素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】驚異の自立力! 躍動感溢れる格闘家の魂が現代に甦る「S.H.Figuarts ブルース・リー」

題字:浅野雅世
【第11回魂アイテム】
アクション映画スターであり、「截拳道」の創始者という武闘家の側面も持つ、ブルース・リーのアクションフィギュア「S.H.Figuarts ブルース・リー」 が2016年1月23日発売。価格は5,940円(税込)。2017年1月には「S.H.Figuarts ブルース・リー(Yellow Track Suit)」も発売。体当たりのカンフーアクションは、40年以上が経った今なお、見る者の胸を熱くする

【ライター:池紀彦】

洋ゲーオープンワールド大好きライター。好きなアイテムはジャンル問わずのアクションフィギュアだが、コスパも重視するので、「SHODOシリーズ」などの食玩系アクションフィギュアのチェックも欠かさない。基本的には2000年以前のアニメ、映画作品を愛する懐古主義者だが、2018年春放送の「ひそねとまそたん」にはやられた。ひそねがかわいすぎるのでフィギュア出してほしい……(絵:橘 梓乃)

 筆者にとっては初めての玩具レビューとなる。「編集部が何か面白い企画をやっているなあ」と思って眺めていたのだが、ある日いきなり「池さん、ブルースリー書いてよ!」といわれて面食らった。「S.H.Figuarts ブルース・リー」はお気に入りだが、2016年販売のアイテムである。

 筆者はブルースリーが大好きだ。主演映画は全て何度も視聴してきたし、知識量は大した事ない面もあるが、自分なりのこだわりもある。そんな中、【特別企画】新たなフィギュア世界を提示する造形! 「S.H.Figuarts ブルース・リー」のインタビュー記事をガッツリ読んだ筆者は迷うことなくその場で予約して入手、散々遊び倒した。

 また、その後第2弾として登場して話題になったイエロートラックスーツバージョンも迷わず予約して購入。今でもちょっとした息抜きの際には2体のポージングを楽しんでいる。

 連載「素晴らしきかな魂アイテム」は、まさにこういう“筆者のお気に入り”を語るコーナーだと、編集者に説得された。新製品を紹介するだけでなく、自分がいかにモチーフとなったキャラクター・人物が好きか、そして“魂アイテム”がいかにそれを再現した素晴らしいアイテムか、そういう熱い想いを語る場だというのだ。

 そこで今回は、「S.H.Figuarts ブルース・リー」、そして何より、筆者のブルース・リーへの想いを語りたいと思う。


流行を超越した印象的なアクションシーンが魅力

 「ブルース・リー」、筆者が初めてその存在を知ったのはおそらく、映画「燃えよドラゴン」のテレビの再放送だろうか。筆者の生まれた年にブルース・リーは32歳の若さでこの世を去っている。世界的ブームはその頃やってきているが、年代が異なる筆者のブームとは少しズレがある。

 というのも筆者の物心がついた頃には既にジャッキー・チェンが主流で、カンフー映画というよりは香港アクション映画の代名詞としてジャッキー・チェンが活躍していた。だが筆者はこうした現代劇のアクション映画にはあまり興味がわかなかった。もちろんアクション映画としては十分魅力的だし、カンフーを取り入れた派手なアクションが人気になる理由も理解できる。

 だが、筆者が好きになったのはジャッキー・チェンの映画の中でも、少林寺木人拳、酔拳など、まだジャッキーの知名度が高くない頃のカンフーアクション映画だった。その理由はシンプルで、あまり強くないジャッキー演じる主人公が、少林寺拳法などの格闘技を通じて成長する物語がそこにあったからだ。特に修行のシーンなども多く、格闘家としてのストイックな演出が幼い筆者にはとても魅力的に映った。そのため、こうしたカンフーアクションの原点とも言われていたブルース・リーに逆行していくのにはさほど時間がかからなかった。

アクションスターのアクションフィギュアということで、映画の1シーンなど様々なポーズを取ることができるのが魅力。何となく腕と足をそれっぽく整えるだけでもそれなりにカッコよく見えるのも手遊び用のフィギュアとしては魅力

 このような経緯を経て、実際に映像で見たブルース・リーの映画はただただ圧巻だった。ブルース・リーの主演作品は「ドラゴン危機一髪」、「ドラゴン怒りの鉄拳」、「ドラゴンへの道」、「燃えよドラゴン」、「死亡遊戯」の5本と非常に少ない。こうして考えると、たったこれだけの出演本数にも関わらず、没後数十年が経過する今でも、パロディやネタにされるその個性の強さに驚かされる。ちなみにこれらの中で一番好きなのは、あまりにもベタで恐縮だが、やはり「燃えよドラゴン」だ。

 ブルース・リー主演の映像作品において、一番の衝撃だったのは、そのリアルなアクションシーンだ。リアルと言うよりは生々しい、と言えばいいだろうか。格闘で敵と戦うアクションシーンの蹴りやパンチの動きがやたらと速い。そしてそれが当たった時の描写が殺陣とは思えない生々しさを感じさせる。香港のアクション映画は全体的に役者自らが体当たりで演技している物も多かったため、当時としてはやたらと迫力があった印象が強いが、その最たるものがブルース・リー作品だったと思う。

イエロートラックスーツバージョンも発売されており、2体合わせることで、より多彩な手パーツの組み合わせが実現できる。ただし表情パーツについては互換性がないため、差し替えできない点には注意が必要だ

 その事を象徴するのが、本作でブルース・リーの敵役として登場するライバルたちだ。彼らの多くがいずれも実在の格闘家だったというのは、今考えると想像もつかない大胆な配役だが、実際に格闘家としても知名度が高かったブルース・リーならではのスタイルとも言える。特に「ドラゴンへの道」で登場したチャック・ノリスは格闘家としての知名度も高く、そんな彼が本作のクライマックスでブルース・リーと戦う演出は、今なおベストバウトの呼び声が高い。当時のアクション俳優の多くがブルース・リーに憧れた、というエピソードをたまに聞くが、それも納得できる話だ。

 とはいうものの、多感な青春時代にブルース・リーだけを敬愛し続ける事はできず、筆者のブルース・リーに対する当時の記憶は非常に断片的だ。独特の怪鳥音を吠える姿に衝撃を受けたこと、とにかくカッコよかったアクションシーンの数々、耳に残る印象的な「燃えよドラゴン」のテーマ曲、そして「燃えよドラゴン」冒頭で使われた名言「考えるな、感じろ(Don't Think,FEEL)」などだ。

ブルース・リー作品の魅力の1つが、カンフーアクションのスピーディーな動きだ。今見てもパンチやキックが当たった時のリアルな挙動は殺陣とは思えないド迫力で、役者本人による体当たりの演技が活きていると感じる
戦闘時に「アチョー!」などの怪鳥音を叫ぶのはブルース・リーが最初に行なったものだ。叫ぶときのこの常軌を逸したような表情は今でこそギャグのように使われているが、当時は現場での戦いにおいて己を鼓舞する暗示のようなものだったのかもしれない

 その後大人になってからも、たまに知り合った知人がブルース・リーのファンだったりすると、意気投合すると同時に、よりコアなファンと知り合いになると、自分の知らなかった新たな知識が得られるので、それを元に当時の情報を調べたり、昔の映画を見直したりするなどして、少しずつ知識が蓄積されていった。このように潜在的にブルース・リーへの思いがあったからこそ、「GTAオンライン」連載では大変恐縮ながら、彼の名言である、「Don't Think,FEEL」をもじった「Don't Think,Steel」というクルー名を使わせてもらっている。

 また、漫画作品の中で、「燃えよドラゴン」のテーマがかかると作中の主人公たちが好戦的になる、といったネタを見かけたり、格闘ゲーム「鉄拳」や「ストリートファイターII」などの有名タイトルにブルース・リーをモチーフとしたキャラクターが登場するなど、ブルース・リーに絡んだネタやパロディが登場するたびに、その存在を思い出し、再び映画などの作品を見返している日々だった。

 そんな筆者の前に登場したアクションフィギュアこそが「S.H.Figuarts ブルース・リー」だ。製品の情報を見た時、正にこれは自分を含めた、未だに彼への憧れが忘れられない大人たちのためのアイテムだと確信、迷う事なく予約を入れて、無事に発売日当日に入手することができた。

筆者のデスクでは、PCのそばに2体のブルース・リーが常備されており、締め切りに追われている時などは彼らを使って色々アクションを楽しんで心を落ち着けたりしている。


躍動感がハンパない! 多彩なアクションを決めながらも自立するバランス感はまさにホンモノ!

 そもそも筆者はフィギュアの中では圧倒的にアクションフィギュアが大好きだ。腕や手足を自在に操作して遊べる自由度と、各部の関節が稼働するギミック感がたまらなく好きなのだ。そんな中でも今回紹介する「S.H.Figuarts ブルース・リー」はアクションスターのブルース・リーをモチーフにしているため圧倒的に相性がよい。

 本製品の最大の驚きは各部の稼働により、映画などで見せた多彩なカンフーアクションがかなり再現できることだ。そして何より驚きなのはこうした各種カンフーアクションを取らせながらも、自立できることだ。ロボットもの、例えばガンダムなどでは、足のサイズが大きく、足の裏の接地面積が広いため、比較的バランスがとりやすいが、人型フィギュアの場合、人の足のサイズは体全体から見ると、非常に小さい。この小さい接地面積であっても、腰や胸、脚や腕などの各部が稼働することで、これらをうまく調整してバランスを取りながらポーズを決めてやることで、自然な蹴りのアクションポーズを決めながらも自立できる。

映画の1シーンを切り出した画像などを参考にしても簡単にポージングができるくらい自由度が高い
映画「死亡遊戯」のアクション中の1カット。本来の画像ではもっと楽しそうな笑みを浮かべているのだが、残念ながら付属の表情パーツではこれが精一杯の笑顔カットだ。これだとちょっとニヒルな笑顔になってしまうので、口を開けて笑っている表情もほしかったところ
飛び蹴りのカットはなかなか再現が厳しかった。特に左足の曲げ具合は本製品では再現できなかったので、撮影時の角度を変えてごまかした

 また、デジタル彩色による表情の再現は正にリアルそのもので、本製品では異なる表情が3種類付属するが、どの表情も写真や映画さながらの迫力で圧倒される。個人的には目だけで左や右の敵を追う表情がお気に入りで、普段はこれらの表情を装備してあれこれポーズを取らせて楽しんでいる。また、5種類の手の形状も用意されているので、これらを付け替えてベストのポーズを模索するのも面白い。

 そんなポーズの決め手はやはり映画のカットが中心だ。映画内のアクションシーンは非常に多いため、色んなポーズを取らせてみたが、どれも違和感なく収まる。また、第2弾のイエロートラックスーツバージョンは、映画「死亡遊戯」のシーンを再現するのに最適だ。特に五重の塔で颯爽とハイキックを決めるシーンを再現させて、なおかつ自立で立たせた状態を遠目に眺めていると、この映画が未完だった事を思い出して、悲しい気持ちになる。

 そしてたまにジャッキー・チェンの少林寺シリーズのポーズなども取らせる事があるが、これも実際にブルース・リーが見せたことのないアクションながら、カッコよく決まる。

筆者のお気に入りの表情は、正面を見つめずに少し流し目気味に横に目を向けている表情だ。これだと蹴りやパンチのポーズを取らせる時に、顔の向きを同じ方向に合わせなくても済むため、全体的なポーズがカッコよく決まりやすい
個人的にジャッキー・チェンのベスト映画「少林寺木人拳」の1カットをあえてブルース・リーにやらせてみた。最後のボスでもあり、師匠でもある敵の流派の拳法のポーズの一部らしいのだが、なんとなくカッコいいのが不思議だ
おまけに片足立ちと言えば、漫画「巨人の星」の星飛雄馬の投球フォームも再現してみた。もはやカンフーでもなんでもないがこういうポーズが簡単に楽しめるのは本製品の魅力といえる

 本製品にはヌンチャクや棍棒といった実際に映画の中で使用された武器も収録されている。だが、筆者はブルース・リーのアクションの醍醐味は鋼の肉体のみでこそ表現できると考え、これらは特に使用していない。とはいえ今回は撮影のためにヌンチャクを持たせて色々ポージングさせてみたが、ヌンチャクもなかなか様になっていい感じだ。今後はヌンチャクも交えたバリエーションをあれこれ試してみようと思う。

 なお、2製品の手パーツと表情パーツの互換性についてだが、手パーツについては全て互換性があるため、2製品揃えると10種類の手から選択できて、かなり多彩なポージングが行なえる。一方で、表情パーツについては、残念ながら互換性がなかった。よく見てみると、2製品ではブルース・リーの髪形が微妙に変更されているため、この辺りが原因で互換性をなくしているのかもしれないが、表情こそブルース・リーの命なので、これも互換性があれば最高だった。第3弾がもし出るなら、その辺も配慮してほしいところだ。

 そんなわけで、本製品の魅力は圧倒的な稼働ギミックにある。それでいて、首以外の部位に関しては人間としての限界を超えないように作られているため、人間に見えない不自然なポーズにならない辺りは開発者のこだわりが感じられる。

 本製品はとにかくブルース・リーのファンは元より本製品がきっかけでブルース・リー作品を見直してみようかと思わせるほどのこだわりの仕上がりになっている。本製品でブルース・リーのカッコよさを再認識し、是非主演映画を見直してみてほしい。

今までは素手にこだわって遊んでいたのだが、撮影のためにヌンチャクポーズもあれこれ試してみた。驚いたのは脇の下にヌンチャクの片方を挟んで持つヌンチャクポーズを試した際に、予想以上に脇の下でガッチリとヌンチャクが固定できたことだ。今後はヌンチャクも積極的に使おうと思った
なお、イエロートラックスーツバージョンに付属するヌンチャクは鎖の部分が弾力性のあるプラスチックになっているため、ポーズによっては金属製のものよりもポージングがやりやすくなっている
本製品について購入を迷ってる人には「考えるな、感じろ」と言うベタな回答もいいが、この完成度でこの価格ならむしろ「考えろ、お得だぞ」と言う回答もアリだと感じた