レビュー
「ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション」レビュー
子供の頃、憧れた全てが実現! 今こそやるべき「エグゼ」として復活
2023年4月13日 14:02
- 【ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション】
- ジャンル:データアクションRPG
- 対応プラットフォーム:Nintendo Switch / プレイステーション 4 / PC(Steam)
- 発売日:4月14日
- 価格 パッケージ版:6,589円
- ダウンロード版:5,990円
カプコンは4月14日、かつてブームを巻き起こした伝説的作品「ロックマンエグゼ」のナンバリングタイトル全てを収録したNintendo Switch / プレイステーション 4 / PC(Steam)用データアクションRPG「ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション」の発売を予定している。
本作は様々なプラットフォームで再び「ロックマンエグゼ」シリーズの全てを遊べるだけでなく、当時から現在に至るまで入手があまりに困難だった「イベント限定配布チップ」や「改造カード」などの限定要素を全てゲーム内に収録しながら、全ナンバリングタイトルでのオンライン対戦の実装や「バスターMAXモード」の追加など、本作ならではのオリジナル要素もたっぷり詰め込まれている。まさに、かつてのネットバトラーが夢にまで見た作品となっている。
筆者も丁度「エグゼシリーズ」ジャスト世代の男の子だったので長年リメイクを待ち望んでいたのだが、ここまで完璧な状態で仕上げてくれた事に感動と感謝しかない。トレーラー映像の「いまでも僕らは繋がっている」で涙を流したオジサンは筆者だけじゃないはずだ。
そんな現代に蘇った伝説の作品を今回は一足早くプレイする事ができたので、早速その魅力をレビューしていこう!
最高のバトルシステムと熱いバディストーリーが超魅力!現代っ子達よ……「エグゼ」をやれ!!!
まず初めに「ロックマンエグゼ」がどのような作品だったのかを軽く振り替えろう。「エグゼ」シリーズはそれまでの「ロックマン」系統の作品からすると、システムもストーリーもかなり異色な作品となっている。
舞台はネットワーク社会が進化して電脳世界で人々をサポートする「ネットナビ」の存在が当たり前のように普及している近未来の世界。小学生ネットバトラーである「光熱斗(ひかりねっと)」とそのパートナーナビである「ロックマン」は数々の事件を解決しながら共に成長していき、個性豊かなライバル達や悪のネットワーク犯罪集団達とのバトルを描いた熱いストーリーが展開されるのだ。
現実世界では「熱斗」を操作し、電脳世界では「ロックマン」を操作する事で2つの世界を行き来しながら謎解きやイベント等をクリアしていくゲームシステムは、今振り返っても印象的な世界観とゲーム体験を生み出している。加えて、敵味方問わず「ネットナビ」とそれを駆使する「オペレーター」のキャラクターとその関係性が深く表現される。そのたえキャラクター人気も非常に高く、子供だけでなく大人の心まで余裕で惹きつけるような完成度の高いRPG作品なのだ。
バトルシステムも従来の「ロックマン」作品に多かった横スクロールアクションではない。敵との戦闘はコマンドRPGのようなエンカウント式となっており、3×9マスという限られたエリアの中で「ロックマン」を操作しながらバトルアクションを行なっていく。プレーヤーも敵もリアルタイムに行動できるので、ジャンルは今で言うところのリアルタイムストラテジー(RTS)に近いかもしれない。
対戦中は、敵として出てくる様々な「ウイルス」や「ネットナビ」達の攻撃を躱しながら、直線方向に弾を撃つ基本攻撃「ロックバスター」等でダメージを与えていく事もできるのだが、本作において最も重要になる要素が「バトルチップ」だ。
「バトルチップ」は、バトル中に「熱斗」が「ロックマン」に送っている武器のような物で、カードゲームのデッキのように特定のルールに基づいて全30枚で構築する。近距離で攻撃する「ソード」や遠距離攻撃ができる「キャノン」といったような攻撃系のチップから、体力を回復できる「リカバリー」系のチップ、相手のエリア1列を自分のエリアに変える「エリアスチール」のようなサポート効果を持つチップなど、非常に多岐に渡る効果を持っている。
単純な性能からどう使って良いか分からないチップまで本当に数多のチップが存在するため、「どのように組み合わせて使えば良いのか?」「どのような相手に有効なのか?」等を考えるのがどこまで行っても面白い。そして、自分の戦術通りにバトルチップを駆使できた時の爽快感が最高だ。
バトルチップの掛け合わせによって無限と思えるほどの戦略とコンボが生まれてくるし、さらには中々手に入らないレアチップ等も存在する事からコレクション欲も刺激される。「エグゼ」シリーズでは、独自の”カードゲーム”と”アクションゲーム”が良い感じに合体したようなゲームデザインが体現されているのだ。
ゲームを進めると、「ロックマン」に様々なステータス上昇効果や特殊な能力を付与できる「ナビカスタマイザー」や「改造カード」の存在など、「ロックマン」を自己流にカスタマイズできる様々な機能が開放されていき、バトルはさらに奥深くなっていく。
さらに「ロックマン」の見た目や戦い方をガラッと変えてしまうような「スタイルチェンジ」「ソウルユニゾン」「獣化(ビーストアウト)」など、各ナンバリングタイトルにはそれぞれを代表する追加のバトル要素が用意されている事で、どのタイトルをプレイしても新しい体験が待ち受けているのも「エグゼ」シリーズの素晴らしい所だ。
つまりは、ここで紹介しきれていない様々な要素を全てひっくるめた上で、自分流の「ロックマン」の戦い方を開拓していく自由度と戦略性の高さが「エグゼ」シリーズ全体の魅力となっている。この完成度の高い名シリーズが、すでにGBA(ゲームボーイアドバンス)の時代にあったという事実は、今考えてもすごいことだと思う……。
子供の頃に憧れた全てが実現!「アドバンスドコレクション」ならではの要素とは?
このまま永遠に「エグゼ」シリーズの良さを語っても良いのだが、今回は「アドバンスドコレクション」のレビュー記事なので、そろそろ本作ならではの要素について触れていこう。
今作は「Vol.1」と「Vol.2」に分かれており、それぞれ「Vol.1」には「ロックマンエグゼ1~3」が、「Vol.2」には「ロックマンエグゼ4~6」が収録されている。丁度、バトルシステムやゲームの雰囲気が少し変わったタイミングを節目として「Vol.」を分けた形と言える。
両タイトルともバージョン違いが存在するナンバリングに関しては両方とも収録されているため、好きなバージョンで遊ぶことが可能であり、同じ「Vol.」内であればゲーム間の移動もパッと行えるため気分に応じて様々な「エグゼ」を遊びつくす事が可能なのだ。
追加要素でまず何と言っても外せないのは、オンライン対戦の実装だ。この時をどれほど全国のネットバトラーたちが待ち望んでいた事か!!!
エグゼシリーズは、上記で語った通り戦闘システムがかなり奥深く、チップやシステムが異なるナンバリングごとに戦略性も変わるため、プレーヤー同士の対人戦も当然超面白いのだが、オリジナルのGBA版が発売されていたころは通信ケーブルがないとそれらの要素を遊ぶことができなかったし、見知らぬ誰かとバトルするなんて事は大会やイベントに出ている“ガチ勢”にしかできないことだった。
その為当時小学生だったプレーヤーは、通信要素をほとんど行わずに「エグゼ」を遊んでいたと言っても過言ではない(むしろ、通信要素がなくてもガッツリハマれたプレーヤーが大量にいたとも言える。それほど画期的な作品だったのだ)。
さらに言えば後に「DS」で発売された「ロックマンエグゼ5DS ツインリーダーズ」や「ロックマン エグゼ オペレート シューティングスター」、Wii Uにて発売されたVC版(バーチャルコンソール版)でもオンラインでの通信機能は特になかったため、本作は本当に“史上初”の「エグゼ」シリーズでオンライン対戦が可能なソフトとなる。
しかもそれが全ナンバリングタイトルでできるとなったら、(少なくとも筆者は)もう大騒ぎである。オンライン対戦ではランク昇格を目指して真剣勝負を繰り広げられる「ランクマッチ」と、ランク変動がなく気軽にネットバトルを楽しめる「カジュアルマッチ」の2つが用意されているため遊び方に合わせて楽しむことができる。
さらに対戦ルームを作って友人などの特定の相手とバトルする「プライベート」マッチも用意されていたりなど、今作はオンライン対戦周りの整備にしっかり力が入れられている。ナンバリングによっては「改造カード」の有無を選択できるなどのルールの設定もしっかり行えるので、「エグゼ」のオンライン対戦を楽しむゲームソフトとして最適な完成度になっている。
「改造カード」がいきなりすべて使えてしまう!
そんな「エグゼ」シリーズの対人戦において重要となるのが「改造カード」の存在だ。「改造カード」は、当時はリアルなカードとして購入や配布がされていたもので、「カードeリーダー」という機械を使ってスキャンしてゲーム内に取り込んでいた。すると、通常プレイではあり得ないような性能でロックマンを強化する事ができるという、画期的なシステムだった。
だが、「カードeリーダー」自体がそもそもレアなアイテムであり、当時そこまでしっかり手を出せていたプレーヤーの方が少なかった。現在では入手難易度がかなり高く、よほどの「エグゼ」ガチ勢でもない限り、ほとんどの人が体験した事のない要素ではないだろうか。
それでいて、対人戦環境においては「改造カード」の有無で全く別ゲーになるくらいに「ロックマン」の強さが変わるため、使いが非常に難しい要素だったのだ。
しかし今回の「アドバンスドコレクション」では、全ての「改造カード」が序盤から使用可能となっている。カスタマイズし放題である一方で、「改造カード」が存在するナンバリングでは対人戦での使用の有無を選択できる。パワーバランスの崩れたマッチングが起こる事がないよう、しっかり配慮されている。
なお通常のストーリー攻略でも「改造カード」を使用する事で、チャージショットの性能を変更したりロックマンのカラーを変更したりなどの面白いプレイが可能となっているため、昔はお金がなくてできなかった「改造カード」を用いた「エグゼ」を今作ではフルに楽しむことができる。
今回のプレイでは、試しに常に特定の「ソウルユニゾン」状態を維持できるカードや、チャージショットを「ミニボム」にしたりして遊んでみたのだが、今まで何回も遊んできた「エグゼ」シリーズなのに全く新鮮な感覚でゲームをプレイする事ができた。
たとえプレイ済みであっても、この「改造カード」はゲーム体験をガラッと変化させてくれる。非常に良い追加要素だった事を、約15年ぶりに実感する事になるとは。「改造カード」込みの対人戦環境は、筆者は「エグゼ6」でギリギリかじっていたレベルなので、「エグゼ4」や「エグゼ5」だと一体どのような対戦環境になってしまうのか、今からワクワクが止まらない。
ほぼ幻だった「フォルテクロスロックマン」がついにこの手に
そして全ての改造カードが使用できるという事は……劇場版限定配布カードもバッチリ入っている。つまり、あの「フォルテクロスロックマン」も「エグゼ5」でバッチリ使用可能なのだ! これは本当に凄い! 正直筆者的にはこれが一番テンションが上がった。
「フォルテクロスロックマン」は、映画「劇場版ロックマンエグゼ 光と闇の遺産」の来場者特典として配布された改造カード。改造カードが手元にあってもカードeリーダーがないなど、その強さは聞いていても実際には「当時使えなかった」という人も多いかと思う。
「フォルテクロスロックマン」は後続で出たDS版「エグゼ5」の「ツインリーダーズ」でも条件クリアで使用可能だったが、その条件があまりにも厳しかった。そのため、多くのネットバトラーにとって「幻」クラスの存在だったのだが、それが本作では真っ先に使えてしまう!
当然ストーリー序盤でも使用可能なため、その強さを存分に発揮してストーリーをフルで楽しむことも可能だ。
加えて本作では「改造カード」だけでなく、当時のイベントや映画特典等の限定で配布されていたチップ等も全て入手可能となっている。なぜか友達のフォルダには入っていた「フォルテ」や「ダブルビースト」などの超レアチップをついにその手にする時が来たのだ……!
しかも入手方法は改造カードと同じくいつでも可能なため、最初から超強力なチップをフォルダに入れて、(本編の)ゲームバランスを崩壊させる事も可能となっている。中には対人戦で必須と言われるようなチップもあるので、これで完璧にフェアな条件でのオンライン対戦が可能になったと言える。
子供の頃に攻略本等で存在だけ明らかになっていて触れることはできなかった全ての限定要素を、本作では存分に楽しむことができるのだ。
破壊力抜群「バスターMAXモード」はかなり実用的
本作独自のシステムとして誰もが驚愕したのが「バスターMAXモード」の存在だろう。これは”ロックバスター1発の威力を100”にするという、基本攻撃で全敵をなぎ倒せるようになる中々にぶっ飛んだモード。全ナンバリングで使用可能かつ探索中だろうがバトル中だろうがお構いなくいつでもどこでも設定が可能となっている。
シリーズの中にはかなり難易度の高いナンバリングも存在するため、どうしても倒せないボスが現れた時やHPがギリギリになってしまった際の緊急処置として使用する事もできるし、「すぐにでも対人戦を始めたい」と思っているプレーヤーなら、最初からこのモードを活用してストーリーをサクサク進める事も可能なため、内容だけ見ればぶっ飛んでいるようで、多くのプレーヤーにとってはかなりありがたい実用的なモードだったりする。
筆者がプレイしていてこのモードが適してそうだなと感じたポイントを挙げると、まず何度も周回する事を前提としながらもチップの威力がシリーズの中でも全体的に低い「エグゼ4」は、ストーリーをクリアして対人環境を整えるまでに相当時間が掛かってしまう。そのためサクッとクリアするために、このモードを使うのはかなり有効なように感じる。
他にも「エグゼ2」「エグゼ3」独自のシステムである「スタイルチェンジ」を行うには最低100回のバトルが必要になるため、それを高速で終わらせるためにこのモードを使用するのも全然ありだろう。
無論このモードを一切使用せずに、オリジナル版の難易度をしっかり味わいながら遊ぶことも可能だし、対人戦では当然使用する事はできないので安心して欲しい。あくまでプレーヤーの遊び方を拡張するお助け機能という存在なのがありがたい所だ。
ちなみに筆者的には、この「バスターMAXモード」をさらに活かしまくるプレイ方法も面白いのではと考えている。というのも、「バスターMAXモード」はプレイした感じだと”ロックバスターの単発威力を100にする”のではなく、”100倍にする”感じだったので、ロックバスターの強化に応じてしっかり威力が上がっていくのだ。
簡単な例を出すと、「ナビカスタマイザー」で「アタック+1」を着けたりバトルチップの「バスターアップ」を使うと本来のバスターの威力が2になるため、「バスターMAXモード」だと威力が200になるといった具合だ。これを利用する事で、各ナンバリング毎に色々と面白い事が可能となっている。
実際にやってみた内容を言うと、「エグゼ2」「エグゼ3」独自のシステムである「スタイルチェンジ」の中でもロックバスターの威力を倍にしつつ高速で連射可能な「ガッツスタイル」と組み合わせる事で、一瞬でとんでもない火力を叩きだす事が可能となっている。
バスターの攻撃力を上げれ、ば基本どんなボスナビでも秒殺が可能だったレベルだ。他にも「エグゼ5」であれば「改造カード」で使用可能な「フォルテクロス」と併用する事で、縦3列を同時にロックバスターで攻撃する「トリプルバスター」の効果が合わさり、バトル中はロックバスターを打ってるだけで相手がどこに居ても全員のHPが爆速でゴリゴリ削られていく最強戦術を行う事ができたりもする。
ロックバスターを強化する効果がそのまま化け物火力に繋がる為、色々と遊びがいのある要素だと言えるだろう。色々と試行錯誤しながら、こういったことを考えていくのが「エグゼ」ならではの楽しさだ。ぜひ色々な遊び方を模索してみて欲しい。
「L」ボタンの「ロックマンとの会話」に思わず泣く
あとは何と言っても本作には「ロックマンエグゼ」ファンを喜ばせる要素がたっぷり収録されている事にも注目したい。各ナンバリングタイトルの様々なアートやゲーム内BGMを全て「ギャラリーモード」で閲覧する事ができたり、実績に応じて解除されるトロフィーを確認する事が可能だ。当時のイベントやHPに掲載されていたイラスト等も見ることが可能なため、資料としてもバリバリに貴重な内容となっている。
ただ、それ以上に筆者が嬉しかったのが、タイトル画面で「ロックマン」がこちらに話しかけてくれることだ。起動する時間や選択するモードによって反応もしてくれる事から、かなり多くの会話を楽しむことが可能となっている。
何よりもロックマンに呼びかけるのが今でも「L」ボタンだった事に謎のエモさと感動を感じて涙してしまった。幼き時代に何度もボス戦などに詰んでしまい、「L」ボタンでロックマンや熱斗にヒントを聞きまくってた記憶が一気にフラッシュバックしてしまったのだ。同じようなオタクが絶対に存在すると筆者は思っているので、是非タイトル画面でロックマンに話しかけまくって欲しい。
ゲーム全体を通して、正に「ロックマンエグゼ」オタク全員が妄想していた「こんなゲームがあったら良いのになぁ……」を全て実現してくれた作品だった。
元々オリジナルのゲームの完成度がとんでもなく高い作品だったため、下手な追加要素を入れるのではなく、この世に存在していた全ての限定要素をフルで遊ばせようという方針はファンの心をしっかり分かってるなと思わざるを得ない。
今回改めて「ロックマンエグゼ」シリーズをプレイして感じたが、時代が進んでも「エグゼ」シリーズの代替品は存在しないし、このゲームでなければ満たされない面白さが間違いなく存在している。
加えて発売後はオンライン対戦の解禁で今までの「エグゼ」シリーズにはなかった対人戦を中心とした新しい世界が解放されることも予測されるため、今後の動きも非常に楽しみなタイトルである。
ぜひ現代を生きる子供にもこの伝説のゲームをプレイして欲しいし、かつて子供だったプレーヤーにも本作を機会にネットバトラーに戻ってきてほしい。その価値がこの作品には確実にあると筆者は強く確信している。
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