レビュー

「STAR OCEAN THE SECOND STORY R」レビュー

自由過ぎる冒険! パーティー選定の違いで十人十色の攻略に

 RPGの面白さの根幹を担う要素の1つとして、育成・レベリング・パーティー選択などのプレイヤーの手腕が問われるビルド要素が上げられると思う。今作ではそれらの要素の自由度が高く、非常にオリジナリティある冒険を楽しむことができた。正直、このシステム周りが個人的に一番評価が高かったと言っても過言ではない。

 まず大前提として、本作では最大で8名までをパーティーキャラクターとして仲間に迎える事ができる。登場する仲間候補のキャラクター全てをパーティーインできる訳ではなく、出会う先々で仲間にするかどうかを自分で選択する必要があるのだ。物語の先でどのような人物が仲間に加わってくれるのか分からない状況で最大8名な事を考慮してしまうと、パーティーに誘うかどうかを真剣に吟味する必要がある。

 中には特定のキャラクターを既にパーティーインしていたら仲間に誘う事すらできなくなるキャラがいたり、逆に特定のキャラクターがパーティーに居ないとそもそも誘えないキャラが存在していたりなど、パーティー編成を考えるだけでもプレイヤーの独自性が色濃く出るシステムとなっている。パーティーインするかどうかを判断する場面の前にはお試しでそのキャラクターを使える期間があるため、その期間中に性能や役割が自分のプレイ方針と噛み合っているか、何よりも性格やバックボーン含めてそのキャラクターを好きになれるか等を考慮しながらパーティー選出を行う。

 最終的に筆者はファーストコンタクトの印象と自分の直感で仲間に誘うかどうかを判断していたが、自分で選んでパーティーに加えたという工程を挟んだからかキャラクターへの愛着が凄まじく、パーティーインしたキャラクター同士が会話をするような「PA」を見ると「俺が今のメンバーを選んだからこのイベント見れてるんだよな…」とエモい感情に駆られる事が多かった。

 どのキャラクターをパーティーインするかで戦闘の戦術が変化する事は勿論ながら、メインストーリーでの会話や発生する「PA」と「サブイベント」なども事細かく分かれていくため、複数種類のエンディングが存在する事も踏まえるととんでもないボリュームの物語が用意されている事がわかる。何周もしてストーリーをコンプリートしたいという欲が生まれながらも、1周目に選んだパーティーは紛れもない自分だけの物語と感じられるため非常に思い入れ深い冒険となるのだ。

パーティーに誘えるタイミングは1度きり。断ったら二度とその周では仲間にする事ができないので慎重な判断が求められる
先に仲間にしたメンバー次第では誘う事がそもそもできないキャラも存在しており、筆者もあまりに好み過ぎる「ボーマン」というキャラクターが仲間に入らなくなっていた事を後々知って愕然とした……
集まったパーティーメンバー次第で発生する「PA」イベントも多数存在するため、全てを見ようと思ったらとんでもないボリュームに! 自分の采配で偶然集まったパーティーが各々で関係性を気付いているこの感じが堪らなく好みだ……

 そんな中で特に筆者が好きになったキャラクターが「アシュトン」と「プリシス」の2名。双頭の竜に憑依された双剣士と、意味がわからない発明品を生み出し続ける年頃の少女といった非常にキャラクター性が濃い2人だ。

 「アシュトン」は所々で情けない雰囲気がありながらも、「クロード」と歳が近いからか普遍的な友人として会話をする事が多いキャラクター。最初は嫌っていた竜達とも途中から愛着が湧いて共存を選んでしまうような性格で、前進から滲み出る「良い奴感」が凄まじく非常に好みだった。

【アシュトン】
パーティーインできるキャラクターの中だと最初の男性キャラクターだからかクロードとも会話が多く、長い期間パーティーにいる事になるため愛着が湧きやすい
当初はクロード達の妨害(?)によって憑依してしまった竜を浄化するために一緒に行動していたが、行動を共にする内にクロード達とも竜達とも別れたくなくなっていく

 「プリシス」は機械に偏見を持たないクロードに好意を寄せている事でレナと絡むと面白いイベントが多く、それでいて本人の性格はサッパリしているからか恋心が絡んでも全く嫌悪感が生まれないのが素晴らしい。どちらも総じて可愛らしい性格をしていたので最後まで愛着を持って旅を共にできた。

 プレイヤー次第で刺さるキャラクターは十人十色だと思うので、是非ここは自分の性癖に従ったオリジナリティあるパーティーで本作を冒険してみて欲しい。

【プリシス】
クロードにかなり真っ直ぐな好意を寄せる少女。男って結局こういうキャラクターに弱いよね!!! レナが絡んでくる「PA」では色恋沙汰で揉めたりするが、嫌味ったらしくなくどこまでも純粋なため全くドロドロとした感じにならないのが非常にいい。天真爛漫な女の子は可愛いのだ

「釣り」や「料理」に「スリ」まで! 「IC/特技」でキャラクターを自由にビルド

 パーティー周りのシステムから既にやり込み度が凄まじいが、ここからさらに奥深いのがプレイヤーがキャラクターを自由にビルドできる「IC/特技」システムだ。

 本作では戦闘やイベント等で得た「スキルポイント」や「バトルポイント」を消費する事でキャラクターのステータスや技を強化できるのだが、強化した項目によって冒険をサポートする様々なシステムを「IC/特技」という形で解禁していく事ができる。食材や薬草系のアイテムを回復アイテムなどに変換する「料理」や「調合」、鉱石系のアイテムを装備品や別のアイテムに作り変える「細工」や「カスタマイズ」など、RPGプレイヤーなら馴染みのあるシステムもこの「IC/特技」によって追加されるのだ。

 他にもダンジョン内で買い物を可能とする「ファミリア」やパーティーに様々なバフを付与する「音楽」、各所の水辺で魚を捕獲できる「釣り」やランダムでゲームのヒントが表示される「オラクル」など、冒険の快適度に直結するようなシステムから変わり種まで紹介しきれないほどの「IC/特技」が用意されている。

 さらには取得した「IC/特技」のレベルや組み合わせで解禁される「スーパー特技」なる存在も用意されており、どれもスーパーの名に相応しい便利システムばかりだ。中にはゲームの難易度を一気に下げてしまうレベルに強力なモノもあるため注意が必要だが、解禁後と前では格段にゲーム快適度が変わるものばかりなので、積極的に解禁を狙っていくのもアリだろう。

 これらは冒険の中で徐々に解禁していく事になるため、自分にとって最優先なものは何か、「IC/特技」を取得するためにどのキャラクターのステータスを強化するか等、プレイヤーの手腕で大きく冒険内容が変わるようなシステムとなっている。

「IC/特技」を獲得するために一定のレベルまでスキルを強化する必要があるが、強化したスキルに応じてキャラクターのステータスも変化する。闇雲に「IC/特技」だけを狙って強化すれば良いという訳ではないのが面白い
各キャラクターの適正も取得した「IC/特技」を使用した際の成功率に影響してくるため、ここのビルドだけで数時間使う事があるレベルの要素となっていた
純粋に戦闘で役に立つアイテムを生み出す「IC」もあれば、一見するとよくわからない「特技」まで数多く存在する
「オラクル」で唐突な衝撃情報がサラっと見れたり、今回のリメイクから追加された「釣り」で気分転換したりなど、ただストーリーを追うだけではないユーモアさが随所に出ている
「スーパー特技」の一例を出すと、山や峠すらも飛び越えて爆速でフィールドを動き回れるようになる「カモンバーニィ」や、フィールドの敵エネミーを足止めしてくれる「用心棒」など、どれも圧倒的にゲームの快適度が変化するものが揃っている
便利すぎる分習得までに様々な「IC/特技」を合わせて強化する必要があるため、何のスーパー特技を覚えたいのか目標を決めてビルドするのがオススメだ

 特に筆者が面白いと感じてしまった「IC/特技」が「ピックポケット」だ。これは簡単に言うと”スリ”が行えるようになる特技で、あらゆる場所に居る人物から一定の確率でアイテムをゲットできるようになる。町のモブキャラクター達は勿論、ストーリー中に出てくるネームドキャラクターや「PA」中の仲間キャラクターからもアイテムをゲットする事ができてしまう。この特技でゲットできるアイテムの中には到底その段階では入手できないような強力な武器や防具等が混ざっていることもあり、やってる事の背徳感と合わせて他のRPGでは味わえない最高に刺激的なゲーム体験をする事ができた。

 この体験が楽しすぎて「ビックポケット」を覚えてからは街に到着したりイベント中にネームドキャラクターが登場すると、とりあえず相手が持っているアイテムを確認する所から探索を始める最低なプレイヤーになってしまった。法外なアイテムをゲットできるのが楽しいのだから仕方ない。

全てのキャラクターに「ピックポケット」用のアイテムが設定されていることが地味にとんでもない事だが、悪事であってもこの特技で探索がさらに面白くなった事は否定できない……!
ゲームバランスを崩壊させかねない要素でもあるが、強いアイテムを持つキャラクターを見つけ出して盗み出せた時の興奮度はえげつないので1回皆にもやってみて欲しい。1回だけで良いから
中には「ビックポケット」で特定のアイテムを盗んだ時限定で発生する「PA」イベントまで用意されているのだから驚きである。一体どこまで作り込まれてるんだこの作品は……!