素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】力強く飛翔するオーラバトラー「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」、ヒロイックなポーズ
2018年10月2日 12:00
【ライター:勝田哲也】
「洋ゲーと超合金がメインの仕事」というホビー/ゲームライター。ゲームショー、ホビーショーを乗り切ったが、大作ゲームに「魂ネイション2018」が待っている! 連載の企画もモリモリ考え中。年末年始は欲しいアイテムがいっぱいでお財布もピンチに。それでも「MS-06R-1A 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.」も予約しました(絵:橘 梓乃)
筆者はそこそこの頻度で玩具を購入している。お気に入りの商品はできるだけ記事化しているのだが、スケジュールや、他の商品とかぶって記事化できないものもある。連載「素晴らしきかな魂アイテム」ではこういった、紹介する機会を逸したアイテムも紹介していきたい。
今回取り上げるのは、「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」だ。非常にカッコイイオーラバトラーのアクションフィギュアである。本商品の発売は6月だが、前後に大型アイテムの発売も重なり、記事化の機会を逸してしまっていた。そこで今回、本商品の特徴はもちろん、デザイン元となったビルバイン、そしてオーラバトラーという特異なロボット兵器の面白さなども語っていきたいと思う。
今後、「素晴らしきかな魂アイテム」では、クリエイターへのインタビューを中心に、レビューに留まらず、様々な企画を取り上げていくつもりだ。Twitterなどは積極的に目を通しているので、クリエイターや関係者の商品への愛を語るための企画に関して、ご意見を頂きたい。
生物と機械が融合した独特の“世界観”を持つオーラバトラーというロボット兵器
「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」のモチーフ元であるヴェルビンは、出渕裕氏の画集「オーラファンタズム」に登場するオーラバトラーの1体だ。オーラファンタズムは、アニメ「聖戦士ダンバイン」に登場したオーラバトラーを出渕氏のセンスでリファインしたものであり、より“ファンタジー色”を増したそのデザインは大きな反響を生んだ。
ヴェルビンは、「聖戦士ダンバイン」の後半の主役機ビルバインにアレンジを加えたものだ。ビルバインそのものは変形機構があり、背中に大型の大砲を背負い、ライフル風の武器からビームサーベルのような光の刃を持つなど、他のオーラバトラーとは世界観が異なるメカニカルな雰囲気が強い機体となっていた。
ヴェルビンは大型のクローがついた前腕、足の動力ケーブル、頭部の形状などデザインを受け継ぎながら、マッシブなシルエットを持つ機体にデザインされている。「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」はそのデザイン画を立体化したものだ。数枚のデザイン画から「ROBOT魂 <SIDE AB> サーバイン」のノウハウなどを活かし、アクションフィギュアとなった。
筆者が「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」の購入を決定したのは、とにかく試作品の商品画像がカッコ良かったのである。サーバインは中世ファンタジー風の騎士の鎧を思わせる、幻想的な雰囲気のある機体で、どこか繊細なイメージがあるのだが、ヴェルビンは力強く、シンプルにカッコイイ。ヴェルビンはプレミアムバンダイ専売のため受注から6カ月待ったが、手にしたときの満足度はとても高いものだった。
「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」において、特にお気に入りのポイントは背部の「オーラコンバータ」。オーラバトラーはこの背部の大型放出装置と、昆虫を思わせる羽根で大空を飛翔する。オーラコンバータは、オーラ力(ちから)で風のように気流を放出、オーラバトラーを空に浮かせる。それはジェットエンジンのように圧倒的な推力で空を飛ぶのではなく、グライダーか反重力装置のような緩やかな速度で、しかもホバリングしたりする。
オーラバトラーは空中に浮き上がるように空を飛ぶロボット、というそれまでなかった表現でファンに衝撃を与えた。昆虫と西洋甲冑を合わせたようなフォルムとオーラコンバータ、昆虫そのものの羽根がオーラバトラーの大きな特徴だ。ヴェルビンのコンバータは4つのユニットに分かれた大型のもので、軸がボールジョイントでフレキシブルに動く。特に下のユニットは縦向き、横向きで大きく表情が異なり、飛行時をイメージしてコンバーターを動かすのが楽しい。大型のパーツがダイナミックに動くのは“変形”ともいえる。
ビルバインはメカニック風な雰囲気を持つ機体だが、ヴェルビンはそのビルバインの要素を多く取り入れながらオーラバトラーの生物的、ファンタジー要素を強調している。サーバインが儀礼用の鎧ならば、ヴェルビンは無骨で、実践的な鎧を思わせる。サーバインの特徴だった植物の意匠を取り入れた飾りは剣の鞘の装飾くらいで、本体にそういった装飾はなく、カラーリングも地味だ。青く太い線が神秘的な雰囲気を足しているが、全体的には兵器感が強いと感じた。
関節部は細かい線が入った生物的な処理になっている。これは他のオーラバトラー商品と共通する特徴だ。オーラバトラーは巨大生物の筋肉組織や、固い甲羅を持つ生物を外装として使っている。制御にはICチップなども使われ、機械と生物を融合させたような兵器なのだ。「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」もまた、各部をチェックすることでオーラバトラーという特殊なロボット兵器を想像させる楽しさを持っている。
「聖戦士ダンバイン」の放映年は1983年。「ドラゴンクエスト」が1986年で、ゲームブック「火吹山の魔法使い」の日本での発売が1984年。ダンバインは日本の中世ファンタジーブームの先駆けになった作品という見方もできる。そして「オーラファンタズム」でより強いファンタジー色を打ち出した出渕裕氏は「ロードス島戦記」のイラストでも“日本での中世ファンタジー風”のイメージを引っ張っていく。
加えてダンバインは、「現代の若者が中世を思わせる異世界に召喚され、生物的なロボットで群雄割拠の戦乱を戦う」という斬新な世界を打ち出した。機械と生体部品が混じり合ったロボット、浮遊感のある空中戦、異世界と現代を行き来する展開など、後の様々な作品への影響は大きい。そういった“歴史”を考え、改めてヴェルビンを見ると、機体の持つ独特の世界観に色々な想いがわき上がってくる。
飛翔ポーズ、剣の両手持ちもピタリと決まる関節可動
オーラバトラーは、“飛翔”するロボットである。空を飛び、火器を発射し、剣で切り結ぶ、独特の浮遊感のある戦いを繰り広げるマシンなのだ。オーラバトラーは、飛行ポーズこそが基本的な姿勢だ。常に空を飛んでいるロボットなのである。
「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」の足は鳥類を思わせる形をしているが、その指や爪は太く、力強い。本商品の足は飛行時をイメージしてきれいに折りたためる。指の基部だけでなく銀の爪部分も可動する。腰も大きくそらせ、何より首の可動が広い。首が前後にスイングすることで大きく伸ばせ、頭との接続部分もボールジョイントで動くので、天を仰ぐような、ぐいっと飛行方向へ首を向けたポーズがとらせられる。
ヴェルビンはダンバインやサーバイン同様細長い頭部を持ち、特に横顔がカッコイイ。顔を上に向け、空を飛ぶポーズで飾っておきたくなる。コンバーターや羽根の角度も調節し、前に向かってグッと前進しているようなポーズをとらせ、手に持って飛行をイメージして動かす。“ブンドド”している瞬間が楽しい。
「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」は可動範囲も広い。剣の両手持ちも決まるし、膝立ちもできる。コクピットハッチも開けるので、駐機姿勢をイメージしたポーズも可能だ。様々なポーズを可能とするポテンシャルを持っており、遊んでいてとても楽しめる商品だ。
ヴェルビンは剣以外にも大型のクローが強力そうだ。マッシブなシルエット通りに、剣で力任せにぶった切る戦いを展開しそうだ。剣で切りつけ、クローを叩きつける。足の爪で敵の部位をむしり取るとかそういうパワフルで激しい戦い方を想像してしまう。流麗な戦いを展開しそうなサーバインと一味違う雰囲気は、ポーズを想像する幅を広げてくれる。
ワガママを言えば剣以外にも武器が欲しかった。「ROBOT魂 <SIDE AB> サーバイン」でも感じたが、剣だけだと活躍のイメージが広がらない。「原作には武器が設定されていない」というのはそうなのだが、やはり“玩具”としてのプレイバリューがあっても良いのではないかと思う。オリジナルの武器を作るのはコストが上がってしまうし、考証や監修も難しいと思うが、オーラバトラーとしては、武装がもう少しあってもいいのにな、と感じた。
とはいえ、「ROBOT魂 <SIDE AB> ヴェルビン」は非常に格好良く、遊んで楽しい商品だ。プレミアムバンダイ商品のため現在は入手するのが難しい商品ではあるが、今後の人気によってカラーバリエーションなどが登場するかもしれない。また、他の「オーラファンタズム」商品、アニメでも立体化されていないオーラーバトラーなどの登場も期待したい。同じく出渕メカの「鉄巨神」から始まるラインナップも動き始める。ファンタジーロボットの今後の動きに注目していきたいところだ。
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