【特別企画】

全く新しい「Civ」体験がここに!「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 嵐の訪れ」先行インプレッション

2月14日 発売予定

価格:4,400円(税込)

 2KとFiraxis Gamesは、PC用ターン制ストラテジー「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI(以下、Civ6)」の拡張パック「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 嵐の訪れ(以下、嵐の訪れ)」の配信を2月14日に開始する。

 「Civ6」は、文明の指導者となり、自国を発展させていくターン制ストラテジーで、「嵐の訪れ」は本作2つ目の大型拡張パックとなる。前作「Civ5」が2つ目の拡張パックでシステムが完成したという事もあり、まだ「Civ6」を購入していない人にとっても注目の拡張パックであることは間違いないだろう。

 「嵐の訪れ」には、新たなシステムとして「環境の影響」、「電力システムと枯渇性資源」といった新要素、そして前作プレーヤーにとっては待望となる「世界会議と外交による勝利」が導入されている。

 新しい指導者と文明も追加されているほか、新ユニットや、区域、遺産、建造物なども本拡張パックで追加。もちろん、前拡張パック「文明の興亡」で追加された「時代システム」や「総督」などにも細かい修正が入っている。

 では、これらの新たなシステムによって「Civ6」はどのように進化したのか、2Kより提供を受けた先行ビルドを用いたプレイレポートを通してお伝えする。なお、弊誌ではベースとなる「Civ6」及び「文明の興亡」に関してもレビューを行なっているので、是非それらの記事も参考にして欲しい。

【「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVI 嵐の訪れ」新要素紹介動画】

常につきまとう「環境」システムとそれに対応する「工学プロジェクト」

 今回の拡張パックの核となるのは「環境」だ。プレーヤーはライバル文明や蛮族だけでなく、自文明を取り巻く自然と、それがもたらす災害とも相対しなければならない。例えば、川の付近では水害が起き、火山は噴火する。時として自然は都市の建造物や人口に悪影響を与えるが、土地を肥やし、産出量を増加させることもある。

川の付近で水害が発生。被害を受けたタイルもあるが、同時に食料産出量が増加した場所も
ハリケーンは甚大な被害をもたらす天災だ

 一方で、災害に対応した区域も登場する。例えばダムを建設すれば水害の影響を抑えつつ住宅や快適性を上昇させられる。これらは「工学プロジェクト」と呼ばれており、ダム以外にも運河や防波堤なども存在する。また、資源や対応する立地があれば鉄道や山岳トンネルといった施設を建設することも可能だ。

ダムがあれば水害の被害を抑えることが可能なほか、住宅や快適性も手に入る

 また、時代が進むと人類が自然に影響を与え始める。地球温暖化と枯渇性資源がそれに該当する。今回の工場はそのスペックをフルに発揮するためには電力も用いるのだが、発電に用いる石炭や石油、ウランといった燃料を使用するほど、世界のCo2レベルが上昇し、地球が温暖化していく。地球の温度が変化することにより水害や嵐の発生率が高まるだけでなく、海水位が上昇することで沿岸部の土地が水没してしまう恐れがある。

自然環境に加え、Co2レベルはいつでも確認可能だ

 電力は石炭や石油などの資源に対応する発電所を建設することで得られるが時代が早く解禁されるものほど排出するCo2の量も多い。さらに時代が進むと、水力、地熱、風力、太陽エネルギーなど、Co2を排出しない代替エネルギーを研究で解禁し利用できるようになる。

 環境システムの追加によって、プレーヤーは今まで以上に土地選びを慎重に行なう必要性が出てきた。「文明の興亡」までは川辺に都市を建設しておけば取り敢えず産出が安定したが、「嵐の訪れ」では水害等のリスクを背負うことになるからだ。リスクは高いが産出が豊富な川辺の都市か、リスクを避けて相対的に貧弱な都市を建設するかはプレーヤー次第だ。

土地を選び、工学プロジェクトを駆使しながら都市を発展させていく

 また、重要な変更の1つに戦略資源の仕様変更がされたことがある。「文明の興亡」では、戦略資源が必用数自文明内にあればそれに対応するユニットを生産することができた(鉄があれば剣士、馬があれば騎兵など)。しかし、「嵐の訪れ」では大きく仕様が変わり、改善された土地から毎ターン一定数の資源が得られ、それを蓄積するようになった。

 鉄が産出されていても、必要な個数が備蓄にないならば生産は不可能で、既に生産されたユニットも必要とする戦略資源が不足すると弱体化してしまう。しかも備蓄できる個数には限りがあるので、積極的に有効活用していかなければロスが生まれてしまう。ユニットの生産以外にも、貿易に使用するなどしていくことが大切だ。

 備蓄がなければユニットの生産やアップグレードもできないので、戦争のタイミングは慎重に考えなければいけない。尚、備蓄の上限は兵舎の区域と建造物で増やすことができる。

世界会議で展開を有利に。外交勝利も実装

 「嵐の訪れ」には「外交的支持」という新たなポイントが登場する。このポイントはプレーヤーの外交的な善行を数値化したもので、都市国家や他文明との同盟、各種世界大会に参加で入手が可能だ。外交的支持は他の文明に何かを約束させたり、世界会議における投票力などになる。

外交的支持は貿易に使えるほか、他国との約束でも入手・使用できる(画像のゴールドの下にあるのが外交的支持)

 世界会議では、毎回様々な「決議」の投票が行なわれる。決議の内容はある高級資源を禁止するものや、特定の区域の建設物にかかるコストを減らすものなど様々で、通った決議は全ての文明に適応される。また、ゲーム後半には「外交による勝利」ポイントを得られる決議が登場する。この投票に勝ち続け、一定以上のポイントを得られれば「外交による勝利」を達成することができる。

決議には自分を有利にするものもあれば、特定の文明を不利にするものまで様々だ

 また、「嵐の訪れ」ではこれまでの好戦性システムは廃止され、新たに「不平システム」が実装された。不平は国際的な外交の舞台において、2国間の力関係を現わす目安となり、非難声明や宣戦布告などを行なうと相手に対する不平が募っていく。不平が募ると、相手に対する戦争を正当化することが可能だ。

不平システムの登場で、戦争が正当なものになる可能性も出てきた。勿論、他文明を攻め滅ぼし続ければ自分への不平がたまっていくので注意が必要

多くの新要素で新しい体験を。生産キューも実装

「嵐の訪れ」における追加要素は他にも盛りだくさんだ。技術・社会制度ツリーには新たな時代として「未来時代」が追加。これは不確定な時代で、ゲーム毎にランダムに変化する。二酸化炭素を回収するプロジェクトや、海上都市など未来的なモノが続々登場する。これらを駆使して、今までにない発展を自文明にもたらすことができる。

ゲーム最終盤まで未来は予測不可能だ

 また、新たな文明と指導者も追加。現時点で発表されているのは8人の指導者が率いる文明で、オスマン帝国のスレイマンや、インカのパチャクティなど、「Civ」シリーズの人気指導者も参戦した。

発表されている文明と指導者とその文明。左からマティアス・コルヴィヌス(ハンガリー)クリスティーナ( スウェーデン)パチャクティ(インカ)ディードー(フェニキア)クペ (マオリ)ウィルフリッド・ローリエ(カナダ)マンサ・ムーサ(マリ)スレイマン1世(オスマン)

 遺産・自然遺産も新規の物が追加されたほか、新規ユニットも登場。軍事ユニットとして「巨大戦闘ロボット」が「Civ5」より復活を果たし、ゲーム中盤にも新規ユニットが用意されている。

巨大戦闘ロボットはウランと生産力を大量に投入しなければ生産できないが、その性能は破格だ

 また、文民ユニットとして、他国でライブを行なうことで観光力をもたらすロックバンドも登場。信仰力でしか購入できず、専用の特殊なレベルアップツリーが用意されている。

ライブを行ない、観光力を稼げる

 他にもワールドマップを眺める際の新たなオプションであり、都市の産出等を見ながらレイアウトを検討する際に役立つ「帝国レンズ」や、以前から実装して欲しいとの声があった「生産キュー」など新しい要素も多い。総督や技術ツリーの細かい調整もあり、大規模なアップデートでありながら、痒い所にも手が届いている印象だ。

本作の生産キューは自分名のすべての都市を見ることもできるので非常に便利。
帝国レンズを使用することで、自都市の状況を直感的に把握することができる

 「シヴィライゼーション」シリーズは「拡張パックで完成する」と言われることもある。実際、本拡張パック「嵐の訪れ」がもたらした変化は、「Civ6」の領土拡大をベースにしたデザインはそのまま残しながらも、ゲーム性は大幅に強化されたように思える。

 「嵐の訪れ」でも、いかに多くの都市と土地を確保するかが重要なのは変わらない。しかし、闇雲に土地を拡げれば災害によってロスが大きくなるリスクも増える。今までよりも序盤が厳しくなった分、戦争をするための戦力を整えるのにも時間がかかるので、序盤から他文明の都市を占領すればいいわけではないし、都市国家を占領すれば世界会議で不利になる。開拓者で都市を建てるにしろ、戦争をするにも、今まで以上に綿密なプランニングが必要になった。

 今までの「Civ6」は、ゲーム終盤になるとやることがすでに決まっている状況になりがちだったが、「嵐の訪れ」ではその点も改善されたように思える。環境システムや戦略資源の変更でゲームスピードが遅くなったのに加え、後半の環境問題や未来時代の影響で、後半にも考えることが山ほどあるのだ。

 現時点で、強いて難点を挙げるならばプレイ時間の長さと、序盤の"キツさ"だろう。今まで以上に考えることが増え、ゲームスピードも遅くなったのでゲームクリアまでの時間はかなり長くなった。「あと1ターンだけ……」を続けていると本当に朝までかかりかねない。また、序盤は未だに強力な蛮族に加え、災害の影響もあり低難易度でも苦戦することがままある。

 それでも「嵐の訪れ」はかなりバランスの取れた拡大生産ゲームなので是非プレイしてみてほしい。「Civ5」の少数精鋭戦略から一転して、複数都市戦略が強い「Civ6」に対し、未だにプレイを躊躇っているストラテジープレーヤーも多いだろうが、全く新しい「シヴィライゼーション」の形が本作には存在している。