★ PCゲームレビュー ★

戦闘に戦術的な膨らみをたっぷり持たせた
超重量級の歴史シミュレーションゲーム

三國志 VIII

  • ジャンル:歴史シミュレーションゲーム
  • 発売元:コーエー
  • 価格:11,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • 発売日:6月29日


 三國志ファン待望のコーエーのシリーズ最新作「三國志 VIII」がいよいよ6月29日に発売される。読者の中には、6月18日に掲載した体験版をプレイして、その間口の広さ、奥行きの深さに驚かされた方も多いのではないだろうか。「三國志 VIII」は、期間的、シナリオ的に見て製品版の1/1274程度しか楽しめない体験版(BGMファン、新規武将好きはさらに10,000ずつ分母に足していい)をプレイした人が抱いた期待感をまったく裏切らない、重厚長大ながらそつのない手堅い作品に仕上がっている。


■ 究極的な広がりを見せるVIIIの新「三国志ワールド」

 「三國志 VIII」の概要は、以前最新スクリーンショット集としてお伝えしたとおりだが、いま一度簡単に紹介しておきたい。「既に知ってるよ!」という三國志ファンは、この項目は丸ごと飛ばして貰ってかまわない。

 ・シナリオ

 「三國志 VIII」のシナリオは、中国 三國志時代を網羅する184年(黄巾党の蜂起)から234年(孔明没年)の51年分、51本を収録している。シナリオの選び方は、年代をダイレクトに選んで、リストからプレーヤー武将を決める「新しくゲームを始める」モードと、 あらかじめ歴史イベントで年代を絞り込み、有名武将の活躍どころを集めた初心者向けの「お勧めシナリオ」の2種類。いずれも入り口が違うだけで中身(ゲーム内容)はまったく同じだ。初回はお勧めシナリオから選んで、2度目以降、あるいは新武将でプレイする際に新しくゲームを始めるを選ぶといいだろう。

【シナリオ選択画面】
まずはプレイするシナリオを選択する。上段は「お勧めシナリオ」「下段は「新しくゲームを始める」。いずれで選んでも最終的には右下の環境設定画面に行き着く

戦況イベント。228年「第一次北伐」のもの
 ・イベント

 ゲーム開始時にその前年までの各勢力の動向を概括した「戦況イベント」を51年分用意。戦況イベントでは、中国全土マップに各勢力を象徴的に表した始皇陵の陶俑のような彫刻人形(しかしながら2頭身)が置かれ、争乱の中心人物の顔CGおよび状況を概括したテキストを挿入しつつ展開する。多少地味ながらわかりやすさを第一に考えたイベントだといえる。戦況イベント終了後、特定の有名武将に限って、引き続き人形劇風のイベントまで発生する。人形劇風のイベントはVIIでも発生したが、セットの質感も大幅に向上し、ロケーションも豊富になっており、格段に見応えが増している。そのほか、特定の条件でのみ発生する通常の歴史イベントも加えると、VIIIのイベント総数は150にもおよぶ。

同じく「第一次北伐」の蜀の初期状態。諸葛亮率いる第2軍団に戦力が集中している
 ・ゲームシステム

 システム的な部分でもっとも大きいのは「連合」ならびに「軍団長」システムの追加だろう。連合システムは、弱小勢力同士で連合を結びあい、ひとつの強大な勢力に対抗するという同盟に勝る新たな外交関係だ。反○○連合が成立すると、対象の都市に対して複数勢力で同時に攻め込むことができるという強烈なメリットがある。これにより、外交コマンドに「連合」「加盟」「脱退」の3項目が追加されている。

 一方の軍団長は、配下武将に複数の都市を丸ごと任せられる大規模な委任システムで、身分は君主と太守の中間に位置する。軍団長システムは、「信長の野望」シリーズファンにとってはお馴染みの要素だが、それぞれ多少趣が異なる。信長シリーズにおける軍団長が、大名のオーバーフローを補うための与力的役割という意味合いが強いのに対して、VIIIの軍団長は君主の代わりにという意味合いは薄く、むしろ「プレーヤーが軍団長になれる!」ということが決定的に重要になっている。赤壁の戦い直前の周瑜、北伐直前の諸葛亮など、いちいち上げるまでもなく、三國志を彩る決定的瞬間で軍団長という半独立国家として、自らの裁量で、呉の主力軍あるいは蜀の主力軍を動かせるわけである。

中国全土に檄文が飛び、反連合に加盟するかどうか選択できる。自ら盟主になることも可能だ
 ほか細かい部分では、新しい在野身分として「頭領」「同志」が追加された。君主が支配都市を放棄し、放浪軍になると、その時点で君主は頭領に、配下武将は一律に同志となる。放浪軍のメリットは、「転地」コマンドで自由に都市間を移動でき、酒家で兵が募集できるところ。放浪軍に所属している武将のみが使用できる酒家の「募兵」はかなり強力かつ有効なコマンドで、数万程度の兵なら数ヶ月ほどで簡単に集められる。もちろん、兵を溜めっぱなしだとやがて米が尽きて兵が去っていくことになるが、VIIIではこのコマンドがあるためにねばり強い転戦が行なえる。シナリオによっては、一時期の呂布のように最初から頭領/同志状態の武将も存在するので、放浪軍で遊んでみるのもいいだろう。

・内政

 VIIIでは内政を行なうメイン画面が、国家戦略を錬る城内画面と個人的な行動を行なう都市画面の2フェイズに分けられた。都市画面は毎月必ずやってくるが、城内画面は年に4回(1月、4月、7月、10月)のみ。城内では、戦略コマンドを実行するか進言するかしたあと、武将別に今期の仕事内容を決めると、城内画面は終了となる。一般武将はこの仕事の実行にゲームの大半が占められることになるが、これがまた非常に楽しいのだ。ちなみに城内では、身分に応じて向きが異なり(太守以上は玉座視点から、軍師、一般は玉座を見上げる視点になる)、一般から太守に昇進したときの喜びが画面からじかに伝わってくるちょっぴり嬉しい仕様となっている。

【メイン画面】
内政を行なうメイン画面はこの3つが中心になる。ちなみにほかの都市におもむくと自宅の部分は空白となる


■ 戦闘模様を格段に進化させた「戦法」 その凄さとは?

「三國志 VIII」はウィンドウ表示に対応しているため、表示解像度は事実上無限。画面は1,600×1,200ドット表示
 さて、それではさっそく本題に入ろう。少し余談になるが「三國志」シリーズは、昔から一貫して戦闘を重視してきた。歴史SLGというからには当然戦闘があるわけで、最後まで勝ちきることがそもそものゲームの目的だから、戦闘を重視するのは当たり前の話だが、それでも「信長」シリーズと比べるとやはり「三國志」のほうが圧倒的に戦闘を重視したスタイルになっている。

 一例を挙げると、三國志には野戦に攻城戦、虎狼関攻めのような局地戦、それに一騎討ちもある。兵科に目を移すと、歩兵、騎兵に弓兵のほか、鉄砲兵や砲兵こそないが、その代わり多彩な攻城兵器のほか、象兵を始めとした蛮地で獲得できる特殊兵科がたっぷり用意されている。さらに付け足すと、幻術、落雷といった特殊攻撃もある。こういった視点から考えると、「三國志」シリーズは戦闘シーンのおもしろさで引っ張ってきた作品だと言えるわけである。

 で、VIIIではどうなったか。三國志は作を経るごとに戦闘ルールがころころ変わり、それもまた楽しみのひとつだったりするが、VIIIの戦闘はVIのマクロ的な視点から見た戦略戦と、VIIの局地戦風なダイナミズムをうまくミックスしたバランスの良い内容に仕上がっている。もう少し具体的にいうと、ヘックス式でありながら部隊のスムーズな移動を可能にしており、オーソドックスなターン制を敷きつつも抜群に緊張感の高いゲーム展開を実現しているのだ。

【戦闘シーン】
VIIIの戦闘シーンの様子。戦場はきっかり2画面分で、野戦の場合、中央あたりに砦がある。攻撃側はここを落とさないと、補給を受けつつ先へ進むことができない。シンプルだがうまいルールだ

 この戦闘システムの秘密は、マス目(いわゆるヘックス)の細分化と新コマンド「戦法」の採用にある。VIIIでは、ユニットが移動するマス目を通常の6方向移動のもの(ヘックス)ではなく、8方向に移動可能な菱形のものを採用しており、横および斜めへのスムーズな移動を実現している。このため、2画面に分かれた横長の戦場を使用しながらも、かなり快適な移動が行なえる。ユニットの大きさは9マス分の標準サイズを採用しており、行軍時の群れ合うようにして進む感覚がプレイしていてたまらなく心地いい。

 一方の戦法は、呂布を一撃で粉砕する可能性を秘めた恐ろしい新コマンド。というのは少し誇張だが、ともかく戦法は実におもしろい。戦闘好きの筆者としては「戦法こそVIIIの核だ」と言い切ってしまいたいぐらいだ。戦法には、突撃、乱撃、撹乱、奇襲などがあり、ネーミング的にはいずれも馴染み深いものばかりだが、効果と中身が従来とはまったく異なっている。戦法にはそれぞれ熟練度(レベル)があり、使用する戦法の熟練度と相手部隊がいる地形によって成功率が変化する。“成功率”つまり100%成功するわけではないというところが最大のポイントで、成功すれば通常攻撃の倍以上の被害を与えることができるが、失敗すると相手武将に嘲笑された上、通常攻撃を大きく下回る軽微な被害しか相手に与えることができない。

 戦法の成功率は50%あればいいほうで、失敗すると1ターン丸ごと無駄になるわけだから、コマンドを実行する際は結構緊張する。特に戦力が拮抗しているような激戦の最中で迫られる決断は、かなり頭を悩ませることになる。敗色が濃厚になってくると、敵の戦法ばかり決まるような気がして、イライラむかむかしてくる。こんな感覚、これまでのコーエー作品にはなかったことだ。VIIIの戦闘のおもしろさは、一言でいってこの不確定要素の高さにあるといえるだろう。

 唯一残念に思ったのは、一騎討ちが戦法の陰に隠れてすっかり印象が薄くなってしまったことだ。いっそのこと戦法に含めて「成功すると強制的に一騎討ちに持ち込む(ただし大将を除く)」的なルールにすれば、より三國志らしい戦闘が楽しめたと思うのだが。

【戦法】
戦法は使用する前に、効果と成功率が確認できる。激戦時は使おうか、使うまいか、この画面でしばし悩むことも。戦法は兵舎で訓練できるほか、武将と仲良くなると直接教えて貰えることがある


■ 内政もすこぶる充実! さまざまな都市へ繰り出そう

毎回評定の最初に表示されるランキング。諸葛亮に勝てねー
 戦闘ばかりを徹底的に書いてしまったが、内政部分もVIIより格段に進化している。内政部分の概要に関しては先述したとおりで、兵を集め、敵都市を偵察し、攻め込むまでの準備過程、そして戦闘後の戦後処理といった部分はおおむね前作と同じだ。VIIIの内政部分におけるもっとも大きな変化は、仕事の充実と人間関係の多様化の2極に絞られるといっていい。

 以下、わかりやすいように一般武将の立場から書く。VIIIの仕事は、評定のおわりに太守から「開墾をせよ」といった形で降ってくる。こちらから提案することも可能だが、決定権は太守にあり、必ずしも希望する仕事に従事できるとは限らない。仕事は、1回コマンドを実行すれば、あとはサボりまくりで済むわけではなく、しっかり次の評定の際に、その出来具合の総量がランクで表示される。1位にランクされれば多くの功績がもらえ、サボりまくりでビリだったりすると、激しく怒られて場合によっては友好度が低下するなどのペナルティがある。

【個人画面】
個人フェイズでは、武将と話したり、アイテムを購入したり、新しい武将と出会ったり、さまざまなことがある

人材確保イベント。優秀な武将でプレイしているとこれが待ち遠しい
 このほか、ときどき君主から個別に頼まれる特殊任務がある。私が実際に体験したのは人材確保で、このほかにもあるのかもしれない。人材確保は、仕事を6ヶ月間(評定2回分)を放免する代わりに「ある方面にいるらしい○○を探し出せ」というもので、これが抜群に遊ばせるのだ。君主からは州レベルでしか人物の居場所を教えてもらえず、プレーヤーはその州に属する都市をひとつずつ訪ねて、都市のひとびとに話に耳を傾けつつ、どんどん居場所を絞り込んでいくことになる。6ヶ月というと楽勝の印象があるが、これが村人の頼み事に時間を割いてたりすると一気に過ぎ去っていくので、かなり焦る。期限直前でやっと見つけた! と思ったらまったく別の雑魚武将だったりして、いよいよ焦らせる。私の場合、総じて成功率は3割程度だったが、この突発的アドベンチャーゲームは実におもしろい。

【人材確保】
目的の人材は「馬良」。いる都市と場所はすぐわかったが、予想どおり不在続きだったり、馬謖が見つかったりして焦らせる(馬謖は優秀だが、彼を登用しても任務達成にはならない)。が、ギリギリでようやく発見! よかった。

VIIIでは妻も娶れる。彼女はご存じ呂布の妻貂蝉
 そして人間関係の多様化。といっても一般身分のうちは仕事をこなすのに精一杯で、あまりゆとりがなかったりする。ある意味、武将間での交流の深め合いは、雑用から解放された太守以上のみに許された特権といえるかも知れない(ただ、一般の際に親密になると仕事を手伝ってくれたりする)。親密度の深さは、無視、知己、好意、信頼、敬愛の5段階があり、これらに加えて義兄弟、好敵手、仇敵、結婚という4つの特殊な人間関係が用意されている。親密度の深さは単純に会う回数を増やせば段階的に上がっていくが、特殊な人間関係はある日突然発生し、その関係は双方の身分を問わず死ぬまで続くことになる。

 地域的な制限を超越した「連合」システム、芋づる式に広がっていく人間関係、都市を回っての人材確保など、VIIIをひととおりプレイして感じたのは、プレーヤー武将と中国全土に散らばる武将との目に見えない有機的な結びつき、あるいはプレーヤー武将を中心にして旋回する中国三國志における多様な人間模様、といったものがうまくゲーム内に取り入れられているなということだ。これらはまさにドンピシャリでゲームのおもしろさに繋がっているし、そういったことを実感できた瞬間に得も言われぬ歴史的な幸福感というか、そんな感覚に身を包まれる思いがする。

 「三國志」というゲームシリーズは、「三國志」という歴史素材そのもの、数多くの三國志ファン、そして前作の存在というあまりに重すぎる荷物を抱えつつ正当な進化を続けなければならないという宿命を背負っている。今回のVIIIは、その意味ではそういった宿命に見事答え得たPCゲーム史上久々の快作といっても過言ではなく、ファンの我々としてはイマジネーションをフルに働かせてゲームをプレイし、開発者の想いに全力で答えるべきだろう思うのだがどうだろう。

【妻との会話】
結婚後は、自宅の前でほうきを持っている女性をクリックすることで妻と会話できる。いかに南蛮王孟獲とはいえ、祝融から“あなた”と呼ばれると妙にむずがゆい。呉国が誇るふたりの賢妻、小喬・大喬は顔立ちのみならず会話のグレードも高い

【新規武将】
新規武将作成機能もかなりグレードアップ。今回、戦法もあるだけに、高いレベルを目指してボタン押しまくりになるだろう。拡張キットでは、義兄弟、好敵手、仇敵、結婚といった要素を新規武将にも設定できるようにしてほしいところだ

(C)2001 KOEI CO,LTD.All Rights Reserved.


【動作環境】
  • CPU:PentiumII 200 MHz以上(Pentium II 333 MHz以上)
  • メモリ:48MB以上(64MB以上を推奨)
  • HDD:400MB以上(1GB以上を推奨)
  • CD-ROMドライブ:4倍速以上 (起動時必須)
  • 解像度:10240×768ドット固定


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「三國志 VIII」の公式ページ
http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/new/san8/index.htm
□関連情報
【3月12日】PCゲーム 最新スクリーンショット集 「三國志 VIII」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010312/san8.htm
【6月18日】「三國志 VIII」体験版 
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010618/demo0618.htm

(2001年6月27日)

[Reported by 中村聖司]

I
【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.