「狐が僕を待っている The Fox Awaits Me」レビュー

狐が僕を待っている The Fox Awaits Me

美少女狐シュアを巡る、可愛くて少し不気味なビジュアルノベル

ジャンル:
  • ビジュアルノベル
発売元:
  • COSEN・GAMKIN
開発元:
  • COSEN
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
4,400円(税込、パッケージ版)
 
7,700円(税込)
( 特装版)
発売日:
2020年4月16日

 我々は伝奇ものと美少女の組み合わせが好きだ。伝奇ものが持つ日常の延長線上にある得体のしれない不気味さと、美少女の可愛さは、まったく正反対の要素ながら、相乗効果で作品の魅力を高める。COSENのNintendo Switch用ビジュアルノベル「狐が僕を待っている The Fox Awaits Me(以下、狐が僕を待っている)」もまた、そんな両面を持つ作品だ。本作は、「僕の彼女は人魚姫!? My Girlfriend is a Mermaid!?」に続く、同社のビジュアルノベル第2弾。不思議で、ちょっと怖くて、とてもピュアな恋の物語だ。

【Nintendo Switch「狐が僕を待っている The Fox Awaits Me」オープニングムービー】

記憶を失った主人公の前に現われるキツネの少女シュア

 主人公「戒斗」は気が付くと夕日が差し込む竹やぶにいた。なぜそこにいるのか、自分が誰なのかも思い出せない。そんな戒斗の前に、少女が表れる。戒斗はその少女の正体がキツネだと分かっている。だがその理由はわからない。キツネの少女、シュアは戒斗のことを「旦那様」と呼び、彼を出迎えてくれる。いったい何が起きているのか分からない。だが、時折脳裏をよぎる血まみれの光景。そして自分が血まみれになっている不気味な夢……。戒斗はシュアと共に、記憶を取り戻すために「狐門」をくぐることになる。

 物語を彩るのは、シュアと、ミミル、カリンという3人のヒロイン。キツネの少女シュアは、屋敷の主人であり、自分の髪の毛から作ったたくさんの分身を操る強い力を持っている。主人公の前では、しっかり者のようにふるまうが、時折気の弱さをのぞかせることもある。戒斗が傷つくことには異常なほどの恐怖と怒りをあらわにし、戒斗を傷つけるものには容赦のない攻撃を仕掛けるという面もある。

【シュア】

 ミミルは、主人公が山の小さな泉に繋がる深い水底に住む山神。金髪で青い目、とがった耳を持つ妖精のような姿で、見た目は幼女のように幼いが、見た目通りの年齢ではないようだ。性格はしっかり者でノリのいいお調子者、戒斗とは顔見知りらしい。山の神はそれぞれ管理する領域が決まっており、その領域内の水がある場所ならどこでも出現可能だというミミルは、神出鬼没に物語中に現われる。

【ミミル】

 カリンは、戒斗を襲撃してくる死神だ。黒いベレー帽に、黒い服、黒髪に黒い瞳といかにも死神らしいダークないでたちだが、実はまだ新米なので仕事ぶりは今ひとつだ。おっちょこちょいなところがあり、頼りになるのかならないのか今ひとつ分からない。

【カリン】

ギャグ色の強い会話にシリアスなストーリー

 本作のシステムは、非常にオーソドックスなテキストでストーリーが進んでいくアドベンチャーだ。会話はコメディ色が強く、ドタバタなギャグも展開する。かと思えば、一転シリアスなサスペンス展開もある。ホラーというほどではないが、血なまぐさい描写やひやりとする不気味な描写もそこかしこに頻出する。

 ストーリーの序盤は一本道だが、ある程度物語が進むと、選択肢が出てくるようになる。選択肢には、単に読む順番が変わるだけというもの、サブイベントのトリガーになっているもの、そしてエンディングが変化するストーリー分岐を引き起こすものの3種類がある。

【ギャグシーンが豊富でサクサク進める】

 ゲームの進行中にはどの選択肢がストーリーを分岐させるのかわからないが、一度読んだ場所は2度目からは「R」ボタンで次の選択肢までスキップできるので、選択肢がでるタイミングでセーブしておけば、後から簡単に別の選択肢を読み進めることができる。

 エンディングはバッドエンディング、ノーマルエンディング、トゥルーエンディングなど6つが用意されている。トゥルーエンディングにたどり着いて初めて、すべての伏線が解消される。

【選択肢】

フルボイスで声優さんたちの熱演がドラマを盛り上げる

 ヒロインたちのセリフはフルボイス。3人の朗らかな掛け合いやドラマが本作最大の魅力と言ってもいいだろう。

 シュアは「スクールガールストライカーズ~トゥインクルメロディーズ~」の桐原香澄や「誰ガ為のアルケミスト」のルーシャを演じている宮崎珠子さん。「~です!」と強く言い切るシュアの独特なしゃべり方を、甘ったるいかわいらしい声で演じている。冷たい声音との落差もお楽しみの部分だろう。

 ミミル役は、「陰陽おとぎソール」の白菊、「天空のクラフトフリート」のワルツを演じている中村カンナさん。しっかり者でムードメーカー、お姉さんポジションのミミルを元気よく演じている。

 カリンは「ブラッククローバー」のレッカや、本作のシリーズタイトル「僕の彼女は人魚姫!?」の凛を演じている景山梨彩さん。仕事には一生懸命だが、どこかドジっ子で憎めないカリンの、真面目で少々臆病な部分をコミカルに表現している。オープニングテーマ「狐弓」のボーカルもこの3名が担当している。

【フルボイスでストーリーを盛り上げる】

誰もが幸せになれるトゥルーエンディングを目指そう

 キャラクターはLive2Dで滑らかにアニメーションする。重要なシーンでは、専用のイラストで盛り上げてくれる。このイラストは、エンディングリストやストーリーの達成度などと共に、スタート画面にある「エキストラ」ボタンから入れるメニューでいつでも見直すことができる。

 また、ゲームを中断してタイトル画面に戻る時には、ヒロインたちのさまざまな姿が描かれたエンドカードが表示される。とにかく、ヒロインたちを好きになれるかどうかが、このゲームを楽しめるかどうかを100%左右すると言ってもいいだろう。

 シュアは、戒斗を煽って誘うような言動をするかと思えば、急に逃げ腰になったり、自虐的になったりする。戒斗がミミルやカリンと話していると、嫉妬するが、2人だけになると急に自信投げになったり、かと思うと傍を離れようとしなかったり。

 その二重人格にも見えるような二面性には、当初かなり困惑させられる。物語を読み進めていけば、そんなシュアの態度に理由があることがわかってくるが、そこはぜひご自身で解き明かして欲しい。

 伝奇ものの常として、最初は意味不明なほどに謎が深く、頭の中にハテナマークが積み重なっていく。だが、後から考えるとすべての要素はちゃんと読者に開示されている。様々な断片から真実を推理しつつ読み進めてみるというミステリ的な楽しみ方も面白いかもしれない。

 ストーリーや設定など、突っ込みたい部分もないわけではなく、むしろ結構たくさんあったが、読後感は悪くない。ないよりも最初は、何だろうなこの子は、といぶかしんでいたシュアが、いつの間にか「頑張れ!」と応援したくなるほど可愛くなっていて、可愛い可愛いと連呼する戒斗と気持ちを共有することができた。パッケージでこちらに向かって手を差し伸べているシュアが可愛いなと思ったなら、是非プレイしてみてほしい。

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