同時進行ですべてのキャラクタがカオスエメラルドの謎に近づいていく……という凝ったシナリオだったが、本編とはあまり関係のない“やや存在感の薄い”キャラクタがいたのも事実。今回は善悪の立場をはっきりさせたこと、またそれぞれのSIDEをプレイすることで謎が解きあかされるようになったことで、各キャラクタの性格がうまく引き出されており、過去のソニックシリーズの中でも「先を知りたくなる」わかりやすい内容となっている。またキャラクタごとに「ソニック=シャドウはハイスピードアクション」、「テイルス=エッグマンはロックオンシューティング」、「ナックルズ=ルージュは宝探しアクションアドベンチャー」というようにゲーム内容がはっきり分かれており、ソニックチームの「ソニックにおける3Dアクションの面白さはコレ!」という主張も伝わってくる。 しかし、なによりも昔からのファンとしてうれしいのは、従来のシリーズに見られた“マップデザインの妙”が、3D空間でしっかり実現されている点だろう。ハイスピードアクションステージはシームレスに楽しめるようになっている=タイムアタックや流れるアクションの追求ができるし、毎回「宝石(マスターエメラルド)」の場所が変わる宝探しアドベンチャーステージの「3D空間を自在に飛び回りながりながらの探索」は、無重力空間などの新しい試みもあって飽きることがない(ただこの2つのアクション+アドベンチャーステージの完成度が上がったことで、ロックオンシューティングステージの詰めの甘さが見受けられるのだが……)。結果的には、「2」は3Dアクションアドベンチャーとして前作の面白い部分をさらにブラッシュアップし“他に類を見ないハイスピード感”と“3D空間を自在に駆けめぐる爽快感”を手にしている。
とまあ長所ばかり書いてきたが、短所としてはやはり従来のソニックシリーズにも見られた「アクションゲームとしての難易度」なのかもしれない。あまりのハイスピード感に(カメラアングルでだいぶ軽減されているものの)酔ってしまう人がいるようだし、ライトダッシュやサマーソルトなどの新必殺技の使いこなし、ホーミングアタックで必要な3D空間の把握などはやはり慣れが必要だ。ただ、こうしたカベを乗り越えた先にソニックの面白さが広がっているのは間違いない。 ■ やり込むほどに見えてくるソニックの“お楽しみ=アドベンチャー”な部分 ところでこの「2」には、ストーリーステージをクリアした後にも新たな“遊び方”が用意されているのはご存知だろうか? ステージセレクトモードからプレイするとわかるのだが、ひとつのステージには「ゴールを目指す」、「コインを100個集める」、「チャオを探し出す」……といった目的別のミッションがそれぞれ5つ設定されている。ミッションが違えば同じマップでもプレイ内容が変わるのは当然で、これがまさに「2」におけるマップ=ソニックワールドをより知るための“アドベンチャー”となっている、というわけだ。 現実には、こうした各ミッションのクリアタイム評価をオールAにするためにショートカットや別ルートの探索、スピードが乗るバンクの付け方、ホーミングアタックなどを利用したショートカット、グラインドを利用した新トリックの発見……などなど、さまざまな「攻略ルート」を見つけていかなければならず、一筋縄ではいかないようになっている。もちろん、こうした複数の遊び方に対応した3D空間のマップをソニックチームが意図的に用意していることは明らかだ。ある程度「2」を遊んでいくと、アクションゲームとしてはあきれる(?)ほどボリューム感があることがわかる。 もちろん前作でもこうしたお遊びは確かに用意されていた(こうした遊び方は「ソニック」ファンにはおなじみのものだ)が、ここまでマップデザインとゲームバランスの兼ね合いが密になってはいなかった。ステージによっては未消化な部分もあるが、前作よりも今作のほうがソニックらしいマップデザインになっており、遊び甲斐はある。プレーヤーの根気次第だが、極めようとするのであればアクションゲームとして「そうとう長く遊べる作品」になっている。
なおオマケとして用意されているカートレースだが、本編に用意された3Dコースを楽しんだ後ではやっぱり“オマケ”であり、チープシックに見えてしまう。が、本気でタイムアタックを狙っていくとドリフトコントロールやコイン収集のための精確なラインコントロールが必要になっていき、シンプルながらも大勢で競うとやっぱり白熱してしまった。今後は新車や新コースのダウンロードも予定しているらしい。こうした点は、つくづくソニックチームはプレーヤーに対してさまざまなお楽しみを用意するのが得意だと思う。
■ ひさしぶりにビジュアルメモリを使ってみよう~チャオのおさんぽゲーム ストーリー本編の楽しみ方とはややずれるが、「ソニックアドベンチャー」を楽しむうえで“チャオ”が重要なファクターのひとつになっていることも挙げておきたい。チャオとはいわば“ゲーム内で育てるペット”で、ゲーム中に集めてきたアイテムを与えることでさまざまな種族に進化したり、プレーヤーの育て方に応じて性格を持ちはじめるようになる“人工生命(A-LIFEと呼ばれている)”だ。 前作ではその愛らしい振る舞いを見たいがため“育成”にハマった人も多かったが、今作ではチャオ同士のコミュニケーション要素なども付加されており、ブリーダーとしての遊び方がさらに広がった。個人的には、ビジュアルメモリに入れて遊ぶ「チャオのおさんぽゲーム」が前作では“チャオレースに勝つためのパラメータ上げが目的”だったのに対し、今作はチャオとの会話もできるようになったことがウレシイ。
インターネットにつないで我が家のチャオ自慢、またさまざまな情報交換などがDC単体で行なえるようにもなっているのは前作通り。チャオの新たな種族進化の方向性を研究する攻略派から、チャオ好きなプレーヤーのコミュニケーションがどう広がるのか……ソニックチームからのダウンロードサービスも今後の楽しみになるかもしれない。
Original Game(C)SEGA (C)SONICTEAM/SEGA, 2001
□セガのホームページ (2001年6月28日)
[Reported by 小林仁] |
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