素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】黒い三連星! 「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」、こだわりのジャイアント・バズとエフェクトパーツで、その高機動を再現
2019年2月19日 12:00
【ライター:勝田哲也】
超合金と洋ゲーを愛するライター。MSVは模型屋で食い入るようにボックスアートを見ていた記憶がある。モデラー達の優れた技術で生み出される改造作品は憧れを感じた。静岡のホビーショウを特集した雑誌記事など、すり切れるまで読んでいた記憶がある。当時憧れたMSの彩色済みアクションフィギュアが手にできるなんて、改めてスゴイ時代だ(絵:橘 梓乃)
MSV(モビルスーツバリエーション)は、ガンプラのシリーズの1つであり、筆者達“ガンプラブーム世代”にはとても魅力的な言葉だ。MSVはアニメ「機動戦士ガンダム」に登場するMSを発展させたメディアミックス企画であり、プラモデルとして商品化されることで、多くのユーザーがその立体物を手にした。弊誌では“【特別企画】ベストセラーを続ける「MSVジェネレーション」の真実とは?”にて、著者のあさのまさひこ氏自身の解説記事も掲載しているので、ぜひあの頃の想いを再燃させて欲しい。
「機動戦士ガンダム」のアニメ世界をさらに発展させたMSV。特殊な任務に合わせた改造機や、エースパイロット向けの高性能機、コンセプトを受け継ぐ後継機など、様々なアイディアは、その後のロボットアニメ、ホビー商品に強く影響を与えた。ユーザー自身がオリジナル設定を考え、独自のメカ世界を夢想するきっかけにもなった。MSVは現代まで続く“ロボット文化”の大きなターニングポイントの1つだった、といっても過言ではないだろう。
「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-06R-1A 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.~黒い三連星~」(以下、「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」)は、プラモデルのMSV第1弾である「MS-06R-1A 高機動型ザクII」をモチーフとしたアクションフィギュアだ。
「ROBOT魂 機動戦士ガンダム ver. A.N.I.M.E.」はアニメの設定画に近いMSを表現し、アニメでのアクションシーンを最新のアクションフィギュア技術で再現するというユニークな挑戦をし続けている。今回は事前に作り手であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の野口勉氏にこだわりのポイントも聞いていたので、そのポイントも踏まえて紹介していきたい。
初登場の衝撃をもう1度! 高機動ザクのカッコ良さを実感
「MS-06R-1A 高機動型ザクII」は、通常のザクを宇宙でのより高機動な戦いを実現させようと設計されたザクのバリエーションである。外観的には足とバックパックを交換しているのが大きな特徴だが、資料によっては全身のフレームまでが変更された全く別な機体というものもある。黒い三連星機は彼らが地球に降下するまで使っていたという設定であり、他にもシン・マツナガ機、ジョニー・ライデン機(R2型)などが立体化されている。
この機体はプラモデルでのMSVシリーズ第1弾であり、人気の高いザクを強化した姿と言うことで人気も高かった。何よりプラモデルのパッケージアートがカッコ良かったのである。ロボットの正面の立ち絵が定番であるのに、高機動型ザクIIのパッケージアートは後ろ向きで、その特徴であるバックパックと足を強くアピールしているのだ。細かいマーキングやダメージ表現など、ミリタリープラモデル風の画風も大人な感じで、当時のガンプラユーザーを魅了した。
「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」は人気の高い黒い三連星機を再現できるアクションフィギュアである。今回はまず通常のザクと比べるために筆者のコレクションである「ROBOT魂 〈SIDE MS〉 MS-06 量産型ザク ver. A.N.I.M.E.~ファーストタッチ2500~」と並べてみた。この商品は秋葉原で開催された「TAMASHII NATION 2018」の会場で販売されていたものだ。
比べるとやはり足とバックパックに大きな違いがある。バックパックに接続される腰の動力ケーブルの形状も異なる。色が変わったことで雰囲気も大きく変わる。また、「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」には肘や肩などにマーキングが入っている。このマーキングはさらにシールが同梱されており、ガイア、オルテガ、マッシュの各パイロット機を再現可能だ。
より細かく足とバックパックを見ていこう。足には3つの大型バーニアが追加され、動力パイプも確認できる。さらに小型バーニアもあり凄まじい情報量だ。偏向板も可動する。野口氏と原型師がこだわったのは膝の可動メカニズム。膝を動かすと出っ張っているタンクが沈み込み、膝を深く折り曲げることができる。デザイン上できないことを、設計で実現しているのである。
バックパックの情報量も楽しい。複雑な形状のバックパックは、高機動戦闘に要求される動力の強化や、エネルギー循環を補助する機能もあるのではないだろうか。ゴテゴテとつけられた意味深なパーツが様々な想像を可能にする。この過剰な情報量によるカオスな感じが、いかにも「改造プラモデル」らしくて良いのだ。首の後ろの取っ手のようなパイプも当時の流行が感じられる。
そして「試作型ジャイアント・バズ」である。ドムのメイン武器であるジャイアント・バズと比べると後部がまるまる違う。後ろの排気口の形状はザク・バズーカと同じになっていて、いかにも“過渡期”を感じさせるところがニヤリとさせられる。黒いザクがジャイアント・バズに似た形状の武器を持っているのが、ドムを駆る黒い三連星と重なる。コアなガンダムファンには楽しくてたまらない構図だ。
野口氏のこだわりは、この試作型ジャイアント・バズの砲身を掴んで運ぶための平手である。このパーツには凸があり、バズーカのカバーを外して穴にはめ込むことでしっかりと保持できるのだ。この平手はわざわざ専用パーツとなっており、このつかみ方を再現するためだけにバズーカ側にもギミックが仕込まれている。
この持ち方はMSVのプラモデルが発売される前のザクの改造作例として、モデラーの小田雅弘氏が作った高機動型ザクIIが試作型ジャイアント・バズを掴んでいた持ち方なのだそうである。あえてバズーカを構えず砲身を掴んだこの姿に野口氏と原型師はしびれ、このパーツをわざわざ用意したとのことだ。正直、筆者には聞かなくてはわからないこだわりだが、MSVファンの中には、この平手パーツにニヤリとした人は、少なくないのではないだろうか。
10個のバーニアエフェクト! 高機動ザクならではのオプションパーツ
そして「エフェクトパーツ」である。「ROBOT魂 機動戦士ガンダム ver. A.N.I.M.E.」は豊富なエフェクトパーツの同梱が大きなセールスポイントだが、本商品の場合10小物バーニアパーツがついている。なぜこんなに付いているのか? それは“高機動”だからである。
「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」の足のバーニアや背中のバーニアにたくさんエフェクトパーツをつけることで、この機体が高機動を実現するために作られた機体であることをより強く表現できるのだ。噴射炎の方向を工夫することで急激に軌道を変えたり、逆噴射で制動を加える姿も再現できる。パイロットは凄まじいGに翻弄されそうであるが、このGに耐え、凄まじい機動性を発揮させるのが、エースパイロットである黒い三連星だろう。
この豊富なバーニアパーツは商品を手に持って活躍を夢想する“ブンドド”を楽しくさせてくれる。エフェクトパーツをつけたまま手に持って、その凄まじい機動力を想像する。シャアや黒い三連星はどのようにザクを扱い、そして大きな戦果を挙げていたのか。噴射炎があることで想像がさらに深まる。バーニアの推力への説得力が増す気がする。ハリネズミのようにたくさんつけるのも、一部の噴射で姿勢制御をイメージするのも楽しい。
さらに本商品にはザク・マシンガン、ヒート・ホークといった武装、そしてガイア機に使われていたという指揮官用の角のついた頭部パーツも同梱されているこれらを活用し、さらなる高機動型ザクIIの活躍を想像していくのが楽しい。
「ROBOT魂 機動戦士ガンダム ver. A.N.I.M.E.」の共通する特徴であるが、やはり“可動”の凄さは今一度語っておきたいところだ。膝立ち、胴の折り曲げ、首のそり……極端な可動ができることで、ポーズの微妙な表情付けを凝ることが楽しい。設定画での関節がついてる方向とは異なる方向への腕の曲げ方や、設計上できないはずの首の傾きなど、引き出し関節や2重関節、スライドなど多彩な方法で自在の動きを可能とする。本当にホビー業界の技術はスゴイ。これらの工夫は他の業種でもとても役に立ちそうである。
「ROBOT魂 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」はちょっとマニア寄りの商品であるが、筆者のようなガンプラブーム世代にはグッとくること間違いなしである。ファンはもちろんだが、これまで「ROBOT魂 機動戦士ガンダム ver. A.N.I.M.E.」に触ったことがない人は、この記事をきっかけにお気に入りのMS商品を1つ手にして欲しい。組み立てることなく遊べるフィギュアは時間のない人にもオススメだ。手にして、まず動かして欲しい。そのポテンシャルは、きっと驚きをもたらすだろう。
(C)創通・サンライズ