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【特別レビュー】「ファイブスター物語」著者 |
ファンタシースターオンライン | |
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ジャンル:ネットワークRPG 発売元:セガ (ソニックチーム) 価格:6,800円 対応プラットフォーム:Dreamcast 発売日:2000年12月21日
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●ゲームをやりこんでこそわかる新たな魅力について語る特別レビュー。今回はデザイナーの永野 護氏による「ファンタシースターオンライン」のレビューをお送りします。オンライン、オフライン関わらずこのゲームをプレイしまくった(現在も続行中)氏の評価はいかに?
■ ある意味「暴挙」とも言えるコンシューマー向けオンラインネットワークゲーム
家庭用ゲーム機での本格的なオンラインネットワークゲームとして、満を持して発売された「ファンタシースターオンライン」は、あらゆる意味で想像を絶するゲームであると言えるだろう。
通信の環境が整備され、使用マシンも臨機応変に対応できるパソコンのオンラインゲームと違い、家庭用ゲーム機でのオンラインゲームは乗り越えなければいけない数多くのハードルがある。サーバーはもとより、パソコンゲームなどやったこともない数多くの若年層や未経験者が大挙して集まってくるわけだから、このゲームの開発は「暴挙」であったとも言えるだろう。
■ “このゲームをやるためにDC本体ごと買い込んでもまったく後悔しない”と言いきってしまってもいいほどの出来
オフラインプレイもダウンロードクエストなど、十分楽しめる要素が詰まっている |
「ファンタシースター」というのは昔からのプレーヤーにとって“特別な”ゲームであることは確かである。この僕も10年以上前、この作品に初めて出会ったときの新鮮さと驚きを今も覚えている。今作も、セガのRPGというだけで見た目と先入観からこのシリーズを敬遠していた方も多いだろう。
だが、本当にゲームの面白さを求めている方ならば“このゲームをやるためにDC本体ごと買い込んでもまったく後悔しない”と言いきってしまってもいいほどの出来だ。
ここで「オンライン」という言葉を取り去って、通常のRPG単体としてこのゲームを評価するとしても、今までのRPGとはぶっちぎりの斬新さと面白さを持っている。
3Dが主体となった戦闘は、コマンド方式のゲームと違い、ある程度の慣れが必要なのは確かだが、そのリアルさと戦闘の説得力は桁違いである。ある意味簡単な格闘ゲームのセンスも必要なので、そういったゲームでの慣れが必要かと思われる方がいるかもしれないが、そんな心配はまったくない。
僕が主催するこのゲームの「FSSロビー」には、ネットワークはおろかゲームというものさえあんまりやったことがない。という方が連日押し寄せている。だが、その方々が最初はむちゃくちゃな有様でも、そこでやめないで毎日のようにやってきては少しづつゲームに慣れていくのを見ていると、そのRPGもやったことがない方々をどんどん魅了していっているのがこの目で実際に見て知っているからだ。
■ プレーヤーこそが主人公ということを知らずのうちに示している「リコのメッセージ」
画面の美しさもさることながら、このゲームを作家としての僕から見ても評価できるのがそのストーリー性だ。
RPGは、はっきり言ってしまえばやることもなくなって、ストーリー性だの世界観だのを前面に押し出すようになってきたが、はっきりいってゲームのシステムがどんなにすごくても物語はお粗末極まり、幼稚園児がつくった作り話的なものに始終してしまっているものが増えた。これは極端ないい方になってしまうが、実際のところ、高校生がアニメやマンガを見て、それに触発されて授業中に空想している「妄想」程度のストーリーで終わってしまっている作品がほとんどだからだ。
これに関して弁護するわけではないが、じつはストーリーとゲーム性というものは水と油のようなもので、どちらかにウエイトを置くとどちらかが矛盾し、ゲームそのものの世界観や物語が崩壊してしまうということもある。確かに、物語を作る方々がいてもそのジレンマに悩んでいる開発者はすごく多いことだろう。
この「ファンタシースターオンライン」のストーリーは実に「簡略化」され、ゲームを進んでいくと見つかる「リコのメッセージ」に集約されている。このメッセージ、半分以上は敵の攻略をプレーヤーに教えるためのものなのだが、よけいな情報は一切なく、プレーヤーこそが主人公ということを知らずのうちに示しているのだ。
このアイデアは表彰ものの出来で、プレーヤーはゲームに専念出来ると共に、ストーリーとして頭に入ってくる情報と、それ以外の情報が混乱しないようになっている。というのは「リコ」という人物のメモだけ読んでいれば全てがわかるからだ。
オフラインはシンプルゆえにプレイしやすい |
■ オンライン要素が加わると、数十倍に膨れあがる魅力
さて、ゲーム単体としてのシステムとストーリーは以上のようなもので、単体のゲームとしても今までのRPGをはるかに越えているのだが、これに「オンライン」という要素が加わると、その内容は数十倍に膨れあがる。
情報は自分だけでなく、オンラインに接続し、一緒に冒険をやった他の方々と共有し、戦いも他人と一緒にゲームをやっているという感情と今までになかった「ひとりではない」という思いが一緒になり、全てが新鮮で別世界なのだ。
僕はこのゲームの面白さとすばらしさを一人でも多くの方々と共有したいと思い、自分のネームバリューを使って「FSSロビー」を主催した。
ここには現在200人以上のプレーヤーが連日押し寄せ、その彼らが使うキャラクターも一人ではないので、もう何がなんだかわからない状態になってきているが、それでも毎日「初めてきました」という方が現れ、その方とパーティを組んでサポートし、冒険に出ることの面白さは言い表せない。
FSSロビーは僕の作品「ファイブスター物語」の読者を集めて行っているが、それ故に「ゲームやったことない」、「オンラインもネットも初めて」、「パソコンがないのでインターネットもやったことない」という方が相当数に上っている。高校生から女性まで、今までのネットゲームには縁のなかった方々が、パーティは初めて、チャットも初めて、何から何まで初めてというある意味新鮮、ある意味むちゃくちゃな場所でもある。
ゲームに入るまで30分もロビーカウンターで止まっていたとか、最初のザコ一匹倒すのに5分もかかったとかも面白いのだが、この前は、初めて繋いだ方が、当たり前だがFSSロビーがどこにあるのかわからず、最初に入ったサーバーで迷っているその方をみかねた親切な方が、FSSロビーまで案内してくださったということもあった。
あらゆることがおかしく、また感動する。
チャットを使ったコミュニケーション、そして人とのプレイがオンラインゲームの魅力 |
■ オンラインゲームの魅力は「まったく知らない世界」での「ワクワク・ドキドキ感」
オンラインゲームは魅力もたくさんあるが、オンライン故にインターネットなどで見られる誹謗中傷、暴言などのマイナス面ももちろんある。だから僕はFSSロビーでは一定のルールを作り、初めてオンラインにつないだ方がそういったマイナス面をなるべく初の頃に経験しないように努めている。ゲームの面白さがわかる前にロビーやパーティでいやな思いをしたのではあまりにもったいないからだ。
初心者の方もゲームが面白くなって、ネットに慣れてくれば否が応でもそういった「負」の面も経験するだろう。だが、そんなことを言う前にパーティでの面白さと魅力を堪能して欲しいと思うからだ。
そしてオンラインゲームの魅力は、この初めての方とやる、「まったく知らない世界」での「ワクワク・ドキドキ感」。これはゲームとは別のもうひとつの「人間とのゲーム」なのである。
見ず知らずの人とのプレイが「ワクワク・ドキドキ感」を生む |
■ 「ウィザードリィ」「ウルティマ」をついに越えてくれたRPG
この二つが一緒になった「ファンタシースターオンライン」。
僕はこのゲームをセガの中でも「バーチャファイター2」と並ぶ最高傑作だと断言する。また、RPGとしての内容も「ウィザードリィ」「ウルティマ」をついに越えてくれたと実感しているこの頃だ。
やり込めばやり込むほどこのゲームのすさまじさがわかってくる。ゲーム内容の完成度の高さしかり、インフラの構築とサーバーシステムしかり、そしてこう思うのだ。
「日本でこのゲームを越えるオンラインRPGは出来ないだろうな」と。
んで、こうも思ってしまう。
「格闘ゲームの最高峰『ソウルキャリバー』、RPGの最高峰『ファンタシースターオンライン』と、この2つのDCソフトがあるにも関わらず、なんで他の人は他のハードのしょうもないゲームやってるかなああ??」って。
PS:ロビーやフィールドでただ単に自分のキャラクターをぐるぐる走り回らせてもう2ヶ月。いまだにこの単調な「キャラを走らせている」だけのことにまったく飽きがこないのはなぜだ? 気がつくと5分くらいぐるぐる回って遊んでいるだけのことがあまりに多い。それはほんとうにその自分のキャラがいとおしいからなのだと思う。
いや、その出来があまりにいいことはおいといて。
この記事に使用している写真は、FSSロビーの方々の多大な協力のもとに撮影されたものです。ありがとうございました(編集担当) |
【筆者紹介 永野 護(ながの・まもる)】 | 【プレゼント】 |
デザイナー。サンライズにおいてアニメ「機動戦士Zガンダム」、「銀河漂流バイファム」、「重戦機エルガイム」などのメカやキャラクタのデザインを担当。その後も「ブレンパワード」などでデザインを担当している。10年以上連載を続けているコミック「the FIVE STAR STORIES(ファイブスター物語)」、デザインやさし絵を担当している「シェルブリット」(いずれも角川書店刊)などの著作を持つ。文中にもあるが、「ソウルキャリバー」、「鉄拳」シリーズ(ナムコ)や「バーチャファイター2」(セガ)、「Diablo2」(カプコン)、「ファイアーエムブレム」シリーズ(任天堂)などやり込んだゲームは数知れず。「パンツァーフロント」(アスキー)、「パンツァーフロントbis.」(エンターブレイン)などでゲームに登場するゲストメカのデザインも担当している。 | |
今回レビューを書いていただいた永野氏直筆のサイン色紙を3名様にプレゼントします。詳しくはプレゼントページを参照してください※プレゼントの受け付けは終了しました |
□トイズプレス「the FIVE STAR STORIES」オフィシャルページ
http://www.toyspress.co.jp/fss/index.html
□永野 護氏の「ファンタシースターオンライン」レポート
http://www.toyspress.co.jp/MAMORU/mn_essay.html
□セガのホームページ
http://www.sega.co.jp/
□ソニックチームのホームページ
http://www.sonicteam.com/
□「ファンタシースターオンライン」オフィシャルページ
http://www.sonicteam.com/pso/
(2001年2月16日)
[Reported by 永野 護]
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