インタビュー
「サイバーパンク2077」拡張パック「仮初めの自由」Localization Managerインタビュー
誰が味方かわからない、陰謀渦巻くスパイスリラー
2023年6月12日 04:00
- 【「サイバーパンク2077」拡張パック「仮初めの自由」】
- 9月26日発売予定
- 価格:4,400円
「サイバーパンク2077」の発売から2年半の時を経て、最初で最後の拡張パック「仮初めの自由」がついに登場となる。コレまでバックストーリーとして語られていた新合衆国、そしてその大統領マイヤーズ。そしてナイトシティの中にありながら独立した地域となっている「ドッグタウン」など新たな要素が登場する。
今回、発売に先がけ「仮初めの自由」の冒頭をプレイできたが、本稿ではCD PROJEKT RED Japan Localization Managerの西尾勇輝氏にインタビューを行い、気になる要素を深掘りしてみた。
「ドッグタウン」とはどんな街なのか? 今回のメインシナリオのテーマとは? 追加要素のディテールは? などなど、気になる質問をぶつけてみた。インプレッションと併せて読んで欲しい。
「スパイスリラー」というテーマにチャレンジした「仮初めの自由」
――「仮初めの自由」、非常に興味深いオープニングでした。想定プレイ時間はどのくらいでしょうか?
西尾氏:「仮初めの自由」のメインストーリーは「サイバーパンク2077」の本編に組み込まれる物語の1つであり、プレーヤーや、プレイスタイルによって変わってきます。また今回追加されたのはメインストーリーだけでなく、システム、サイドクエスト、ランダムな要素など多岐にわたり、「サイバーパンク2077」の全体にも影響が出るので、プレイ時間を提示することは難しいんです。
――今回プレイして深掘りできなかった部分ですが、スキルツリーが変更され、新スキルカテゴリーも追加されました。プレイフィールが大きく変わるのでしょうか?
西尾氏:根幹の部分が変わることはないかと思います。実は本編よりパークの数そのものは減ってるんです。これまでのスキル、パークは複雑なところがありました。今回のアップデートでこの構成が見直され、整理されました。より直感的なキャラクタービルドが可能になると思います。
プレイフィールに関してはむしろいい方向で変わってくると思います。今回はネットランナータイプのキャラクターでのプレイのため体験できていないのですが、実は近接戦闘もが強化されています。刀などのブレード武器は遠距離での戦いが不得手でしたが、今回は銃弾をはじき返し相手の撃った弾がそのまま相手に当たるようなパークもあります。強攻撃で一気に間合いを詰めたりとか、空中ダッシュができるようになったりとか、さらに気持ちよくプレイできる要素が追加されています。
ただ強調したいのはプレイフィールががらりと変わってしまうわけではないです。ハッキングが強力で、比べると他の戦い方だと難易度が上がっていた一面がありましたが、他の戦い方もより面白くなった、という感じです。個人的には近接戦闘が気持ちいいですね。プレイスタイルがよりはっきりして組み合わせが楽しく、試しやすくなっていると思います。新たにキャラクターを作って楽しんでいただくのもいいかと。
――他にも武器を搭載した車両が追加になりました
西尾氏:クエストでのイベント要素が強かった車上戦闘ですが、今回はもっと気軽に車上戦闘を行えます。また、武器を搭載した車両が登場したことでカーチェイスなどが派手になりました。ドッグタウン内の勢力「バーゲスト」や、ナイトシティのNCPDなども車に乗りながら攻撃してくることもあります。また車両で拠点に突っ込んだり、車を戦闘により積極的に使えるようになりました。
このほか「車両の配達ミッション」、「投下物資」というナイトシティ全域で無限に楽しめる車両の配達ミッションのようなコンテンツもあるので、ゲームプレイ全体の追加要素もあります。
――そしてやはり「仮初めの自由」のメインストーリーが魅力的です。今回あくまで序盤でしたが、キャラクター描写、演出が濃く感じました。
西尾氏:「仮初めの自由」は"スパイスリラー"がテーマとなっています。冒頭はかなり派手なアクションをお見せしましたが、そこからかなり複雑かつ重厚なストーリーが展開します。政治や権力の陰謀渦巻く争い、目の前に見えるだけでも「新合衆国側で誰が大統領を裏切り苦境に陥れたか」、「ドッグタウンの支配者ハンセンの思惑」があり、その中でVはどう動くべきかを問われていきます。
「誰を信用すればいいか? 誰の味方につくか?」今回はここが大きな意味を持っていきます。本編でも「選択と結果」というのは大きなテーマですが、「仮初めの自由」はこのシナリオの中でのプレーヤーの選択で結果は変わっていきます。細かい選択肢、意味の重い選択肢など盛り込まれており、このシナリオだけでも選択によって様々な展開が楽しめます。また、「仮初めの自由」に沿った選択によってゲーム本編のエンディングそのものも追加されています。ぜひ何度もこのシナリオをプレイして選択の幅を楽しんで欲しいです。
――今回の新キャラクターは魅力的ですが、西尾さんのお気に入りは?
西尾氏:難しいですが、マイヤーズ大統領は好きですね。彼女はとても頼りになる。マイヤーズは"戦える政治家"です。政治理念的な話ではなく、元軍人。海兵隊出身の彼女は物理的に強い。こういうキャラクターってあまりいないんじゃないかなと。その強さは彼女のセリフからも感じられます。しかしこの苦境の中で、不安定なところ、弱い部分も見せる。ここも魅力的です。
もう1人はリードですね。ナイトシティに潜伏していたエージェントで、マイヤーズの切り札。ソングバードもそうですが、各キャラクターには秘められた過去があり、それぞれの思惑がある。キャラクター描写は濃く、誰もが魅力的だと思います。
――ドッグタウンそのものも魅力的なところのようですね。今回は闇市っぽいところくらいでしたが、他にも様々な名所があるんでしょうか。
西尾氏:ドッグタウンは壁で隔離された地域なんです。墜落して飛べなくなったエアロゼップのから電力を得ていたり、他のエリアとは生活様式や基準も異なります。普通の人は近寄れない危険地域ではあるのですが、そこには独自の社会がある。現在はハンセン大佐と、彼の率いる軍隊色の強い勢力「バーゲスト」に牛耳られています。私たちは「街の中にあるもう1つの街」と呼んでいます。
闇市はスタジアムにあり、象徴的なで目立つ場所のひとつですが、裏ではまた違うビジネスが進行しています。もちろんドッグタウンには他にも様々な小地区があります。また、ナイトシティと比べるとかなり異質な街です。ドッグタウンは何らかの理由でナイトシティにいられなくなった人が逃げてくる場所でもあります。ハンセンが支配をしている場所ですが、「ドッグタウンでしか手に入らない自由」というものがある。
きらびやかなコーポプラザなどと比べれば貧困地区であり、物資も限られていますが、住民たちは独自の社会、生態系を作って生きている。見て回ることでこの地域の独自性を感じていただけると思います。街の成り立ちなども様々な読み物や会話の中で言及されており、なぜドッグタウンがこのような地域になっているかは、ぜひプレイして体験して欲しいです。
Vはドッグタウンのあらゆるところを駆け回ることになりますし、この街の歴史にも向き合っていきます。メインコンテンツだけでなく、サイドコンテンツでもドッグタウンは掘り下げられていくので、楽しみにしてください。ほんと特殊な地域なんですよ。
――今回、「仮初めの自由」という1つの地域と濃密なドラマを核とする拡張パックは、開発チームのどのような思いから生まれたのでしょうか。
西尾氏:「スパイスリラーをやりたい」というのが大きな原動力だったと思います。「サイバーパンク」という本編のテーマを保持した上で、新しい何かに挑戦したいという流れの中で核になったのが「スパイスリラー」となった。また、現時点ではあまりいえないんですが、「選択と結果」という本編の要素を「仮初めの自由」のメインシナリオは凝縮しています。
すでにアナウンスしていますが、「サイバーパンク2077」において「仮初めの自由」は唯一の拡張パックであり、今後このような大規模の追加要素は予定していません。もちろんバランス調整やアップデートは続けていきますが、「サイバーパンク2077」では「仮初めの自由」が最初で最後の拡張パックとなり、今後は「Orion」というコードネームの新しいサイバーパンクテーマのゲームの開発に注力していくことになります。
「仮初めの自由」は「サイバーパンク2077」の集大成となったと思います。「サイバーパンク2077」でやりたかったことを皆さんに提示するというのが今回のテーマでもありました。
――西尾さん自身は「仮初めの自由」のプレイの感想はいかがでしたでしょうか。
西尾氏:現時点ではいえないことが多すぎます(笑)。やはり我々の集大成である、というのが一番言えることですね。1つの到達点に達したな、という実感は持ちました。ストーリー、会話の流れ……。やはり私はローカライズ担当なのでここが一番大きな要素になりますが、「ここまで来たな」という実感があります。
本編の「サイバーパンクとは何か」というテーマを踏まえた上で、「仮初めの自由」は新しいことに挑戦している。CD PROJEKT REDはやはりナラティブこそが幹であり、ストーリーが一番なんです。だからこそ今回もストーリーには自信を持っています。
それはマイヤーズとの隠れ家との会話など、ふとした1シーンの丹念な描き方など細かい部分でも感じてもらえると思います。シーン展開や会話の内容をきちんと自然に描けるかはとても力を入れました。何気ない言葉が、実はとても重要な意味を持っていたりなど、ローカライズ、言葉の面白さも「仮初めの自由」に含まれる大きな要素です。ある意味本編より凝縮されている分、より神経が張り巡らされています。
――ローカライズでもノウハウが積み上げられたからこそできた部分というのはありますか。
西尾氏:外部協力者の方々も含め、本編を体験しているからこそスムーズにできたところはありました。経験を活かして「仮初めの自由」に挑めたところがあると思います。スパイスリラーというテーマ、誰を信用していいかがわからない不安感といった、空気部分も意識しての脚本をきちんとローカライズできるように意識しました。
吹き替えの声優さんの収録について、今回は私がほぼすべてをディレクションできたのもよかったと思っています。「サイバーパンク2077」本編はその膨大さゆえに収録のディレクションは複数人で担当しましたが、今回は収録スケジュールも余裕を持たせ、基本は全部私がディレクションできたのでやりやすいところがありました。
――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。
西尾氏:「サイバーパンク2077」発売からおよそ2年半、最初であり最後の拡張パック「仮初めの自由」をお披露目することができました。長い時間をかけていいものを提供できるように努力してきましたのでご期待してください。「仮初めの自由」は「サイバーパンク2077」を愛してくださった方への感謝であり、1つのアンサーになっているかと思います。
アニメ「サイバーパンク エッジランナーズ」をきっかけに本編をプレイしてくださった方や、まだプレイしていない方にも素晴らしいゲーム体験をしていただけると思いますので、この機会に「サイバーパンク2077」と拡張パックの「仮初めの自由」をプレイしてください。
西尾氏の話を聞いてますます早くプレイしたくなった。「仮初めの自由」は何度もプレイしたくなるコンテンツだ。一度結末までプレイすれば張られた伏線や、言葉の裏の意味などにも気づけるだろう。
「サイバーパンク2077」はサービス当初はバグが多くスムーズなプレイが難しかった。筆者も「サイバーパンク エッジランナーズ」をきっかけに再プレイし、隠しエンディングなど隅々まで改めて楽しんだ。今回の「仮初めの自由」再度どっぷりとこの世界にのめり込むことになりそうだ。
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