レビュー

「キャノンダンサー」レビュー

「ストライダー飛竜」の影響も受けるスタイリッシュなアクションゲームが27年ぶりにまさかの復活!

【キャノンダンサー】

発売元:ININ Games

開発元:ININ Games

ジャンル:アクション

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch

発売日:4月13日

価格:
4,378円(通常版)
7,678円(スペシャルパック)

 1996年にミッチェルが発売したアーケード用アクションゲームが、実に27年の時を経てドイツのパブリッシャーININ Gamesの手によってまさかのプレイステーション 5やXbox Series X|S、Nintendo Switchをはじめとする家庭用ゲーム機への移植が実現した。あくまで筆者の個人的な印象だが、元祖アーケード版は発売直後から都心のゲームセンターでもあまり見掛けた記憶がなく、当時から知る人ぞ知るカルト的な作品であり、令和の時代に本作が再び遊べる機会が恵まれるとは驚き以外の何物でもない。

 もう随分昔のことなので詳細は忘れてしまったが、近未来のサイバーな世界を舞台に戦う主人公の戦士、麒麟(キリン)をはじめとする登場キャラクターのデザインがとてもカッコよく、現代風に言えばスタイリッシュで、上下左右にマップがめまぐるしく切り替わってスピード感のあるゲームだな、というのが筆者の第一印象であった。また、筆者が最初に本作を見たロケテスト版と製品版とでは、内容が大幅に変更されていたので驚いたことも記憶している。

 以下、27年前のかすかな記憶をたどりつつ、本作のファーストインプレッションをまとめてみた。なお、本稿の執筆にはNintendo Switch版を使用している。

【キャノンダンサー - 紹介動画】
「キャノンダンサー」:ストーリー

 「キャノンダンサー」は、21世紀後半の退廃的な近未来、連邦政府が支配する時代を舞台としたアクションゲーム。ある日、世界を征服しようと企む悪女、スレイヴァーが突如現われ、人々を混乱と恐怖に陥れた。恐怖は経済活動の放棄や政府の腐敗を煽り、さらには社会そのものの基盤を崩してしまう。最悪の事態を恐れた連邦法務長官を務めるジャック・レイソンは、1人の刺客を呼び寄せる……

 プレーヤーが操るのは、並外れた身体能力と徒手空拳を繰り出す『狄(テキ)』の戦士であるキャノンダンサー、麒麟だ。麒麟はスレイヴァーや連邦政府のみならず、個人的な理由から麒麟の息の根を止めようと画策する同胞であるほかの『狄』の戦士たちとも対峙する……!
※公式サイトより引用

【「キャノンダンサー」ゲーム画面】
27年の時を経て、まさかの移植が実現。プレイ中の画面表示は、昔のブラウン管モニターと同じ4:3になっている

多彩かつ高速の連続攻撃を繰り出せるのが魅力

 本作は全6ステージで、制限時間内に各ステージの最後に出現するボスを倒せばクリアとなる。麒麟の操作は、左スティックまたは十字ボタンで移動、Aボタンでキックなどを繰り出しての攻撃、Bボタンを押すとジャンプし、Xボタンを押すと強力な連続攻撃「大殺陣(フェイタルアタック)」を放つ。「大殺陣」は、画面左下に表示されている「S」マークのストック数(ゲーム開始時に3個保持している)だけ使用可能だ。

 麒麟が敵の攻撃を受けたり、障害物に触れたりするとライフが減り、ライフがゼロになるとミスになる。加えて、麒麟のストックがゼロになった場合はゲームオーバーとなる。ジャンプ中にスティックを天井や狭い足場がある方向に入力したままにすると、手で天井などにつかまってぶら下げることもできる。

 各ステージに点在する「P」と描かれたポッドを破壊するとアイテムが出現する。アイテムは全4種類で、赤色のアイテムを取ると麒麟の分身が出現して攻撃力が増し、緑色を取るとライフが1個回復、黄色を取ると体力の最大値が1個増える効果があり、青色を取るとライフが全回復する。分身は最大4体まで増え、敵に触れても消えないが麒麟がダメージを受けると1体減ってしまう。分身が4人いる状態で赤色のアイテムを取ると攻撃力がさらにアップするが、一定の攻撃回数(おそらく20回)を発動させると攻撃力が元に戻る。

 まず注目したいポイントは、ボタンを連打することで麒麟が高速で連続攻撃を繰り出せるところ。空中でも華麗な回転キックなどを駆使して連続攻撃ができるので、適当にボタンを連打するだけでも気持ちがいい。連続で技を出している最中にスティックを左右に小刻みに振ると、通常よりも攻撃力がアップするのも本作ならではの面白いところだ。

【麒麟の基本アクションとパワーアップ】
地上、空中を問わず、ボタン連打でキックなどの攻撃を連続で繰り出せる
分身した麒麟が次々とキックを放つ「大殺陣」。使用回数に制限があるが、対ボス戦で絶大な効果を発揮する
宙に浮くポッドを破壊するとアイテムが出現
赤色のアイテムを取ると、麒麟の分身が出現して攻撃力が倍増する
攻撃力を最大までアップさせたところ。派手なエフェクトが表示されて快感がさらに増す
左右に小刻みに動きながら攻撃を繰り出すと、さらに攻撃力がアップする
天井などにぶら下がりながら、左右に移動することも可能だ

 スティックを下に入力して、麒麟がしゃがんだ状態のままBボタンを押すと、前方に向かってスライディングを繰り出し、スライディング中に左右に入力するとダッシュすることができる。スライディングに攻撃判定はないが、Aボタンを押すとキックを放ち、敵に重なった瞬間にBボタンを押すと敵をつかみ、スティックを入力した方向に敵を投げ飛ばしてダメージを与えることができるのも、本作ならではの特徴のひとつだ。ジャンプ中にBボタンを押すことでも投げ技の「鰐掛け」を繰り出すことが可能で、投げた敵をほかの敵にぶつけてダメージを与えることもできる。

 操作面で唯一気になったのは、スライディングする直前にしゃがんだ勢いでスティックまたは十字キーがナナメ下に入り、左右の向きが入れ替わってしまう頻度がやや高いこと。ただ、これはプログラムの不備ではなくJoy-Conの構造上、慌ててしゃがもうとするとついついナナメに入力しがちになるのが原因だろう。どうしてもナナメ入力の「暴発」が気になる場合は、アーケードコントローラーやプロコンなどを使うといいだろう。

 敵弾を潜りながらスライディングキックで敵を倒したり、一部のボスなど大型の敵には通じないものの、つかんだ敵を豪快に投げ飛ばしたりするのもこれまた快感だ。ただし、いずれも技のモーションが終了した瞬間にスキが生じやすい感があるので、周囲に敵や敵弾がない場所に着地点を調整できるよう練習しておきたい。

【スライディングと投げ技】
スライディングには、障害物や敵弾をかわしながら前方に移動できるメリットがある
スライディングして敵に重なったタイミングでBボタンを押すと、敵をつかんで投げることができる。投げた敵を別の敵に当ててダメージを与えることも可能だ
ジャンプして空中で敵に重なった瞬間にBボタンを押すことでも投げ技「鰐掛け」が繰り出せる

初心者向けのサポート機能も充実

 本作ではゲーム開始時に、「スタンダード」と「チャレンジ」のいずれかを選んでからプレイする。元祖アーケード版には存在しなかった方式だ。

 「スタンダード」モードでは、プレイ中にいつでもデータをセーブできる「セーブステート」、セーブした地点から再開できる「ロード」、直前の任意の場面に巻き戻して再開できる「リワインド」の各機能が何度でも使用可能で、さらにオプションメニューで「エンハンスト(強化)」と「チート」の各便利機能を自由に設定することができる。

 「エンハンスト」は「二段ジャンプ」、「無敵ジャンプ」、「無敵スライド(スライディング中に無敵状態になる)」、「無敵アタック(技を出している間は無敵)」、「オートアタック(0~5まで全6段階。0はマニュアルで、数字が大きいほど高速になる連続攻撃をボタンを押しっ放しで繰り出せる)」の全5種類の機能が用意されている。

 「チート」は「無敵」、「時間を止める」、「無制限フェイタルアタック」、「HP無制限」、「フルパワー(最初から麒麟が最強状態で、ダメージを受けてもパワーダウンしない)」の全5種類。これさえあれば、誰でもエンディングに行けると言っても過言ではないであろう、いずれも“超”が付く親切機能だ。

 一方の「チャレンジ」モードは、ステージ構成は変わらないが「セーブステート」、「ロード」、「リワインド」、「チート」は一切使用できず、「エンハンスト」の各機能は最大2種類までしか設定することができない、上級者向けのゲームモードだ。プレイ中に特定の条件を満たすと「アチーブメント」が入手できるので、腕に自信のあるプレーヤーはぜひこちらにチャレンジしていただきたい。

 本作を初めて遊ぶプレーヤーは、当然ながら慣れないうちは「スタンダード」を選択し、「エンハンスト」ですべての機能をONにし「オートアタック」は最高速の「5」に設定したうえでプレイすることをおすすめする。「チャレンジ」モードで遊ぶときは、「エンハンスト」の設定を麒麟のスキが激減する「無敵アタック」と「無敵ジャンプ」の組み合わせにするといいだろう。

【家庭用オリジナルの便利機能】
「スタンダード」モードでは、任意のタイミングでプレーデータのセーブ・ロードが可能
「リワインド」を使えば、うっかりミスもあっという間に帳消しにできる
麒麟を劇的に強化することができる「エンハンスト」機能。写真のように「無敵ジャンプ」と「無敵アタック」を併用するとほとんどスキがなくなる
「チャレンジ」モードで設定できる「エンハンスト」は2種類に制限され、本モードのみクレジットが増える「4エキストラクレジット」と「8エキストラクレジット」の項目が選択可能になる
「無敵」など全5種類の「チート」機能も搭載。かつてゲーセンで惨敗を喫したプレーヤーも、これさえあれば怖いものナシだ

 上記のゲームモードと便利機能に加え、本作では英語、ドイツ語など日本語以外の言語設定も可能で、さらには海外版にあたる「Osman」も遊ぶことができる。また「オプションメニュー」にある「コントロール設定」では、各種操作ボタンの割り当ての変更ができるほか、空中で天井やフックなどを自動でつかめるようになる「オートグラブ」も設定することができる。

 「ビデオ設定」メニューでは、画面の表示サイズを切り替えて「4:3」または「全画面」に変更できるほか、壁紙の有無、スケールフィルター(「鮮明」または「なし」)、およびシェーダースタイル(画面の四隅を歪ませるなど、ブラウン管モニターの表示を擬似的に再現できる)の詳細な設定ができる。初心者あるいはアクションゲームが苦手なプレーヤーは、ここで「オートグラブ」をあらかじめ設定しておくといいだろう。

【オプション機能】
ソフトを起動すると、最初に言語設定が表示される
「Osman」を選択すると海外版が起動する
「コントロール設定」メニューで「オートグラブ」を設定しておくのがオススメ
「シェーダースタイル」を設定すると、かつてアーケード用筐体に使用されていた、懐かしのブラウン管画面を再現して遊ぶことができる

スピーディな展開を演出する、変化に富んだステージ構成

 本作は、いわゆる「ベルトスクロール」と呼ばれるアクションゲームのように左から右へとひたすら横に進むだけでなく、上下あるいはナナメに移動する場面もひんぱんに出現し、戦いの舞台が目まぐるしく変化することでスピード感を演出しているのが一番の見どころだ。

 2面で麒麟が敵に追われながら坂道を駆け降りるシーンをはじめ、天井にぶら下がりながら地形の崩落をかわしたり、ジャンプ台の役割を果たす菱形のギミック「クリスタル」を利用して麒麟が空高く連続ジャンプ、あるいは画面内をグルグル回転したりする場面が登場するなど、ステージごとにさまざまな要素が用意されている。「次のシーンでは、どんな敵や仕掛けが登場するのかな?」というワクワク感に満ちたステージ構成は、今遊んでもまったく色あせていない。

 各ステージのあちこちに配置されたポッドの場所と、アイテムの取り方を覚えることも攻略上の大きなポイントだ。前述した2面の坂道で敵を振り切るシーンでは、タイミングよくジャンプすると青色のアイテムが手に入るほか、「クリスタル」の反動を利用しないと届かない場所にもポッドがしばしば置かれているので、敵や敵弾にばかり目を奪われてうっかり見落とさないようにしたい。

【本作の見どころ】
2面の中盤より。背後に迫る敵を振り切り、麒麟が決死のダイブ!
ジャンプが遅れると画面外に落ちてミスになるが、タイミングがバッチリ合うとライフが全回復する青色のアイテムが取れる
こちらは3面。狭い足場で、波に上下に揺られながら敵との戦いを強いられる
「クリスタル」を利用して上空に飛び上がると、思わぬ所でポッドが見付かることもある
対ボス戦の演出、およびキャラデザインのカッコよさにもぜひご注目を!

難易度は高いが見どころ満載の爽快アクション、ぜひお試しあれ!

 約27年ぶりに本作を遊んでみたが、難易度はやや高めというのが率直な印象。得点などによるエクステンド(1UP)や「大殺陣」のストックが増えるシステムがなく、麒麟がダメージを受けた直後の無敵時間が短いため、すぐに態勢を立て直さないと連続でミスをしやすいことなどが主な理由だ。また最終面のボス戦などの場面では、1度ミスをするとその場でリスタートせず、特定の場所に戻される場合があるのもつらいところだ。

 だが、近未来のサイバーな世界観を描いたグラフィックスは今の目で見ても実にカッコよく、まるで自分が特撮番組のヒーローになったかのような気分で、高速攻撃で敵を蹴散らす爽快感の高さは、難易度の高さを補って余りある程の魅力がある。筆者は元祖アーケード版をそれ程やり込んでいないので記憶があいまいではあるが、移植再現度も非常に高いように思える。

 繰り返しになるが、本作をプレイした経験がない、あるいはアクションゲームが苦手な人は、慣れるまでは「オートグラブ」をはじめ「リワインド」や「エンハンスト」などの各種機能を迷わず利用して、自分で一番遊びやすい設定を見付けたうえで全6ステージクリアにチャレンジしていただきたい。昨今、インディー界隈も含めて数多くリリースされている、いわゆる「メトロイドヴァニア」と呼ばれる作品ではあまり体験できないであろう、本作ならではのスピード感にきっと魅了されることだろう。ネタバレになるので詳細は控えるが、クライマックスの場面では意外な展開が待ち受けているので、こちらも必見だ。

 ここで余談をひとつ。本作独特の演出は、発売当時にプレーヤー間で「『ストライダー飛竜』っぽいよね」と評判になった。「ストライダー飛竜」とは、1989年にカプコンが発売したアーケード用アクションゲームのことで、実は本作の開発には元カプコンで「ストライダー飛竜」の開発者でもあった四井浩一氏が参加しているのだ。なので「ストライダー飛竜」を知るプレーヤーは、本作と比較しつつプレイするのもまた一興だろう。

 かつて、ゲームセンターで遊びたくても地元の店には入荷されずに遊べなかった、あるいは全面クリアを目指していたのに達成できなかったプレーヤーにとっては、またとない絶好のリベンジのチャンスだ。この機会にぜひプレイしていただきたい。

「ストライダー飛竜」(画像は「メガドライブミニ アジアエディション」収録のもの)