【特別インタビュー】

「Myst III:Exile」開発者インタビュー

 「DIABLOII:LORD OF DESTRUCTION」に続いての東京ゲームショウ特別インタビューは、PCゲーム界のアドベンチャー分野を代表する人気シリーズ最新作「Myst III:Exile」。今回、インタビューに応じていただいたのは、3Dグラフィックス部分を担当したディレクターPhil Saunders氏と、シナリオ部分を担当したMary Demarle氏の両氏。MystシリーズのプロデューサーDanniel Irish氏から直接話を聞くことができなかったのは残念だが、グラフィックとシナリオというアドベンチャーゲームの根幹を握るふたりだけあって、意外性の高いユニークなインタビューになった。

 「Myst III:Exile完全日本語版」の発売日は6月28日、価格は9,800円を予定している。




■ 世界観の構築に徹底的にこだわった「Myst III:Exile」

「Myst III:Exile」開発スタッフ。左からPresto StudiosのMary Demarle、Phil Saunders。右の女性はUbi Softでマーケティングを担当しているAshley Bushore
 今回の「Myst III:Exile」の魅力についてお聞かせください

Phil Saunders これは「Myst」シリーズの魅力とも言い換えられますが、まったく新しい雰囲気で構築された世界を探検することができる、というところです。
 その世界とは、どこか親しみやすく、またどこかで見たような雰囲気に満ちあふれている。プレーヤーは、写実的でどこまでもリアルだけれども、どこかしら奇妙な雰囲気に包まれた世界に身を浸すことができます。

 今回のグラフィックスは、PrestoStudiosの最新の3Dテクノロジーを使っています。1,600×1,200ドットクラスの超高解像度表示に対応したほか、各種オブジェクトも写真のような高いディテールで描いています。もちろん、Windows、Macintoshのどちらでも遊べるハイブリッド仕様のままです。
 この3Dグラフィックで構築された世界を、真の意味でのリアルタイムシステムで探索していくことができます。真の意味とは、プレーヤーが現実世界と同じように、首を回して周りを見渡したり、至る場所、地点で発生する“音”によって、現在の状況を把握し、行動を起こしていくことができるゲームシステムです。

「Myst III:Exile」では、青空と水平線が見渡せる場所が多い
 今回の3Dグラフィックに関して、一番こだわったのはどの部分でしょうか?

Phil Saunders ステージ(SaundersはAgeという言葉を使って説明してくれたが、ここでは理解しやすいようにステージと表記する)ごとの世界観の創造に一番力を注ぎました。今回、主人公の自宅を含めて5つのステージを用意していますが、ストーリーが進んでステージが移り変わるごとに、プレーヤーに旅の高揚感に近い感覚を味わって貰えるように工夫しました。

 なるほど。以前、α版をプレイしたときに一番驚いたのが、3Dグラフィックで構築された世界に、実写のキャラクターがシームレスな形でとけ込んでいて、しかもそのキャラが実写映像で滑らかに動いていたところです。これはどのようにして実現できたのですか?

Phil Saunders そのステージとまったく同じ環境を用意して、ブルースクリーンでビデオ撮影し、コンピュータで合成処理を行ないました。
まったく同じ環境というのは、照明の明るさ、色合い、アクターのポジション、距離といった要素のことで、ゲーム側から必要な情報を取得して、何度も微調整を繰り返しながらの作業になりました。

 我々はこれをライブアクションシーンと呼んでいます。「Myst III:Exile」では、全部で15シーン用意していますが、それぞれ複数の映像から構成されており、カットごとに環境を変えて撮影してあります。総時間にして30分ほどですが、撮影には2つのスタジオを使って、1週間もかかりました。

 「Myst III:Exile」でさらに強化された世界観についてですが、これはどこからヒントを得られたのでしょうか?

Phil Saunders 完全なオリジナルと聞いています。「Myst」の制作にはタッチしていないので、これ以上詳しい話はわかりません。「Myst III:Exile」に関して言えば、「Myst」「RIVEN」に続く、第3弾として基本的な部分は前2作の世界観を受け継ぐ形で開発しています。

 「Myst III:Exile」を開発するにあたって、個人的に何にインスピレーションされたかということに関してお話しすると、人間のイマジネーションの限界に挑戦したいということがひとつ上げられるでしょう。たとえば、イマジネーションだけで素晴らしい世界を書き上げる能力を持った小説家が多数いますが、「Myst III」で、そういった世界観に負けないMystならではの究極のイマジネーション世界を創り上げたいと考えました。

これがスタジオでの撮影風景 キャサリンが子供をあやしている様子。絶えず体を動かしている

■ マルチエンディングが新しい魅力的なストーリー展開

どのステージも一瞬で目を奪われる素晴らしい風景が広がっている
 話は変わりますが「Myst III:Exile」のストーリーはどういった内容になっているのでしょうか? また今回のストーリー上の魅力というのはどの辺にあるのでしょう

Mary Demarle 「Myst III:Exile」は、RIVENの物語が終了してから10年後という時代設定になっています。「Myst」や「RIVEN」で活躍したアトラス、キャサリンの夫婦が、新居を構えて新しい生活を始めようとしているところからゲームが始まります。
 彼らは「RIVEN」で、悪く育った息子たちが、破壊の限りを尽くして世界中の人々に悲しみをもたらした過去は振り切ろうとしています。そこへ破壊された世界からひとりの人間がやってきます。彼は、自分の世界を破壊したアトラスファミリーに復讐を遂げるためにやってきたわけです。

 プレーヤーの役割は、彼の過去をつきとめて、その野望を未然に阻止することです。今回のシナリオは、前作をプレイした人が「あっ」と驚く趣向のひとつとして、これまで答えようにも答えられなかったゲーム中での質問、たとえば、破壊された世界はどうなってしまったのかといったことが、ストーリーが進むにつれて次第に明らかになっていきます。

公開されたコンセプトアートのひとつ。水彩絵の具で丁寧に描かれている
 ストーリーの展開は1本道なのですか?

Mary Demarle 基本的に1本道ですが、あなたが「Myst III」の世界で何を体験するかは、あなた自身の行動によって決まるようになっていますので、プレーヤーによって違った経験をするはずです。最終的にはあなたが取った行動の結果として、複数のエンディングを用意しています。無事ベストエンディングを迎えられるのか、グッドなのか、バッドなのかは、あなたの行動次第です。

 日本のMystファンやアドベンチャーファン、この世界に魅了されたユーザーなどは、これを知ったら繰り返し遊ぶと思います。今回のクリア時間はどれぐらいを想定しているのですか?

Phil Saunders 30~35時間ぐらいを予定しています。個人的には、何度もプレイするユーザーは少ないのではないかと思ってます。エンディングにバリエーションを付けた理由は、プレーヤーの行動に意味と責任を持たせるためです

 この「Myst III:Exile」の世界を、複数のプレーヤーでパーティーを組んで体験を共有できるようなプレイモードがあれば、さぞかしおもしろいだろうと思うのですが、ネットワークへの対応というのはどのように考えてますか?

Phil Saunders ソーシャル的な意味で、非常に興味深いことだと思います。ただ、我々としては、あらかじめ精密に構築された世界観を、ストーリーベースのシステムで楽しんでもらいたいと考えています。マルチプレイに関していえば、「Myst III:Exile」はネットワークプレイではなく、昔ながらの1つのPCの前に座って一緒にプレイすることでより楽しめると思います。ちょうど映画を見て、体験を共有するようなイメージですね。

コンセプトアートその2。細かい仕掛けが施されたライト
 アドベンチャーゲームの未来像についてどのようにお考えでしょうか?

Phil Saunders 複数の道筋が考えられます。まずひとつは「Myst」シリーズのようなゲーム。シングルプレイを前提として、しっかりした世界観とシナリオをあらかじめ組み上げ、3Dグラフィックスとムービー、それから「Myst III」で取り入れたライブアクションシーンといった趣向を盛り込んでたっぷり楽しんでもらうゲームです。この手のゲームは取っつきやすく、尻込みせずに誰でも手軽に楽しめるのが特徴です。ハードコアなアクションゲームに不慣れな人でも、誰でも平等に不思議な経験を楽しめます。こういったゲームはどんなにゲームのテクノロジーが進化してもなくなることはないと思っています。

 もうひとつは、ネットワークを利用した多人数で楽しめるアドベンチャーゲーム。この手のゲームには、ユーザー離れを防ぐために、なにより厳格なルールとダイナミックな演出を提供する必要があります。多人数が同時にプレイすることで、今後の展開が予測不可能になるというおもしろさがありますが、その反面、シナリオに方向性が付けられず、ゴールがないため、万人が楽しめるというわけにはいきません。

 日本でアドベンチャーゲームというと、恋愛要素が含まれるのがごく当たり前になっています。この状況についてどのようにお考えでしょうか?

Phil Saunders スクウェアの「Final Fantasy」シリーズのようなものですね。新しい市場を造り上げたことは評価すべきだと考えています。なにより、「QUAKE」や「UNREAL」のようなネガティブなゴールではなく、夢のあるソーシャルなゴールを設定できるという点で、歓迎すべき要素だと思います。

Mary Demarle 情緒的といいますか、エモーショナルな要素をストーリーの中に組み込んでいるという点で大変興味深いことだと思っています。これまで(米国では)ゲームにそういったエモーショナルな要素が盛り込まれることは少なかったのですが、「Myst III:Exile」ではこの部分を強烈に入れています。この点にも注意して、ぜひプレイしてみてください。

圧倒的に美しい夕焼けのステージ ステージの至る所には奇妙な植物がたくさん生えている

(C) 2001 The Learning Company.

□Presto Studiosのページ
http://www.presto.com/
□「Myst III:Exile」製品情報ページ
http://www.myst3.com/html/exile.html

(2001年4月1日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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