「ハースストーン 灰に舞う降魔の狩人」レビュー
ハースストーン 灰に舞う降魔の狩人
強すぎた新クラス「デーモンハンター」も最速ナーフで好環境、今がまさに始め時!
- ジャンル:
- デジタルカードゲーム
- 発売元:
- Blizzard Entertainment
- 開発元:
- Blizzard Entertainment
- プラットフォーム:
- Windows PC
- iPhone/iPod touch
- Android
- 価格:
- 無料(アイテム課金制)
- 発売日:
- 2020年4月8日
2020年4月11日 10:05
Blizzard Enterteinmentのデジタルカードゲーム「ハースストーン」の最新拡張版「灰に舞う降魔の狩人」が日本時間の4月8日にリリースされた。
「灰に舞う降魔の狩人」については、「Hearthstone Summit 2020」レポートや、先行プレイレポートなどでも取り上げているが、新しい年度である「フェニックス年」の幕開けとなる拡張版であり、さまざまな点が強化、改善されている。リリース後まだ2日しか経っていないが、どこが変わり、どのカードが強いのか、レビューしていきたい。
わずか1日で4枚のカードがナーフされたデーモンハンターの強さ
「灰に舞う降魔の狩人」の最大の特徴となるのが、2014年3月11日の「ハースストーン」のサービス開始以来、はじめてとなる新クラスの追加だ。
新クラスは「デーモンハンター」であり、そのヒーローが「イリダン・ストームレイジ」だ。イリダン・ストームレイジは、ドルイドのヒーローであるマルフュリオン・ストームレイジの双子の弟であり、中立のレジェンド・ミニオンカードとして、すでに「ハースストーン」に登場していたのだが、フェニックス年の開始とともに、新クラスのヒーローとして、再度登場した。これまでのクラスのヒーローは、すべてヒーローパワーを使うのに2マナが必要であったが、デーモンハンターは、ヒーローパワーを1マナで使える。また、デーモンハンターだけの能力として、手札の右端と左端からカードを使うことで、追加効果を得る「異端」キーワードがある。
ただ、このデーモンハンター、「ハースストーン」ファンの待望の新クラスであり、開発陣も「是非使って欲しい」と語っていたのだが、いかんせん強すぎた。ランキング上位をデーモンハンターが席巻し、勝率70%を超えるデーモンハンターデッキがいくつも誕生することになった。このままでは、環境の多様性が失われてしまい、プレーヤーが離れていってしまうことになる。そう判断したBlizzardの対処は素早かった。リリース開始からわずか1日後の4月9日に、デーモンハンター専用カード4枚(「グルダンの髑髏」、「封印されしアンタイン」、「魔眼光」、「アルドラキ・ウォーブレード」)のバランス調整(ナーフ)を行うことを発表し、同日中にバランス調整が行なわれた。そのナーフについては、こちらのニュース記事を参照いただきたい。
当初は、コレクション内のカード画像は修正されず、手札にあるときだけ、修正されたマナが赤色で表示されていたが、4月10日に、正式にカードのバランス調整が行なわれたことが表示され、コレクション内のカード画像も修正された。
ソロ・アドベンチャー「序章」をクリアすることでデーモンハンターが使える
さて、このデーモンハンターだが、「ハースストーン」プレーヤー全員が無料で使えるようになっている。「激闘!ドラゴン大決戦」のときのガラクロンドもそうだが、パックやバンドルなどを買ったりせずとも、その弾の目玉コンテンツを全員が使えるというのは、非常に良心的な運営だといえる。
デーモンハンターのヒーローであるイリダン・ストームレイジは、もともとは双子の兄のマルフュリオン・ストームレイジと同じドルイドだったのだが、1万年以上前にデーモンの誘いに乗り、デーモンハンターへと身をやつすことになったのだ。このイリダン・ストームレイジがデーモンハンターになった経緯を追体験できるソロ・アドベンチャーが、4月3日に無料で追加された「序章」である。
序章は全部で4つのミッションから構成されており、固定デッキで敵と戦っていく。このミッションをクリアすることで、プレーヤーはイリダン・ストームレイジの物語を知り、同時にデーモンハンター特有の「異端」などの新メカニズムを理解することができるようになっている。
「序章」の4ミッションをクリアすることで、以下の報酬が無料でもらえる。
・新クラス「デーモンハンター」の開放
・新ヒーロー「イリダン・ストームレイジ」
・デーモンハンター用基本カード全10種類
デーモンハンターはやっぱり強い
筆者は、4月8日の「灰に舞う降魔の狩人」のリリース直後、メガバンドルで購入した90パックとゴールドで買った10パックを開封して、デーモンハンターデッキを作成し、ランク戦でしばらく戦ってみたが、やはりデーモンハンターは強いと感じた。ナーフ前、デーモンハンター専用カードで強いと思ったのが、「グルダンの髑髏」、「封印されしアンタイン」、「魔眼光」、「アルドラキ・ウォーブレード」、「ケイン・サンフューリー」、「憤怒のプリーステス」の6枚だが、デーモンハンターデッキの多くが、これらのカードを採用していた。この6枚のうち、「グルダンの髑髏」、「封印されしアンタイン」、「魔眼光」、「アルドラキ・ウォーブレード」の4枚が前述したように、わずか1日でナーフされたわけだが、それでもデーモンハンターデッキは依然としてTier1に位置している。
ナーフされたといえ、「グルダンの髑髏」を異端で使って、強いミニオンのコストを3軽減して出す動きや、封印が解けると合計10ダメージをランダムで相手に飛ばす「封印されしアンタイン」はやはり強い。異端で使うと無敵を獲得する「イリダン党のフェルブレード」もここぞというときに便利だ。また、こちらのすべての攻撃が、相手の挑発を無視できるようになる「ケイン・サンフューリー」は、ある意味でルールブレイカーともいえ、中盤から終盤の膠着状態を一気に崩すことができる強いカードだ。
デーモンハンターは、自らが相手ヒーローやミニオンを積極的に攻撃していくタイプのヒーローであり、自身に攻撃力+1を付加する1マナのヒーローパワーとも噛み合っている。そのため、ヒーローの体力は減りがちだが、それを補うのが、「アルドラキ・ウォーブレード」や「魔眼光」といった生命奪取持ちの武器や呪文だ。
また、ヒーローが攻撃すると攻撃力+1を獲得する「バトルフィーンド」のように、ヒーローの攻撃で強化されるミニオンも多く、シナジーを形成するが、ヒーローの攻撃とカードを使う順番が重要になる。例えば、バトルフィーンドは場にいる状態でヒーローが攻撃すると攻撃力が+1されるので、先にバトルフィーンドを出してから、ヒーローが攻撃するようにすればよいのだが、「怒れるフェルフィン」では雄叫びとして「このターンにヒーローが攻撃していた場合、攻撃力+1と急襲を獲得する。」を持っているため、先にヒーローが攻撃する必要がある(先にカードを出してしまうと、その後にヒーローが攻撃しても攻撃力+1は得られない)。
このように、デーモンハンターはカードパワーも高いが、カードを使う順番がこれまでにも増して重要になる。プレイを重ねることで、さらに強さを引きだせるようになりそうだ。また、闘技場でもやはりデーモンハンターは強い。デーモンハンターが3つのヒーロー候補に出てきたら、デーモンハンターを選ぶのがお勧めだ。
2ターン休眠後、目覚めて効果をもたらす「封印」ミニオン
新拡張版で、新たに加わったメカニズムの「封印」も強かった。「封印」ミニオンのカード名は、必ず「封印されし○○」のようになる。「封印」ミニオンは、場に出てから2ターンの間は休眠状態となり、攻撃や呪文などの対象にならないが、2ターン後目覚めた時に強力な効果をもたらす。「灰に舞う降魔の狩人」では、ローグとシャーマンを除く各クラスに1種類ずつと中立に1種類で合計9種類の「封印」ミニオンが追加されているが、その中でも強いと感じたのが、デーモンハンターの「封印されしアンタイン」とメイジの「封印されし監視者」だ。前者は目覚めた時に、ランダムで合計10ダメージを相手に飛ばし、後者は目覚めた時に、敵のミニオンすべてに2ダメージを飛ばす。
レジェンドの「転生」ミニオンも強力
また、新たに加わった「転生」ミニオンも強力だ。「転生」持ちのミニオンは、盤面で死亡すると、断末魔の能力でその転生後バージョンがデッキの中に加わる。最初から転生後のカードをデッキに入れることはできないので、出すまでに一手間かかるが、転生後のミニオンは超強力だ。「灰に舞う降魔の狩人」では、デーモンハンター以外の各クラスに1種類ずつ「転生」ミニオンが用意されており、合計9種類となる。「転生」ミニオンのカードは、すべてレジェンドであり、デッキに1枚しか入れられないが、その分効果は強烈だ。
例えば、ウォーロックの「転生」ミニオン「カンレザード・エボンロック」は、2マナで3/2、「自分の悪魔のコストが(1)減少する」という効果を持っているが、盤面で死亡すると、自分のデッキに転生後バージョンの「転生カンレザード」を混ぜる。転生カンレザードは、カンレザードの転生後の姿であり、8マナ7/6というサイズに加え、雄叫びで「この対戦で死亡した味方の悪魔を3体まで召喚する」という能力を持つ。それまでに強い悪魔が3体死んでいるのなら、とても大きなアドバンテージをもたらすことになる。
ランク戦も一新!スターボーナスで、上位者ならすぐに元のランクに戻れる
フェニックス年の開始とともに(正確には4月1日から)、ランク戦システムもアップデートされた。これまでは、50のランクとその上のレジェンドから構成されていたが、新しいランク戦では、50のランクを上から、ダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの5つに分け、それぞれ10から1のランクをつけることになる。つまり、一番下がブロンズ 10で、一番上がダイヤモンド 1となる(その上がレジェンドなのは同じ)。すべてのランクにおいて、星を3つ集めるごとにランクが1つ上がる。
新ランク戦では、新しい月になり、ランクがリセットされすべてのプレーヤーが最下位のブロンズ 10からスタートとなるが、これまでのランクや戦績に応じて、もらえる星の数にかけるスターボーナスが与えられる。スターボーナスは最高11であり、11の場合、1勝するだけで星が11個ももらえることになる(別途連勝ボーナスも有効になるので、連勝ボーナス時は最大22個)ので、高ランクプレーヤーは、すぐに元のランクまで戻れるだろう。ただし、スターボーナスは、ランクが5つ上がることに1つずつ減っていく仕組みだ。
マッチングのアルゴリズムも改善され、過去の戦績から算出されるMMR(Match Making Rate)に基づき、マッチングがおこなわれるようになった。これによって、上位者もランクリセット時は最下位ランクになるといっても、上位者と初心者がいきなりマッチングされるようなことはなくなる。
筆者もランク戦を少しやってみたが、最初にもらえたスターボーナスは3であった(前月のランクは19程度)。当初は面白いようにランクが上がっていったが、シルバー 10に上がると、スターボーナスが2になり、シルバー 5になるとスターボーナスはなくなった。
また、新ランク戦では、ランクに応じてもらえるパックなどの報酬もより豪華になっている。ランクが5上がるごとに初到達報酬がもらえ、シーズン終了時にもさらにそのランクに応じてシーズン終了報酬がもらえる。
カードのダブりがなくなり、コレクションを揃えやすくなった
「灰に舞う降魔の狩人」では、パックから出るカードのダブりがでないように、カードの封入方式が変更されている。これまでも、デッキに1枚しか入れられないレジェンドカードについては、1枚そのレジェンドカードを持っている場合、同じレジェンドカードが出ることはなかったのだが(そのパック内のすべてのレジェンドカードを持っている場合は、重複してレジェンドカードが出る)、その仕組みがすべてのレアリティに採用されたのだ。もちろん、コモンやレア、エピックについては、2枚までデッキに入れられるので、2枚までは出る。そのカードが2枚出た時点で、3枚目のカードが出なくなる(そのレアリティのカードをすべて2枚ずつ持っている場合は、3枚目のカードが出るのは、従来のレジェンドと同じ)。この変更により、同じカードが何枚も出てがっかりするということがなくなり、より少ないパックでコレクションを揃えられるようになった。非常に良心的な運営であり、プレーヤーにはとてもありがたい変更といえる。
「灰に舞う降魔の狩人」には全部で135種類のカードがあるが、筆者が100パックほど開封したところ、52種類のコモンと35種類のレアはすべて2枚ずつ揃い、23種類あるエピックは16種類が、25種類あるレジェンドは7種類が出た。
新しいヒーローやメカニズムで、生まれ変わった「ハースストーン」
フェニックス年は、「灰に舞う降魔の狩人」のリリース後わずか1日で4枚のカードがナーフされるという波乱の幕開けとなったが、その後は環境も落ち着き、デーモンハンター以外のデッキも結果が出せるようになった。新ヒーローのデーモンハンターはもちろん、「封印」や「転生」といった新メカニズムも、「ハースストーン」の戦いをより奥深く、戦略的なものにしてくれる。ランク戦も一新され、7年目となる「ハースストーン」だが、新しく生まれ変わったといってもよいだろう。フェニックス年では今後も、実績システムなどの新たなシステムや、新たなバトルモードが追加される予定である。
以前の記事でもレポートしたように、新規プレーヤーや復帰プレーヤーには、ランク戦で通用するレベルのデッキが無料でプレゼントされるので、これまで「ハースストーン」をプレイしたことがない人や、しばらく前にプレイしていたが、最近はやっていないという人も、是非この機会に「ハースストーン」をプレイしてみてはいかがだろうか。「ハースストーン」にはランク戦だけでなく、ソロ・アドベンチャーやバトルグラウンド、酒場の喧嘩など、さまざまな遊び方が用意されていることも魅力であり、自分にあった遊び方を見つけることができるだろう。