レビュー

DLC「サイバーパンク2077:仮初めの自由」レビュー

敵か味方か? 緊張感たっぷりのスパイスリラーが楽しい新ストーリー

【サイバーパンク2077:仮初めの自由】

開発・発売元:CD PROJEKT RED

ジャンル:RPG

プラットフォーム:PS5/Xbox Series X|S/PC

発売日:9月26日

価格:
4,400円

 CD PROJEKT REDは、オープンワールドRPG「サイバーパンク2077」の拡張パック「仮初めの自由(Phantom Liberty)」を9月26日に発売する。価格は4,400円。本作をプレイするのは「サイバーパンク2077」本編が必要となる。

 「仮初めの自由」のメインストーリーの舞台となるのは、これまで行くことができなかった地域「ドッグタウン」。街の中心から南西にある区画だ。これまでの区画と比べても大きさ的には小さいが、イベントが集中しており、より地域に対し思い入れが濃くなるだろう。

 主人公V(ヴィー)は凄腕のネットランナー「ソングバード」の依頼を受け、この区画に入ることとなる。Vはこの事件を通じ、かつてナイトシティと崩壊した合衆国を再建しようという「新合衆国」とナイトシティの間で勃発した戦争の傷跡に直面していくこととなる……。

 「仮初めの自由」の最大の魅力はやはりストーリーにある。Vは誰が敵か味方か、誰が正しいのかわからない迷宮のような戦いに巻き込まれていく。ミリテク、新合衆国、過去の戦争、エージェント、大義と友情、そして自分自身の命……。登場人物達は様々なものを天秤に掛けながら自分が成すべきものを探っていく。鍵を握るのはVだ。プレーヤーの決断が物語をある結末へと導く。緊張感のあるとても魅力的なシナリオが展開する。

緑のラインで囲まれている場所がこれまで行けなかったドッグタウンだ

 「仮初めの自由」は「サイバーパンク2077」の最初で最後の有料コンテンツとなる。9月21日に実装された無料アップデート「アップデート2.0」ではスキルツリーも一新され、「サイバーパンク2077」はこれらの要素でいわば"完成"を迎えることとなる。今回、本作を先行してプレイした。「アップデート2.0」の要素も合わせて、その感触を語っていきたい。

【サイバーパンク2077:仮初めの自由 [日本語吹替版]】

大統領を救出せよ! ドッグタウンに蘇る戦争の傷跡

 「仮初めの自由」はソングバードからの通信でスタートする。ドッグタウンの入り口は厳しい警備で封鎖されているがソングバードの案内で潜入でき、序盤のイベントをクリアすることで以降は自由にドッグタウンに出入りできる。

 ちなみに新たにゲームを始めた場合でも、チュートリアルシナリオをプレイし街を自由に歩けるようになれば、ソングバードからの誘いが来ることになる。かなり早い段階からの挑戦も可能だ。ただし「仮初めの自由」のシナリオではこれまでの様々なジョブ(ミッション)を振り返る要素も盛り込まれていたり、意外な人物が再登場するので、できればゲームを進めてからの方がオススメである。

 「仮初めの自由」はかなり濃密なストーリーラインがあり、メインシナリオだけでも10時間以上はたっぷり遊ぶことができる。これに加えサイドジョブや探索要素、ゲームの新要素もあるので、本編をクリアし隅々まで遊んだような人でも再びどっぷりと「サイバーパンク2077」の世界に浸ることができるだろう。

 ソングバードは凄腕のネットランナー(ハッカー)だ。彼女はVに埋め込まれ彼の命を削っている生体チップ「Relic」をハックし、Vの頭の中に直接話しかけてくる。彼女はRelicの対処法を知っており、依頼をこなしてくれればRelicによって命を奪われようとしているVを助けるという。

Vを新たな事件へと誘うソングバード
墜落した大統領専用機で出会うロザリンド・マイヤーズ大統領。元軍人のタフな女だ
何とか隠れ家にたどり着いたものの、ここは敵地のまっただ中だ

 その依頼は「ロザリンド・マイヤーズ大統領の保護」。新合衆国とは企業が支配するようになった現代において、国家を復活させようという勢力であり、マイヤーズは巨大軍事企業ミリテクの元CEOであり、彼女自身も元軍人だ。

 ソングバードは、彼女が乗る大統領スペース・フォース・ワンがハッキングを受け、ドッグタウンに不時着しようとしていると語る。ソングバードに導かれドッグタウンに潜入したVは目の前で大統領専用機が撃墜されるのを見る。Vは墜落した大統領専用機に向かい、ドッグタウンを支配するバーゲストと専用機を守ろうとするガードロボットの戦いのまっただ中に飛び込んでいく……。

 「仮初めの自由」ではドッグタウンというナイトシティの中で独立している地域がフォーカスされる。ドッグタウンはかつてアメリカ本土を舞台に行われた大規模な戦争「統一戦争」によって生まれた。戦争は新アメリカ合衆国と自由州連合で行われ、新アメリカ合衆国の背後にはミリテクが、自由州連合にはアラサカがあった。その戦争の中でナイトシティは自由都市となった。

 ドッグタウンは統一戦争終戦時、ミリテクの兵士であったカート・ハンセン大佐が部下を「バーゲスト」という私兵組織として編成し、ナイトシティの一部を支配して生まれた。この地域ではナイトシティの警察である「NCPD」や他の企業からも支配されない場所である。今やドッグタウンはナイトシティにいられなくなった人達が集う場所となっていた。そこに新合衆国の大統領機が墜落したのだ。ハンセンはラジオを通じて新合衆国が大統領救出を口実に介入しナイトシティ全体を脅威に陥れないことを警告する。戦争の脅威を煽り、自分の支配力を強化しようとしているのだ。

 Vは大統領を救出したものの、ソングバードと連絡が取れず敵地のど真ん中で孤立してしまう。大統領は統一戦争時に活躍し、その後ナイトシティに潜伏している"エージェント"に協力を求めることを決断する。その男の名は「ソロモン・リード」。リードは大統領をドッグタウンから連れだし保護することに成功する。そしてVとリードはおそらく捕らえられたであろうソングバード救出のため、ドッグタウンに再び向かうこととなる。

Vの目の前で大統領専用機は撃墜される
ドッグタウンの兵士「バーゲスト」が大統領を手中にするために迫る
Vは大統領を守りながら戦いの中をくぐり抜けていく

 「仮初めの自由」のテーマは「スパイスリラー」。これまでの本編のジョブ以上の濃密な物語を体験できる。誰が敵で誰が味方か、味方の腹の内さえわからない緊迫したストーリーが展開する。その中でVが直面するのは「戦争の傷跡」だ。リードはもちろん、ドッグタウンそのものもかつての戦争で新合衆国側として戦ったのに、戦争終結の後、新合衆国にもミリテクにも切り捨てられた存在だ。この機会に彼等は何を成すのか?

 物語では特にリードに注目したい。「仮初めの自由」はこれまで以上にキャラクターの"表情"を表現しており、感情移入を強めている。リードはVの"相棒"として物語の中心となる。彼の過去や想いがこの事件をきっかけに掘り返されていく。まるで映画やドラマを見ているかのような体験ができるシナリオだ。そして映画や小説と決定的に異なるのが、物語の鍵をVであるプレーヤーが握っているところ。物語の結末はプレーヤーの介入で変化していくのだ。「サイバーパンク2077」そのものを未体験、という人もこの機会にぜひプレイして欲しい。

ドッグタウンの支配者カート・ハンセン大佐
エージェントであるソロモン・リード。Vの仲間であり「仮初めの自由」の中心人物だ
ドッグタウンは地域は大きくないが、様々な顔を見せてくれる

スキルを一新! 「アップデート2.0」でより明確になるキャラクタービルド

 「サイバーパンク2077」は本日、9月21日に大きく変わる。「アップデート2.0」によりスキルツリーが一新され、さらに新要素「車上戦闘」がもたらされる。また「仮初めの自由」を導入することで、「レリックスキル」という新要素も導入される。

 今回一番大きい変化はやはりスキルツリーだろう。新しいスキルツリーはよりプレイスタイルを強化するスキルが増えた。スキルをアンロックするためにはレベルアップ時に得られるスキルポイントに加え、ベースとなるステータスが関係してくる。ステータスを上げることで多くのスキルを解放できるようになるのだ。

肉体系のスキルツリーは強力な体と打突武器、ショットガンや大型武器のスキルがそろっている
反応はブレード系スキルやSMG、アサルトライフルなどを強化。空中でのダッシュも可能
技術はサイバーウェアを強化。グレネード系や、リンクして使うテック武器を強化する
意思は隠密系や投擲武器。"ニンジャ"になれるスキルだ
知力はハッキングやスマート武器を強化
「仮初めの自由」で追加される「レリックスキル」は、サイバーウェアに特性を加えたり、敵の弱点に弾を当てることができたりキャラクターがさらに強くなる

 ショットガン、アサルトライフル、殴打系の武器に、ピストル、それぞれの武器に合わせたスキルが整理され、戦い方に合わせて度のスキルを取っていけば良いかが明確になった。サイバーウェアを強化するスキル、そしてサイバーウェアの上限もよりしっかりとわかりやすくなり、限界までサイバーウェアを装着して強さを求めるという要素も強まっている。スキルアイコンのいくつかにアニメ「サイバーパンクエッジランナーズ」のキャラクターが導入されているのも面白い。

 肉体を強化することで回復力が上がる。その上で殴打系のスキルを取れば超人ハルクのようなパワフルなプレイも楽しめそうだ。ブレード系のスキルはガードすることで敵の弾をはじき返すことができ、はじくとクリティカルヒットになるスキルもある。ジャンプ中のダッシュも合わせ、映画「スター・ウォーズ」のジェダイになったような活躍もできそうだ。

スキルを取ることでブレードで敵の弾をはじき返す
フィニッシャーを決め第ダメージを与えることが可能に
今回はハック系を強化したキャラクタービルドを引き継いだので、ハッキングはこれまでと同じ感覚で戦えた

 加えて「車上戦闘」の要素も加わった。車上戦闘に関するスキルは各能力値に割り振られており、知力では車内から敵をハックできるスキルが取得できるし、車をぶつけても自分にダメージが及ばないなどスキルは肉体で入手できる。これらのスキルをとることで車上戦闘で有利になる。ただ車上戦闘要素そのものがフォーカスされるのは「仮初めの自由」の後半だったり、武器を装備した車を変えるのは車を盗むサイドジョブをこなしてから、という感じだ。

 「アップデート2.0」に更新するとスキルを1から割り振ることとなる。今回のプレイではこれまでのキャラクタービルドを引き継いだため、ハッキングとブレードの強いキャラクターにした。武器も強力なため、日本刀を手に敵を切り刻み、離れた敵にはハッキングでウィルスを流し込んだり、神経を焼くという戦い方だ。このスタイルは打たれ弱いところがあり、敵からダッシュで逃げながら回復するという場面も多かった。接近戦にこだわるなら肉体系のスキルも取っておきたいと感じた。

 今回「仮初めの自由」では過去のジョブを思い出させる場面も多い。「アップデート2.0」でプレイスタイルがはっきりしたところも含め、この機会に1から「サイバーパンク2077」そのものをプレイし、これまでと違ったキャラクタービルドを試して見たくなった。筆者はこれまでも何度か新しいキャラクターでプレイしたが、次回は一新されたスキルツリーで、ショットガンと殴打系スキルを強化したゴリゴリの肉体系キャラクターをやってみたいと思う。

 次ページでは「仮初めの自由」の最大の魅力のストーリージョブを掘り下げていきたい。

車をハッキングすることも可能に
「アップデート2.0」でサイバーウェアもさらに強化できるようになった
新たな武器も追加