レビュー

「Atomic Heart」レビュー

待望の日本語吹き替え音声実装! ついに完成した架空ソ連の崩壊を描いたアクションRPG

【Atomic Heart】

発売元:Beep Japan、4Divinity

開発元:Mundfish

ジャンル:アクションRPG

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC

4月13日発売(PS4/5)

2月21日発売(Xbox Series X|S/Xbox One/PC)

価格:
9,680円(通常版)
18,480円(限定版)

 架空のソ連での戦いを描くアクションRPG「Atomic Heart」が、Xbox Series X|S/Xbox One/PC版に続き、4月13日よりPS4/5版の発売となる。PS4/5版の発売と同時に、日本語吹き替え音声が追加されるのが大きな特徴となる。

 本作はプレーヤーキャラクターである特殊部隊の兵士「P-3」に加え、彼の左手に宿るAI「チャールズ」の2人が主人公と言える。P-3とチャールズは時には冗談を言い、時には知識を共有し、危険を切り抜けていく。チャールズはストーリーの根幹に関わることや、P-3が知らなかった裏事情や世界の仕組みを語ることも多いのだが、時にはその会話は戦闘のまっただ中で、英語が苦手なプレーヤーは字幕を読み飛ばしてしまうという状況も多い。日本語吹き替え音声は、さらなる物語への没入を可能とする。

主人公P-3は、左手に宿るAIチャールズと共に殺人ロボットが待ち受ける研究施設を探索していく

 弊誌では本作の特徴を何度か紹介しているが、今回はより濃くレビューしていきたい。プレイすることで見えてくる世界観やキャラクターの魅力、武器やスキルを使った戦い方、そして豊富なパズルギミックを紹介していこう。

【「Atomic Heart」日本語吹き替え音声 P-3を演じる岩崎洋介さん、大塚明夫さんさん演じるサチノフの演技に注目!】

「壊れた楽園」で繰り広げられる、ロボット達との死闘

 「Atomic Heart」の舞台は第二次大戦後現実とは異なる歴史を歩んだ1955年のソ連が舞台となる。この世界ではサチノフ博士が電気を通すプラスチック物質「ポリマー」を発見、これを基盤に常温核融合、そしてロボット技術を開発する。1948年にロボットは「コレクティヴ1.0」という制御ネットワークにより、ロボットが人間の労働を肩代わりする社会がやってきた。このロボット技術はアメリカやヨーロッパにも導入されていく。

 ロボット技術と同時に「人体のポリマー化」も進められた。ポリマーを人体に注入することでポリマー化された人々は遠隔で自分の考えを伝えたり、他のポリマー化された人の心を読むことも可能となる。何よりも考えただけでロボットを操作できるようになるのだ。

 そして1955年、ソ連のすべての人をポリマー化し、人々をネットワークに接続する「コレクティヴ2.0」実装が決定される。ソ連の科学技術の結晶であり、先端都市である「空中都市チェロメ」はその式典で沸き立っていた。

【空中都市チェロメ】
人民をポリマー化し、ネットワークに繋げる「コレクティヴ2.0」実装を目前にパレードが行われているチェロメは人間とロボットの明るい未来を指し示していた

 ……しかし、「コレクティヴ2.0」実装直前に、何らかの異変が起きる。ポリマーをはじめとした様々な先端技術を研究している3826番施設で異変が起きたというのだ。サチノフ博士の命令でP-3は調査に向かうがロボット達に襲われる。研究者の1人・ペトロフが中央ハブをハッキングし、ロボットを人が襲う様に書き換えたのだ。彼はアクセスコードを持っている。P-3はペトロフを生かしたまま捕まえるため、殺人ロボットに占拠された広大な施設を探索していくこととなる。

【3826番施設】
3826番施設はロボットの反乱により地獄と化していた。生きている人間はロボットにたちまち殺されてしまう
プログラムを書き換えロボットを反乱させたペトロフ

 本作は一人称視点のアクションRPGだ。プレーヤーはP-3として、ロボットと死体だらけの3826番施設で死闘を繰り広げていく。P-3は過去の事故で重傷を負っており、体をポリマー化、人工部品に置き換えることで命を繋いだ。このため戦場で手に入れる部品を使って様々な能力をアップグレードできる。

 また3826番施設では様々な新兵器が実験されており、各地で設計図や強化パーツが入手できる。戦いながら能力や武器を強化していくこととなる。能力の有効な使い方や組み合わせなどプレーヤー自身も戦い方に習熟していく。

 戦いはかなり激しい。作業ロボットの数は多いだけでなく、監視カメラに見つかると増援が呼ばれ、さらには壊したロボットすら修理されてしまうのだ。広大なフィールドに出た場合は常にロボットに追い回されることとなる。

【激しい戦い】
ゲームの基本は一人称、ロボットや宇宙進出のために作られたクリーチャーに寄生された死体がP-3の行く手を阻む
様々な能力や武器を使いこなし戦っていく

 本作は最序盤の施設をのぞけば広大な場所を探索できるが、周りは敵だらけ。しかも探索の大きな目標である特殊装備が入手できる「研究施設」はゲームが進行しないとアンロックされないため、オープンワールド的な要素はゲーム後半まで控えめだ。しかし建物の中や、トラックの荷台といった、施設の隅々まで探していくとかなりの素材が集まり、能力や装備品を強化し、展開が楽になる。

 本作の探索フィールドは、様々な施設があるが、それらは「何のために作られたか」というきちんとした目的がある。人工の木を発電装置として宇宙進出の足掛かりにしたり、過酷な宇宙をポリマーで覆うことで生物が生きる環境を用意したり、無重力空間での行動をテストするための施設などがある。そしてそれらの施設は、ロボットの反乱で廃墟になってしまっているところで、世界としてより掘り下げられている印象がある。特に研究の成果をアピールするパビリオンは、破壊された無残な姿がもの悲しい。

【未来技術の施設】
目の前の白い木は蘇らせることで発電能力を発揮する
ポリマーを活用し植物を培養
ポリマーを使って極限環境でも生き物を生かす技術実験
最新の技術を紹介するパビリオン

 「Atomic Heart」に登場するロボットの多くはこちらを見ると襲いかかってくるものばかり。だからこそそうではなく、一見正常に動いているように見えるロボットは印象に残る。その正常そうなロボットが役に立つかと言えば、けっしてそうと言い切れないのが、本作の面白さだ。

 例えばリニアモーターカーの原理で長距離を移動できる列車は、ロボットのバーテンが列車の運行も担当している。このロボットは反乱プログラムの影響は受けていないようだが、辺りはロボットが人間を殺す地獄絵図だが、全く気にせずグラスを磨いていて、「列車のチケットはお持ちですか?」とのんきに尋ねてくる。もちろんチケットを売る駅員は殺されてしまっていて手に入らない。せっかく列車までたどり着いたP-3はチケットを探すため、再び殺人ロボットが待ち構える駅周辺を探索しなくてはならない。

 コンパニオンロボット「テレシコヴァ」は、緊急事態なのに、踊りながら冗長な表現で事態を説明する。そのことを指摘すると「恐怖で機能が故障しそうです! しかし私はどんな状況でも明るく振る舞う様に設計されており、マイナスの感情を表すことができません」と、やはり踊ってて応える。この杓子定規なロボット達の反応も本作の大きな魅力だろう。「壊れた楽園」という本作のテーマを強く印象づける演出だ。

【奇妙なロボット達】
リニアモーター式のモノレール。かなり豪華な内装だ。ウェイターのロボットは頑固にチケットを要求して、列車を走らせない
コンパニオンロボット・テレシコヴァ。阿鼻叫喚の地獄絵図のパビリオンで踊るようにスピーチする姿は違和感しかない

能力や武器を強化し、多くの敵と戦え!

 「Atomic Heart」でP-3は左手の「グローブ」を強化していく。グローブは強力な電流を発射する「SHOCK」や、周囲の敵を浮かし、地面に叩きつける「マステレキネシス」、敵を凍らせる「フロストバイト」など様々な能力が使える。

 初心者にオススメなのが、マステレキネシスだ。自分の周りの敵を浮き上がらせ叩きつける攻撃は敵に囲まれることも多い本作で有効だ。また、空中の敵にも効くのが心強い。「Atomic Heart」では敵を倒しても周囲のポッドから修理メカが飛び出して倒した敵を復活させてしまう。空中の敵を狙うのはこつがいるので、テレキネシスか、有効射程内なら自動で攻撃が当たるSHOCKが使いやすい。テレキネシスは強化すれば大型の敵も持ち上げられる。

 フロストバイトは一定時間冷気を浴びせると敵が凍結する。凍結した敵を攻撃することで大ダメージが与えられる。こちらは特に狭い空間で有効な能力だ。本作の敵は動きが速いものが多く、動きを止められるスキルは使いやすい。一方で数が多い場合はフロストバイトは力不足を感じることもあった。

【スキルで戦う】
様々なスキルを獲得、キャラクターを強化していく
敵を空中に持ち上げるマステレキネシスは強化することで地面に敵を叩きつけダメージを増やせる
マステレキネシスは空中の敵にも影響するのがありがたい
敵を凍らせるフロストバイト

 筆者は今回レビューのため一度クリアした「Atomic Heart」を再び最初からプレイしたのだが、前回うまく使いこなせず、今回でコツがつかめたスキルがポリマースローだ。ポリマーを吹き付けるスキルなのだが、これだけではダメージが与えられない。ここに電撃や炎を当てることで吹き付けたポリマーが属性を持ち継続ダメージが与えられる。床に線を引くようにポリマーを吹き付け、電流を流すのは特に有効だと感じた。属性を帯びたポリマーから伸ばすように新たなポリマーを吹き付けると効果範囲が増える。これが決まると爽快だ。

 ポリマーは「カートリッジ」でより有効に使えるようになる。カートリッジは武器に属性が付与できる機構で、武器のアップデートで追加できる。カートリッジをインベントリーに入れ、武器を構えた状態でスロットにインストールをすると属性が追加できる。属性には「電気」、「炎」、「冷気」があり、特にロボットには電気が有効だった。

【ポリマーとカートリッジ】
ポリマーは属性を付与することで有効に使える
炎カートリッジをつけた銃で撃てばポリマーは燃える
カートリッジを持ち、武器にスロットを付けていればカートリッジを装着できる
ポリマーを浴びせて炎攻撃

 武器はやはりショットガンの「KS-23」や、アサルトライフルの「カラシ」が使いやすい。また、本作はボス戦においても通常の戦闘においてもかなり近接攻撃が有効なので、こちらも最初の斧だけでなく、より強力で使いやすい武器にアップグレードしていくのが良いだろう。振りの速い「パシュテト」や振りが遅いが強力な「スノーボール」、そしてさらに強い「ズヴェドーチカ」といった近接武器が用意されており、アップグレードすることで振りを速く、威力も高めることができる。

 これらの武器を強化するためには各地にある研究所を訪れる必要がある。これらはストーリー的には立ち寄らなくても良い場所だが、武器の追加パーツが入手でき、戦闘をより有利に進められる。「Atomic Heart」をやりこむならば、ぜひこちらも探索していきたいところだ。

 次ページでは本作のパズル要素や、日本語吹き替え音声の感触を語りたい。

【様々な武器】
カラシは使いやすい武器だ
振るスピードは遅いが威力の高いスノーボール
探索を進めることで設計図を入手、新しい武器を作れる
強力なドミネーターはエネルギー消費も激しい
近接武器のズヴェドーチカは電気カートリッジを使うことでロボットに対してより効果的になる
Amazonで購入