素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】特殊装備だからこその迫力! 「METAL ROBOT魂 Sガンダム専用ブースターユニット」。4基の大型ブースターとスマートガンが生み出す“凄み”

題字:浅野雅世
【第31回魂アイテム】
「METAL ROBOT魂(Ka signature) <SIDE MS> Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」、プレミアムバンダイ専売商品で、1月末発売、価格は5,940円(税込)。別売の「METAL ROBOT魂 Sガンダム」に対応した追加装備。4基のブースターユニットを装備した「Bst-Sガンダム」を実現する商品だ

【ライター:勝田哲也】

超合金と洋ゲーを愛するライター。Sガンダム購入がきっかけで、「ガンダムセンチネル」の世界に遅ればせながらハマり始めた。こうなるとEx-Sガンダムも欲しくなってくるし、Zプラスを買い逃したのも悔やまれる。ネロもかっこいいなあ……(絵:橘 梓乃)

 「METAL ROBOT魂(Ka signature) <SIDE MS> Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」は、その名の通り弊誌でもレビューした「METAL ROBOT魂 Sガンダム」向けのオプション装備である。

 1つだけでもものすごい推力を生み出しそうなブースターを4基も装備、まるで全身がブースターになったような姿は、人型兵器であるモビルスーツ(MS)がその姿を変えることで怪物的能力を獲得したことをストレートに伝えてくれる。不格好さ、異形さがそのまま迫力に変換されるのだ。

 本商品はプレミアムバンダイ専売商品である。今からは購入できないが、Sガンダムは人気のMSであり、その特殊装備であるブースターユニットを装着した姿は、プラモデルだけでなく、食玩などでも立体化されている。今回は「METAL ROBOT魂」である彩色済み完成品を手にすることの楽しさを語っていきたい。


4基の巨大ブースターを装備した異形のMSを組み立てる!

 Sガンダムは同時期に開発されたZZガンダムと同じ、上半身のAパーツ、下半身のBパーツ、そしてコアファイターが変形するCパーツで構成されている。この構成は初代であるRX-78 ガンダムと同じであるが、SガンダムとZZガンダムの設計思想は大きく違う。

 ZZガンダムが大出力と大火力を持った単体での高性能MSを目指していたのに対し、Sガンダムはオプションパーツでの様々な機能の付与を前提としている。今回紹介するブースターを装着した「Bst-Sガンダム」は最大で10Gもの加速性能を発揮、長距離を高速で移動し、敵への強襲を可能とする。ただしその加速はパイロットへの負担も大きく、敵とすれ違うのもほんの一瞬、しかも敵の攻撃をかわすことも困難という、非常に危険度も高い戦闘となる。

 このBst-Sガンダムは、強化装備を装着した「Ex-Sガンダム」と同じバックパックであるブースターユニットを4基も装備した形態だ。背中に加え、Bパーツである下半身もブースターユニットに交換、4基8本の大型ブースターで爆発的な加速を実現する。下半身をブースターユニットに変えるという考え方は、“足がないMS”といわれた「ジオング」と共通する設計思想とも言えるだろう。この方向性をさらに推し進め戦艦の主砲とiフィールドを使った「ディープ・ストライカー」という強化プランも考えられた。

「METAL ROBOT魂 Sガンダム」。今回はこのガンダムを大型ブースターによる強襲型装備「Bst-Sガンダム」に変えるためのセットだ

 今回発売された「METAL ROBOT魂(Ka signature) <SIDE MS> Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」は、先行してこちらもプレミアムバンダイから販売された「METAL ROBOT魂 Sガンダム」に取り付けることで、「Bst-Sガンダム」を実現させる商品だ。パッケージには4つのブースターユニットが入っており、かなりの迫力だ。この大型パーツをSガンダムにつけたらどうなるか、ワクワクさせられる。

 足を交換するために、まず「METAL ROBOT魂 Sガンダム」の足を外す。この方法が想像するよりワイルドで、足を基部から引っこ抜くのだ。塗装された表面を傷つけないように慎重に、しかし力を込めて引き抜く。足を引き抜いたら次は接続パーツを装着する。前装甲と、間のパーツも装着し、ブースターユニットを取り付ける。

足を取り外し、基部パーツを取り付ける
脚部にブースターユニットを装着

 次に取り付けるのが大型プロペラントだ。Bst-Sガンダムは巨大なプロペラントタンクを2つ装備する。4基8発のブースターで進むために、大量の燃料が必要だと一発で伝わるこのタンクはそのケレン味溢れる大きさそのものが楽しい。戦闘が始まれば被弾は必至なので切り捨てるんだろうなと思わせる。

 次がパックパックのブースターユニット。Sガンダムのバックパックは大型スタビレーターとビームカノンのついたブースターユニットで構成されている。この大型スタビレーターはプロペラントタンクであり、先端は複合センサーが装備されている。本商品は非変形だが、設定上Sガンダムの変形時、機首になるユニットだ。今回は両脇のブースターユニットを外したジョイントに大型ブースターを取り付ける。

大型プロペラントを背中に装着
大型スタビレーターの両脇に大型ブースターをつける

 全てを取り付けることでBst-Sガンダムの完成となる。ブースターの固まりのような迫力ある姿だ。Sガンダムが活躍した時代は変形によってブースターを同一方向に束ねることで通常以上のスピードを発揮させ、戦場への迅速な到着や、一撃離脱の戦法を可能にしていたが、Bst-Sガンダムは、変形せず、全身に大型ブースターを取り付けるという方法でスピードを実現している。

 あえて1つの機能に特化した姿は、汎用性を最大の特徴とするMSという存在を大きく揺るがすものとも言えるし、より機能を特化したMA(モビルアーマー)的アプローチと言えるかもしれない。この“異形”な感じは、独特な魅力を持っている。

Bst-Sガンダムに組み替え完了。機能に特化した異形のMSである。この不格好さがカッコイイのだ


ブースターユニットに接続するビーム・スマートガン。ケレン味溢れるシルエット

 そして武器の装備だ。Sガンダムは巨大なビームライフル「ビーム・スマートガン」を装備している。この銃の特徴はエネルギーをカートリッジ化した“Eパック”を使用するこの時代の標準的な仕様ではなく、エネルギー電動アームを使い、ムーバルフレームからエネルギーを供給して射撃する。メガ・バズーカ・ランチャーに比べると威力は落ちるが、取り回しに優れ、威力も高い。この大型武器は、Sガンダムを象徴する武装だ。

 Bst-Sガンダムは足を交換しているため、スマートガンの補助アームを装着できる場所は、脚部のブースターとなる。ブースターにはエネルギー兵器をジョイントできるコネクターが設定されており、脚部のジョイントはカバーで隠されている。「Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」ではこのビーム・スマートガンの補助アームを装着するためのジョイントが付属しており、脚部のコネクターに接続、ビーム・スマートガンのアームを延長させ、銃身に接続させる。

 ビーム・スマートガンを装備したBst-Sガンダムは“ケレン味”という所では、とても楽しい。大出力のブースターと、細長く前方に突き出した長大なスマートガン。ロボットと言うより宇宙戦闘機のようだ。このコンセプトがディープ・ストライカーへ、そしてデザインのライン的にデンドロビウムへ繋がっていくというのは納得できる。

連射式ビーム・スマートガンを装備。補助アームでブースターのコネクターに装着する
コネクター用のパーツが同梱されている

 ここからは手持ちのパーツで遊びを広げていきたい。Sガンダムでビーム・スマートガンを使用する場合、補助アームに加え、左腰に接続されたエネルギー供給ユニットも使用していた。Bst-Sガンダムは、Ex-Sガンダム同様補助アーム1本だけで使用するようだが、せっかくユニットがあるので、取り付けてみた。

 エネルギー供給ユニットの基部はブースターのコネクトと径が合わないので引っかけているだけだが、やはりこのアームを使うとより迫力が増す。家で飾るときはこの姿にしておこうと思う。

 そしてもう1つが、「スマートガン2本持ち」である。「METAL ROBOT魂 Sガンダム」は、通常型と連射型の2つのスマートガンが付属しているのだ。こちらもジョイントパーツがない上に、スマートガンの補助アームの形状が微妙に異なり片方は短めなので、うまく接続できるように調整する必要がある。2丁拳銃ならぬ2丁スマートガンはBst-Sガンダムの“トンデモ兵器”っぷりがさらに増す感じだ。

左腰についていたエネルギー供給ユニットを装着してみる。よりケレン味が増した姿に
こちらはスマートガン2丁持ち

 もう1つ、「Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」には遊びの幅を広げる工夫がある。ジョイントパーツを使うことで、ブースターユニットと、Sガンダムの大型スタビレーターを接続、“支援戦闘機風”のオリジナルメカを組み上げることができる。

 ブースターユニットは基部がフレキシブルに可動するので動かすことでシルエットを大きく変えることもでき、こちらも工夫することでかっこ良さを追求できる。他にも筆者は持っていないが、本商品は「アーマーガールズプロジェクト MS少女 Sガンダム」にも対応しており、こちらの遊びの幅も広げてくれる。

ジョイントを使って支援戦闘機風にも組み立てられる

 「Sガンダム専用オプションパーツ ブースターユニット」を装着したBst-Sガンダムは、Sガンダムを極端な目的のためにその姿を変えるという、充実した“ガンダム(MS)文化”を体現してくれるようなアイテムである。MSやガンダムの知識がない人、人型メカとしてのカッコ良さにこだわる人には、この異形のMSは奇妙に思えるだろう。しかしこの不格好さが、目的を達成するために無理矢理強化パーツをくくりつけたようなその姿がカッコイイのだ。

 アーム接続の取り回しの悪さや、大型ブースターユニットのため可動範囲が限られるところもあるが、「METAL ROBOT魂」ならではの関節強度、細かい塗装、精密なディテールでとても遊びごたえのある、楽しい商品となっている。

 ちょっと感じた難点は、脚部ブースターを接続する基部パーツだ。固定が少し甘く、ブースターユニットに重量があるので、ポーズをつけようとしたとき外れてしまうことがあった。飾って置くだけならば外れないし、再びSガンダムに戻したいとき外れないという方が問題なので、これでもいいかな、と感じている。

 模型技術がない筆者にとって、これだけの精度の高い、手の込んだフィギュアが家に飾れるというのは、やはりとてもうれしい。しかもBst-Sガンダムという、かなりニッチな題材のフィギュアである。とても面白い時代に生きているなと、このBst-Sガンダムを見て実感する。こういうユニークな題材のフィギュアはもっともっと増えて欲しいと思う。