2016年10月12日 11:16
初代作が発売されてなんと25年目となる「Civilization」シリーズ。四半世紀を経過してもターンベースストラテジーゲームの人気トップを走り続けるこのシリーズは、10月21日に発売予定の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI(Sid Meier's Civilization VI、以下、『Civ6』)」でまた大きな節目を迎える。
ストラテジーゲームのファンなら誰もが待ち遠しく思っているであろう本作「Civ6」は、シリーズの節目となる作品として過去作から非常に多くの変更が加えられた1本だ。その一方で、前作「Civ5」をはじめとするシリーズのベテランプレーヤーにとっても、ゲームの全容を正確に捉えたり、細部を緻密に理解し、制御することが難しい作品になったといえるかもしれない。
それは本作の仕様が多くの点で前作以前と違っているだけでなく、全体を構成するゲーム要素が非常に多く、また、各所でランダム性が潜む部分も増えているためだ。そこを拡大解釈すれば、本作「Civ6」は前作以前と全く違ったゲームになっている、とも言える。
今回、レビューのために触れることができたのはプレビュー版という位置づけのバージョンだった。難易度は簡単な「王子」のみで、選べる文明の種類も一部のみ収録といった感じで製品版のゲームとは少々仕様が異なる部分もあったが、古代から近未来までの全時代を通して数度プレイするなかで、本作への評価をある程度固めることができた。本稿ではその内容についてお伝えしよう。なお、プレビュー版のためローカライズが完了していない部分もあるが、そこはあらかじめご了承いただきたい。
シリーズの骨格を踏襲しつつ、異なる肉付けがされたゲームシステム
紀元前4000年にはじまる文明のあけぼのから、宇宙への入植を試みる未来世紀までの人類史を地球スケールで描く、というゲームの基本は「Civ6」も同様だ。ゲームスタート時に与えられるのは1つの入植者と、護衛の戦士ユニット。プレーヤーは入植者を使って最初の都市を建設し、都市を拡張し、新しい技術を発見し、文化や軍事の力を高めて勝利を目指す。数千年にわたる長い旅路の果てに、地上は人類の生み出した文物で埋め尽くされ、壮大な歴史が紡がれていくのだ。
マップは六角形のいわゆるヘクスタイルを採用しているなど、大本となるゲームシステムは前作「Civ5」に似ている。各タイルは平原、丘陵、といった基本地形や、森林、ジャングル、湿原といった特徴に応じて資源産出量が変わり、労働者ユニットによって各種の改善を行ない、より多くの食料や工業力を得ることができる。マップ上の各所にはそういった基本資源の産出量を高めるボーナス資源や、市民生活の満足度を上げる高級資源、特定の軍事ユニットや都市施設の作成に必要となる各種戦略資源が散在しており、それらをいかに効率よく確保するかが文明の総力を高める鍵となる。
「Civ6」とそれ以前の作品で明確に共通しているのは、こういったゲームの骨格部分だけだ。それらの細部や、ゲーム全体を構成する各要素の仕様はほとんど全てに多くの違いがあるので、初めてプレイするときは未知との遭遇が連続して面食らうこと間違いない。まずは本作のプレイフィールを構成する上で特に重要な部分について、ざっくりと事実に絞って紹介していこう。
技術ツリーと社会制度ツリー
これまで技術ツリーとして1本化されていたものが、本作では2つのツリーに分かれている。主に科学技術を扱う技術ツリーと、統治や文化の技術を扱う社会制度ツリーだ。
技術ツリーは陶磁器、畜産、採鉱といった原始的な技術から始まって、ロボット工学、核融合、ナノテクノロジーといった情報時代の技術に至る構成で、文明の生み出す科学力によって進行し、新しい施設の建設やユニットの生産を可能にする。その構成はおおむね従来作に似ているが、統治・文化関連の技術は新設された社会制度ツリーに移動されている。
社会制度ツリーは、原始的な法律の概念である法典にはじまり、政治・経済・文化にまつわる多数の技術・思想を経て最終的にグローバル化、ソーシャルメディアといった現代の思想・文化に至る構成で、その途上で新しい政府形態や、外交要素、そして多数の「政策」をアンロックしていくことになる。そしてこの社会制度ツリーを進めるためのメインリソースは、文明の生み出す文化力だ。文明は科学力と文化力の双方で、技術ツリーと社会制度ツリーを同時並行して進行していくことになる。
どちらにも全ての技術項目に「ブースト」という概念があるのが本作の特徴だ。ブーストはその技術内容に関連した行為を行なうと発動し、その技術の開発に必要なリソースを半減してくれる。例えば労働者使って農地を複数作れば「灌漑」の技術にブーストが与えられ、異なる2文明に接触すれば「対外貿易」の社会制度技術がブーストされるという塩梅だ。このような形で、全ての技術項目に異なるブースト条件が存在する。
全体的に言うと、古代~古典時代あたりの技術ブーストは何も考えずにプレイしても流れで得られる物が多いが、中世あたりから意図的に狙わないとブーストが得られにくくなり、産業時代~現代となるとあらかじめ緻密に計画しておかないと、ブースト条件を満たすのが困難になる、という感じである。特定の戦略資源へのアクセスを要求するブーストや、特定ユニットの活用等を求めるブーストも多いので、プレイ内容によってはどうやってもブーストできない技術もある……というわけで、技術進行の方向性に国柄みたいなものが出やすい感じである。
都市拡張をパズルゲームと化した「区域」システム
都市の規模と質と数が文明の力を決める主要な要素となることは本作でも変わりないが、その運用は前作以前とは大いに違ったものになっている。特に重要なのは新たに登場した「区域」のシステムと、前作までは幸福度などと呼ばれていた人口数キャップに関するシステムだ。
まず区域システム。従来作では、都市の中枢部は都心タイルだけで成立し、そこに全ての都市施設を建築できていたが、今作では商業・科学、文化、工業・軍事等々の各カテゴリーの施設を、それぞれに応じた区域に建設する仕様となった。例えばゴールドを生み出す市場や銀行は「商業ハブ」区域に、図書館や大学といった科学力を生み出す施設は「キャンパス」区域にのみ建設できる。
そしてそれぞれの区域自体が1つのタイルを占有する上、区域を設置するだけでもかなりの工業力が必要となる。また、多くの区域には建設可能な地形の制限がある。軍事施設を設置するための「兵営」区域は都心に隣接できないとか、「用水路」区域は都心に隣接させる必要がある等だ。
その上、各区域にはそれぞれに隣接ボーナスという概念があり、周囲のタイルの地形や状況によって出力が変わる。例えば商業ハブ区域は河川や他の区域に多く隣接しているとより多くのゴールドを生み出し、キャンパスは山岳やジャングルに隣接すると科学出力にボーナス、信仰ポイントのソースとなる「聖地」区域は山岳・森林に隣接するとボーナスといった塩梅だ。
さらに、区域の設置には人口制限もある。正確な計算式は不明だが、各都市の人口2~3ごとに1つの区域が設置可能になる感じである(この制限は特定の偉人の効果で増やせる場合もある)。こういった複数の要素があるため、区域の設置は常に新しいパズルを解くようなものだ。特にゲーム序盤は人口制限や生産力の少なさにより厳選した区域だけを設置することになるため、ここは商業都市、ここは科学都市、ここは宗教都市、という感じでほぼ強制的に都市の特化が行なわれることになる。最終的にほとんどの都市に作ることになるのは、工業生産力を上げる「工業地帯」区域と、人口キャップを大幅に上げる「近郊郡」区域くらいのものだ。
各区域は1つのタイルを占有するため、大きく発展した都市ではタイル不足にも悩まされることになる。区域の種類は全部で12種類もあるので、全区域を作ろうものなら都市圏から12タイルが消滅するというわけだ。そこまでいかなくても、地形制限や隣接ボーナス等を考えるとボーナス資源や戦略資源のあるタイルを潰さねばならない場合もよくあるなど、タイル占有による二律背反がプレーヤーを悩ませ続ける。
大きなボーナス効果をもたらす建築物である「遺産」も区域と同様のシステムになった。遺産を1つ作るとタイルを1つ専有するほか、特定の遺産は特定の地形にのみ建設できるというルールによって、従来よりも遺産の建設に関する判断が難しいものになっている。例えばピラミッドは砂漠タイルにしか建設できないし、他には平地のみといったものや、山岳に隣接する丘陵のみ、都心に隣接したタイルのみ、といった制限が各遺産に存在している。このため特定都市では建設不可能な遺産が多く存在することとなり、強大国がほとんどの遺産を独占することがなくなった一方、遺産建設時の悩みは増えた。特に建設のため、重要なタイル(食料を多く産出するタイル等)を潰すことになる場合、それを上回るメリットがその遺産にあるかどうかを検討せねばならず、ほんとうに悩ましい。
人口キャップの新概念となる「設備」と「住宅」
前作「Civ5」では、都市の人口増加に制限を加える要素は、その都市における食料生産の総量と、文明全体のパラメータである幸福度だった。これに変わって本作では、各都市ごとの食料生産の総量に加えて、「設備」と「住宅の収容力」という概念で人口増加の最大値が決まるようになっている。この2つは、簡単にいうと2作前の「Civ4」における幸福度と衛生の概念におおむね対応したものだ。
都市内で充分な食料生産があれば、余剰食料の蓄積により人口が増加していくが、充分な「住宅」が整備されていないと人口成長はストップする。住宅は農場を建設したり、穀物庫、下水道といった各種の施設を建設するなどで増加させることが可能だ。
次に、従来は幸福度と呼ばれていた概念に相当する「設備」。これがプラスなら人口増加と、食料以外の生産にわずかなブーストがかかり、マイナスになると大きなペナルティがかかる。設備は高級資源や娯楽施設等によって増やすことができる。ここで理解が難しいのが贅沢資源の働きだ。
高級資源は、前作「Civ5」では文明全体に恩恵を与え、1種類確保→1幸福度という感じでわかりやすかった。今作でも高級資源は文明全体の所有物という扱いなのだが、都市単位の設備という概念に組み込まれた部分もあって少々複雑なシステムになっている。ざっくりと解説してみよう。
まず、文明が所有する贅沢資源は、1種類1つで4つの都市に設備1を供給できる。例えば香料が2つ、絹が1つある場合、8都市に1設備+4都市に1設備が供給できる。つまりこの場合、最大供給力は4都市に2設備、残り4都市に1設備というわけだ。そして、これらの贅沢資源は各都市の設備が均等に+1以上を目指すように自動的に配分される、というのが大きなポイントだ。
例えば都市が娯楽施設だけで充分な設備を供給できている場合、その都市は高級資源を必要としないので、その都市では贅沢資源が消費されない。他方で娯楽施設のない都市があれば、その都市の設備が+1以上を目指すように高級資源が供給される。このため、ある都市では高級資源の供給がゼロ、他の都市では2つの高級資源が供給される、という状況が起きる。
面倒なのは文明全体で設備が微妙に不足している場合だ。高級資源の分配は自動なので、各都市の設備が-1~0あるいは0~1の間でランダムに決まる。ある都市の成長を重視して設備を常に+1以上に保っておきたいことは多いが、本作ではそこがプレーヤーの意図通りにならない。
都市の設備不足を解決するためには娯楽施設を充実させることになるが、例えば設備合計が-1になっている都市で「アリーナ」(その都市に設備+1)を作った場合。まだ文明全体で設備が不足していると、その都市の設備が増えないことがあるのだ。つまり、都市の施設によって設備が+1された一方、その都市に回されていた高級資源が1つ減り、設備が同じくマイナスだった他の都市に回されるような感じである。こういうわけで非常にややこしい上、思い通りの制御ができない場合もあってもどかしい面もあるのがこのシステムである。高難度設定のゲームでは面倒なことになりそうだ。
「偉人」はランダム性向上+特定個人を狙って獲得する存在に
大科学者、大技術者、大預言者といった特別な文民ユニットは、「Civ4」以降、文明の発展をブーストしてくれるありがたい存在だ。前作以前では新たな偉人を狙って生み出すために都市施設や遺産を建設しまくったものだが、その基本的な手法は本作でもおおむね同じ。ただし、生まれる偉人そのものは非常にランダム性の強い存在になっている。
本作における偉人のカテゴリーは、大将軍、大提督、大技術者、大聖人、大預言者、大科学者、大著述家の7種類で、それぞれに対応する偉人ポイントを生み出す施設や政策がある。それらを充分なターン数維持することで、偉人ポイントが貯まり、「採用」を行なえる。そこでのポイントは、前作以前では各偉人の効果はカテゴリー毎に固定だったが、今作では偉人それぞれの個人毎に能力が違うという部分だ。
例えば古代・古典時代の大将軍はプライマリ能力として「2タイル内の古典・中世のユニットの戦闘力+5」といった効果を持つが、それに加えて、ハンニバル・バルカなら「引退」アクションでユニット1つのレベルを上げる、ブーディカなら隣接する蛮族ユニットを支配する、といった具体性の高いユニーク能力を持つ。これが大技術者・大商人・大科学者となるとプライマリ能力もそれぞれ具体性が高く、特定の施設の建設をブーストしたり、特定の資源をもたらしたりといった塩梅になる。このため、状況的に非常にありがたい偉人や、役に立たない偉人といったものが出てくるようになっているのだ。
各カテゴリーでどの偉人が出現するかは時代毎にランダムに決まる。偉人画面で事前に何が出るかを知ることはできるが、そもそもどの偉人がテーブルに並ぶかは運任せだ。そして、対応する偉人ポイントを先に充分に蓄積した文明が独占的に獲得する仕組みになっているので、偉人ポイントを充分に産出していないプレーヤーが、同カテゴリーで他文明と争った場合、1人も偉人を得られずに長い時代を過ごすことにもなる。AIプレーヤーがどの偉人ポイントを優先するかはプレーヤーの制御できないところなので、さらに獲得できる偉人のランダム性は高まる。
という感じで、偉人ごとに能力が異なる、獲得できる偉人を制御できない要因が増えた、などの理由で、偉人の活用にランダム性が高まり、長期的な戦略に組み込みづらい存在になった。また、偉人ポイントの産出が爆発的に増えるゲーム後期になると偉人がボンボン生まれてくることもあって、前作以前に比べると個々の能力はいまひとつインパクトが薄いものになっている。例えば特定の技術項目にブーストを与える大科学者が2人連続で生まれるような場合。2人目以降は完全に無駄なので、獲得を「スキップ」することもできる。スキップすると、溜まった偉人ポイントの大半を次の偉人のために持ち越すことが可能だ。次は良い偉人が出ますように。
細かい調整ができる「政府」と「政策」
「Civ4」以前ではざっくりと「政治体制」として扱われ、「Civ5」では「社会制度パネル」として、内政面の様々なボーナス効果をもたらしてきた要素は、本作で「政府」システムとして再定義された。そして本作中で極めて頻繁に扱う要素となっている。
政府は文明全体の方向性に、選択的なブーストを与えるためのシステムだ。その名の通り社会制度ツリーの発展と極めて強く連動していて、古典時代のキー技術である「政治哲学」をアンロックすることによって、「寡頭制」、「共和制」、「独裁政治」という古代国家的な政府形態から1つを選ぶことが可能になる。
それぞれの政府形態には決まった数の政策スロットがある。「寡頭制」なら軍事、経済、外交、ワイルドカード(どの種類の政策もセットできる)が1スロットずつ、「独裁政治」なら軍事2つ、経済1つ、外交なし、ワイルドカード1つ。「共和制」なら軍事なし、経済2つ、外交1つ、ワイルドカード1つという形だ。これらの政策スロットに、対応するカテゴリーの「政策」をセットすることで各種のブーストを文明全体に与えることができる。
政策は軍事・経済・外交・その他のカテゴリーに分かれたカードの形で表され、最終的に50種類にもなるが、ゲーム初期の古代・古典事態ではシンプルなものだ。蛮族対策をしたいなら、蛮族に対する戦闘力+5のカードを軍事政策に、地形改善を急ぎたいなら、労働者生産+30%のカードを経済政策にセットして運用するという形でいい。うまく運用した政策の効果は非常に強力である。
ポイントとなるのは、政府形態や政策は、新たな社会制度の技術が獲得されるたびに無料で変更が可能になるほか、随時ゴールドを支払うことでも変更できるということだ。つまりいついかなるときも政策は変更できる。そして、それぞれの政策が及ぼす効果は非常に具体的で範囲が狭いが、特定の行動を一斉にする場合なら効果が大きい事が多い。例えば戦士ユニットをまとめて剣士にアップグレードしたい場合、アップグレード費用を半額にしてくれる政策を採用すれば大きなアドバンテージになる。
特定の条件で効果の大きい政策は、往々にして、それ以外の場合は全く役に立たない。一方で、どんな場合でも効果がある政策もあるが、そういった種類のものは効果がジワリとしていて、短期ではあってもなくても大差ない感じのものだったりする。政策スロットの数は限られているので、どの政策をとるかは、常に状況と相談して的確に決めていく必要があるわけだ。
ゲーム序盤はシンプルで迷う要素も少ないが、中盤~終盤となれば選べる政策の種類が非常に多いことと、それぞれの効果が非常に具体性が高い(つまり汎用性がない)ことから、どの政策を用いるべきか、多くの時間を政府パネルで過ごすことになる。1番いいのは、はやめに「民主主義」、「共産主義」、「ファシズム」といった現代レベルの政府形態をアンロックして、採用できる政策数を増やしてしまうことだ。たくさんの政策が同時に選べるなら、却って取捨選択の悩みは減るという寸法である。
政策はポンポン変えても大丈夫だが、政府形態に関しては「レガシーボーナス」というものがあって、特定の政府形態を長く維持することで利益になるシステムがある。例えば「寡頭制」ではユニットが戦闘で得る経験値を最大20%高めてくれる。この効果、はじめは1%、10ターン程度経過すると2%になるという形で、ジワジワと増えていく形だ。%が低いうちはほとんど意味がないが、10%以上に増えてくると結構効いてくる要素になるため、特定の政府形態を長く続けることには大きな意味がある。蓄積したレガシーボーナスは、時代が進んで新しい政府形態に変えてたあとも残り続ける。国柄みのような形で文明の特色になっていくのだ。
もちろん、それぞれの政府形態は戦争や平和といった各状況にそれぞれ適した効果を持つので、時間のかかるレガシーボーナスを無視してコロコロと政府形態を変えてもいい。特に採用できる政策の数が大きく増える現代の政治形態は戦略のたてかたに大きな影響を与えるので、「民主主義」からいきなり「ファシズム」に変更して戦争に備える、といった運用方法も有効だ。
ユニット操作周りも大きな変化
本作のユニット操作は前作同様、大きくわけて軍事と防衛や侵略を行なう軍事と民間にわかれている。このうち軍事ユニットには、陸上、海洋、航空といった従来の戦闘ユニットに加えて新たに「支援ユニット」という新しいカテゴリーが追加された。
支援ユニットは近くにある戦闘ユニットの能力を様々な面で増強させる存在だ。例えば古典時代の「破城槌」は、都市に隣接していると他の戦闘ユニットが都市に攻撃を行なう際、防壁に大きなダメージを与える事が可能になる。「攻城塔」なら都市の防壁の効果を無視して攻撃できるようになる。産業時代の支援ユニットである「観測気球」は、隣接する遠隔攻撃ユニットの射程を1伸ばす、などなどだ。
特にゲームシステムの面で大きな影響下にあるのが中世に登場する「工兵」ユニットの存在だ。工兵はタイル上に要塞などの軍事施設を作る存在で、「労働者」ユニットの軍事版という位置づけである。時代が進むと航空ユニットが駐屯できる空港や、大量破壊兵器を発射するミサイルサイロといった施設も建築できるようになる。その能力の中で特に重要なのが「道路」を建設するという能力だ。
工兵は道路を建設できる。つまり、従来作のように労働者ユニットでは道路を建設できなくなった。そして工兵はゲーム後半になっても割りとコストの高いユニットで、2タイル建設するだけで消費されてしまう存在である。これが意味するのは、道路は基本的にプレーヤーが狙って敷くものではなく、ゲームシステムによっておおむね勝手に敷かれるものになったということだ。具体的に言うと、「交易商」ユニットを使って都市間の交易路を作ると、その都市間に自動的に道路が敷かれるというシステムだ。
その上、道路の効果自体がわりと薄いのも本作の特徴である。従来作では古代から道路を敷くとそのタイルの移動コストが大幅に減り、高速にユニットを移動できるようになったし、鉄道を敷くと大幅に移動速度が増大して大陸を1ターンで横断することも可能だった。
そこが本作では文明の時代進行度に応じて「古典時代の道路」、「産業時代の道路」、「現代の道路」と段階的・自動的に領域内の道路がアップグレードされていく形となり、移動コストの低減は最大でも「現代の道路」における1/2倍で、初期の「古代の道路」では1倍、つまり移動速度の増強はなしである。丘陵や森林といった地形による移動コスト増大を無視できるというメリットはあるものの、軍隊や民間ユニットを高速展開するためには心もとない存在となった。ちょっと離れた場所にある侵攻予定地にあらかじめ交易路を設けておくとちょっと便利な程度である。
前作以前では軍隊に労働者を同行させて道路を敷き詰めて増援の高速展開を狙うという戦略や、都市の建設予定地にあらかじめ道路をつなげておいて、開拓者を高速展開するといった手法がとれたが、本作ではどちらも不可能になっている。とにかく従来作の感覚でいるとユニットの移動が全体的に遅く、展開・侵攻に非常に時間がかかって計算違いを起こしやすいので、はやめに考え方を切り替えるのがオススメだ。
そのかわりというわけか、1発で必勝の軍隊を送れるよう、産業時代から現代にかけて「軍団」という新システムが登場する。これは複数の同一のユニットを合体させることで、より戦闘力の高いユニットにできるというシステムだ。2つのユニットを合体させると「軍団」になり、戦闘力+10、3つのユニットを合体させると「軍」になり、戦闘力がさらに+7される。
例えば戦闘力55のマスケット兵の場合、3ユニットを結合して軍にすると戦闘力は72になる。効果が薄く感じるが、次の時代の「歩兵」の戦闘力70をやや超える程度ではあり、同時代のユニット相手ならほぼ無敵の強さだ。これは特に文明が大きな工業力を持つ場合に有効だ。ユニットをあまり生産できない文明では、軍団にせず個別に運用したほうが良い場合も多く、悩ましい選択になる。ちなみに軍団と軍の要素は技術ツリーではなく、それぞれ社会制度ツリーの「ナショナリズム」と「戦時動員」でアンロックされるので、科学よりも文化が先行している文明にとっては自衛手段として最適、という見方もできる。