レビュー

DLC「サイバーパンク2077:仮初めの自由」レビュー

独立世界ドッグタウン、歴史と街にフォーカスするメインシナリオ

 「仮初めの自由」の最大の魅力はやはりストーリーにある。大統領の救出をきっかけにVはドッグタウン、そしてリードを通じて"統一戦争の傷"に直面していくこととなる。リードも、そしてハンセン大佐も和平という名の下に新合衆国から見捨てられた兵士だ。戦争の傷は年月がたっても多くの人を歪めていることをVは知ることとなる。

 ソングバードはどこにいるのか? 鍵を握るのは街の支配者ハンセン大佐だ。彼の懐に飛び込むためにはかなりのリスクがある。Vはそのツテを得るためにドッグタウンで傭兵に仕事を斡旋するフィクサーの仕事を受けていくことになる。

 メインジョブはリードが作戦を進めるための準備などで"待ち時間"が生じる。この時間はスキップして短縮することもできるが、合間にフィクサーからの依頼や、街のもめ事に関わっていくと、ドッグタウンの別の顔を見ることができる。

リードは優秀なエージェントだ。彼の協力を得て事態は大きく動き始める
リード自身の過去に直面することも
街では様々な依頼を受けることとなる
プレーヤーの意思で事態が動くものも多い

 面白かったのが、「ドジャーを待ちながら」というサイドジョブ。2人の警官がハンセンの子飼いの売人である「ドジャー」とトラブルを起こし、監禁されてしまっているという。Vは彼らを助けるべく監禁場所に行くのだが、その脱出行のあいだ、2人の警官がずっとお互いに責任をなすりつけているのが楽しい。オチも含めてかなりブラックジョークに満ちたジョブだ。

 もう1つ「恐れ知らず」というサイドジョブでは、ハンセン大佐の軍隊である「バーゲスト」がフィーチャーされる。なんだか大変な失敗をしたという新米バーゲストのパコの話を聞くのだが、「ディープダイブ」というドラッグを吸いながら話を聞くことになる。この薬をキメながら話を聞くと、いつの間にか自分がハンセン大佐になって、新兵のパコの根性を試す場面を体験することになるのだ。

【ドジャーを待ちながら】
車内でシートを倒してサイドジョブ受注。「ドジャーを待ちながら」は最初から面白い
ぐだぐだな汚職警官を何とか監禁場所から逃がす
【恐れ知らず】
「恐れ知らず」というサイドジョブでは薬の効果か、自分がハンセンになってパコを殴り飛ばす

 「仮初めの自由」は1つ1つのジョブの内容が濃厚だ。時には過去のジョブを思い出させる要素もある。やはりこのDLCは本編のジョブをある程度進めてからの方が楽しめると思う。また、街の住人の雑談も面白いのだ。自分がナイトシティでどんなへまをしてドッグタウンに流れてきたかを聞くことができたり、ドッグタウンだからこその価値観にを耳にすることもある。これまでの「サイバーパンク2077」本編以上に1つの地域の描写が濃密で、歩いているだけでも楽しい。

 このほか、「支援物質」という新要素が加わった。ハンセン大佐は支援物資を空から受け取っており、ドッグタウンのみならずナイトシティのどこにでもこの物資が投下されるようになる。Vはこれを回収しようとするバーゲストと戦い、支援物資を横取りできる。敵は強力だがうまく横取りできれば、スキルポイントを取得しやすくなるスキルチップや、強力な武器を入手できる。

 もう1つ車を盗み目的地まで届けるサイドジョブも追加された。こちらは成功させることで武器を装備した車など新しい車も購入できるようになる。新しいゲーム要素として挑戦しておきたいところだ。

 「仮初めの自由」で相棒となるリードは時に頼もしく、時に得体の知れない顔を見せる。彼は国家から和平の生け贄として捨てられた過去があるのにもかかわらず、再び新合衆国のために活動する。それは大義のためなのか、彼自身の生き方なのか、まだ結末を見ていない筆者にはわからない。この先に何があるのか、Vの、プレーヤーの干渉でどう変わりどんな結末を迎えるかとても楽しみだ。

 「元軍人」という意味では実はジョニーもそうなのだ。彼はかつてミリテクの兵士として戦い、そして自身と国家の間で悩み、軍から脱走した過去を持つ。Vやリードを通じジョニーは「国家への忠義」、「軍人」という価値観と再び対面していく。ジョニーの苦悩を徐々に理解していくというところも「仮初めの自由」の面白いところだと思う。

 本編でも自身の誇りと忠義で葛藤を抱える人物はいた。アラサカの元エージェント・タケムラや、刑事のリバー・ウォードなどは彼らとともに行動し悩みを共有したことで、印象に残っているプレーヤーも多いだろう。「仮初めの自由」ではリードというキャラクターと、統一戦争という題材でより深く「男の生き様」を掘り下げている。ぜひリードやジョニーと一緒に悩み、そして物語の結末を見届けて欲しい。

 現時点で筆車もまだシナリオの途中である。「仮初めの自由」をプレイすることでエンディングも追加されると言うことで、本音を言えば筆車は今すべての仕事を投げ捨ててその結末を見たい葛藤に苦しんでいる。

警察の追跡が厳しくなって、車上戦闘要素が役に立つことに、
ゲームのアクセントとなる支援物資
狙撃装備でリードを援護
スパイスリラーならではの賭け事のシーンも
様々な人物が登場する
造形作家IKEUCHI氏がデザインしたヘッドセットもゲーム内に登場する

 「仮初めの自由」は「サイバーパンク2077」のプレーヤーはもちろん、この機会に「サイバーパンク2077」を未体験の人も、本編とDLC両方を購入しこの世界に飛び込んで欲しい。「サイバーパンク2077」は販売当初は不具合報告も多かったが、現在はアップデートを繰り返し、この魅力的な世界をたっぷり、しっかり楽しめるようになった。

 命の危険に直面しながらも必死に明日を探すV、きらめく街ナイトシティに飲み込まれていく人々、50年を経て蘇りVとの共生する中で変化していくジョニー……。この魅力的な世界をぜひ味わって欲しい。そして本編とひと味違う「仮初めの自由」のシナリオとドッグタウンをしっかり体験して欲しい。