インタビュー

「スターオーシャン セカンドストーリー R」プロデューサー&開発者インタビュー

意識したのは様々なプレーヤーの中にある「スターオーシャン2」像を鮮明に具現化する事

【スターオーシャン セカンドストーリー R】

11月2日 発売予定

※Steam版は11月3日 発売予定

価格:
6,578円(通常版)
22,222円(コレクターズ・エディション)

 スクウェア・エニックスは11月2日、「スターオーシャン」シリーズ中でも特に多くのプレーヤーに愛されるRPG「スターオーシャン セカンドストーリー(以下:スターオーシャン2)」のリメイク作品「スターオーシャン セカンドストーリー R」の発売を予定している。

【『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』アニメーション オープニング ムービー】

 本作は今まで数々のリメイクが行なわれた「スターオーシャン2」の総決算とも言える完成度となっており、現代のグラフィックス表現を用いて新たに生まれ変わった美しい世界、磨きが掛かったバトルシステム、さらにはボイスやBGMなどをオリジナル版とリメイク版で切り替えられる機能など、これでもかと言わんばかりにシリーズファンを喜ばせるような仕様が大量に詰め込まれている。

 今回はそんな本作を生み出したプロデューサーの小牧 恵氏と、開発を担当したジェムドロップの代表を務める開発プロデューサー兼ディレクターの北尾 雄一郎氏へのオンラインインタビューを実施したのでその内容を紹介したい。

 今作に対する思い入れやこだわり、ただのリメイクに留まらず様々な追加要素が加わった経緯などを伺う事ができたので是非最後までチェックして欲しい。

開発を担当したジェムドロップ代表の北尾氏

――リメイクに当たって注意したポイント、力を入れたポイントは何でしょうか?

北尾氏:まず今作の背景として、オリジナル版が25年前に発売、最初のリメイクとなるPSP版が10数年前に発売された作品となります。さらに、シリーズとしては直近ではナンバリング最新作となる「スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE」やスマートフォン向けアプリである「スターオーシャン:アナムネシス」がリリースされるなど、様々な作品が展開されております。既存のシリーズファンはもちろん、今作で初めて「スターオーシャン」に触れるお客様を含めると、色々なタイプの方々が手に取るであろうと考えました。

 そんな中で最初期のオリジナル版から遊んでいたユーザーさんへどう当時の記憶を形として現代に具現化するのか、新しいユーザーさんに対して単純に懐かしさを持ってくるだけでなく、今作らしい新しさをどのように感じて貰えるのかを意識する必要がありました。新しさが無いとただ古い物の移植するだけになってしまいますからね。違和感が出ないように新しさを引き出すという部分で、どうバランスを取るのかは本当に今回注意したポイントになります。

小牧氏:北尾さんがおっしゃる事は今作の骨子の部分なので私も殆ど同じ考えですね(笑)

 我々が目指していたものとして、まず第一に「スターオーシャン2」をずっと愛してくださっているユーザーの皆さんが持たれている記憶や感動を現代のゲームとしてもう一度提供したいという思いがあります。何故ならこの作品自体がユーザーさんにとっても我々開発者にとっても素晴らしいと思える作品であり、後世にしっかり残したいと長年思っていたからこそ、今回のリメイクが実現したと思っているからです。

 当時遊んでいたユーザーさんがそれぞれ頭の中で描いていた本作の世界の解像度をより上げて表現する事で、改めて満足して頂けるような作品を目指しています。その上で当時我々が感じていた「スターオーシャン2」の魅力や感動を現代の新しいユーザーの方と気軽に分かち合い話す事ができるような形を目指し、新旧どちらの方にも遊んでもらいたいという思いで本作を作っております。

――今回のリメイクに当たってオリジナル版から変更した要素とあえてそのままにした要素がそれぞれあると思うのですが、その部分の拘りや注目ポイントがあればお伺いしたいです。

北尾氏:実は変えなかった部分というのを説明するのが難しいんですよね。全体的に様々な部分を変えてあるので。ただストーリーについては一切変えて無いです。そこの記憶については変えてはいけないと強く思っているので。

 変更点を強いて挙げると、ビジュアルについてはドットのキャラクター以外は殆ど一新している形になりまして、その理由としては今作の新しさを強く感じて欲しいという思いがありますね。

 ただその上であえてドットのキャラクターだけは昔のまま変えなかった理由は、やっぱり当時の思い出もできる限り持ってきたいという気持ちもあったからです。

 しかし、当時のままドットキャラクターを今作に持ってくるだけですとただの移植になりますので、今作ではドットのキャラクターが一新されたグラフィックスの世界に入ってきた時にどのような風景になるのかを具現化してみようと考え、ビジュアルを構築しました。その結果として背景やエフェクトが違和感なくドット絵と共存するような現在の形になったという意図がありますね。

今作のグラフィック表現は2Dドットのキャラクターと、圧巻の3Dグラフィックが融和するような形で表現されている事が大きな特徴となっている。日光がキャラクターに当たった際の影や光の変化、吹き抜けた広大な背景の中に違和感なく溶け込むキャラクターの姿など、注目すると細部のこだわりが凄まじい事がわかるだろう

北尾氏:他にもバトルシステムもベースの良い所は継承してユーザーの皆さんが記憶している物と同じ形にしているのですが、その上で今のユーザーさんが遊んでも違和感が無いように「ジャストカウンター」や「ブレイク」などの新しいシステムを入れたり、移動についてもファストトラベルを実装したりなどして、ゲーム体験を大きく変えた点はありますね。

 概念的な言い方になってしまうのですが、全体的に「スターオーシャン2」の記憶としての良かった部分を抽出し、それらの要素を分解して再構成しつつ新しい要素も加えて面白味を増したという感じですね。これはバトルにおいてもビジュアルにおいても、ゲーム全般において同じことが言えますね。

バトルシステムは縦横無尽にフィールドを駆け巡りながら味方との連携で爽快な連続攻撃ができる点をしっかり継承しつつ、新要素として控えの味方がサポート攻撃してくれる「アサルトアクション」などが追加された。オリジナルの良さを潰さないように新しい要素を加えるのは至難の業だろう

――今作では新要素によってバトルシステムがかなりガラッと変わったと思うのですが、プレーヤー側のアクションが増えた事でゲームの難易度が変化しているような事はありますか?

北尾氏:新要素である「ブレイク」、「アサルトアクション」、「ジャストカウンター」などをちゃんと使いこなす事によってプレーヤーにかなり有利に働きますので、それがいわゆる攻略やアクションとしての面白さに繋がる形にはなっています。

 ただプレーヤー側にとってチャンスが来れば有利になるのですが、逆にプレーヤー側がアクションを起こさなければ有利にはならないという仕組みになっているんですよね。

 全般的にまず前提としてプレーヤーが行動を起こす必要があり、その結果として“有利になったり不利になったりする”といったバランスになっています。そういう意味では原作よりも若干難易度は上がっていると思っています。特にボス戦なんかの難易度はわかりやすく上がっていますね。

 一方でパラメーターやバトルのテンポ感もオリジナルから変わっている部分になりますので、原作と今作の難易度を純粋に比較できるかと言うとちょっと微妙なのですが、それでも難易度は若干上がっている印象がありますね。

――という事はむしろ新要素によって純粋にやり応えが上がっている形になるのでしょうか?

北尾氏:そうですね。かなりやり応えがありますし、バトルの中で様々な新アクションを駆使する事もできれば、バトル外でも「アイテムクリエイション」や「ミッション」などでキャラクターを育成してバトルを有利にしたりなど、かなり試行錯誤ができるような形になっています。

例えば「ジャストカウンター」はタイミングが早すぎたり遅すぎたりする場合にプレイヤーが「ブレイク」状態になりデメリットが生まれてしまう。どの新要素も積極的にプレーヤーがアクションを起こさなければ有利に活かす事はできず、使い方次第では不利になる事もあるため単純に難易度が簡単になったという事は一切ない。やり応えやゲーム性が増したという表現が適切だろう

――今作のグラフィック表現は近年発売された「オクトパストラベラー」や「トライアングルストラテジー」といったHD-2Dのようなビジュアルが特徴的ですが、本作はそれらのタイトルのノウハウを活かして製作されているのでしょうか?

小牧氏:このタイトルに関しましては特にHD-2Dのノウハウがあるからスタートしたというタイトルでは全く無いですね。この「スターオーシャン2」のキャラクターを使ってどういうビジュアルが今のプラットフォームでできるだろうかという部分を検討し、ただ豪華にするのではなくユーザーの頭の中にある記憶をどのようにアウトプットして見て頂くかという部分に注力した結果として今回のような形となっていますので。

 そもそも初期段階のビジュアル検討の際に北尾さんから見せて頂いたモノから既に現在のような形となっていました。フィールドは3Dでありながら、その中にピクセルのキャラクターが入った時に何が最適なのか、どうすれば違和感が無いのか、逆にピクセルのキャラクターという違和感がありながらも没入感があるのか……などを常に開発時と考えていました。

北尾氏:そうですね。補足すると「スターオーシャン2」の世界を再現する為にHD-2Dのような手法を取ったというよりは、「スターオーシャン2」の世界観を再現していった結果が今のビジュアルであって、そもそもHD-2Dに寄せようといった考え方で作っていません。私たちとしてはHD-2Dのビジュアルに寄ったとも思っていないので、HD-2DはHD-2D、本作のビジュアルは本作のビジュアルとして捉えて頂ければと思います。

――独自のビジュアル表現に合わせてカメラワークや演出等でこだわった部分などはありますか?

北尾氏:今作はいわゆるフル3Dの演出論とは違うかなと思っていて、あくまでこのゲームは2Dのピクセルキャラクターが自分自身であって、そのキャラクターが三次元の世界に入ったらどうなるのだろうという点をゲームの視点で描いています。

 ですので我々の狙いとしては、ピクセルのキャラクターと当時のゲーム演出の中間を狙ったと言いますか、当時のユーザーさんの頭の中のイメージを増幅させたような形にしています。3Dのゲームのカメラ演出とはまた違う感じになってるかなと思いますし、2Dのキャラクターの中でなるべくインパクトのある絵作りをしたつもりではありますね。

 特にキャラクターも注目はして欲しいものの、どちらかというと全体的に背景や世界観を楽しんでいただけるような作りになっているので、ここがとても見栄えする演出になってるかなと思います。

――今作に合わせてフルボイスに対応していなかったオリジナル版のボイスを追加でとり下ろす事にした決断や経緯、考えなどがあれば教えてください

小牧氏:一番最初のオリジナル版「スターオーシャン2」の時には諸々の事情でキャラクターのフルボイス化は実現していなかったのですが、それは今回是非実現しましょうという形で動いていました。

 実は初代「スターオーシャン」のリメイクにあたる「STAR OCEAN -FirstDeparture R-」でもフルボイス化を実現しています。こういったことができるのは実はユーザーの皆様からの声がありまして、「ぜひオリジナルの演者の方でこの演技が見たい」、「このキャラクターの声が聞きたい」といったお問い合わせをずっと頂いていたんですね。

 これは「スターオーシャン2」が多くの人から注目され愛され続けているからこその声だと思っているので、それなら今作をリメイクするに当たってコレをやらない訳にはいかないだろうと、我々も是非やりたいと思っていた事もあってかなり初期の頃からとり下ろす事が決まっていました。

 それと同時に今回はPSP版として発売された「STAR OCEAN 2 Second Evolution」のボイスも全て入れています。これは北尾さんも色々な所で語られている事なのですが、我々が向いている方向というのがオリジナル版をプレイされた方に向けてだけではなくて、これまでの作品含めて「STAR OCEAN 2 Second Evolution」をプレイされた方、両方の作品を遊ばれた方など、「スターオーシャン2」を体験した全てのファンの方に向けて良い体験を提供したいという思いによるものです。

 そこの部分を全部達成するには両方入れるしかなかろう! という所でボイスのスイッチングの仕組みも含めて開発陣には作って頂いたという経緯があります。

全バージョンのフルボイス化&自由なボイス変更が今回可能になったのは長年愛し続けてきたファンの声援によるものとは……中々に胸が熱くなる経緯だ。「スターオーシャン2」を体験した全てのファンの期待に見事答えたシステムと言えるだろう

――新しいゲーム体験として「釣り」はどのような意図で採用されましたか? またサブシナリオやミニゲームなどの方面で他にも追加要素はあるのでしょうか?

小牧氏:シナリオについてはメイン・サブを含めると元々かなり膨大なタイトルであること事に加えて、先ほど申し上げた通りシナリオに関わる部分を変えるのは我々としても違うと感じているのでそこの変更点などはありません。

 ただ「サブシナリオ」に触れやすくなるような仕組みはたくさん作らせて頂いておりまして、例えば先ほど少し話題にも出た「ファストトラベル」もそうですし、「PA(プレイベートアクション)」と呼ばれるサブシナリオ群を昔はどこで発生するのかを探して回る必要があったのですが、これの発生場所がわかるシステムを入れたりなどもしてます。そういった点をより遊びやすく、かつ見逃しなく遊んで頂けるような仕組みを開発チームと色々考えた上で用意させて頂きました。

試遊レポートで紹介した紋章術の演出をカットする事ができる仕様もユーザー体験を考慮した結果の追加要素だったのだろう。数多のサブシナリオやエンディング分岐がある本作をより快適に遊ぶための仕様が他にも随所にありそうだ

小牧氏:また新しく追加されたコンテンツも色々ありますが、「釣り」は目立った1つのシステムになってるかなと思います。

 これは「釣り」をただ入れましょうというわけではありません。目的としては新たに作られたフィールドやダンジョンを隅々まで歩いた際に「ただ歩いただけで楽しく無かったね」という内容にはしたくなくて、どこに行ってもできる事があって、どこに行っても楽しめるようなコンテンツがあり、そしてソレがあるが故に世界を歩く価値がある……といったゲーム体験を生み出す要素は何だろうと考えました。そのお題を開発チームに依頼し制作して頂いた結果、今回の「釣り」が生まれたという経緯ですね。

――最後に「スターオーシャン2」を応援し続けてきたファンに向けて一言お願いします!

北尾氏:今作は本当に様々な方にプレイして頂けるだろうと思っていまして、初代PS版の「スターオーシャン2」をプレイしてて今回久々に遊ばれる方、初代PS版とPSP版の両方を遊んだ上で今作をプレイされる方、はたまた、PSP版のみをプレイされた方、そもそも初めて「スターオーシャン2」を遊ぶ方、さらには別の「スターオーシャン」シリーズ作品から影響を受けて本作を遊ぶ方など……本当に色々な方が当時の思い出だったり「スターオーシャン」に対するイメージを持たれて今作を遊ばれるんじゃないかと思います。

 その中で、できるだけ多くの方に違和感が生まれないように作ったつもりですし、特にプレイフィールの部分については若い世代の方が遊んでも、昔からのファンの方が遊んでも新しいと感じて頂ける要素や改良などを加えておりますので、かなり広範囲の方に満足して頂ける完成度だと思っています。

 もしプレイして面白いと思って頂けたのでしたら是非周りのユーザーさんにもオススメして頂きたいですし、自分の周りにプレイしていない「スターオーシャン」ファンの方がいらっしゃったら改めて勧めて頂きたいタイトルになっています。

小牧氏:まずは何と言ってもユーザーの皆様にありがとうございますとお伝えしたいですね。

 この企画は本当にユーザーの皆さんの声によってスタートした話となっています。そして我々としても「スターオーシャン2」はとても大事な物語だと思っているので、これを新しく作る事ができて本当に嬉しいですし、今作を現代に復元できることで皆さんが好きだった「スターオーシャン2」の魅力を改めて多くの人々に受け止めてもらえるか、とても今から楽しみにしております。

 その上で新しくファンになって頂ける方々に本作を手に取って頂いて、より「スターオーシャン」の話ができる繋がりが広がっていって欲しいなとも思っております。まずはお手に取って頂けるととても嬉しいです。よろしくお願い致します。

――正にファンと開発陣、双方が「スターオーシャン2」を愛し続けていたからこそ生まれた超大作だと感じられますね。貴重なお話をありがとうございました!