★ PCゲームレビュー ★

迫力の艦隊戦が心ゆくまで堪能できる
海洋冒険SLG

提督の決断IV

  • ジャンル:リアルタイムSLG
  • 発売元:コーエー
  • 価格:11,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • 発売日:3月9日




 地球上の全海域を網羅する豪儀な海戦SLG「提督の決断IV」が、いよいよ3月9日に発売される。5年ぶりのシリーズ新作となる提督の決断IVは、日本、アメリカに加えて、海の狼U-boatを擁するドイツと、伝統の海軍国家イギリスが新たに仲間入りしたほか、4作目にしてついにリアルタイム制の海戦システムが導入された。新機軸満載の最新作を、発売より一足先にたっぷりご紹介しよう。


 独特の緊張感がたまらない「提督の決断」

 5年ぶりの新作ということで、ゲームファンの中には「提督の決断」と言われてピンとこない方もいるかもしれない。何しろ前作「提督の決断III」はPC-9801版で発売されたほどだ。

地球上のすべての海が戦場! ドイツ・イギリスでプレイすると大西洋を中心としたマップに切り替わる
 提督の決断の醍醐味をひとことで説明すると、圧倒的な広さを持つ太平洋上で突如発生する幾多の戦闘にある。IIIまでのゲームシステムは、オーソドックスなターン制を採用しているのだが、反則的な攻撃力と行動半径を備える航空隊の存在により、ゲームに未曾有の緊張感をもたらすことに成功している。提督の決断といえば、日本海軍の大和、武蔵といった威風堂々とした巨大戦艦が主役というイメージが強いが、実情はまるで違う。練度十分の航空隊の手にかかれば、大和などものの数ターンで撃沈されてしまう。もちろん、艦隊同士の砲撃戦になれば、大和は圧倒的な強さを見せつけてくれるし、序盤に関しては航空隊の規模や練度はむしろ日本の方が上だったりするが、このあたりのシビアすぎるゲームバランスは提督の決断の大きな魅力のひとつになっている。

 それからもうひとつ、提督の決断を語る上で忘れてはならないのが、膨大なデータ群の存在だろう。日米双方の数百隻の艦船、数十機の軍用機、それから戦局を一気に覆す可能性を秘めた多数の新兵器(技術)などが、びっしりデータ化されており、かつゲーム内の諸要素と有機的に結びついている。これに関しては、戦史に興味のない人にとっては単なる数値の羅列としか写らず、事実、これが敷居の高さの一因にも繋がっているが、戦史ファンにとってはたまらない魅力になっている。以上が、非常に簡単ながら提督の決断のゲーム内容である。これらの要素をすべて活かしつつ、新規ユーザーでも問題なく遊べるよう徹底的にインターフェイスに改良を施し、さらに冒頭でも触れたような新しい要素をたっぷり盛り込んだのが最新作というわけである。

太平洋最大の激戦区中部太平洋を拡大表示してみたところ。特にトラックは艦船の修理が行なえる重要拠点。航空隊をしこたま送り込んでおこう ドイツ陣営で、母港を拡大表示してみたところ。大西洋への唯一の抜け道である北海は、最初からイギリスの主力艦隊でがっちり固められている。

 「提督の決断IV」のゲームシステム

 本作には、開戦から最後まで戦い抜く「キャンペーンモード」と、ミッドウェー海戦、坊の岬沖海戦(IIIでは大和特攻)など9本の有名な海戦がいきなり楽しめる「ショートシナリオモード」の2種類が用意されている。ここではキャンペーンモードをじっくり見ていくことにしよう。

 今作の戦場は、地球上のすべての海域となっている。これは主にドイツ、イギリスがプレイ可能な国として新しく参戦したためだが、太平洋側、大西洋側とも特に移動制限はないため、大和や武蔵が北海地方やフォークランド諸島沿岸まで出撃したり、反対にU-Boatを太平洋に進出させることもできるなど、さらに懐の深い仮想戦が楽しめるようになっている。世界の海は50の海域に分けられ、それぞれの地域に大陸沿岸や島々の情景が丁寧に描かれた海戦マップが用意されている。海軍の維持・強化に欠かせない各種資源(金、石油、鉄鋼、アルミ)は、これら海域を確保し、輸送船を配備することにより得られる仕組みとなっている。50の海域のうち、14カ所は「重要海域」となっており、これをすべて獲得すれば勝ち、失えば負けとなる。といっても、日本で日本海域を獲られれば、ほかの重要海域を押さえていても、ほぼ負けは確定だ。

キャンペーンシナリオは、1939年9月スタートの「狼群作戦」と1941年「1941年12月スタートの「日米開戦」の2本
 ゲームの進め方は従来のシリーズから、ほとんど変化は加えられていない。日本を例にとって説明すると、まず南方の資源を押さえて、国力を養い、同時に手早く各種技術の研究開発や兵器の改良を行ないつつ、途中発生する海戦に敵艦隊を撃破しながら、ハワイの遙か先にあるアメリカ本土を目指していく、という流れになる。IIIまでは、基地単位で攻略が行なわれ、資源を獲得するためには歩兵を上陸させて基地を占領していく必要があったが、IVでは海域単位に変更されている。攻略の仕方は、海戦で敵艦隊を撃破し、その海域の基地を航空隊の空爆か艦隊による砲撃で陥落させればOK。もちろん、海戦に勝つのがなかなか大変だったりするのだが、ルールそのものは非常に簡略化された印象だ。
 IVでは、1週間ごとにターンが回ってくる。1ターンは、戦闘以外のすべての行動を行う「戦略フェイズ」と、3日間かけてリアルタイムで激闘を繰り広げる「戦術フェイズ」とに分けられている。戦略フェイズでは、艦隊の編成、艦船の建造、航空機の生産、技術の研究開発、基地の設置、スパイの派遣などが行なえるが、特に重要なのは艦隊の移動だ。といって軽々しく1艦隊だけ移動させても早々に敗退するのがオチで、国家の命運を掛けて完全確保するつもりで侵攻するのだから移動は常に最大の3艦隊。それも空母艦載機は積めるだけ積み、1艦隊の編成は最大の16隻ずつというフル装備状態で移動したい。というのも、敵には基地航空隊の強力なバックアップがあるからだ。基地は、1海域に最大3つまで設置でき、それぞれ最大250機の航空機が収容できる。まさに浮沈空母といった印象だが、当然、基地は移動できないため、夜間砲撃に弱いという弱点がある。しかしその一方で、1艦隊の総力を結集して徹底的に叩かないと陥落しないぐらいのねばり強さを持つため、油断してると痛い目に遭う。基地航空隊は、特に装甲の貧弱な空母にとって脅威的な存在といっていい。

艦隊編成は艦船アイコンを掴んで任意の艦隊に落とし込むだけでいい。空母は最大4隻までという制限があるので、うまく調整しよう 所有するすべての空母の艦載機搭載作業がまとめて行なえる「空母」ボタンは大変便利。常にMAXまで積んでおきたいところだ 搭載中の様子。艦載機の役割には直掩、護衛、爆撃、雷撃、偵察の5つがあるが必ずしもバランスを取る必要はない。大和の重要度を考えれば、直掩機率100%の空母を付けていい

 ところで、IVでは研究開発できる新兵器が圧倒的に増加している。開発ルールは前作と同じで、自国の技術レベル(砲熕、鋼材、電子、機関、航空、通信、工業)が必要値に達すれば開発に成功する。新技術は大きく分けて、開発に成功すると自国の兵器に自動的に配備されるもの(三式弾、各種レーダー、ロケット弾など)と、新兵器が生産可能になるもの(双発ジェット機体、全翼機体、51cm主砲など)との2種類がある。航空レーダーなどは、資金を集中的に投入すればすぐ開発に成功するが、双発ジェット機体ともなると、ジェットエンジンの開発が必須だったりと条件がいろいろとやかましく、金をいくら注ぎ込んだとしても実用化は数年先になってしまう。
 それにしても、これだけたっぷりと新兵器が用意されていると自国の技術レベルと相談しながら、じわじわ技術を上げていく作業も実に楽しい。じっくり上げていきたいところだ。余談だが、ドイツ海軍は史実では一度も空母を実戦に投入したことがないが、史実どおりにイギリス海軍と戦わせると戦力的に圧倒的に不利になるため、イタリア海軍をそっくりドイツ陣営に編入しているほか、空母の新規建造を可能にし、さらにメッサーシュミット Bf109シリーズやユンカース Ju87シリーズなどが艦載機として空母に搭載できるようになっている。以前、インタビューで開発者から直接聞いた話では、新兵器を開発することにより、ドイツが誇る双発ジェット戦闘機メッサーシュミット Me262も艦載機として運用可能なようだ。このあたりは、もはや完全な仮想戦といってもいいが、U-boat以外はほとんど活躍できなかったドイツ海軍が空母機動部隊を持ったら? というIF戦を心ゆくまで試せるのは嬉しい限りだ。

艦船の対空砲による撃墜率が飛躍的に向上する「VT信管」。艦載対空レーダーの果てにある最終兵器だ スタート時は、かなり優秀な兵器が開発待ちの状態で留め置かれているので、すぐに開発を開始しよう 新規艦船の建造は、既製の艦型をそのまま使ったら、完成時には時代遅れになってしまう。その時々の自国の技術力に応じて、改良を加えていくことが重要だ

 一瞬の判断が勝負を左右するリアルタイム海戦

 さて、シリーズ初のリアルタイム海戦の出来はどうなのか。これはシリーズファンなら誰しも気になるところだろうが、個人的には大満足だった。敵の空母艦載機が味方艦隊に殺到すればほぼアウト、という航空機圧倒的有利のゲームバランスもそのままだったし、偵察機による索敵の重要性の高さ、航空隊発進までの絶妙な待ち時間、砲撃戦の凄まじい迫力などなど、(実はちょっと心配だったけど)リアルタイムになって良かったと思える見事な出来映えだ。演出にも大変凝っていて、航空隊は標的艦を軸に弾薬がなくなるまでイヤというぐらいぶんぶん旋回するし、至近弾の際に海中より吹き上がる水しぶきも大迫力。海中を進む魚雷の束の表現も恐ろしくていい。あえて難癖を付ければ、主砲弾は視認できなくて良かったように思うのと、艦を選択した際に表示されるワクが少し目立ちすぎる印象があるぐらいだ。

戦艦部隊を率いていて最高に心躍る瞬間は、敵空母を射程内に収めたときだ。画面は大和の主砲でアメリカの正規空母レキシントンを攻撃しているところ
 艦隊の動きも、海戦マップの茫漠とした広さとは裏腹に実にゆったりとしており、艦の回頭速度も伝声管で機関室に向かって怒鳴りたくなるぐらいにのろのろとした動きで、艦操作の難しさが実感できておもしろい。今回評価版をプレイしながら、敵航空隊に殺到されてめたくそにやられつつしみじみ実感したのは、目標到着時刻をきっちりと見極めることと、昼間は陸地には近寄らないことが決定的に重要だということだ。敵の偵察機に発見されると、その海域の敵全艦隊および全基地に連絡がいくため、そのまま突き進むと数派におよぶ敵機の来襲は避けられない。先に敵の偵察機に見つかった場合は、それこそ即時一斉回頭で反対向きに全速で逃げまくり、敵機の陰に怯えつつ夜を待つしかない。この辺の感覚は、実際にプレイして体で覚えていくしかないだろう。

 先ほども軽く触れたが、戦闘に一度に参加できる艦隊数は3つまでという制限が定められている。3艦隊ともプレーヤーが操作することも可能だが、慣れないうちはひとつの艦隊すら満足に動かせないので、ほかの2艦隊はコンピュータに委任してしまった方がいい。航空隊発進後は敵機による反撃を避けるため、艦隊と逆方向に逃げるなど、コンピュータに教えられることも意外と多かったりするからだ。
 なお、IVでは、すべての海戦のリプレイを保存することができる。会心の指揮が執れた場合は、保存しておいて後でじっくり眺めて楽しむのもいいし、艦隊全滅のような最悪の被害を被った場合には、どの時点での決断が間違っていたのかリプレイで研究するのもいいだろう。多目的に活用できそうな機能である。

これがショートシナリオモードのシナリオ選択画面。海戦終了後は、その結果からキャンペーンを続けられる
 最後になったが、「ショートシナリオモード」も奥が深くて遊びごたえがある。このモードは、勝つのは当然なユーザーがいかに美しく鮮やかに勝つか、といった体裁の上級者のためのモードで、何度も繰り返し楽しめる。私はまだまだ勝てないが、うまくなれば「坊の岬沖海戦」も日本プレイで勝てるかもしれない。現時点では太平洋、大西洋合わせて9本のシナリオしか用意されていないが、発売後、順次GAME CITYで新しいシナリオがダウンロードできるようになるはずなので、ユーザーはこまめにチェックするといいだろう。欲を言えば、インターネットを介したマルチプレイが楽しみたかった。このゲームシステムなら、さぞかしおもしろかっただろうにと思うのは私だけではないはずだ。ぜひ、パワーアップキット等での追加を望みたい。

この美しい海は地中海。黒煙を吹き上げているのはドイツ陣営所属のイタリア艦隊。追撃していたはずなのにイギリス艦隊の魚雷が当たりまくりこの結果。う~ん 戦艦長門を旗艦とする第1艦隊が敵基地を夜間砲撃中。夜戦は基地攻略における基本中の基本技だ。夜を徹してガンガン撃ちまくり、黎明とともに全速で逃げるべし 明け方は、開けてきた視界の先に敵の大艦隊がいる場合があったりするから怖い。日本の航空隊は着艦途中だというのに、アメリカの空母はこれから発艦するところ。勝負は完全に見えた1戦


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【動作環境】
  • CPU:Pentium Pentium II 266MHz以上 (Pentium II 333MHz以上を推奨)
  • メモリ:64MB以上 (128MB以上を推奨)
  • HDD:450MB以上
  • CD-ROMドライブ:4倍速以上 (起動時必須)
  • ビデオカード:1024×768ドット/6万色以上


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「提督の決断IV」の公式ページ
http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/new/tei4/index.htm

(2000年3月6日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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