「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 文明の興亡」レビュー

シドマイヤーズシヴィライゼーション VI 文明の興亡

新たなシステムにより内政が強化され、より戦略的なプレイが可能。

ジャンル:
  • ターン制ストラテジー
発売元:
  • 2K
開発元:
  • Firaxis Games
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
3,500円(税込)
発売日:
2018年2月8日

 2KとFiraxis Gamesは2月8日、PC用ターン制ストラテジー「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」の拡張パック「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 文明の興亡」の配信を開始した。価格は3,500円(税込)。

 「シヴィライゼーション VI (以下、Civ6)」は、文明の指導者となり、自国を発展させていくターン制ストラテジー。昨年、25周年を迎えた人気シリーズの最新作であり、多くのファンが日夜睡眠時間を削ってまでプレイするほど中毒性の高い作品。「文明の興亡」は本作1つ目の大型DLCとなる。

 今回配信されたDLC「文明の興亡」には、新たなシステムとして「時代」、「忠誠心」、「総督」システムが導入され、従来の政府・外交といったシステムも大幅に拡充されている。また、時代には「黄金時代」や「暗黒時代」、そして「英雄時代」などのまさしく文明の興亡を左右する要素が設定されているほか、9人の新指導者や8つの新文明、新ユニットや、区域、遺産、建造物なども本DLCで追加されている。

 では、これらの新たなシステムによって「Civ6」はどのように進化したのか、プレイレポートを通してお伝えする。なお、弊誌ではベースとなる「Civ6」に関してもレビューを行なっているので、是非こちらの記事も参考にして欲しい。

新たな目標を与えてくれる「時代」システム

今回はモンゴルでプレイ。スタート時点では自文明にあるのはちっぽけな都市だけだ。ここから文明を発展させていく

 新たに導入されたシステムの中で、プレイ開始時から終盤まで影響をもたらすのが「時代」だ。文明は時代ごとに目標を決め、「歴史的瞬間」を経ながら、次の時代の開始時の状況に応じて繁栄の「黄金時代」や没落の「暗黒時代」といった時代を迎えることになった。

 次の時代がどのような時代になるかは、プレーヤーがどれだけ「時代スコア」を獲得できるかによって決定される。時代スコアは、時代の開始時に選択する「公約」通りの行動をすることで得られるほか、蛮族の撃退や文明固有のユニット・施設をつくるなど様々な方法でも増えていく。

 時代スコアを一定数まで稼げば「黄金時代」となり、強力な黄金時代のボーナスを得ることができる。黄金時代中は一気に文明を発展させるチャンスとなるので、できるだけ狙っていこう。

時代スコアは常に右下に表示されているのでいつでも確認できる(画像はゲーム内の解説ページのもの)
公約は複数あるので、今の自文明が最も達成しやすいものを選ぼう
黄金時代のボーナスはどれも強力だ。筆者のお薦めは1番上の「不朽」。開拓者と労働者を信仰力で購入できるようになり、移動力も上がるので、一気に都市を出し、整備できる

 一方で、時代スコアが低いまま時代を終えてしまうと「暗黒時代」に突入する。暗黒時代では後程説明する「忠誠心」にペナルティがかかるため文明の拡大が難しくなってしまう代わりに、「暗黒時代の政策」を選べるようになる。

通常なら文化で獲得できる政策制度ツリーによって増えていく政策だが、暗黒時代限定のものが追加された。選択している「孤立主義」は開拓者を出せなくなるが、国内交易路の食料や生産力が向上する。戦争によって都市を得ることはできるので、暗黒時代中に戦争をするならかなり強力だ。これのために暗黒時代を狙ってもいい

 また、暗黒時代を乗り越え黄金時代に入った場合「英雄時代」に突入する。英雄時代では、通常1つしか選択できない黄金時代のボーナスを、3つも同時に得ることができる。暗黒時代の政策には非常に強力なものもあるので、状況に応じて敢えて暗黒時代に突入し、政策を活かして文明を発展、そこから英雄時代に突入して更に強大な文明へと躍進させることも可能だ。

今回のプレイでは敢えて時代スコアを落として暗黒時代を迎えた。その後オランダの首都を落として時代スコアを稼ぎ、英雄時代に突入。暗黒時代に「孤立主義」で首都を強化した後、英雄時代で「福音の旅路」以外の3つを取り、一気に都市を出す戦略を取った。10都市を建設&戦争で拡張を狙う

 黄金時代と暗黒時代の中間に位置するのが「通常の時代」だ。この時代にはメリット・デメリット共にない。次の時代をどう過ごすかを考えながら、時代スコアを稼ぐ期間なので長期的な目線で戦略を練っていこう。

 この時代システムは、何をするか分からない初心者にとってはある種の指針となり、プレイを手助けしてくれるシステムとなっている。また、ベテランプレイヤーにとっては、次の時代を自分が入りたいものにするために、状況に合わせて行動を変える動機になるはずだ。なので行動の「決め打ち」を抑えるシステムとして機能する部分もあるだろう。どちらのプレーヤーにとっても中間目標が示されることで、中弛みが解消され、常にモチベーションが保たれるシステムだ。

歴史的瞬間はいつでも「歴史年表」で確認できる。また、蛮族の野営地を潰すことでも時代スコアが稼げるようになったので、蛮族がただの妨害キャラではなくなった。

無計画な文明拡張に制約が生まれた一方で、内政が強化

 今までの「Civ6」の鉄板戦略は「とにかく都市の数を増やす」というものだったが、本拡張パックでは無計画な都市の建設を抑える「忠誠心」というシステムが加わった。

 忠誠心は各都市が持つパラメーターで、指導者に対する忠誠度を表している。都市の忠誠心は付近にある別の都市から圧力を受ける。付近にある都市の人口が大きければ大きいほど、忠誠心に対する影響も大きくなり、忠誠心が低下した都市は産出量も低下する。また、忠誠心が下がり過ぎた都市は反乱を起こし、文明を離れて蛮族に似た「自由都市」になってしまう。

 忠誠心は付近にある文明の都市に住んでいる市民の数などによって決定されるため、他の文明に隣接した都市や、首都から離れた辺境地に建設された都市は忠誠心が得られ辛く、自由都市になりやすい。その為、自文明から近く、他の文明からは離れた場所に都市を建設していく必要がある。

開拓者で都市をつくる際、マイナスの数字が出ている場所は敵国の圧力が高い場所だ。ここに都市出しをするのは控えよう

 戦争で奪った都市も、占領した直後は戦争相手の文明に対して忠誠心を持っているため、直ぐに自由都市化してしまう。無理な戦争はデメリットしかないのだ。また、暗黒時代中は都市の忠誠心が低下するため、暗黒時代中の都市建設や戦争は慎重に行なおう。

 一方で、自由都市も他の都市と同じように付近の都市から圧力を受ける。圧力が一定以上かかった自由都市は独立をあきらめ、文明の領土に加わることになる。戦争以外でも領土を拡大できるのは大きな進化だ。

 忠誠心システムによって、プレーヤーは旧来のなにも考えず都市を出す、敵国の都市を占領するなどの行動に制限が入った。しかし、都市数に比例して科学力や文化力が上昇するシステムは従来のままなので、より戦略的な文明拡大が求められるようになった。

オランダの首都近くの都市を侵略したが、圧力が高く反乱間近。首都を落とすことによって圧力を減らすことで安定させた
一方で、戦争の過程でインドネシアの都市が孤立、自由都市化した。数ターン後、占領せずともこちらの領土に

 そしてもう1つの追加要素「総督」によって、内政面が大幅に強化された。総督はそれぞれが固有の特化ボーナスとレベルアップツリーを備えた強力な新キャラクターだ。彼らを採用し都市に配置、レベルアップすることで、都市づくりにプレーヤーの意思をより強く反映することができる。

文化ツリーを進めていくことで、総督の採用かレベルアップを選ぶことができる。新たな総督を手に入れるか、既存の総督を強化するかの2択は悩ましい

 総督の登場によって今まで薄かった内政の要素が拡充された。忠誠心によって無闇な都市出しができなくなった代わりに、宗教特化したい都市は宗教特化したい都市は宗教にボーナスをもたらす総督を配置したり、宇宙開発を行なう都市では科学担当の総督を配置したりと、状況に合わせて都市に色付けを行なえるようになった。

特に「官房長 マグナス」と「調査官 梁」は都市の産出に関わる部分を強化するので汎用性が高い。迷ったらこの2人のどちらかを取ろう

その他のシステムでもプレイにメリハリが

 他の追加要素として、「同盟システムの強化」、「緊急事態」がある。同盟システムの強化によって、同盟が経済同盟・文化同盟といった種類ごとに分かれ、長期間の同盟によって得られるボーナスが増えるようになった。今まであまり意識されなかった同盟にも目が行くようになり「隣り合ったら即戦争」だけが隣国との付き合い方ではなくなった。しかし、高難易度になればなるほど最序盤は隣国と戦争したほうがメリットが大きいのは相変わらずだ。自分のプレイする難易度や、高難易度で攻め辛く戦争ができない立地を引いたときなどと相談しながら活用していこう。

 「緊急事態」はある文明が力をつけすぎた場合に、他の文明が団結し、脅威に共同で対処する機会が与えられるシステム。緊急事態が終結すると、結果に応じて報酬やペナルティがもたらされる。例えば、ある文明が他国の首都や都市国家を占領した際に緊急事態が発生。他の国はその都市を取り戻すために共同宣戦をはるかどうか、選択する機会が与えられる。もし一定ターン中にその都市を取り戻すことができれば多額の資金が参加メンバーに分配される。逆に対象国が緊急事態で集まった他国を跳ね除けた場合は、多額の資金を独り占めすることができる。

 これによって、今までになかった非同盟国との協力や、独走している相手のへの対抗策が生まれた。もし対象国になった場合は、さらに他国を突き放すチャンスでもある。

ポーランドがアステカの都市を占領。緊急事態が発生した。参加したのは自文明だけだったが、アステカの都市を取り戻し(所有者は我がモンゴル帝国だが)多額の資金を手に入れた

 上記の新システムに加え、シリーズの中でも人気の指導者、ズールー族の「シャカ」やモンゴルの「チンギス・ハン」など新たな8名の指導者が追加。どれも個性豊かな能力を持ち、各指導者の強みを生かした独自のプレイを楽しめる。

今回プレイしたモンゴルは、シリーズ恒例の固有ユニット「ケシク」を生産できる。機動力の高い遠隔攻撃で非常に強力だ。固有ユニットは生産するだけでも時代スコアを稼げるので、戦争をしなくても1体は生産するといい。

 同様に世界遺産や施設も新たに追加され、技術・文化ツリーや細かいシステム面にも改良が加えられた。特に大きな変更は、経済力の中心となる交易路が、商業・港ハブを建設するだけでは追加されなくなり、市場・灯台まで立てないといけなくなったことだろう。これによって都市を増やしてから交易路を引くまでに必要な産出量が増加し、経済が潤うのに時間と手間が必要になった。

 また、新たな区域として政府複合施設が登場。1文明につき1つしかつくれないこの区域は、周囲の都市に忠誠心をもたらすほか、派生先に応じて様々な恩恵を文明にもたらすようになった。

政府複合施設は時代ごとに1つ、強力な効果を持った施設を建設することができる。今回は都市建設時に労働者が得られる「祖廟」を建設し、拡張をさらに早めた。後の時代になれば、スパイの効果を高めるものなどが登場する

 マンネリ化しつつあった「拡張し続けるゲーム」だったCiv6は、これらの追加要素によってプレーヤーの戦略に幅を持たせ、より中毒性の高いゲームへと進化したといえるだろう。

大味な「Civ6」から試行錯誤の「Civ6」へ。「あと1ターンだけ……」が止められない!

 さて、「シヴィライゼーション」シリーズは「DLCが全て出揃ってようやく完成」とかつてから言われているシリーズだ。「Civ6」も同じように「2つ目の大型DLCが出るまで買わない」と考えている方が多いだろう。しかし、シリーズファンもストラテジープレーヤーも、このDLCをきっかけに「Civ6」をプレイして欲しいと筆者は思っている。

 確かに、少数都市戦略が有効な「Civ5」が好きな人には、複数都市戦略が強い「Civ6」のシステムには戸惑いがあるかもしれない。しかし、前作とは大きく異なるシステムだからこそ、全く別のゲームとしての新しい楽しみがある。

 率直に言って、DLCなしの「Civ6」が、非常に大味だったことは間違いない。しかし、「文明の興亡」によってプレイに幅がもたらされ、プレイに指針も与えられた。以前までの闇雲に都市を増やし続ける「Civ6」から、いかに都市を増やすか試行錯誤する「Civ6」へと、本作は進化したといえる。また、やりようによっては8都市程度でも最高難易度で科学勝利は可能だ。(ちなみに、筆者は朝鮮を使用して達成した)。最適戦略以外のプレイでも、戦略次第では戦えるゲームなのだ。これを先入観からプレイしないのは非常に勿体ない。ストラテジープレーヤーならば、是非とも触ってほしい作品だ。

 しかし、難点がない訳ではない。特に旧作にあった生産予約キューが実装されていないため、後半になればなるほど操作が増えてしまう。こちらは小規模アップデートで追加されることを願っている。

 小さな欠点があるとはいえ、本作はとにかく中毒性が高い。筆者は既に追加された文明含めすべての文明をクリア、現在は最高難易度の「神」を全文明でクリアを目指して試行錯誤を繰り返している。要するに、睡眠時間を削って「文明の興隆」をプレイしているという訳だ。「あと1ターンだけ……」が止められない、そんなゲームに仕上がっているのは間違いない。

 最初はちっぽけだった文明もここまで拡大した。最終的には敵国の首都を全て占領し、制覇勝利。制覇勝利は都市の反乱などで難しくなった印象だ。