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★ PCゲームレビュー ★
「ついに」というか「ようやく」というか、昨年末頃から熱烈なファンの間で話題になっていた超個性派育成シミュレーションゲーム「新世紀エヴァンゲリオン 綾波育成計画」の発売日が目前に迫ってきた。ふつう育成SLGというと、その対象は都市や街、星、部族などが妥当な線で、珍しいもので犬、ハムスター、スポーツチーム、姫といったところだが、この作品では“綾波レイ”というアニメに登場する中学2年生の女の子を「1年間好きなように育成する」という、ある意味革命的な仕様となっている。これはもう綾波ファン、エヴァファンならずとも、そのゲーム内容が気になって仕方がないところだろう。 というわけで、もはや待ちきれないファンのために、一足先にレビューをお届けする。 ■ 登場キャラ全員が喋りまくる驚きのフルボイス仕様 人気TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」をモチーフにした本作は、4月1日に赤城リツコ博士の呼び出しを受け、碇司令から1年間という期間限定で「綾波レイの保護監督主任」として三尉に任命されるところからスタートする。時代設定はアニメとぴったりリンクしており、主人公は特務機関ネルフの一員として、大筋ではアニメどおりのストーリー展開の中で、ひとり極秘任務を遂行していくことになる。
ゲーム中、教育対象である綾波はもちろんのこと、「エヴァ」に登場するあらゆる登場キャラたちとの会話を楽しむことができる。しかし、主人公が何者なのかは、碇司令ほかごく一部の人間しか知らない。そのため「常に綾波の側にいる人物」としていらぬ誤解を受けたり、意外な反応をされたりと、特殊な立場から見たサイドストーリーが楽しめる。
登場キャラクタとの会話は、常に音声込みで行なわれる。ボイスは今回のために新しく録音したものが使用されているため、新鮮な雰囲気でストーリーを追っていける。特に綾波は、最初のうちはアニメと同じ、感情の起伏に乏しいセリフ棒読み状態の喋りだが、正しく教育してあげることで、次第にハキハキした元気のいい返事を返してくれたり、向こうから質問してきたりするようになる。綾波育成計画は、「フルボイスに仕様変更のため」という珍しい理由で発売日を延期した経緯があるが、このフルボイスによる会話システムは、確かに大変魅力的だ。
■ 戦闘訓練と学校のお勉強の両立がなかなか大変
1週間のスケジュールで最優先事項となるのはやはり「学校」だが、これまたアニメどおり、あまり出席しなくても問題はない。ただし、綾波の初期ステータス(シンクロ率、ATフィールドなど全11種類)はぼろぼろ、というかほぼオール0なので、スケジュールの組み方のバランスが悪いと、使徒との戦闘で苦戦したり、強制的に補修を受けさせられたりして、本作の裏の大目的である「綾波とのデート」がなかなかできなかったり、できてもセリフ棒読みで少し残念だったりするので、学校と訓練(シンクロテスト、戦闘シミュレーション)はバランス良くスケジュールに入れておく必要がある。もっとも、使徒が攻めてきた日は、戦闘に強制参加となり、また、修学旅行や体育祭といった学校行事の日も自動的に「学校」となる。
この人工無能プログラムを応用した語彙習得システムのおもしろさは、何でもかんでも言ったとおりに覚え込むところで、自分のローカルな好みや馬鹿っぽい「あいさつ」、マニアックな「遊び」など、プレーヤーの望む綾波像を自らの努力で創り出すことができる。人名を教えればその人に会いたがり、地名を教えればその地に行きたがるなど、単純な部分もあるが、「所詮は人工無能だからなぁ」と冷静に見ているつもりでも、イベントやデート時に教えた言葉が出てきたりすると、意外と嬉しかったりする。
■ 綾波のオシャレと部屋の模様替えも忘れずに
数あるショップのうち、唯一くせ者(?)なのが知る人ぞ知るアニメショップ「animate」で、ここのアイテムは、セル画やコスプレグッズといった比較的高いステータスアップ効果と引き替えに「社会適応」をぐんぐん下げる危険物ばかりで、ここに入り浸るとやがて綾波は「オタク」と化してしまう。
綾波の状態は、オタク以外に普通(正常)、病気、怪我、非行、恋愛などがあり、それぞれ顔の表情と言動に違いがある。綾波の状態変化に必要なステータスの拾得には長い期間を要するため、1回のプレイでは綾波が秘めるポテンシャルのすべてを見ることはできない。ちなみに今回の評価では、社会適応度に注意して「普通」から外れないように教育してみたが、普通にも2段階があり、社会適応度が人並みになると、影のあるムスッとした表情から、常に微笑をたたえた可愛らしい表情に変化する。この変化の過程を見守るのもまた楽しい。
沈黙を持って拒否されると、「お! なかなか正常に育ってきた」と嬉しく思いつつ、その反面、保護監督主任に刃向かうとはけしからんとも思ってしまう。要するに、危ない服も着せてみたいわけだが、このあたり、男の中に内在する本能との戦いというか、ゲーム中盤以降急速に肥大化してくる変態的野望と、幸せなエンディングを見てみたいと願う正常な心とのせめぎ合いがどうしようもなく楽しい。まさしく魔性の楽しみといっていいが、濃いファンでも満足できる徹底的な作り込み具合は、さすがはガイナックスといった感じだ。おそらく「エヴァ」をまったく知らない人がプレイしたら、何が楽しいゲームなのかさっぱりわからないのではないかという気すらしてしまう。
ともあれ「新世紀エヴァンゲリオン 綾波育成計画」は、「エヴァをひととおり観た」という人なら性別、年齢を問わず楽しめるゲームに仕上がっている。四の五の言わずにネルフの一員になりきり、全力で綾波と相対することが楽しく遊ぶ秘訣で、デートイベントや使徒との戦闘などは、綾波のステータスにより展開が微妙に変化する仕組みになっているため、何度でも繰り返し楽しめるのも嬉しいところ。ガイナックスのゲームらしく、ウィンドウ表示でも楽しめるので、ぜひ気軽にプレイしてみてほしい。
(C) GAINAX/Project Eva・テレビ東京 (C)1997 GAINAX/EVA制作委員会 (C)2001 GAINAX.
□ガイナックスのホームページ http://www.gainax.co.jp/ □「新世紀エヴァンゲリオン 綾波育成計画」の公式ページ http://www.gainax.co.jp/soft/ayanami/index.html □関連情報 【3月13日】ガイナックス、「新世紀エヴァンゲリオン 綾波育成計画」を5月18日に発売 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010313/gainax.htm 【3月14日】本日到着! DEMO & PATCH~2001年3月14日版~ http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010314/demo0314.htm (2001年5月10日)
[Reported by 中村聖司] I |
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