素晴らしきかな魂アイテム
【魂コラム】ヤマト、クロスボーンに見る商品の“ギミック”を活かした展示
全日本模型ホビーショーで感じた、会場の熱気と作り手の熱意!
2018年10月9日 12:00
【ライター:遠藤浩之】
面白いものなら国産、洋ゲー問わず何でも遊ぶ雑食ゲームライター。最近バンプレストからリリースされたプライズフィギュア、「Q posket」シリーズの「Yes!プリキュア5GoGo!」にお熱。全キャラコンプリート目指して絶賛収集中!(絵:橘 梓乃)
9月28日から30日まで開催されていた全日本模型ホビーショー。子供の頃に1度遊びに来て以来、実に20年以上振りの参加になる。様々なメーカーの新商品の発表や、発売前の商品をいち早く見れてしまうホビーの祭典だ。
「商品の魅力を伝える」というのは実に様々な方法があると思う。写真を多用したページを作ったり、動画を作成したり、インタビューで作り手の想いを聞いたり、レビューでユーザー視点で商品の特徴を語るのも方法の1つだ。そして、「会場で商品を紹介する」というのはどういうことなのか、今回そのアピールの仕方、そしてそれによってふくらむ商品の魅力に対して、感じたことを語っていきたい。
今回中心となるのは「超合金魂 宇宙戦艦ヤマト2202」。正直筆者はヤマト世代ではないので、原作はピンとこない。しかし、大スケールの模型、凝りに凝ったディスプレイ、商品の驚きのギミック、そしてそれを熱っぽく語る会場の雰囲気、さらにセクシーでカワイイ森雪の姿をしたコンパニオンにノックアウトされてしまった。メーカーならではの会場アピールの仕方、そしてその効果で増す商品の魅力というものを、自分なりに語っていきたいと思う。
さらに、「ホビーショー」そのものの魅力にも触れておきたい。静岡を中心とするホビーメーカーが一堂に会し、その会社独特のノリや空気感、ホビーショーでしか見ることができない特徴なども紹介したい。このコラムで「ホビーショーに行ってみたい」と思う人が増えてくれれば幸いだ。
波動砲、主砲発射……ヤマトのふんだんなギミックをワクワクさせる演出で見せる
数多くのブースが出展されている中、一際大きな規模で展開していたのがBANDAI SPIRITSブースだ。東8ホールをほぼ全て使っていて、辺り一面BANDAIの新商品で埋め尽くされていた。
ブースに入ってすぐ目に入ったのが、1/1000スケールの宇宙戦艦ヤマトの模型だ。コレクターズ事業部が出展している新商品「超合金魂 宇宙戦艦ヤマト2202」をアピールするために設置されたものだが、その大きさには誰もが足を止めてしまうインパクトがあった。さらに迫力の大画面モニターにはアニメ映像を流していたりと、この商品への力の入れ具合が伺えた。そして、森雪のコスプレをしているコンパニオンもおり、他のブースにはない華やかさがあった。
目玉商品の「超合金魂 宇宙戦艦ヤマト2202」だが、これの展示の仕方がまた凝っていて、試作品がただショーケースの中に飾られているだけではなかった。商品に付属するリモコンの何倍もあるビッグサイズのものがこの展示用に用意されていて、このヤマトのウリであるギミックを実際に体験することができたのだ。ヤマトはあまり詳しくはないが、そんな筆者にもワクワクさせる打ち出し方だ。
さらに、ショーケースの周りにはモニターがセットされていて、エンジンや砲座、波動砲口などの注目の部分がモニターにアップで映し出しており、発光ギミックなどを細かく確認することができた。リモコンに触れさせ、そして注目ポイントをこれでもかという程の迫力で見せつける。「超合金魂 宇宙戦艦ヤマト2202」の魅力を余すことなく120%伝えるための工夫が感じ取れた。
森雪の姿のコンパニオンに操作方法を教わりながら、筆者もワクワクしながらリモコンに触れた。ダイヤルを回してみると砲塔が旋回、さらに旋回と連動して旋回音まで鳴るというギミックにはテンションが上がる。筆者が動かしていた様子も大きなモニターにバッチリ映し出されていて感動した。
リモコンをいじっていると、ブースにいた製作者からこだわりの推しポイントを聞かせてもらえた。1番注目してもらいところはやはり波動砲のギミックだという。波動砲発射時の発光、そして波動砲口の光の消え方も劇中を完全再現しているのだと、ものすごい熱量で熱く語る。普通ならば製作側の熱意はその商品のクオリティを通すことでしか感じることができないが、直接生の声で聞けるのはこういったイベントならではだと感じた。高額な商品だが、それに負けない豪華さがあるという強いアピールを実感した。
「超合金魂 宇宙戦艦ヤマト2202」を堪能した後、その裏側に出展されていたもう1つの目玉が「METALBUILD クロスボーン・ガンダムX1」だ。漫画展開のみの作品ながら、ガンダム関連のゲームへの登場をきっかけに知名度と人気を確立した。試作品の前には沢山の人が集まっており、さすがは人気のガンダムと感心した。
試作品が飾られているショーケースには「機動戦士ガンダムF91」に登場する宇宙海賊「クロスボーン・バンガード」のマークが刻まれており、入り口からニヤリとさせられた。
ブースでは試作品が5体という結構な数の試作品が展示されていた。これだけの数が用意されたのには理由があり、それぞれがクロスボーン・ガンダムのカッコよさを強調したポーズでディスプレイされているのだ。宇宙海賊たる堂々たる立ち姿や、マントを身にまとった姿、さらには格闘アクションのポーズなど、どれもファンのツボをつく見せ方をしていて流石と言いたい。中でもビームザンバー付きのシザー・アンカーを伸ばしている場面は筆者の心を鷲掴みにした。
さらに、試作品を全周囲から覗ける展示内容となっていて、気になる横や後ろからのプロポーションもしっかり確認することができたのは地味ながら嬉しいポイントだった。全身を隈なく見ることができ、正直、原作の漫画を超える高いクオリティに仕上がっているのが確認できた。
筆者は漫画からのクロスボーン・ガンダムファンなので、ニクイほどカッコいいポーズの数々を見た瞬間、“これは絶対欲しい”と思ってしまった。今後、ザビーネの駆るクロスボーン・ガンダムX2や、主人公のトビアが乗るクロスボーン・ガンダムX3がリリースされることを期待したいところである。
ブースでは商品の魅力を紹介したPVも流れており、PV内で解説を務めるキンケドゥ役の辻谷耕史さんとザビーネ役の梁田清之さんの貴重なサイン色紙も飾られていた。「ガンダムF91」ファンの筆者としてはたまらない展示であった。
筆者はこういったホビーの商談会の取材は今回が初めてである。平日のビジネスデーだけあってスーツ姿の人たちが多く、一般日のイベント的な賑わい方とは雰囲気が違った。子供なども多い一般日しか見たことがなかったので、ある意味この空気感は新鮮だった。
BANDAI SPIRITSブース全体を見て回り、ガンプラなどの展示はその場に数をズラリと並べて見せていて、担当者が商品をアピールしている形式だった。それに対してコレクターズの展示はエンターテイメント性の強い見せ方をしていて面白かった。森雪のコンパニオンや1/100のヤマトの模型など用意されており、作品の世界観を重視した凝りに凝ったディスプレイ。商品の多彩なギミックを直接楽しむこともでき、ホビーのワクワク感と面白さをダイレクトに味あわせてくれた。
商品の見せ方やディスプレイの工夫次第で、商品のインパクトや購買意欲の高まり方など受け取る印象が大きく変わるものだと実感した。クロスボーン・ガンダムにしても、あんなにも魅力を前面に出した見せ方をされたら心を揺さぶられないわけがない。全部のブースを見ても、これだけ商品の魅力を掘り下げる演出は特に印象に残った。
ホビーショーでしか見られない、コアなブースも数多く出展!!
BANDAI SPIRITSブースの逆側の東7ホールでは、人気メーカーのホビーから、少しコアなものまで多種多様な物が展示されており、先ほどとは違った独特な雰囲気に包まれていた。
こちらのホールは期待の新商品を見るというよりは、変わったアイテムを見て楽しむという風に感じた。どこを見てもめずらしい物があり、見て回っていて飽きることがなかった。そんな中で、かなり攻めた商品だと思ったのは、“戦艦の砲座の模型”である。こんなものまで商品化しているのか!? と、なかなかにぶっとんだ商品に驚かされた。購入層はどんな人なのか、果たしてどのくらい売れているのかなど色々な意味で気になるアイテムだ。
模型を作るための工具や、模型関連の書籍の販売。エアブラシでの塗装の実演や、ラジコンを走らせることができるコースなど、模型という枠の中でこれだけいろいろなブースがあるのかと感心させられた。雑然とした雰囲気ではあるが、面白さがいたるところに散りばめられていた。
日本でプラモデルが誕生して60周年。その歴史を紹介する展示もなかなかに面白かった。日本で最初に登場した潜水艦のプラモデルやその金型など、普段は見ることのできない貴重な物が展示されており、自然とテンションが上がる。
物心ついた頃から“プラモデルといえばガンプラ”といった世代の筆者にとって、潜水艦や戦車、建築模型などの最初期のプラモデルから、ガンプラなどの誕生までの歴史を追って見ていくと感慨深いものがある。白黒テレビに、昔のプラモデルが積み上げられた昭和のおもちゃ屋を再現したコーナーもあり、ノスタルジックな雰囲気を味わえた。
今回ホビーショーに参加して感じたことは、玩具とユーザーの距離感がとても近く感じられた。マルイのブースではモデルガンを手に取ることができ、タミヤのブースではラジコンが目の前で動いていたりと、オモチャ屋にはない玩具との出会いがあった。
今度は一般日にも来てみて、イベントに参加するユーザーのホビーへの反応や雰囲気なども見てみたく思った。子供からコアなホビーファンまで、幅広い層が楽しめるイベントとなっているので、少しでも興味が湧いた人は次回のホビーショーに是非参加してもらいたい。