「HG 1/144 RX-78-02 ガンダム(GUNDAM THE ORIGIN版)」レビュー
HG 1/144 RX-78-02 ガンダム(GUNDAM THE ORIGIN版)
ガンダムをまかされたからにはキミがパイロットだ! 起源となるガンダムが最新HGフォーマットで出撃!
- ジャンル:
- プラモデル
- 発売元:
- BANDAI SPIRITS
- 開発元:
- BANDAI SPIRITS
- 価格:
- 2,530円(税込)
- 発売日:
- 2020年3月14日
2020年4月8日 00:00
今回取り上げるのは「HG 1/144 RX-78-02 ガンダム(GUNDAM THE ORIGIN版)」は、ガンプラ40周年となる2020年を記念したアイテムの1つである。安彦良和氏のコミック「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」に登場する主役機「RX-78-02 ガンダム」をモチーフとしたプラモデルだ。
いわゆる”本編”での主人公で後に「1年戦争の英雄」として語られることになるアムロ・レイの乗機であること、なにより「ガンプラ=ガンダムのプラモデル」という大原則を、ことあるごとにリニューアルされるファーストガンダムを2020年最新HGフォーマットはどんな内容になったのかをじっくり味わいたくて今回のレビューとなった。
このガンダムは、アニメ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」に登場する機体。アニメ版エピソードII「哀しみのアルテイシア」の劇場公開時に制作・公開されたショートディレクショナルムービー「GUNDAM RISING」でRX-78-02ガンダムの起動シーンが描かれた。このキットはそのアニメ版設定がベースとなって企画されたものであり、すでにMGが発売されているが今回はコレクションしやすいHGでの発売となった。
大河原氏と安彦氏とカトキ氏の描くガンダムを見事に融合!
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は「機動戦士ガンダム」を安彦良和氏が解像度が増した現代の視点でコミカライズした作品だ。そこに登場するモビルスーツは単なるロボット兵器ではなくプロポーションや動きが人間のようなバランスで描かれており、とても生き生きとして見える。筆者は安彦氏が描くその描写や表現がとても好きだ。
アニメ化にあたり、モビルスーツをはじめメカ物はオールCGで描かれることになるのだが大河原氏の新たなデザインをもとに安彦氏のニュアンスを取り入れたうえで3DCGモデリングや立体化に耐えうるようにカトキ氏がリデザインを行なっている。
現時点では残念ながらアニメ劇中でこのガンダムが活躍することはないのだが、MG/HG双方のキットを眺めると今後公開されるであろう(いや、必ずしてほしい)”本編”中での活躍を期待させてくれる。
原作ではこのガンダムは前/中/後期版が存在するのだが、今回のHGキットではその中から前期/中期を選択式で再現できる。前期型は機体の左右が非対称であり左腕前部にガトリングガンを搭載。胸部右にはバルカン砲、左にはショルダー・マグナムを装備する。肩部はフラットな形状だ。
これに対して中期型はショルダー・マグナムを撤去、左腕前部のガトリングガンを撤去したうえで左右同形状の袖形状となる。肩部にはフック状のパーツが付く。両脚のふくらはぎに可動バーニアを装備、カバーと連動させられる。さらにつま先も可動して接地性や表情付けを豊かにできる。
武装は前期/中期それぞれのビームライフル、ビーム・サーベル2本とシールド、バックパック接続のショルダー・キャノンとジ・オリジン版ガンダムを再現するのに盛りだくさんの内容となっている。
今回のレビューでは発売されたばかりの本商品を組立説明書通りに組んでいくが、HGシリーズならではの組み立てやすさや構造・設計・可動・プロポーションなどにも触れていきたい。あわせてRXモビルスーツ「ガンダム」自体の魅力も語っていきたい。
このキット最大の特徴は前期/中期を選択式で組み分けられることだが、コンパチ仕様ではないためどちらかを選んで組み立てることになる。とはいえガンプラは接着剤を使わないスナップフィットなので分解できれば組み替えることはできそうだが、それが可能かどうかも検証していこう。
早速パーツを見ていこう。一目見て78ガンダムと判る4色成型”イロプラ”のAランナー。2020年はガンプラ40周年でもあるわけだが、筆者を含めガンプラファンの皆さんはこれまでにいったいいくつの78ガンダムを作ってきただろうか。もちろんこれからもたくさん作ることになるだろう。そのたびに新たなデザインランゲージや構造・設計ももちろん、素材などにも驚かされたり感動すること間違いないなと期待は膨らむばかりだ。
B1/2ランナーとD1/2ランナーはスイッチで今後のバリエーション展開を見込んだパーツ構成になっていると思われる。
Cランナーはフラッグに「ORIGIN MS」とあるので、オリジンの他のMSと共通のようだ。Eランナーは前期/中期の両ビーム・ライフルとランドセル、Hランナーのショルダー・キャノンは「HG 1/144 局地型ガンダム」と同じものだ。他にポリキャップとビーム・サーベルのランナー。これで全10枚のランナーとなる。
デザインがシンプルな初代ガンダムは色数やその組み合わせはそれほど複雑ではないこともあって無理なくランナーで色分けされている。目(ツインアイ)とセンサー類、肘や膝の丸モールドの中もシールになっている。後期型が発売されればマグネットコーティングされたことを表す丸モールドもこの方式になるだろうと推測される。
あえて複雑な機構を抑えてサクサク完成!これが新スタンダードな好キット!
説明書に従う形で各パーツを組み上げていこう。本商品のランナー数は10にも達するがこれが現在のスタンダードなHGシリーズである。HGシリーズは部品数の少ないキットが多いが、初代ガンダムで10枚必要だというのはこれが”スタンダードなガンプラ”だということだろう。ただし、前述したとおりBとDランナーはほぼ1種類と考えて良いし、少ないパーツで1枚と数えているものもあるので特段多くもないだろう。
最初はボディからだ。本商品は、いわゆる初代ガンダムであり40周年を記念するプラモデルである。組んでみるとわかるがあえて複雑な機構は持たせずいかにシンプルに作りやすくするか、それでいて最大限の可動性能を発揮させるにはどうすればいいのかを究極的に突き詰めた設計になっているようだ。初めて手にする方にも”ガンプラ”ってこういうものですよ、ということを体現している好キットだといえるだろう。
筆者はボディと肩部を接続する部分もガンプラ設計の肝となる部分としてとても重要だと思っており、新製品が出るたびにここの構造に注目している。とくにジ・オリジン版ガンダムであれば中期型から搭載されるコア・ポッドのことも考慮した上で肩の設計が行なわれるはずだが、今回のHGでは可動性を重視しいかに大きい振り幅で動かせるかを目指したようだ。
ジ・オリジン版ガンダムの特徴となるショルダー・キャノン装備のランドセル。ショルダー・キャノンとランドセルの接続が弱く、結構ポロリが発生する。ここはもう少し設計を詰めてほしかったところだ。ビーム・サーベルラックにも 換装できるのだが、ラック自体がビーム・サーベルの保持があまり強くないのでポージングの際は要注意なポイントだ。
頭部はこのキットで一番細かい設計だ。頭頂部のサブカメラ横の分割線でパーツ分けの設計がされている。そのおかげでバルカン砲の砲口部も開口されておりリアリティが格段に上がっている。HGでここまでやるのか!とおもわず感動してしまった。アンテナの赤い基部は飛んでいったら紛失間違いなしなので注意しよう。ここは無理せず接着したほうがいいだろう。
残念ながらマスク部のエアインテーク・アウトレットや耳部のダクトは開口されていないのでスミ入れしてやればグッと引き締まること間違いなしだ。シールの貼り込みの際ははがれの原因になるので手や指先の油分を除去してピンセットを使うことをオススメする。
腰部はスタンダードなHGガンダムタイプの構造をしている。リア・アーマーは可動しない。両脚の接続部は前方へのスイング機構を持ち、派手なアクションポーズもばっちり決めることができる。連邦軍のV字マークはモールドの上にシールという構造だ。頭部の設計があればここもパーツ分割してほしかったところだ。フロントアーマーはパカパカ動いてしまうので気になる場合は軸を太らせるなど対策をしたほうがいいだろう。
ボディ部を組み上げてみた。さすがガンプラ40周年!この素晴らしい造形やバランスを見ていただきたい。最初の1/144ガンダムを知るものとしてはこの40年間の技術の革新に驚嘆せずにはいられない!
続いて腕部を組み立てる。一部メカフレームに外装を取り付けていくが、非常にシンプルな構造をしている。とくに肩部はモナカ構造でポリキャップの関節を内包する形となっており、とにかく組みやすい設計にすることが念頭に置かれている。こういったところでガンプラの基本的なつくりを学ぶことができる。
脚部も一部フレーム構造を持ち、外装を取り付ける構造。可動範囲もすばらしく、膝もやはり約180度曲げることが可能である。膝アーマーは屈伸に追従するし、なんとつま先も可動させられる。
装備は前・中期それぞれ用のビーム・ライフルとシールド、ハイパー・バズーカとビーム・サーベル2本となっている。シールドは組み立て時に上下をどちらにするか選択式となっている。ビーム・ライフルとハイパー・バズーカは腰部のリアアーマーに接続、シールドはバックパックに背負うこともでき、プレイバリューが高い。
結論:そもそも換装できるのか、できないのか?
いよいよ完成となる。すべてを組み上げてモビルスーツの形にする。ボディは腹部を引き出しつつ関節の構造通りに動かしてみると驚異の可動を見せる。なんと腹部はのけぞっているのに胸部は前屈するのだ。それもかなりの角度で!もちろんこれは極端な例だがポージングの際にかなり効果があるだろう。胸部・腰部共に大き目のポリキャップ関節で程よい保持力でポーズが決まる。
そして気になる前期/中期での換装だが、キット自体がもともと選択式であったため換装が可能な設計にはなっていない。ただしガンプラは接着剤を使わないスナップフィットなのでナイフや精密ドライバーなどを使ってゆっくり分解していけば付け替えることは可能だ。
その際の注意点だがあまりやりすぎるとさすがに緩くなってきてしまったり破損の可能性もあるのであまりやらないほうがよいだろう。どちらのバージョンでも飾りたければキットを2つ用意するほうが無難、という結論に達した。それでは前期から中期に換装してみよう。
今となればRX-78というのはとてもシンプルなガンダムになったわけだが、シンプルがゆえに全体的な可動はとてもスムーズで範囲も広い、ただビーム・サーベル(ラック)やランドセルのバーニア、ショルダー・キャノンの保持力が弱く、ちょっと触っただけ動いたりポロリしてしまう。
ビーム・ライフルとハイパー・バズーカの持ち手の甲の部分も取れやすいので注意が必要だ。とはいえHGシリーズとしては屈指の作りやすさで初めてのガンプラ体験用としても良い出来だと思う。全体的なまとまり感・しっかり感はとても素晴らしいものだ。
この最新HGガンダムのキットを作ってみての感想だが、とてもスタンダードな設計や構造なのに素晴らしい可動範囲を奇抜なアイデアでなくても1/144スケール HGシリーズでこんなアクションポーズが実現できていることに40年来のガンプラファンとしてはとても感動するとともに感慨深く思った。
1995年にMGシリーズがスタートした時に実現不可能と思われた表現を「解釈を変えて実現する」という手法を目の当たりにして以来、新製品の発売ごとに「そうきたか!」と感動させられっぱなしだった。それがPGシリーズに昇華し、HGシリーズにフィードバックされ、RGシリーズという究極的な設計のものもできるようになり「ガンプラの進化」を感じずにはいられなかった。そして今回レビューした最新HGガンダムでも「ここまできたか!」と思える設計を体験できてとても嬉しかった。
今回は説明書通りの素組でのレビューとなったが、MS本体はスミ入れしてつや消しクリアーでコーティングするだけでオモチャっぽさが消えてとてもカッコよくなるだろう。HGシリーズはコレクションしやすく、シャア専用ザクを始め、たくさんのジ・オリジンのMSが発売されているので並べて飾るもよし、アクションベースで劇中をジオラマチックに再現して写真撮影をするのも楽しい!
ガンプラ40周年を記念して登場したこの「HG 1/144 RX-78-02 ガンダム」は、まさに新たな”起源(オリジン)”となるにふさわしい作りやすさと大きな可動範囲を獲得したこれからの発展を期待させる好キットだ。
ここからさまざまなバリエーションやさらにMGやPGなどへのフィードバックもあるだろうし、すでに発表されている「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60 RX-78-2 ガンダム」へもなにかしらの影響を与えるのではないだろうか。ガンプラの進化は止まらない!
(C)創通・サンライズ