【特別企画】
“ドラゴン年”は過去最大級の変革を迎える年に! 「ハースストーン」の未来を語る「Hearthstone Summit 2019」が米国アーバインで開催
2019年2月28日 23:00
- 2月25日、26日開催
- 会場:Hotel Irvine
Blizzard Entertainmentは米国時間の2月25日、本社のあるカリフォルニア州アーバインのホテルにて、全世界のメディア、コミュニティを集めて、同社のデジタルカードゲーム「ハースストーン」の2019年の計画を披露するプライベートイベント「Hearthstone Summit 2019」を開催した。
最大級のサプライズとなった「月を食らうものバク」、「ゲン・グレイメイン」の殿堂入りについては、別記事でお届けしたが、それ以外にも多くの発表が行なわれた。本稿ではその発表内容をまとめて紹介したい。
過去最大級の変革を迎える「ハースストーン」
まず、「Hearthstone Summit 2019」で公開された内容は、以下の4項目だ。
・2019年の「ハースストーン」の進化について
・2019年の「ハースストーン」のeスポーツについて
・「栄誉の殿堂入り」カードについて(参考記事)
・2019年最初の拡張版について
ファンは驚いたかもしれないが、このタイミングで拡張版に関する情報も公開され、シングルプレーヤーモードのプレイアブルまで行なわれた。メディアのみならず、コミュニティも含めた形で、こうした規模のイベント、このタイミングで行なうのは初めてだ。
開幕に合わせて行なわれたプレゼンテーションでは、ベン・ブロード氏退社以降、長期間にわたって不在だったゲームディレクターにBen Lee氏が就任したことを明らかにし、Lee氏の短い挨拶の後、クリエイティブディレクターのBen Tompson氏、シニアゲームデザイナーのMike Donais氏が交互に、上記内容の発表を行なった。
丸1日の取材を通じて感じたのは、そこで発表された内容そのものよりも、「ハースストーン」を改めてファンが望むものに進化させていくと共に、新規ユーザーや復帰ユーザーを獲得してコミュニティを再活性化させていくという強い決意だ。「ハースストーン」は、2018年4月、「ハースストーン」の生みの親であるベン・ブロード氏、ハミルトン・チュウ氏の退社を皮切りに、幹部の退社が相次ぎ、不透明な状況が続いている。
2人のビジョナリーを欠いたことで、“「ハースストーン」はこういうゲームです”と断言できるスタッフがいなくなり、その後にリリースされた2度の拡張版、不定期で実施されているバランス調整、そして「ハースストーン」の柱であるeスポーツ運営についても、ファンを満足させている、とは言いがたい状況が続いている。そこはユーザーフィードバックを重視するBlizzard自身が1番感じている部分であり、だからこそセットローテーションが変わるこのタイミングで、メディアとコミュニティを集めてサミットを開いたのだろう。
ちなみに、今回は拡張版の概要が発表されるだけでなく、シングルプレイモードまで体験できたのだが、拡張版についてはまだ解禁規制が敷かれているため、これらについてはまだしばらく書くことができない。では何のために見せたのかというと、メディアやコミュニティからフィードバックを受けるためだ。「ハースストーン」開発チームが考えている構想は多岐にわたり、一端動き出したら途中で撤回することはできない。本当にこの方向性で間違いないのか、強い否定や考えも付かなかった絶妙なアイデアが出てこないかどうか、最終確認したいためだと思う。
参加者全体の反応は、個々のコミュニティを通じてこれから発信されていくと思われるが、個人的にはとても良かった。プレーヤー全員が感じていた“諸悪の根源”である奇数・偶数のメカニクスを廃棄し、拡張版ごとに、新たなメカニクスとメタで対戦が楽しめるカードゲームへと原点回帰を図っていくことを明確に宣言したからだ。
誤解のないようにしておくと、奇数・偶数のメカニクス自体はとてもエキサイティングで、2018年4月に「妖の森ウィッチウッド」で登場した際は歓迎を持って迎えられた。ただ、問題だったのは、影響力が強すぎた。わかりやすくいえば単純に強すぎたことだ。
デザイナーのディーン・アヤラ氏が炉辺談話で語ったような、「ノーマル、奇数、偶数×9クラスの27タイプのデッキバリエーションが誕生する」というようなバラ色の未来はやってこず、ウォリアーなら奇数、シャーマンなら偶数と言い切れるまでに、逆に多様性を狭める結果になった。なんといっても純粋に強いため、奇数パラディンなどは、新拡張版のカードを1枚も入れずに新環境でTier 1を維持し続けるような有様となり、結果として、多様性の低下と、拡張版の希薄化を招き、いつまでも似たようなデッキ構成との対戦を強いられ、飽きやすいゲームになってしまっていた。ともあれ、今回特例措置でリセットの決断をしたことは大いに評価できるところで、コミュニティがどのような反応を示すのか注目したい。
新拡張版は拡張アドベンチャー形式を採用した大型シングルプレイモードに注目!
次に現時点で公開できる内容をまとめておきたい。
2019年は、変革と原点回帰という願いを込めてもっとも神秘的な生物を冠した“ドラゴン年”となる。「大魔境ウンゴロ」、「凍て付く玉座の騎士」、「コボルトと秘宝の迷宮」のカードセットはスタンダード落ちし、ワイルド専用となる。新たなスタンダードセットは、基本とクラシック、「妖の森ウィッチウッド」、「博士のメカメカ大作戦」、「天下一ヴドゥ祭」と、4月にリリース予定の新拡張版の構成となる。ただし、しつこいようだが、「妖の森ウィッチウッド」に含まれる“ゲン・バク”は排除される。
また、ドラゴン年の新要素として導入が予定されているのが、カード裏面デザインが毎回ランダムになる「ランダムカードバックシステム」、最新のメタ情報を活用して、手持ちのカードから最適なデッキを完成させてくれる「スマートデッキビルダーシステム」の2つ。いずれも日々のプレイを楽しく、快適に、かつ復帰をし易くするシステムといえる。
このほか、闘技場での勝利もゴールデンヒーロー獲得の勝利にカウントされるようになり、闘技場についても、拡張版合わせだったセットリストを、ワイルドも組み合わせる形で2カ月ごとに入れ替えていく。この仕様は新拡張版合わせでスタートする予定で、第1回セットは、基本、クラシック、「ナクスラーマスの呪い」、「旧神のささやき」、「仁義なきガジェッツァン」、「妖の森ウィッチウッド」、新拡張版のセットとなる。ドラゴン年でもセットローテーション入りする「博士のメカメカ大作戦」や、「天下一ヴドゥ祭」のカードが出てこない代わりに、3年前にスタン落ちしたナクスラーマスの呪いなどのワイルドセットが取り入れられているところがユニークだ。
そしてドラゴン年の大きな特徴は、拡張版が“3部作”になるところだ。これまで拡張版は、「World of Warcraft」の世界観がモチーフという共通項以外は、すべて完全に独立しており、横の繋がりはまったくといっていいほどなかった。これをドラゴン年からは、年間に3つリリースされる拡張版を1つの連続したストーリーとし、さらに過去の拡張版に登場したキャラクターやヒーローを再登板させ、キャラクターに紐付けられていたメカニクスも復刻するなど、「ハースストーン」自体のユニバースを重視していく。これは初心者にもストーリーを理解しやすくすると共に、引退/休止組にも懐かしい要素を復活させることで復帰を促す施策だ。
今回、新拡張版の発表に先立ち、シングルプレーヤーモードをプレイアブルで公開したのも、ドラゴン年のストーリー重視をアピールするためだ。今回のシングルプレイモードは、2016年8月にリリースされた「ワン・ナイト・イン・カラザン」を最後に、リリースされなくなった“拡張アドベンチャー”形式になっており、1章から5章まで用意されている。1章は無料で、2章以降は有料となる(全編解放2,400円、1章開放700ゴールド)。
現行の拡張版のシングルプレイモードは、クリアしてもクリアの証しとしてカードバックが手に入るだけだったが、今回のシングルプレイモードでは2章以降は有料ということもあり、クリアするとカードバックだけでなく、ガツンとした報酬が手に入る。各章ごとにふたりの新しいヒーロー、新規拡張版のカードパック3つ、また各章ごとにほかゲームモードでも使用可能な3つのヒーローパワーと、4つの開始デッキが開放可能に。全章クリアーした場合、カード裏面ひとつととゴールデンクラシックパックひとつが手に入る。
肝心のシングルプレイモードのプレイフィールについては、肝心の新カード情報に触れられない(新カードは従来と同じように、メディアやコミュニティを通じて1枚ずつ公開していく予定)ため、書くに書けないというのが正直な所。ネタバレを避けて大枠だけ紹介すると、過去のシングルプレイモードの集大成と言える内容になっている。
具体的には、基本スタイルは途中でカードを増やし、トレジャーを手に入れながら進んでいく「コボルトと秘宝の迷宮」の「ダンジョン攻略」がベースになっており、さらに、各クラスで複数の開始時デッキとヒーローパワーがアンロックできたり、挑戦中にデッキを自分好みにカスタマイズできる機会があるなど、これまで以上に大胆なカスタマイズが実現できるようになっている。
従来同様、カード資産がゼロでも派手な戦いが楽しめるだけでなく、新仕様として時間制限がなく、途中で中断することもでき、さらに3ボスごとにデッキの修正ができる非戦闘タイプの“遭遇”が用意され、新規ユーザーからコアなファンまで万人が楽しめる設計になっている。
シングルプレイモードについては、過去の拡張版同様、拡張版のリリースから一定期間後の実装が予定されており、詳細については拡張版の発表よりも後になる見込みだ。サミットでのフィードバックを受けて、一部仕様が変更される可能性もあり、最終的にどうなるのか楽しみだ。