【特別企画】
共産天国の崩壊を描くSFアクションRPG「Atomic Heart」インプレッション
現実とは異なる進化を遂げ、楽園となるはずだったソ連で繰り広げられる戦い
2023年1月17日 18:00
- 【Atomic Heart】
- PC/Xbox One/Series X|S版:2月21日発売予定
- PS4/5版:4月13日発売予定
- 価格:
- 9,680円(通常版)
- 18,480円(限定版)
BeepはアクションRPG「Atomic Heart」の体験会を開催した。「Atomic Heart」は2月21日にPCとXbox One/Series X|S向けに、4月13日にPS4/5版の発売を予定している。価格は9,680円。アートブックやスチールブックなどが付属する限定版が18,480円となる。
「Atomic Heart」の開発はキプロスのゲームスタジオMundfish。スタジオとしては本作が最初のゲーム開発となる。ゲームは現実とは異なる歴史を歩んできた1955年のソビエト連邦が舞台となる。この世界では人間に奉仕するロボットが実用化されており、人々をニューラルネットワークに接続する計画「コレクティヴ2.0」の実現が迫っていた……。
プレーヤーは特殊部隊の兵士「P-3」となり、計画に暗い影を落とす事件を調査することとなる。そこでは従順なはずのロボットが人間に襲いかかっていた。P-3は左手に埋め込まれたパワーグローブ「チャールズ」を相棒に、武器や特殊能力を駆使して戦うことになる。
体験会では本作の序盤や、ゲームが進んだところでの様々な要素、特殊能力を体験できた。「Atomic Heart」は"崩壊した楽園"というべき独特の世界観や、現実とは異なる進化をしたテクノロジーの描写が魅力だ。1950年代に思い描かれていた独特の未来感、そしてそれが崩壊した殺伐さ、社会主義国家ならではの空気感など、ユニークで魅力ある作品である。インプレッションを語っていきたい。
繁栄を極めるソ連、突如起きたロボットの反乱により世界は戦場と化す
「Atomic Heart」は「空中都市チェロメ」からスタートする。チェロメはまさに楽園のような世界。人々は平和を謳歌している。彼等の平和と幸福を支えているのが「ロボット」。ロボットは簡素な人間型のシルエットをしており、荷物を運んだり、道を掃除していたり、空中を浮遊し道行く人にソーダを配ったりと、様々な形で人間に奉仕している。
本作の世界観のジャンルは「歴史改変SF」と呼ばれるもの。第2次大戦の勝利以降、ソ連は科学を発展させた。その象徴となるのがチェロメだ。その名の通り空中に浮かぶ巨大な都市は人口2500人ほど、ほとんどが科学者と公務員で構成されているという。ソ連は大規模なプロジェクト「コレクティヴ2.0」を進めようとしていた。人々をニューラルネットワークに接続させることでさらに便利な世の中にしようという計画は始動数日後に迫っており、チェロメはこの式典で大きく沸き立っている。
プレーヤーキャラクターとなるP-3は特殊部隊の兵士だ。彼は過去の大きな事故で記憶の一部を失い、体の機能を補うためインプラント手術を受けている。左手はパワーグローブとなっており、AIにより独自の意思と会話機能が備わっている。AIは自らに「チャールズ」と名前を付けているいが、P-3は彼をグローブとしか呼ばない。P-3とチャールズの会話劇も本作の見所の1つだ。
P-3が「コレクティヴ2.0」が迫る中チェロメに召喚されたのは、「3826番施設」の調査のためだ。この施設は最高機密のものだが、この大事な時期に連絡が取れなくなったという。P-3は空飛ぶ車でこの施設のある地域に向かうが突如攻撃を受ける。ロボット達が反乱し周囲を破壊しまくっているのだ。訳がわからない状況の中、P-3はチャールズの支援を受けながら自分を守り、任務を進めていかねばならなくなる……
「Atomic Heart」はシングルプレイオンリーのアクションRPGだ。ローカライズは字幕での対応となっている。画面は一人称視点。プレイして最初の印象はやはり独特の世界観だ。空中都市チェロメは青く晴れた空に緑の芝生、「コレクティヴ2.0」の実現のための祭典に浮かれ騒ぐ人々と、本当に楽園そのものに見える。
街中では様々なものにアクセスできる。ロボットが屋台で食べ物を出していたり、歴史を語るロボットなど様々なサービスがあって、ロボットによって人々の生活が一変しているのがわかる。その中で共産国家らしい威圧的な建物が随所にあるのも面白い。そしてやはり式典だろう。視界を埋め尽くす整列したロボット。国家の威信を見せつけるこの風景こそが共産国家らしいアピールの仕方だ。華やかさの中に独特の"暗さ"を感じてしまうのは本作の面白さの1つと言える。それは当時の時代が持っているものなのか、それともお国柄なのか、独特の異世界観があって、本作の大きな魅力となっている。
P-3が「3826番施設」に移動することで、この華やかな空気が一瞬で崩壊する。施設は破壊されており、そこかしこに職員達の死体や、ロボットの残骸が転がっている。稼働しているロボット達はP-3を見かけると襲いかかってくる。さらに侵入者用のセンサーはP-3を敵と見なしており、P-3の存在を察知すると警報を鳴らしロボットを向かわせてくる。
今回体験したのはゲームスタートから数時間ほどのほんの序盤だが、この段階では近接攻撃が主体のようだ。ショットガンも入手できるが、弾はほとんど手に入らないため基本は近接攻撃で進んでいった。敵となるのは人型のロボットだが、表面は無機質なプラスチックに覆われている。無表情なまま襲いかかってくるのが恐ろしい。強力な攻撃をする前は光のリングのようなものが出てくるので、それを回避しながら殴る。殴っていくと内部の機械がむき出しになっていく。
プレーヤーの味方であるチャールズ(P-3は頑なに"グローブ"と呼び続ける)は、P-3に色々助言をするが、ロボットが反乱しているこの地域では、ニューラルネットワークの機能も発揮できず、あまり役に立たない。しかし全くの無能というわけではなく、チャールズとポリマーカプセルを接続することで体力回復ができる。
またケーブルから力場を発生させ様々なアイテムを瞬時に拾い集めることができる。箱やキャビネットにチャールズを向けると、まるで念力のように様々な物資が中に回収されていくビジュアルも面白い。P-3はチャールズと協力して、地域全体が敵となったこの窮地を進んでいくのだ。
崩壊した世界を進み、反乱の企てを暴き出せ!
P-3は崩壊した施設内を進んでいく。施設はエレベーターや、移動のためのレール式の車などがあり、この施設がちゃんと稼動していたときはかなり快適な環境だったことが感じられるが、今や電源も切断され、場所によっては炎で進めないなど満足に移動もできなくなっている。しかもP-3を排除しようとロボット達が闊歩しているのだ。
時には壁の穴を通ったり、天井に開いた穴を使ったり、道なき道を進みながらP-3は進んでいく。ロボットは破壊をすることで内部から有用な部品を回収できたりもする。部品を集めることで施設内の機械を使い武器のアップグレードや能力の拡張ができる。P-3はゲームが進んでいくことで強力な武器やスキルを獲得できる。これらは後で説明していきたい。
行く手を阻む要素の1つに「鍵」の存在がある。扉を塞ぐ大きなロック機構だが、「円形の鍵を探す」、「タイミング良くボタンを押す」、「どこかにあるヒントを見つけてその順番でボタンを押す」などの解除法があり、これらを解き明かして進むこととなる。
止まっているモノレール型の乗り物を始動させたり、地中を進む巨大な芋虫型の機械をかわしながら進むなど、序盤でも様々な仕掛けがあり、これらを解き明かすために苦戦する場面もあった。
またストーリー要素も注目したいところだ。今回のプレイでもほんの一瞬生きている人間と出会うことがあった。1人はタフな老婆で、彼女とはすぐに別れてしまったが、この過酷な状況をそのタフさで生き抜いているようだった。もう1人は絶体絶命の瞬間を救ってくれた女性がいた。彼女ともすぐに別れることになってしまったが、どうやらこの反乱の関係者のようだ。人間関係や、反乱の意図なども今後クローズアップされていきそうだ。
もう1人大事なキャラクターがチャールズである。プレーヤーの相棒であり、分身とも言える存在。P-3とは憎まれ口を叩く間柄である。ロボットが反乱するこの世界で、AIであるチャールズは何を考えていくのか? P-3はこの"相棒"とどのような関係を育んでいくのだろうか? この関係性も注目していきたいところだ。
冷凍攻撃に重力攻撃、様々な能力を使って生き残れ!
今回の体験会では冒頭以外にもゲームの様々なフィールドと、強化されたスキル、武器を体験できた。チャールズとP-3は成長することで様々なスキルを獲得できる。そして強化された武器と組み合わせることで高い戦闘力を発揮できる。
まずは冷凍能力。チャールズから発射する冷凍攻撃は瞬く間にロボットを凍らせることができる。凍らしたロボットを攻撃することで大ダメージを与えることが可能だ。先に進みたい場合は足止めさせることも可能だが、しばらくするとロボットは氷をぶち破って出てきてしまうので注意が必要だ。
驚異的な能力が重力攻撃。成長させることで複数の敵を浮かせ、地面に叩きつけることができる。警報を鳴らしたりすると複数の敵に囲まれてしまうので、この重力攻撃で一気に倒すのが有効のようだ。
このほか電撃攻撃、や「ポリマー(樹脂)」を発射する能力がある。電撃は敵をしびれさせたり、警報装置の機能を一時的に麻痺させる能力がある。ポリマーは相手に浴びせかけることで動きを鈍くし、さらに属性攻撃を加えることで攻撃の威力を増すことができる。敵の集団にポリマーを浴びせ電撃で集団にダメージを与えるという戦い方も有効だ。ポリマーはシールドとしても活用できる。
武器としては使いやすいアサルトライフル、ロケットランチャーといった武器もある。近接武器も破壊力重視の大きな棍棒から、手数に優れた鉈など様々なものが用意されており、これらをアップグレードして戦っていく。
またフィールドの仕掛けも面白い。電撃を与えることで+と-が逆になり、フィールドのオブジェクトが形を変える仕掛けなどがある。アクション性の高いフィールドや、パズル要素が強い場所などもあって、戦闘だけでなく様々なゲーム要素が楽しめそうである。
「Atomic Heart」はやはりその独特の世界観が魅力だ。レトロSFというか、1950年代のデザインセンスがみなぎるロボットやフィールドは、現実世界とはひと味違うセンスだが、独特のリアリティがある。フィールドも崩壊して本来の機能は失われているが、正常に動いていた時の機能もきちんと考えられていて、説得力がある。世界そのものが大きな魅力だ。
「失われた楽園」というところでは、「バイオショック」や「Fallout」シリーズにも通じる世界観の魅力がある。冬から春にかけて、注目の作品である。
(C)2023 Atomic Heart, the game developed by Mundfish and published by 4Divinity under license of Slimao Limited dba Mundfish. Atomic Heart and Mundfish are registered trademarks of Slimao Limited dba Mundfish. (C) 2022-2023 4Divinity Pte. Ltd. All Rights Reserved. 4Divinity is a company of GCL. All other trademarks and logos belong to their respective owners.