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特別企画:「ガンダム」へ挑戦、全てのMSを一貫した「ver. A.N.I.M.E.」規格で!

ビグ・ザムやゾックを商品化するために、ユーザーの裾野を広げる施策を

2018年4月発売予定

価格:5,940円(税込)

 前回掲載した「ポケットの中の戦争」を「ver. A.N.I.M.E.」に! 野口勉氏インタビュー”“で商品への想い、作品への想いを野口氏に聞いたが、この後話は大いに発展し、「ver. A.N.I.M.E.」そのもの、そして野口氏の“構想力”を聞くことができた。そこで今回はインタビューを2つに分けた。

ROBOT魂 機動戦士ガンダム 一年戦争 ver. A.N.I.M.E. スペシャルページではすでに商品となっている30以上のMSの姿を見ることができる。改めてラインナップの充実ぶりに感心させられる

 改めて考えると「ver. A.N.I.M.E.」はすごいプロジェクトだ。ガンダムやザクだけでなく、ギャンやドム、さらにはボールまで、「機動戦士ガンダム」に登場する多彩なMSを全て「ver. A.N.I.M.E.」という“統一規格”で商品化しようとしているのだ。それを数カ月に1度という極めて短いスパンで進めている。そして今、「ポケットの中の戦争」というその後に作られた作品世界を取り込み発展しようとしている。

 商品を作るには“コスト”がかかる。作品世界の登場メカ全てを商品化するとなるとその膨大なコストを成立させるためには、「大きな売り上げ」が見込めなくてはならない。多彩なコンテンツのある日本市場といえど「全てのメカを商品化する」という“商売”が可能なのは「ガンダム」くらいだろう。ガンダムのプラモデル「ガンプラ」は、「統一スケールで多くの敵メカをリアルに立体化」したその価値観が新しかったからこそ、大ブームに繋がったのだ。

 「ROBOT魂 ガンダム ver. A.N.I.M.E.」シリーズは独自の統一規格のもと「全てのMS」を立体化しようという壮大な夢、そしてビジネスに挑戦しようというチャレンジである。理念や想い入れだけでは成し遂げられないが、作品や1つ1つのMSに強い想い入れを感じさせないとファンはついてこない。

 しかもコアファンだけではシリーズは続けられない。多くの人に魅力を感じさせシリーズファンを多くすることで、商品化の難しいマイナーなMSもラインナップに加えられるのだ。この難問に野口氏はどう挑み、そして結果を出しているのか、そしてその先に野口氏が何をしようとしているか、注目して欲しい。

ビグ・ザムやゾックまで! 止まることのない「ver. A.N.I.M.E.」の野望

 様々な商品がある中で、現在のホビー文化を形作った「機動戦士ガンダム」のMSを「ver. A.N.I.M.E.」という1つの規格のもとに再現する。これは非常に大きなプロジェクトである。1つ1つの商品企画ではなく“全体”を提示し、企業に認めさせ、商品シリーズとして実現させる。「ver. A.N.I.M.E.」が2年続き、そして今回新しい局面を迎えるところで、改めてそのスケールの大きさがわかる。

今回は野口氏の壮大な構想を聞くことができた。これをきちんとコストまで試算し、情報開示のタイミングや、プロモーションまで考えて提示するからこそ、この大きなプロジェクトが実現できたのだ
シリーズが始まったばかりの展示。「ver. A.N.I.M.E.」ではどのような遊び方ができるかを明確に提示している

 「元々ガンダムの商品は『できるだけアニメのMSをきちんと再現しよう』という理念の元進化し、その流れがファンに受け入れられた。その後どんどん進化していく中で、『アニメではこう見えるけど、メカとしてはこうだ』という流れが生まれていき、線や機構を足し、ともすれば元のアニメをおろそかにしがちな方向も生まれてきた。私はその流れには疑問を感じていたんです。僕が欲しい、お客さんも欲しいと言っていただけるような『機動戦士ガンダム』のアクションフィギュアシリーズを作ってみたかったんです」と野口氏は語った。

 野口氏は以前のインタビューで「ver. A.N.I.M.E.」を立ち上げる前に3年間の商品ラインナップをすでに企画し、それを実現させるために進めてきたと語っていた。そのときはピンとこなかったが、ガンダムから始まり、ゲルググまで商品化が決定した今ならばそれがいかにすごいかがわかる。

 単体の商品化だけでなく、「機動戦士ガンダム」全てのMSを商品化する、と言うことを会社に認めさせGOサインを出させ、なおかつきちんと結果を出した上で次に続ける。そう、「ポケットの中の戦争」を手がけ、「機動戦士ガンダム」に留まらず、劇中の“1年戦争”と言うキーワードに収まるMSを全て「ver. A.N.I.M.E.」という規格で出すこと、この“夢”に踏み出したのだ。

 「機動戦士ガンダム」は36周年を迎えた今でも人気の高いコンテンツであり、ガンプラに限らず“ライバル商品”は数多い。その中で「ver. A.N.I.M.E.」ならではの魅力を出すか。どのような“セールスポイント”を盛り込んでいくか。「アニメと同じように見えるデザイン」、「アニメの構図を再現できる、最新技術と独特なアプローチによる関節設計」、「豊富な武器、エフェクトパーツ」……こういった様々なポイントを盛り込むことで、ユーザーに手に取ってもらえる様にする。「ver. A.N.I.M.E.」には、夢を実現するための現実的な施策が見て取れる。

 「商品をどれだけ魅力的にするか、商品バリューをどこまで上げ、お客様に満足してもらえるか。私は常にそれを考えています。私は以前はホビー事業部にいましたし、ボーイズトイ事業部にもいました。『妖怪ウォッチ』関連で、『妖怪メダル』を他の商品でも使えてお客様のメダルのプレイバリューが大きく広がる、そういう考え方が『ver. A.N.I.M.E.』のエフェクトパーツに込められています。他の商品にもエフェクトパーツを使って貰うことで、1つの商品を超えたプレイバリューを実現させる。『ver. A.N.I.M.E.』はそういう意味で、『ガンダム』のフィギュアという枠も超えた遊びも提供しているつもりです。どうすれば手に取ってもらえるか、『ver. A.N.I.M.E.』はそれこそその点を必死に考えた結果と言えます」。

 統一スケールだからこそ遊びも広がる。野口氏自身は「このキャラクターにはこの武器」という想いを持っているが、「ドムにザクマシンガンを持たせる」といった他の商品と組み合わせて遊ぶユーザーも多い。そういった遊びを実現させるためには、同じサイズ、同じ規格で、できるだけラインナップを充実させれば遊びの幅は大きく広がる。ユーザーからは「武器セットが欲しい」という声も多いという。

 「ver. A.N.I.M.E.」には実は「ブロック玩具」的なアプローチも盛り込まれている。「ホワイトベースデッキ」はジオラマベースとして様々な形に組み替えられる。また、各商品に同梱されている手首パーツを保存しておける「手首格納デッキ」は、実はフィギュアスタンド「魂STAGE」の延長アームや、基地遊びのオブジェクトとしても活用できるように設計しているという。

 野口氏は「ver. A.N.I.M.E.」を立ち上げるにあたり、「自分が欲しいガンダムシリーズ」を突き詰めると共に、40人以上の人に「ガンダム商品としての最適解」をリサーチした。そして幅広いプレイバリューを盛り込んだ。それと共に「『ver. A.N.I.M.E.』はこれだけのものが出ますよ」というアピールもユーザーや業者に積極的に行なっていた。イベントで初めて「ver. A.N.I.M.E.」の試作品を展示したときに、量産型ザク、ドム、ジムなど「ここまでは出て欲しい」と言うアイテムをしっかり試作品という形で提示した。

 その後のイベントではアニメには登場しなかったMSVが一堂に会すジオラマなども展示された。筆者が今も覚えているのは、2年前の「TAMASHII NATION 2015」で、「ビグ・ザム」が展示されたことだ。「機動戦士ガンダム」で最も印象的な大型MA(モビルアーマー)をいきなり提示したのである。残念ながら撮影不可だったため写真を持っていないが、「これはすごいな」と衝撃を受けた記憶がある。

「TAMASHII NATION 2015」での展示。当時写真撮影が不可だったため、コレクターズ公式ページの写真となる。中央にビグ・ザムが確認できる
画像がちょっと小さいが、魂ウェブに掲載されているゾックのアクションフィギュア。「MS IN ACTION!!」というシリーズで展開されていたもので、アッガイとのセット販売だった

 ビグ・ザムは「機動戦士ガンダム」に登場したMA(モビルアーマー)で、設定での全長は60m弱、18mのガンダムの3倍以上の大きさである。バンダイではアクションフィギュアとしてかつて「ビグ・ザム」を発売しているが、そのときは30cmを超える大型商品となった。「TAMASHII NATION 2015」で展示されていた試作品も他の商品と比べると段違いに大きく、「すごいけど、商品化はされないだろうなあ」とそのときは思った。

 「ビグ・ザムは『ver. A.N.I.M.E.』がスタートした時期に展示しました。どれだけハードルが高い商品になるか、試作品を作って確認したかったんです。ユーザーに提示して『これからもしっかりとシリーズは続いていく』ということをアピールしたかったのですが、ビグ・ザムを作ることでの商品コストや、商品化に向けたハードルを試算しています。あの試作品は今も工場にあります。これからの目標として提示しているんです」。

 もう1つ試算を行なっているのが「ゾック」だ。水陸両用のMSだがMAといって良いほどに大きく、前後が同じデザインで、非常に特異な存在だ。ゾックはマイナーなMSで、「機動戦士ガンダム」で印象的な活躍が少ない。足も曲がるようなデザインになっておらず、アクションフィギュアとしてもギミックが見えない部分がある。こちらには野口氏は「今のままでは商品化が難しいというハードルを感じている」とのことだ。「ver. A.N.I.M.E.」の規格とは異なる方法など、様々なプランを模索しているとのことだ。

新規ユーザーを獲得し、ユーザー層を広げることこそシリーズ拡充への道

 「さらなるラインナップの拡充」という考え方だけではなく、「新しいお客をさらに呼び込んでいきたい」という想いも、野口氏は実現している。それが今回「TAMASHII NATION 2017」の会場限定品として販売された「ROBOT魂 RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E. ~ファーストタッチ2500~」だ。「ROBOT魂 ガンダム ver. A.N.I.M.E」は5,400円(税込)だが、この「ファーストタッチ2500」は、その名の通り2,500円(税込)となる。バズーカやエフェクトパーツなどを減らしているが、それでもこの価格を実現したのは驚かされる。

こちらは「魂フィーチャーズ2016」のジオラマ。MSVを一気に展示。シリーズの幅をアピールしている
ユーザー層の幅を広げるために低価格を実現した「ROBOT魂 RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E. ~ファーストタッチ2500~」。クオリティはそのままで、各所に改修も行なわれている

 「ファーストタッチ2500」は、価格帯も含め「TAMASHII NATION 2017」の“お土産”にぴったりの商品だ。ユーザーに気軽に手に取って貰いたい、今以上に裾野を広げたい、という意味を込めたと野口氏は語った。このチャレンジは、ユーザー層を広げることで、より多くのユーザーを「ver. A.N.I.M.E.」に引き込み、今後のラインナップを続けていくための施策だという。購入アンケートを取ったところ、半数以上のユーザーが「ver. A.N.I.M.E.」初体験だったとのことで、野口氏はかなり良い感触を得たと語った。

 「ファーストタッチ2500」は単なる低価格化商品ではない。「頬のディテールの変更」、「目を黄色くする」、「関節を白くする」、「フルアーマーガンダムの装甲を着せられるようにする」などなど、これまで「ROBOT魂 RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E」を触ったユーザーから上がった要望に応え、各所に手も加えられている。既存のユーザーにもうれしい仕様が盛り込まれているのだ。「『ファーストタッチ2500』は新規ユーザー向けと共に、これまでのお客様への感謝の気持ちを込めた商品です」と野口氏は語った。この試みでユーザーが増えれば、ビグ・ザムなど商品化が難しいアイテムも実現の可能性が出てくるのだという。

 「ガンタンクも以前はホワイトベースデッキとセットでしたが、今回単体で受注販売を行なっています。『あれ、前回も受注販売だったのに。今回もまた販売している』と思う方もいるかもしれませんが、ユーザーの裾野が広がることで、最初に買ったお客さんにさらに広がるラインアップを提供できると考えています。それは商品を積極的に購入いただいているお客様に喜んでいただける商品の提供に繋がると思っているんです」。

 「新規ユーザーを呼び込む」というのは大事な視点である。そのための施策として「低価格化」というのはメジャーな方法であるといえるが、そこにさらに「会場限定のプレミア感」とともに、「細部に改修も加え既存ユーザーにもアピール」という盛りだくさんぷりが野口氏らしいところだろう。商品を支えてくれるのはユーザーであり、彼らにどう受け入れてもらえるかを「常に必死に考えている」という野口氏の言葉に嘘がないことを実感させられる。

 「これから『ポケットの中の戦争』の展開が始まります。これまでと基本コンセプトは変わらないし、同じ気持ちでチャレンジしていきます。これまでシリーズを応援して下さってる方は、変わらず楽しんで欲しいと思います。そして今回インタビューで語らせていただきましたが、実は『ver. A.N.I.M.E.』はこれまでにない壮大な想いで作っていますので、ぜひまだ手に取っていない方も触れて貰いたいです。手に取っていただくと、『ver. A.N.I.M.E.』ならではの面白さを感じてもらえると思います」。ユーザーへのメッセージとして野口氏はこう語った。

アニメの名場面を再現できる可動やエフェクトパーツ。原作を大事にしつつ、最新技術を盛り込む「ver. A.N.I.M.E.」というコンセプトそのものも、幅広いファン獲得を目指したものと言えるだろう

 野口氏の話はそのスケール感が非常に興味深い。「全てのMSを独自企画で出す」というのは、会社としての一大プロジェクトであると共に、キャラクター商品のビジネスとしても非常に大きな規模だ。そういう壮大なビジョンを掲げながらも、アニメの雰囲気を活かしたシーンを演出するために投入される関節設計、シリーズ全体をきちんと並べられるように考えられたシルエット、プレイバリューを大きく膨らませるエフェクトパーツなど、各商品への細かいこだわりも強く持っている。話を聞いていて「この人はどこまで、どのスケールで物事を考えているのだろう」と圧倒されてしまった。

 「俺にそういう仕事ができているだろうか」というところは、考えさせられてしまった。もちろん、こういったビジネス面だけでなく、「ver. A.N.I.M.E.」で「ポケットの中の戦争」に挑戦する野口氏の想いそのものも面白い。こぼれ話として、野口氏は小学生の時お兄さんと模型コンテントに応募したのが「ポケットの中の戦争」の「ズゴックE」で、コンテストで優勝したという。そういう意味でも野口氏には個人的な想い入れも強いとのことだ。

 ディレクターであり、クリエイターとしてだけでなく、プロデューサーとしての視点も持った上で野口氏が進めていく「ver. A.N.I.M.E.」シリーズ。まだ「ver. A.N.I.M.E.」シリーズを未体験の人は、ぜひ手に取って野口氏の想い入れを確認して欲しい。