インタビュー

【特別企画】2019年、eスポーツとしての「ハースストーン」はどうなるのか!?

新たにeスポーツ部門のトップに就任したSam Braithwaite氏に聞いた

【ハースストーン 爆誕!悪党同盟】

4月10日配信開始

利用料金:無料(アイテム課金制)

 デジタルカードゲームで、世界をリードする「ハースストーン」。その大きな魅力となっているのがBlizzard主催のeスポーツ大会だ。2017年はメジャー、2018年はツアーストップと名前を変えながら毎年レギュレーションが変わり、メジャーなeスポーツタイトルとして進化を続けている。

 本日世界同時発表となった「ハースストーン」の新拡張版「爆誕!悪党同盟」から、新シーズン「ドラゴン年」となり、スタンダードが大きく入れ替わると共に、eスポーツも、2018年の「ツアーストップ」から、「ハースストーン・マスターズ」に変貌する。

【爆誕!悪党同盟】
ドラゴン年最初の拡張パック「爆誕!悪党同盟」がついに発表された

 「ハースストーン・マスターズ」についてはすでに2月に発表済み(参考記事)だが、最大のポイントは、対戦形式が従来の「コンクエスト形式」から「スペシャリスト形式」に変わるところだ。わかりやすくいえば、これまでは大会に参加するためには4つのデッキを用意する必要があったが、今後は1つのデッキ、正確に言うと1つのデッキと、そこから5枚ずつカードを入れ替えた派生デッキ2つの3つのデッキで戦いに挑むことになる。

 ただ、何故ルールや名前を変えるのか、そこについてはほとんど語られていない。また、2月25日、26日に米国アーバインで開催された「Hearthstone Summit 2019」でもeスポーツに関してはまったく語られなかった。そこで今回はメールインタビューを依頼し、新たに「ハースストーン」eスポーツのトップに就任したSam Braithwaite氏(Senior Global Franchise Lead, Hearthstone Esports)に回答していただいた。2019年の「ハースストーン」eスポーツがどうなるのか、このインタビューから感じ取っていただきたい。

【「ハースストーン」eスポーツ】
常に炉端で繰り広げられる「ハースストーン」eスポーツ。2019年はどう変わるだろうか?

スペシャリスト形式採用の理由は「アスリートの負担軽減のため」

――「ハースストーン」eスポーツの新フォーマット「スペシャリスト形式」(1クラス3デッキ)の基本コンセプトと、eスポーツルールとしての魅力を教えてください。

Braithwaite氏: スペシャリスト形式ではプレーヤーが個々のクラスにおける優れたスキルを披露できると同時に、メタを読み、対戦相手が持ち込むデッキに対抗できる、適切なデッキバリエーションを用意して大会に臨む能力が試されます。

 スペシャリスト形式がeスポーツの視聴者と競技者の両方にアピールできると考える理由は以下の2つです。

1.) 視聴者は世界最高のプレーヤーたちが自分のお気に入りのクラスで戦う試合を観戦できる。

2.) これまで以上に「ハースストーン」の競技に参加しやすくなる。

 これまで競技で使うデッキを複数構築しなければならず、その分カードが必要でしたが、スペシャリスト形式では、必要なデッキは1つのみであるため、カジュアルプレーヤーもハードコアなプロプレーヤーも参加が容易になります。

【ハースストーン | スペシャリスト形式について】

 スペシャリスト形式の詳細は以下のとおりです。

・プレーヤーは同じクラスから3つのデッキを提出する。

・プレーヤーは3つのデッキをそれぞれ第1デッキ、第2デッキ、第3デッキとして指定する。

・第2デッキと第3デッキにはそれぞれ、第1デッキと異なるカードを最大5枚まで入れることができる。それらのカードの選択時には、第1デッキのデッキリスト内の重複する2枚のカードは、2枚のカードとしてカウントされる。

・プレーヤーは各試合の最初の対戦で、必ず第1デッキを使用しなければならない。

・各試合の2戦目以降は、第1デッキを使用し続けるか、第2または第3デッキに変更するかどうかをプレーヤーが自由に選択できる。

・2戦目や3戦目でデッキの変更がある場合は、各対戦の開始時に、両プレーヤーとも相手には秘密の状態(いわゆるブラインドピック)で同時にデッキを選択する。

――今後、eスポーツ大会では、原則としてスペシャリストルールのみで戦われることになると理解していいのですか?

Braithwaite氏: スペシャリスト形式は「グランドマスターズ」の最初のシーズンとラスベガスで開催される最初の「ハースストーン・マスターズツアー」、およびツアー前の各予選大会で使用されます。ただし、他にも試してみたい形式は複数ありますので、スペシャリスト形式を継続するかどうかも含めて、コミュニティやプロ選手からのフィードバックに基づいた調整を今後も検討していきたいと考えています。

【ハースストーン グランドマスターズ】
「ハースストーン」eスポーツの世界大会の名称は「ハースストーン グランドマスターズ」に

――長年に渡って慣れ親しまれてきた「ハースストーン」独自のコンクエスト形式(4ヒーロー1バン)を廃止した理由は?

Braithwaite氏: コンクエスト形式にも良い面はありますが、試合が長いうえに、複数のデッキを完璧に構築して使いこなす必要があり、継続的に大会へ出場を続けるのは負担が大き過ぎるという意見がプロ選手から寄せられていました。また、コンクエスト形式では自分が用意した中でも最高のデッキが禁止(バン)されがちなことがフラストレーションとなっていました。

 スペシャリスト形式であれば、自分が持ち込んだデッキは必ずプレイできるという確証があります。スペシャリスト形式では上述のメリット(視聴者が試合をより身近に感じて楽しむことができ、大会に参加可能なプレーヤー数が増えること)に加えて、仕組みがシンプルであることから、数百人のプレーヤーが参加してスイスドローで何ラウンドもの試合が行なわれるマスターズ予選やマスターズツアーの大会において競技者の負担が軽減されます。

【コンクエスト形式】
慣れ親しまれた4デッキ1バンのコンクエスト形式はひとまず終わりを迎えることになる

――同様に、2018年度に1年掛けて実施してきたツアーストップをわずか1年で辞める理由は?

Braithwaite氏: 「ツアーストップ」は世界でトップクラスの「ハースストーン」プレーヤーは誰なのか、ということを明確化することを主眼に据え、腕の立つ選手同士がスキルを披露し合う機会を継続的に提供してきました。この点に関してはツアーストップは成功だったと言えます。JustSaiyanやMuzzy、Hunteraceといった多才な選手たちにスポットライトが当たるようになり、複数の大会で長期間に渡って好成績を残すためには、いかに高レベルのスキルが必要かということも明らかにすることができました。

 しかし、1年間ツアーストップを続けてみたところ、プロ選手からポイント獲得のために世界各地のツアーストップを転戦する、ということをずっと続けていくのは困難だというフィードバックが寄せられました。世界各地を飛び回るのは大きな負担となり、ライブ配信など、他の手段による自身のブランド構築を目指す機会も制限されます。

 そうした理由で2019年はハースストーン・マスターズを行ない、その大部分をオンライン対戦に移行することに決めました。これによって世界中でより多くのプレーヤーが、自宅から気軽に大会に参加できるようになり、プロ志望者や実績あるプロ選手も自由な時間が増えることで、ライブ配信などを通じて自身のブランド構築に集中できるようになります。

――2019年に実施されるハースストーン・マスターズの基本コンセプトと、従来のメジャーやツアーストップとの違いを教えてください。

Braithwaite氏: 「ハースストーン・マスターズ」は「ハースストーン」
eスポーツの再構築です。シーズンプレイオフ、選手権、ツアーストップが整理統合されて、視聴者にとってもわかりやすく、参加も容易な、3段階のティアに分かれたシンプルなエコシステムに変わります。

 新たなハースストーン・マスターズシステムには、意欲あふれる新人プレーヤーはもちろん、競技的ハースストーンのベテラン選手にとっても上位ティア進出の仕組みをより明確にする狙いもあります。3つのティアは以下のとおりです。

【ハースストーン・マスターズのスケジュール】

【ティア3:ハースストーン・マスターズ予選】

・ハースストーン・マスターズへの最初の一歩となるのは3月5日からラスベガスで始まる「ハースストーン・マスターズ予選」です。ランクや競技経験の有無に関わらず、あらゆるプレーヤーの登録・参加が可能です。

・オンラインのハースストーン・マスターズ予選はすべてBlizzard Entertainmentによって管理と運営が行なわれ、Battlefyプラットフォームでホストされます。

・2019年には3つの「ハースストーン・マスターズツアー」イベントが開催予定であり、その各々で100以上のハースストーン・マスターズ予選大会がオンラインで開催されます。

・オンラインの各ハースストーン・マスターズ予選から、それぞれ1人の勝者が参加資格を得て、対応するハースストーン・マスターズツアーに招待され、25万ドルの賞金総額をかけた戦いに挑みます。オンラインのハースストーン・マスターズ予選で上位に入れば、「ハースストーン」ゲーム内で使用可能なカードパックも受け取れます(Blizzardが正式にリリースしている最新のハースストーン拡張版のパック)。

・ランク戦プレーヤーのために、予選シーズン中はスタンダードランク戦プレイの上位に入ったプレーヤーが毎月公表されます。そして毎月トップ200に入ったプレーヤーは参加資格を得て、「ランク戦予選」に招待されます。ランク戦予選にはオンラインのハースストーン・マスターズ予選と同じルールが適用されますが、上位4名が、次のハースストーン・マスターズツアーへの参加資格を獲得できます。

・マスターズ予選とランク戦予選の全試合は3戦2本先取で行なわれます。

【ティア2 ハースストーン・マスターズツアー】

・ハースストーン・マスターズの2つ目のティアは「ハースストーン・マスターズツアー」です。ハースストーン・マスターズツアーではオンラインのハースストーン・マスターズ予選(およびその他の手段)で出場資格を獲得した全プレーヤーが会場に集い、25万ドルの賞金総額をかけて3日間の大会に挑みます。

・最初のハースストーン・マスターズツアーは、ネバダ州ラスベガスのLINQホテルで、6月14日から16日(太平洋夏時間)にかけて開催されます。2019年には、その他2つのハースストーン・マスターズツアーがアジアとヨーロッパで開催されます。2020年には世界各地でさらに多くのハースストーン・マスターズツアーの開催が予定されています。これらのイベントの詳細については後日発表いたします。

・マスターズツアーの試合は3戦2本先取で行なわれ、決勝のみ5戦3本先取で行なわれます。

・以下を含み、マスターズツアーの出場資格を獲得する方法は複数存在します。
 ・オンラインのハースストーン・マスターズツアー予選またはランク戦予選に勝利する。
 ・ライセンスを受けたサードパーティによる「ハースストーン」の大会を通じて招待される。
 ・直前のハースストーン・マスターズツアーで1位になる。
 ・2018年のハースストーン・シーズンを1スター、2スター、3スター・マスターのいずれかで終えて自動的に招待される。
 ・中国Gold Seriesで参加資格を獲得する。
 ・ハースストーン・グランドマスターになる(グランドマスターはハースストーン・マスターズツアーに自動的に招待される)。

・素敵なゲーム内アイテムを購入してもらうという形で、コミュニティにハースストーン
・マスターズを支援する機会も提供する予定です!今年はゲーム内のショップで期間限定のアイテムバンドルが販売されるようになり、その売上総額の一定割合が、2019年に開催される3つのハースストーン・マスターズツアーイベントの基本賞金額に均等に配分されます。詳細は後日発表します!

・ハースストーン・マスターズツアーで安定して上位に入ったプレーヤーは、賞金以外にもハースストーン・グランドマスターズへの出場資格を獲得できます。ハースストーン・グランドマスターズの詳細は近日中に発表いたします。

【ティア1 ハースストーン・グランドマスターズ】

・ハースストーン・マスターズの最高峰のティアとなるのがハースストーン・グランドマスターズです。世界最高の「ハースストーン」プレーヤーの中でもさらに上位のグランドマスター達が、地域ごとのディビジョンに分かれて毎週ラウンドロビンで戦い、成績に応じた賞金とマスターズツアーへの参加資格を獲得します。

・これはハースストーン eスポーツの最高峰であり、娯楽性の高い、最高レベルの「ハースストーン」の試合がオンラインベースで継続的に行なわれます。

・これは「ハースストーン」のプロキャリアを持続可能なものにするという、私たちの約束を実現するための次なる進化です。

・年度の終わりに、各ディビジョンの上位者による大規模な決勝大会が開催されます。

・詳細は後日発表いたします。

――「ハースストーン・マスターズ」にBattlefyをパートナーに選んだ理由は?

Braithwaite氏: グローバルなプラットフォームであるBattlefyは、ここ数年来、Blizzardの信頼のおけるパートナーとなっています。ハースストーン・マスターズをコミュニティのために円滑に進めるにあたり、BlizzardはBattlefyと緊密に協力していきます。

【Battlefy】
「ハースストーン」は、eスポーツ運営において、世界最大規模のオンラインeスポーツプラットフォームを展開するBattlefyと全面提携を行なう

――マスターズツアーの日本開催予定はありますか?

Braithwaite氏: 日本が大好きな私たちは、昨年のHCT Tokyoで日本の「ハースストーン」コミュニティとともに素晴らしい時間を過ごせました。グローバルなマスターズツアーイベントの開催会場については現在も調整中ですので、後日詳しくお話ししたいと思います。

【「ハースストーン」東京大会】
2018年7月に開催され、日本人のhinaya選手が優勝した「ハースストーン選手権ツアー 2018 Tokyo Tour Stop」

――ハースストーンマスターズは、2018年に企画・実施されたランキングシステムと名前が被っている。旧ハースストーンマスターズは、hunterace選手が日本大会で世界で初めて1つ星を獲得したことで話題を集めたが、このマスターになる制度は廃止されるのですか?

Braithwaite氏: ハースストーンマスターズは元々は2018年に導入されたスターによるランキングシステムであり、継続的に上位に入る成績を残した競技者を報いるものです。私たちはこのシステムの重要性を肝に銘じ、継続的に好成績を残せる、特に優れた「ハースストーン」の競技者にさらなるメリットを提供できるように、HCTの再構築を行ないました。新たな競技エコシステムの名称はハースストーン・マスターズであり、その最高峰のティアであるグランドマスターズでは、そのようなトッププレーヤーの戦いが継続的に行なわれます。

――大会とセットで販売されるというeスポーツバンドルの中身と価格設定を教えて欲しい。

Braithwaite氏: eスポーツバンドルの詳細については後日発表させていただきます。

――ワイルドルールの大会の予定は?

Braithwaite氏: 2019年の「ワイルドオープン」が終了したばかりですので(VODはこちら!)、現時点ではハースストーン・マスターズシステムの始動に集中しています。とはいえ、常に幅広いハースストーンチームと協力して、ワイルドルールセットの魅力を競技で披露できる機会の創出を目指しています。

――「ハースストーン」には、BlizzConで実施されている国別対抗戦も存在しますが、2019年はどうなりますか?

Braithwaite氏: 2019年には「ハースストーン・グローバルゲーム」は開催されません。2018年は複数のプログラムを実施できた素晴らしい年となり、新たな形式を試して様々なフィードバックを得ることができました。2019年シーズンはハースストーン・マスターズの3つの競技ティアの始動および運営に集中したいと思っています。

【ハースストーン・グローバルゲーム】
BlizzConの名物企画だったハースストーン・グローバルゲームは、今年は開催予定なし。ハースストーン・マスターズに集中するという

――日本のeスポーツファンにメッセージを

Braithwaite氏: 新たなeスポーツプログラムとなるハースストーン・マスターズの開始を心から楽しみにしておりますので、皆さんのオープン予選へのご参加をお待ちしています!ラスベガスで開催される最初のマスターズツアーイベントでお会いしましょう!

【HCT 2017 World Championship】
2018年1月にオランダで開催された世界大会
名物ディレクターのベン・ブロード氏は本大会を機に退社。ここから「ハースストーン」eスポーツは新たな局面に入った
優勝したtom60229選手(台湾)。4月に台湾で開催される「HCT 2018 World Championship」はtom60229選手は出場権を獲得できなかったため、新たな王者が誕生することになる