Electronic Entertainment Expo 2001現地レポート

E3 2001 キーノートスピーチ

ライバル関係にある三社代表が激論バトルを繰り広げた今年のE3キーノートスピーチ
会期:5月17日~19日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 E3の実質的な執行部ISDA(Interactive Digital Software Association)のCEO Doug Lowenstein氏の開会宣言の後に登場したのは、マイクロソフト上級副社長Robert J.Bach氏,任天堂上級副社長Peter T Main氏,社長兼最高業務責任者の平井一夫氏の3人。
 5月17日,E3 2001初日はマイクロソフト,任天堂,ソニー(SCE)の三者代表によるパネルディスカッション形式のキーノートスピーチの開始とともにその幕を上げた。

■ 1位と3位がソニー,空いているのは2位だけ?

 司会進行役のArcadia Investments John Taylor氏が最初に3人のリーダーたちに聞いたのは「ゲーム業界のリーダー的存在である3社は,それぞれのプラットフォームをどのように展開していくのだろうか。本当のところを聞かせていただきたい」という質問だった。

 これに対し任天堂は「ゲーム業界はゲーム機の革新だけでなく,いよいよ様々なエレクトロニクス・エンターテインメントへの統合の時代へ突入しようとしている。その役割を果たすのがGAMECUBEとGAMEBOY ADVANCEだと思う。そのゲーム機は任天堂によって作られる。任天堂こそがゲームなのだ(NINTENDO IS GAME)。」と発言。

 これに対しソニーは「PSは全世界レベルで8,000万台,PS2は1,000万台を出荷している。ゲームのバリエーションも多彩,オンラインゲームへの対応はハードとインフラの両面で対応のめどをついている。PS2は最高のエンターテインメントを提供するマシンとなるのは間違いないはずだ」とゲーム業界のデファクトスタンダード的な地位をアピール。また「ほかのプラットフォームもがんばればシェア2位の地位は獲得ができるはず」と挑戦的な発言。さらに「3位もあいていない点に注意してほしい。なぜなら1位はPS2,3位となるのはPS1だからだ」と続け,会場の笑いを誘った。
 ソニーはPS1の成功に絶対的な自信を持っており,この勢いはPS2に受け継がれていくことを確信しているようだ。

 マイクロソフトは「自社製ゲーム機第一号となるため,ゲームプレイヤー達の意見を積極的に取り入れて採り入れて開発した。オンラインゲームへの対応はご存じの通りすべて標準装備する。オンラインゲームの未体験ゾーンをもっとも体験しやすいプラットフォームはXboxなのだ」「それと我々は今年や来年のシェアのことは気にしていない。しかし5年先にトップにたてることは確信している」とソニーの発言を受ける形で意見を述べた。

 こうした表舞台のセッションで互いの発言を意識しあうような展開は珍しい。

■ ゲーム機のハードウェアスペックはこうして決められる

任天堂上級副社長Peter T Main氏
 続いて提供された話題は「各プラットフォームはどのようにしてそのスペックを決定している(決められた)のか」というものだった。

 マイクロソフトは「どんなゲームができるようになるのかを検討して決定した。最高の開発環境,最高のゲーム品質をもたらすことができるハードウェアで構成したのがXboxだ」と述べた。品質はともかくとして,XboxはPCベースのゲーム機であるため,開発の容易さについてはほかのプラットフォームよりアドバンテージがあるのは理解できる。
 「あらゆるエンターテインメントの中核的存在になりうる可能性を持たせるためのスペックを検討して決めた。PS2の多機能性を見てもらえば納得がいくはず」とソニー。
 「今求められている,もっともおもしろいゲームが動作できるようなハードウェアをデザインしている」と任天堂。
 ソニーはあらゆるエンターテインメントをPS2でやろとしているのに対し,任天堂は「ゲーム」という存在を最重要視する姿勢が伺える。

■ うちのまねしなさい

社長兼最高業務責任者平井一夫氏
 「ソフトウェアの提供スタイルについてはどう考えているのか」

 この質問に対して「ファーストパーティがサードパーティを引っ張っていくようなスタイルになる。PS陣営はサードパーティが全ソフト供給元の75%を占めており,重要性は極めて高い」とソニー。
 そして「サードパーティとかファーストパーティといった区別は考えていない。」と任天堂。
 「区別は考えていない」とはいいつつも任天堂はファーストパーティとセカンドパーティが供給元全体の半数を占めており,信用のおける自社と関連会社が中心となってソフトウェアを提供スタイルをとっている。これが粗悪なゲームを市場に出させない最良の手法…任天堂は伝統的にこの考えを捨てていない。
 「現在開発中の80タイトルのうち約半数がサードパーティ製。PCベースアーキテクチャがサードパーティの参加のしやすい状況を作り出している。サードパーティ・タイトルは無視できない存在なのでPCゲームベンダなどには積極的にXboxへの参加を呼びかけている」とマイクロソフト。

 これに対し「まぁうちと同じような方針だね。そうやってうちのまねをすれば成功できると思うよ」と冗談とも本気ともとれぬ発言を間に挟んできたのはソニーだった。

■ オンラインゲーム,積極派と消極派

マイクロソフト上級副社長Robert J.Bach氏
 続いての質問は「オンラインゲームへの対応はどうしていくのか」へ。

 「オンラインゲームのために生まれたともいえるのがXbox。あらゆるオンラインゲームへの対応ができるようなハードウェア機能を持っている。オンラインゲームのコンテンツ作りにも力をいれており,いかに継続的にプレイヤーに遊ばせるかが大きなポイント」とマイクロソフト。
 「ゲームの善し悪しは,いかにそのゲームの魅力にユーザーを引き込めるかで決まってくる。その意味ではオフラインゲームとオンラインゲームがシームレスに行き来できる仕組みがいい。オフラインで楽しい,オンラインでもっと楽しいというイメージだ。」とソニー。
 「まだまだオンラインゲームには解決すべき問題がある。第一に,その経済的状態やインフラ上の問題でプレイヤー層のすべてがオンラインゲームに参加できないという問題がある。オンラインゲームは任天堂も研究中だが,現時点で具体的な方針を述べることはできない」と任天堂。

 これだけ聞くとオンラインゲームに対してとても消極的な姿勢のように思えるが,実際にはGAMECUBEもモデムやLAN機能を後付できるシステムにはなっているので,本気になれば「いつでも対応可能」ではある。おそらくほか2社のオンラインゲームへの成功の可否を見極めてから本格的に行動を開始するのであろう。

■ 余裕のソニー,追い上げ追い越しを狙うマイクロソフト,挽回可能と考える任天堂

 このように,当初思っていたよりも非常にアグレッシブな意見交換がなされたキーノートスピーチであった。事実上,セガが退き,ソニー優勢状況である現在も,ナンバーワン・ゲームプラットフォームの座は決して手の届かぬものではない…そう任天堂とマイクロソフトは考えているようだ。
 一方,ソニーは「現在のソニー優勢状態はそう簡単には切り崩されない」という自信があるようだ。
 一通り新世代機が出そろう来年のE3では,もうすこしそれぞれの立場や方向性がはっきりしてくることだろう。

□E3のホームページ
http://www.e3expo.com/

(2001年5月18日)

[Reported by トライゼット 西川善司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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